今回は「ナラティブマーケティング」について解説をしていきます。
ビジネスにおいて、物語を使ってユーザーの心に訴えかけるストーリーテリングが非常に効果的です。
しかし最近は、ストーリーテリングよりも「ナラティブ」が注目されています。
なぜならナラティブは、ただのストーリーテリングよりももっと強力にお客さんの心を動かすことができるからです。
そして、人の心をより動かせるナラティブをビジネスに活用することを、ナラティブマーケティングといいます。
そこで今回はナラティブマーケティングについて、以下のような解説をしていきます。
- ナラティブの意味
- ナラティブマーケティングのメリット
- ナラティブマーケティングの事例
ナラティブを理解すれば、ストーリーの力を使って、よりお客さんの心を引き寄せることができるようになります。
とくに情報発信の場が増えた現代だからこそ、ぜひナラティブの活かし方を知っておいてください。
ナラティブの意味とは?
ナラティブは、「物語」という意味の言葉です。
単純な意味で言えば、ストーリーテリングの「ストーリー」と同じですね。
しかし、ナラティブとストーリーテリングには明確な違いがあります。
それが、誰が主人公になるかという点です。
ストーリーとは、特定の主人公が用意されている架空の物語のことを意味します。
たとえば、すでにエンディングまで書き終わっている小説のようなイメージですね。
もちろんこれでも十分に共感や感情移入を誘うことはできます。
それに対しナラティブとは、今まさに進行している物語であり、主人公は「あなた自身」です。
あなた自身が主人公として操作する、自由度の高いRPGゲームのようなイメージですね。
あなたの選択でシナリオが変化し、あなただけのエンディングを迎えることができる物語、と聞くと、ワクワクしないでしょうか?
そのためナラティブは、ストーリーテリングよりも深い没入感や感動を与えることができます。
お客さんに対して、このナラティブで語りかけていくのがナラティブマーケティングです。
実際にお客さんの思い通りに物語を変化させることは難易度が高いですが、お客さんにそう感じさせるような仕組みを作ることはできます。
たとえばペットショップの場合、「あなたと子犬の物語」といった打ち出し方をすると、お客さんの想像力が働くはずです。
そうして子犬を飼うことでできるであろうことや起こるであろうことを伝えていくと、お客さんの心をより動かすことができます。
このようにナラティブは、より心を動かすことができる物語の形式なのです。
ただ、その原点にはもちろんストーリーがあります。
あくまでもストーリーの伝え方、表現方法を変えたものがナラティブだからです。
そのためナラティブを上手く活用しようと思えば、必然的にストーリーテリングの知識も必要となってきます。
ストーリーテリングについては別記事で詳しく解説しているので、併せてご確認ください。
⇒ストーリーテリングの意味とは?マーケティングで活かす方法や事例を解説!
ナラティブマーケティングのメリット
お客さんに語りかけるナラティブマーケティングには、以下のような2つのメリットがあります。
- お客さんからの好感を得られる
- 商品の本質を伝えられる
どちらもビジネスをするうえでは非常に重要なことです。
それでは1つずつ解説していきましょう。
ナラティブマーケティングのメリット1.
お客さんからの好感を得られる
ナラティブを上手く使えば、お客さんに好感を抱かせることができます。
もともと人はストーリーに惹き込まれる性質を持っているため、普通のストーリーテリングでもお客さんに好感を与えることができました。
しかしナラティブの場合、その物語の主人公が自分になるわけですから、さらに感情移入してしまいやすいのです。
お客さんからの好感を得ることができれば、商品が売れます。
さらに、その商品やあなたの会社のファンになってくれる可能性も上がるため、リピート率を上げることにも繋がるのです。
当たり前なことですが、「人」を対象にしてビジネスを行っているなら、そのターゲット層からは好かれなければいけません。
だからこそ今、ナラティブマーケティングが注目されているわけですね。
ナラティブマーケティングのメリット2.
