参入障壁を具体例で正しく理解!障壁が高い業界・低い業界、作り方まで解説

鷲津晴人
参入障壁を具体例で正しく理解

今回はビジネスにおける「参入障壁」についてお話をしていきます。

 

新たな事業に進出しようとしたとき、1つの判断基準となるのが参入障壁の高さです。

参入障壁が低ければ事業を始めやすい反面、競合が増えてしまうことになりますし、逆に高ければ競合が少ない反面、始めるためのハードルが高くなってしまいます。

この参入障壁のバランスについて頭を悩ませている経営者は、おそらく日本にたくさんいるでしょう。

 

そこで今回は参入障壁について、以下のような内容で説明をしていきます。

 

  • 参入障壁の意味
  • 参入障壁の具体例
  • 参入障壁の高い業界、低い業界
  • 参入障壁の作り方

 

新たな事業を考えている場合は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。

 

 

参入障壁とは?

ビジネスにおける「参入障壁」とは、事業(業界)に参入しやすいかどうかを表す言葉です。

たとえば費用をかけずにすぐ始められるような事業は参入障壁が低いと言えますし、費用がかかるうえに難解な資格が必要になるような事業は参入障壁が高いと言えます。

 

そしてもし同じ結果を出せるのなら、参入障壁はできるだけ高い方が良いです。

なぜなら参入障壁が低すぎる場合、それだけ競合が増えやすいということを意味しているからです。

たとえば誰でも簡単に始めることができた「せどり」、「アフィリエイト」といったビジネスモデルは、すぐに個人が参入してレッドオーシャンになりました。

このように競合が多くなると価格競争が激化し、十分な利益を出すことが難しくなってしまうのです。

 

しかし参入障壁が高いということは、それだけ自社でも参入が難しいということを意味しています。

それこそ多額の資産や長い年月が必要になったり、特殊な技術が必要になったりと、中小企業ではなかなか参入が難しいという業界も多いのです。

 

そのため参入障壁を考えるさいは、自社の強みを理解したうえで、自社はできるが、他社にはできない(もしくはやりたがらない)事業という観点を持って考える必要があります。

 

 

参入障壁のよくある具体例5つ

ここからは、参入障壁を作り出す要因の具体例を紹介していきます。

参入障壁が高いと言われるビジネスによくある特徴が以下の5つです。

 

  1. 専門的な技術が必要である
  2. ブランド力の影響が大きい
  3. 規模の経済(スケールメリット)が働く
  4. 必要な初期投資が大きい
  5. 法律による制約が厳しい

 

これらの条件に当てはまると、参入障壁は高くなりがちです。

それではそれぞれ1つずつ、具体例を交えて説明していきます。

 

指を立てるサラリーマン

 

 

参入障壁の具体例1.
専門的な技術が必要である

マネをするのが難しい専門的な技術を必要とする事業は、参入障壁が高いと言えます。

たとえば以下のようなケースですね。

 

  • 他社がマネできない特殊な製品を取り扱う製造業
  • 高い個人スキルが必要なコンサル業
  • 専門的な資格が必要な士業

 

こういった事業については他社が簡単にマネすることができないため、参入障壁は高くなるのです。

 

 

参入障壁の具体例2.
ブランド力の影響が大きい

ブランド力の影響が大きい業界については参入障壁が高いと言えます。

なぜなら商品の質や安さで勝っていても、ブランドイメージで競合に負けてしまうからです。

そのためこういった業界に参入する場合は、ブランド力を上げる必要性が出てきてしまうわけですね。

たとえばブランド力が強い企業としては以下のようなものがあります。

 

  • マクドナルド
  • スターバックスコーヒー
  • コカ・コーラ

 

どれも有名な大企業なので、このような企業と同じターゲットを狙うというのは、たとえ大企業であっても難しいと分かっていただけると思います。

ただもちろん、これは大企業に限った話ではありません。

たとえば「このあたりで〇〇と言えば〇〇」というようなイメージが定着している地域で同じ事業を始めると、相手が中小企業であったとしても参入障壁は高くなってしまうのです。

