今回はマーケティング用語の「AISAS」について説明をしていきます。
AISASとは、インターネットが普及した時代の消費者行動の流れを表すフレームワークです。
AISASの法則、またはAISASIモデルとも呼ばれ、簡単に言うと、インターネット時代において消費者がどのような流れで行動して購入に至るのか、ということを表しています。
AISASIは、主にネット上でマーケティングを行うさいに必要不可欠な知識です。
もしマーケティングを行うときに消費者の行動を理解していなければ、精度の高い仮説を立てることはできません。
逆に、消費者の行動を理解し、その先回りができるような戦略を立てられるのなら、あなたのビジネスは高確率で成功するはずです。
そこで今回は、実務でも活かせるAISASについて、詳しい説明と成功事例の紹介をしていきます。
あなたも消費者行動を理解し、自分のビジネスに役立ててください。
マーケティングにおけるAISAS(アイサス)モデルとは?
AISASIモデルとは、インターネット上における消費者の行動を5つのフレームに分けて表したものです。
消費者はネット上で商品を購入するときに、以下の5つの行動をとると言われています。
- Attention(認知)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Action(購買)
- Share(情報共有)
この5つの行動の頭文字を取ったのがAISAS(アイサス)です。
では、どのようにこの5つの行動を自分のビジネスに活かすのかというと、要は消費者の行動に合わせてプロモーションを展開すれば良いということになります。
認知してもらうために何をすれば良いのか、その次に興味を持ってもらうために何をすれば良いのか、その次にユーザーはどの媒体を使って商品の情報を検索するのか? といったように順序立てて考え、対策をしていくわけです。
そうすることで、より効果的に商品をユーザーに届けることができます。
それでは5つの行動パターンについて、1つずつ詳細を説明していきましょう。
Attention(認知)
AISASの1番目である「Attention(認知)」は、自社や商品の存在をユーザーが知ることを表しています。
どんなに良い商品を販売していても、その存在を知られなければ売れることはありません。
そのため、消費者行動の1番最初には、この「商品を知る」という段階があるはずなのです。
では、ここで何を考えるべきなのかというと、「どうすればターゲットとしているユーザーに認知してもらえるのか」ということです。
AISASはネット上での消費者行動を表す言葉なので、ネット上で考えてみましょう。
想像していただければ分かるかと思いますが、一口に「ネットで知った」と言っても、その経路はさまざまです。
たとえば、
- 検索エンジンのトップに広告が掲載されていた
- 掲示板サイトを覗いていたらおすすめしている人がいた
- SNSで知り合いがシェアしていた
- SNSで広告が出ていた
- スマホアプリを起動したときに広告で表示された
などなど、例を挙げればキリがありません。
この中で我々が考えるべきことは、どこにターゲットとしているユーザーがいるのかということです。
たとえば、SNSの中でもインスタグラムは、10代、20代の女性が多いという特徴があります。
つまり、10代、20代の女性向けの商品やサービスを提供している場合、インスタグラム上で情報を公開すれば、多くのターゲットに認知してもらうことができるというわけです。
このように、ターゲットがどこでどのように「認知」するのかを考えるのが、まずは重要となってきます。
Interest(興味)
消費者が認知の次に取る行動は、「興味を持つこと」です。
たとえネット広告などであなたの商品を見かけたとしても、興味がなければクリックはおろか、記憶してもらうことさえできません。
つまりここで考えるべきことは、「どうすればターゲットとしているユーザーが興味を抱いてくれるのか」ということです。
ターゲットに興味を持ってもらうための施策としては、以下のようなものが挙げられます。
- ターゲットの悩みを解決するようなコピーを採用する
- ターゲットの欲求を刺激するようなコピーを採用する
- ターゲットの目を引くような画像を採用する
- 多くの人が知らない情報を公開する
- 続きが気になるようなリード文を使う
- 共感できるストーリーを伝える
これらのような施策をすれば、ユーザーは興味を持ち、あなたの商品のことをもっと知りたいと思って色々と調べてくれるはずです。
当たり前な話ですが、ユーザーがまったく興味のないものを買うことはありません。
だからこそ、どうすればターゲットが興味を持ってくれるのか、というのは重要視すべき部分です。
Search(検索)
「Search(検索)」は、「興味を持ったターゲットがどうやって情報を調べるのか」ということを指しています。
もしくは、「興味を持ったユーザーが何を知りたいのか」という部分も重要です。
これらを先回りし、伝えたい情報を伝えることができれば、商品を購入してもらえる確率はグッと上がります。
たとえば、「安いけど品質が良さそうな化粧品」を見つけた若い女性の場合、興味を持ったあとに、どうやって、どのようなことを調べるでしょうか?