商品の本質を伝えられる
ナラティブはお客さん自身を主人公とした物語であるため、その商品が持つ価値の本質を伝えることができます。
その商品を実際にどう使うのか、使うことでどのようなことが起こるのか、といったことを自分ごととして想像してもらえるのです。
たとえば丈夫な皮のカバンを想像してみてください。
「どういう皮を誰がどう加工したから何十年でも使える」という制作過程にまつわる物語を説明するのがストーリーテリングです。
一方ナラティブでは、「これから何十年もあなたの相棒になる、年月と共に皮があなたの色に染まっていく」というように、お客さん自身とカバンにまつわる物語を表現していきます。
カバンのクオリティはあくまでもメリットであり、お客さんにとってベネフィットとなるのはどのように使っていけるのか、というところです。
つまり、ナラティブの方がよりお客さんにとっての本質的な価値を説明できるわけですね。
ちなみに、ナラティブマーケティングを上手く行えば、商品の価格を上げることにも繋がります。
なぜなら、商品価格はお客さんが感じた価値によって決まるからです。
たとえどれだけ高級な素材を使い、どれだけすごい技術で作られていたとしても、お客さんがそこに価値を感じなければ意味がありません。
逆に、どれだけ簡素な作りでも、お客さんがそこに価値を感じさえすれば商品は売れるのです。
もちろんこれは優良誤認させろという話ではありません。
商品やサービスが持つ価値をしっかりとお客さんに伝えることが重要だという話です。
実際、お客さんにサービスの価値をしっかり説明することで、サービスの価格を20倍にまで上げた治療院があります。
この治療院は客層を変えず、さらにお客さんからの抵抗もなしに価格を上げることに成功しました。
その結果、自由な時間を確保しつつも業績を大幅に向上させることに成功したのです。
ナラティブマーケティングをビジネスで活かしている事例
ここからは、実際にナラティブマーケティングを実践している事例を紹介していきます。
- SUBARU
- 看護、カウンセリング
こちらを確認すれば、ナラティブがどのように活かされているのか分かっていただけるかと思います。
ナラティブマーケティングの事例1.
SUBARU
SUBARUはCMやドラマ配信などを通じ、ナラティブマーケティングを実践しています。
「あなたとクルマの物語」と、キャッチコピーも分かりやすいですね。
SUBARUの動画は、「あなたとクルマ、どんな物語がありますか?」というナレーションから物語が始まります。
このナレーションがユーザーを惹き込み、ユーザー自身と物語を結びつけるのです。
実際、SUBARUの動画は多くの人の共感を得ました。
その結果、CM、ドラマだけでなく、小説にまで展開しています。
共感できるすばらしいストーリーであったのももちろんですが、ナラティブでユーザーを惹き込んだことが、この成功の大きな要因であると言えるでしょう。
ナラティブマーケティングの事例2.
看護、カウンセリング
マーケティングとは少し外れますが、ナラティブは看護やカウンセリングといった医療でも活用されています。
それが「ナラティブ・アプローチ」という手法です。
ナラティブ・アプローチでは、患者や相談相手の支援をするときに相手の物語に注目して解決方法を見出していきます。
理屈や技術ではなく、患者や相談相手が語る解釈をしっかりと読み取り、重要視するわけですね。
もちろん患者や相談相手の声を聴くということは、主観に基づいた脚色もあり得るということです。
しかしその主観をあえて聴くことで、今まで気づくことができなかった患者や相談相手の問題点に気づくことができます。
【まとめ】ストーリーテリングよりナラティブが注目されている
今回はストーリーテリングよりもさらに人を惹き付けることができる「ナラティブマーケティング」について解説をしてきました。
ナラティブとは、ユーザー自身を主人公として物語を語ることです。
たとえばSUBARUのように「あなたとクルマ、どんな物語がありますか?」というキャチコピーを掲げて共感できる物語を展開すれば、まるで自分の物語のように感じてもらうことができます。
そうすればより没入感が高まり、商品に対して強い感情を抱いてもらうことができるのです。
簡単にいえば、より好きになってもらえて、より本質的な価値を感じてもらえるということですね。
そしてここで1つ知っておいてほしいのが、商品価格はお客さんが感じた価値によって決まるということです。
たとえどれだけ原価が低い商品でも、価値を感じればお客さんは高額で買ってくれます。
つまり商品価格は原価ではなく、お客さんが感じる価値に合わせて付けるべきだということです。
表現の場がどんどん増えている現代において、物語が持つ力は多くの企業から注目されています。
しかしまだまだストーリーテリングだけに頼っているところも多い印象です。
だからこそナラティブを理解し、よりお客さんを惹き込んでいきましょう。