 

 

参入障壁の具体例3.
規模の経済(スケールメリット)が働く

規模の経済(スケールメリット)が働く事業についても、参入障壁は高いと言えます。

規模の経済とは、生産量や生産規模を高めることで反比例的に一単位当たりのコストが低減されていくことです。

たとえば以下のような場合が該当します。

 

  • 生産工場が必要な場合(工場を建てるコストは変動しないため、生産すればするほど単位当たりのコストは下がる)
  • 材料を大量仕入れすればするほどコストが下がる場合

 

わかりやすいのがマクドナルドの例ですね。

マクドナルドは2800店舗以上を全国展開し、大量の材料を仕入れているため、その分商品1点あたりの仕入れコストが下がり、低価格での商品提供を実現しています。

 

このように規模の経済が働く事業ではどうしても大量生産が前提になってしまうため、資金力がない中小企業にとっては参入障壁が非常に高くなってしまうのです。

 

※ちなみに、生産量を一単位だけ増加させたときにかかる費用のことを限界費用といいます。

限界費用についても理解しておくとより規模の経済が理解できるようになるので、よろしければ以下の記事も併せて参考にしてみてください。

⇒限界費用と限界収入をわかりやすく解説!利潤を最大化する方法とは?

 

 

参入障壁の具体例4.
必要な初期投資が大きい

初期投資の大きさは参入障壁の高さに直結します。

単純に事業を始めるために必要な経費が大きければ大きいほど始めるのが難しいということもありますし、初期投資が大きいと回収に時間がかかってしまうという要因もあります。

あとは資金だけでなく、時間の初期投資が大きい(収益がかかるまでにかなりの時間を要する)という場合も同様に、参入障壁は高いと言えますね。

 

たとえば、以下のような比較をするとわかりやすいです。

 

  • Amazonや楽天を利用したネットショップより実店舗を構えるショップの方が参入障壁が高い
  • 持っている土地にコインパーキングを作るよりマンションを建てて運用する方が参入障壁が高い
  • デジタルデータの販売をするよりも在庫を持って物品の販売をする方が参入障壁は高い

 

このように初期投資の大きさが、参入障壁を高くする大きな要因になっているのです。

 

 

参入障壁の具体例5.
法律による制約が厳しい

法律による制約が厳しい分野についても、参入障壁は高いと言えます。

なぜなら専門的な知識が必要になるうえに、ビジネス自体にも多くの制限がかかってきてしまうからです。

 

具体例としてよく挙げられるのが、医療にかかわる分野(薬機法による制限がかかる分野)ですね。

参入障壁が低く、副業としても人気なアフィリエイトや小規模物販であっても、薬機法がかかわってくると途端に参入障壁は高くなってしまいます。

 

このように法的な制限が多い分野については、新規参入がやりにくいと言えるでしょう。

 

 

参入障壁が高い業界5つ

参入障壁の高さは、業界によっても大きく変わってくるものです。

たとえば以下のような業界は、参入障壁が高いと言われています。

 

  1. インフラ業界
  2. 建設業界(公共事業)
  3. 製造業界
  4. 医療業界
  5. 士業

 

これらの業界にかかわるビジネスは、どのような形で参入するにしても参入障壁が高くなりやすい傾向にあるということですね。

それでは1つずつ紹介していきましょう。

 

参入障壁高い

 

 

参入障壁が高い業界1.
インフラ業界

電気、水、ガス、鉄道、道路といったインフラ業界は、当然のことながら参入障壁が高いです。

ただ昨今は自由化の流れにより、小売事業としてであればベンチャー企業の参入などを始め、参入障壁は低くなってきました。

そういう意味では今後、インフラ業界の参入障壁はさらに低くなるかもしれません。

 