1つ予想ができるのは、SNSを使って実際に使った人の口コミを探すのではないか、ということです。
というのもこの場合、女性が知りたいのは、「実際に使ってみてどうだったのか?」、「肌荒れなどの健康被害はないのか?」、「そもそも詐欺ではないのか?」ということになります。
そして、若い女性は検索エンジンよりもSNSを使って情報を検索する傾向が強い、という特徴があるのです。
ちなみにこれが男性の場合、もう少し踏み込んで、「どの会社が作っているのか」、「どういった成分が入っているのか」というところまで調べる人が増えると思われます。
また、口コミより権威性のある情報(たとえば病院や製薬会社のHPなど)を好むのではないでしょうか。
このように、ターゲットがどうやって何を調べるのか、ということを知ることができれば、先回りして回答を用意することができます。
たとえば女性向けの化粧品の場合は、SNSでアカウントを作って良い口コミを集めたり、どうして安くできているのかをしっかり説明して安心させたり、といった感じですね。
ターゲットが知りたい情報を先回りして用意することができれば、購入しようか迷っている人に対して背中を押すことができるはずです。
Action(購買)
AISASの4番目は、購買行動です。
要は、実際に商品を買ってくれる段階ですね。
ここで考えるべきことは、「ターゲットは普段どうやってものを購入しているのか」ということです。
ターゲットが普段から使っている購入方法を用意しておいてあげれば、購入するまでのハードルを下げることができます。
たとえば若者向けの商品なら、クレジット決済、通販、コンビニ受け取り、などがあると、非常に購入しやすいはずです。
逆に高齢者向けの場合、実際に訪問して説明してあげることが喜ばれるのではないでしょうか。
このように、ターゲットが手を出しやすい購入手段を用意しておいてあげる、という視点は非常に重要です。
この機会に、自社の商品やサービスについてもぜひ見直してみてください。
Share(情報共有)
インターネット上における消費者行動は、Action(購買)で終わりではありません。
買った商品を「Share(情報共有)」するところまで含めて、1つの行動パターンであると言えるのです。
インターネット上におけるシェアというと、以下のようなものがあります。
- SNSでのシェア
- 個人ブログでのシェア
- 口コミサイトへの書き込み
当然ですが、ポジティブなシェアが増えてくれれば増えてくれるほど、商品の評判も良くなり、売上も上がっていきます。
では、我々が何をすべきなのかというと、「ポジティブなシェアをしやすい場を作ってあげる」ということです。
たとえば、SNSでキャンペーンを行い、シェアしてくれた人にプレゼントを渡すというのも1つの手ですし、口コミサイトに登録しておいて、口コミを書き込む場所を用意してあげるというのも1つの手です。
あとは、「シェアしたくなるような商品づくり」を行うのも効果があります。
とくに女性向けにビジネスをしている場合、写真映えする商品を作れば、インスタグラムなどで共有してもらえる確率はグッと上がるはずです。
インターネットが普及している現代では、ユーザー同士のシェアが大きな影響力を持ちます。
そのため、ビジネスは商品を購入してもらって終わりではない、ということは常に意識しておくべきでしょう。
AISASモデルとAIDMAモデルの比較
ここまで、AISASモデルについて説明をしてきましたが、実はこのAISASモデルは、もともとあったAIDMAモデルを基に提唱されたものです。
そこでここからは、AISASモデルとその基となったAIDMAモデルの違いについて説明していきます。
AISASモデルとAIDMAモデルの大きな違いは、想定されている状況です。
ここまで説明してきたとおり、AISASモデルはインターネットが普及した時代の消費者行動パターンを表しています。
それに対し元祖とも呼べるAIDMAモデルは、1920年というインターネットが普及していない時代に提唱された行動パターンなのです。
ちなみにAISASモデルとAIDMAモデルを並べると以下のようになります。
Attention(認知) | Attention(認知) |
Interest(興味) | Interest(興味) |
Search(検索) | Desire(欲求) ……興味を持ったものに対して、実際に欲しいという欲求を抱いた段階 |
Action(購買) | Memory(記憶) ……欲しいという欲求を記憶、持続させている段階 |
Share(情報共有) | Action(行動) ……実際に購買行動に移る段階 |
この表を見ていただければ分かるとおり、認知から興味を持つまでの流れは、今も昔も変わっていません。
しかし、そのあとの行動が、インターネットの普及により変化したというわけですね。
ちなみに、AIDMAモデルについては、別記事で詳しくまとめているので、そちらの方も併せて確認してみてください。
⇒今でも使えるAIDMAモデルとは?正しい使い方と成功事例を解説
AISASモデルを自社のビジネスに活用する方法
ここからは、AISASモデルの各段階において、実際にビジネスで活用する方法をまとめていきます。
AISASモデルを活用しようとするさいにもっとも重要なのはターゲティングです。
ターゲットを明確にし、またそのターゲットの分析をしっかりと行うことで、AISASモデルの各段階における具体的な行動が見えてきます。
たとえばこの記事内でも紹介していたように、若い女性なら「Attention(認知)」や「Search(検索)」の段階ではSNSを使う可能性が高い、といった感じですね。
このターゲティングがしっかりとできていれば、以下の表を参考にすることでやるべき施策が見えてくるはずです。
〇AISASモデルにおける各段階で取るべき施策の例
Attention(認知) |
|
Interest(興味) |
|
Search(検索) |
|
Action(購買) |
|
Share(情報共有) |
|
これらの施策の中から自社のターゲットに合わせて効果的なものを選び取り、実践していくわけですね。
ちなみにターゲティングについては別記事で詳しく説明していますので、そちらの方も併せて確認しておいてください。
⇒ターゲティングの見直しで利益が3倍になった成功事例!正しいターゲティング戦略の方法とは?
AISASモデルの成功事例
ここからは、AISASモデルの成功事例を2件紹介していきます。
- ライザップの成功事例
- スターバックスコーヒーの成功事例
この2件は、AISASモデルに対してまったく違う施策を行い、成功している事例です。
1つずつ詳細を説明していきますので、違いを確認しつつ、参考にしてみてください。
AISASモデルの成功事例1.
ライザップ(RIZAP)
ライザップは、短期間でのダイエットを目的としたパーソナルトレーニングジムです。
サービスはそれなりに高額なのですが、きちんとターゲティングを行い、AISASモデルに沿ったプロモーションを行うことで、大きな成功を収めました。
ライザップが行ったAISASモデルの段階毎の施策は以下のとおりです。
〇Attention(認知)
ライザップは、テレビCMによってその存在の認知度を上げました。
広告費をしっかりとかけ、認知を広げていったわけですね。
CMの出来も良く、頭に残りやすいBGM、分かりやすいビフォーアフターなどが特徴的です。
〇Interest(興味)
ライザップは、「結果にコミットする」という強いコピーでターゲットの興味を惹きました。
ほかのジムに比べてより結果を出すことに力を入れている、というメッセージが分かりやすく、本気で痩せたいと思っている人、つまり本気で悩んでいる人に対して強くリーチすることができたのです。
〇Search(検索)
ライザップは、検索エンジンを使う人に向けて対策を行いました。
紹介報酬制度(アフィリエイト)を作ることで、肯定的なページがたくさん検索上位に出てくるよう仕向けたのです。
紹介報酬を得るには自分が作ったサイトから実際に成約してもらう必要があるため、紹介報酬目当ての人たちは、必然的にポジティブな記事を増やしてくれます。
そのためライザップは、検索をかけたターゲットに、ポジティブな情報を届けることに成功したのです。
〇Action(購買)
ライザップは、「30日間の全額返金保証制度」を導入することによって購買の後押しを行いました。
ライザップは2ヵ月で29万8千円という高額な料金設定になっているのですが、返金制度があることにより、安心してサービスを購入することができたわけですね。
〇Share(情報共有)
ライザップは、厳しい分、目に見えて効果が出るサービスにすることで、多くの人にシェアされました。
どういうことかというと、厳しさを乗り越えて実際に痩せたからこそ、そのことを共有したいと思う人が多くいたのです。
つまりライザップは、顧客に結果を出させることで自発的なシェアを促していたわけですね。
また、たとえ顧客本人にシェアする気がなかったとしても、結果が出れば見た目がみるみる変わっていくため周りの人間が気づきやすい、というのも大きかったと推測されます。
以上が、ライザップのAISASモデルです。
これを見ていただければ分かるとおり、「大金を使ってでも、どうしても痩せたい」と考えている層にターゲットを絞り、効果的にリーチしています。
そうすることで話題が話題を呼び、痩せられるパーソナルトレーニングジムとしてのブランドを確立させたわけですね。
AISASモデルの成功事例2.