 

参入障壁が高い業界2.
建設業界

実は建設業界についても、参入障壁は高いと言われています。

なぜなら国や地方自治体から仕事を請けるための競争入札には参加資格が必要だからです。

そしてこの競争入札への参加条件の1つに、今までの施工実績が含まれています。

そのため施工実績がない業者が新規参入するのは、かなり厳しい業界であると言われているのです。

 

 

参入障壁が高い業界3.
製造業界

製造業界についても、製造を行うための施設が必要となってくるため参入障壁は高いです。

工場を建てる場合や施工器具を揃える場合ももちろんですが、材料を仕入れるときにもそれなりの資金が必要となってしまいます。

さらに言えば製造業界は前述した規模の経済が働く業界であるため、どうしても大手の価格競争に巻き込まれやすい、というのも参入障壁の高さの要因ですね。

 

 

参入障壁が高い業界4.
医療業界

取得難易度の高い国家資格、高い専門知識などが必要なことから、医療業界も参入障壁が高い業界として有名です。

人の命にかかわる分野なので、当然といえば当然ですね。

医療業界についてはその業界自体だけでなく、薬機法に触れる分野全般で参入障壁が上がりがちです。

 

 

参入障壁が高い業界5.
士業

弁護士や税理士といった士業に関しても参入障壁は高いです。

高難易度の資格が必要になるというのが主な理由ですね。

ただ独立した場合には大手事務所が競合となってしまうため、参入障壁が高いわりに営業で悩む士業は多いです。

 

 

参入障壁が低い業界5つ

次に参入障壁が低い業界を5つ紹介していきます。

 

  1. IT業界
  2. 物販業界
  3. アパレル業界
  4. Web業界
  5. ハウスクリーニング業界

 

これらのビジネスは参入障壁が低く、その分競合が多くなりがちな傾向にあります。

それでは1つずつ解説していきましょう。

 

参入障壁低い

 

 

参入障壁が低い業界1.
IT業界

IT業界は参入障壁が低い業界として有名です。

エンジニア職の場合は初期投資や仕入れなどの経費がほとんどかかりませんし、リモートワークもやりやすいので場所も選びません。

スキルについては確かに必要ですが、最近は安価で学べる環境が揃っており、さらにプログラミング言語も昔に比べて簡単になりました。

そして何よりIT業界は現在売り手市場であるため、需要が高いというのも参入障壁が下がる大きな要因ですね。

 

 

参入障壁が低い業界2.
物販業界

近年のオンラインショップ普及により、物販は非常に参入障壁が下がりました。

仕入を行って商品を販売する小売にせよ、自社で製品を作って販売するにせよ、実店舗を構えずに始められるようになったのは大きな追い風であると言えます。

とくにAmazonや楽天といったECサイトを利用すれば、個人が今すぐに始めることさえ可能です。

また、中国輸入などのノウハウについても数多く出回っているため、物販は比較的に始めやすいビジネスであると言えるでしょう。

 

 

参入障壁が低い業界3.
アパレル業界

アパレル業界についても参入障壁はかなり低いと言われています。

アパレル関連の製造インフラはかなり整っている状況なので、ある程度の資金さえ投入すれば簡単に自社製品を作ることが可能なのです。

この参入障壁の低さから、学生上がりの若者がアパレル起業をする事例も多くありますね。

ただセンスやブランド力に左右される業界であり、参入障壁の低さから競合数もかなり多いため、始めれば誰でも成功できるという業界ではありません。

 

 

参入障壁が低い業界4.
Web業界

Web業界についても参入障壁は低いと言えます。

たとえばSEO事業やWeb広告の運用などですね。

やり方によっては初期投資をほとんどかけずに参入することができますし、技術の進歩により個人でも簡単に参入することができます。

ただし、Web業界は参入しやすい反面、生き残りにくい業界であるとも言われています。

簡単に参入できるがゆえに競合が多く、環境の変化も早いというのが要因です。

そのため、差別化や柔軟な変化ができないとWeb業界で生き残るのは難しい、ということが言えますね。

 