スターバックスコーヒー
スターバックスは、知らない人の方が少ないであろう、有名なカフェです。
スターバックスはライザップとは対照的に、自社ブランディングを利用して、広告費を使わない形でAISASモデルにアプローチしました。
〇Attention(認知)
スターバックスは、おしゃれな雰囲気を演出することで、シェアされやすいブランディングを行いました。
写真映えする商品、スタイリッシュな店員、コーヒーカップに書かれるメッセージ、といった演出で、顧客が共有したくなるように仕向けたのです。
その結果、AISASモデルの最後である「Share(情報共有)」を意図的に起こし、広告費をかけずともユーザー同士で勝手に認知し合ってくれる状況を作り出すことに成功しました。
〇Interest(興味)
スターバックスは、次々と季節限定の新商品を発売することで、ユーザーの興味を惹いています。
スターバックスはリピーターも多いため、新作を出すだけでも十分に興味を惹くことができるのです。
それこそ、「新作が出たら最低1度は飲んでおきたい」と考えている人も大勢います。
〇Search(検索)
スターバックスがターゲットとしている若年層は、SNSで検索をする人が多いです。
そのため、おしゃれなブランディングによってSNSでシェアされやすい状況と非常にマッチしています。
〇Action(購買)
スターバックスはリピーターを多く抱えているため、新作を出すだけでも購買行動を促すことが可能です。
また、ドライブスルーでパッと買いやすい反面、駅前店などではカフェで仕事がしたい人に対して、店内に電源やWi-Fiを完備しています。
このように、さまざまなユーザーが利用しやすいように工夫をしているのです。
〇Share(情報共有)
スターバックスはSNSで共有してくれやすい若年層の女性に対し、非日常的な雰囲気を演出することで、自社をおしゃれなカフェとしてブランディングしています。
スターバックスがもっとも強みとしているのが、この「ブランディング」です。
ブランディングに成功した結果、ユーザーの中ではスターバックスで新作を買っていることが一種のステータスとなり、共有を促すことができているのです。
また、商品自体も非常に見栄えが良く、共有したくなるように工夫されています。
以上が、スターバックスコーヒーの成功事例です。
スターバックスコーヒーは、AISASの中でもとくに「Share(情報共有)」に力を入れることにより、広告費をかけずとも多くの人に認知してもらえる状況を作り出しています。
とくに広告費をかけにくい中小企業や個人事業主にとっては、参考になるやり方ではないでしょうか。
【まとめ】インターネットではAISASモデルを活用しよう
今回はインターネット普及時代の消費者行動であるAISASについて説明をしてきました。
AISASモデルは、とくにネット上における消費者行動の基本であるため、各段階に対して効果的な施策を行うことができれば、その分、売上を伸ばすことができます。
要は、消費者が取るであろう行動を先回りして対策をするわけですね。
ビジネスをやるうえでは必須の考え方となりますので、ぜひ今回の記事で説明したことを覚えておいてください。
また、AISASモデルをうまく活用すれば、商品の価格を上げることも可能です。
商品の価格は、顧客が感じている価値に基づいて決定されます。
つまり、AISASモデルを先回りし、商品の価値をしっかりと伝えることができれば、顧客は購買段階でより価値を感じ、多くのお金を出してくれるというわけです。
AISASモデルもそうですが、顧客が何を考え、どのように動くのかは、マーケティングを行ううえでとても重要なことです。
ぜひ今回の記事を参考にし、顧客の行動を理解したうえで先回りできるようになっておいてください。
そうすれば、あなたのビジネスはさらに発展していくはずです。