 

参入障壁が低い業界5.
ハウスクリーニング業界

ハウスクリーニング業界も参入障壁が低いです。

その参入障壁の低さから、不景気になると新規参入が増えるとさえ言われています。

ただ参入障壁の低さからもわかるとおり、ハウスクリーニング業界はいわゆる「儲けにくい業界」です。

ハウスクリーニングだけで独立して十分な利益をあげようと思えば、よほどの工夫や努力が必要となります。

 

 

中小企業でもできる参入障壁の作り方を解説

基本的に中小企業が参入障壁の高い業界に入り込むことは難しいですが、実は参入障壁はあるていどみずからの手で作り出すことができます。

そのためのキーワードは以下の2つです。

 

  1. 差別化
  2. ニッチなニーズ

 

まず最初に、競合他社との差別化を考えてみてください。

とくに競合他社がマネできないような知識や技術があるのなら、その点はしっかりとアピールしていくべきです。

たとえば競合他社が持っていないような資格や認定を持っているならそれをアピールするべきですし、競合他社よりも優れた技術があるならその価値をお客さんにわかりやすく説明するべきである、ということですね。

 

そして差別化したうえで、できるだけニッチなニーズを攻めることを意識してみてください

たとえば居酒屋を経営してる場合、あえて焼酎のみに絞ってその分野を極めてみたり、もしくは若い女性をターゲットにしていた場合、そのターゲットをさらに絞り込んで30代独身OLのみにリーチしたりする、といったことですね。

そしてその中でも、できるだけ競合がいないニーズを攻めるのが良いです。

 

たとえば地方で営業をしているとある美容室では、シャンプーソムリエという資格を取り、シャンプーに特化した知識を持っているということを大々的にアピールしていました。

その地域は地方であったため、そのような資格を持っている美容室もなければ、何かに特化してアピールしているという美容室もなかったのです。

結果、シャンプーソムリエをアピールしていた美容室は、その地域でシャンプーに詳しい美容室と言えばここ、といった地位(ブランド)を確立することに成功しました。

 

このように自社の強みを把握したうえで差別化し、ニッチなニーズを攻めるようにすれば、そのニッチなニーズの参入障壁を高くすることができます。

それこそその分野だけにフォーカスして見れば、大手企業にだって勝てるようになるのです。

 

【まとめ】参入障壁は自社の工夫で高めることもできる

今回は参入障壁について解説をしてきました。

参入障壁が高ければ参入しにくい分競合が少なく、参入障壁が低ければその分競合が多いレッドオーシャンになりがちであるということでしたね。

そのため中小企業の場合、よほどの強みがないともともと参入障壁が高い業界に参入するというのは至難の業であると言えるでしょう。

 

とはいえ、参入書壁が低い業界だと競合も増えてしまい、十分な利益をあげにくくなってしまいます。

そこで考えるべきなのが、自社がやっている事業の参入障壁は工夫によって高める、ということです。

そのためのキーワードが、差別化ニッチなニーズであるということでしたね。

自社の強みを活かし、差別化をしたうえでニッチなニーズを狙い撃ちすれば、その分野の参入障壁を上げることができるのです。

 

実際に、自社を競合と差別化して顧客を絞ることでサービスの単価を20倍にまで上げることに成功した治療院の事例もあります。

この治療院は競合他社より優れたサービスであることをしっかりとお客さんに伝え、その価値を本当に感じてくれるお客さんに絞ったうえでニーズに応えたのです。

その結果、治療院は業績を大幅に好転させることに成功しました。

参入障壁を上げる努力をすれば、自社の利益を安定化させることができます。

ぜひ1度、自社の事業についても参入障壁を上げることができないか、考えてみてください。

 

 

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