今回は「見える化」について説明をしていきます。
仕事をしているなら1度は耳にしたことがあるであろう見える化ですが、実はその意味を正しく理解している人はあまり多くなかったりします。
たとえば「見える化と可視化の具体的な違いをご存じでしょうか?」と聞いたとき、この質問に答えられる人は案外少ないです。
しかし、見える化はその意味をしっかり理解したうえで目的意識を持って行うからこそ効果が出ます。
よくわからないまま周りがやっているからと見える化に取り組んでも、何も改善しないのです。
そこで今回は見える化について、以下のことを説明していきます。
- 見える化の正しい意味
- 見える化と可視化の違い
- 見える化を行うメリット
- 見える化の導入事例
- 見える化を実践する方法
- 見える化に使えるツール
この機会にぜひ見える化の正しい意味について確認し、あなたのビジネスでも目的を持って実践してみてください。
見える化の正しい意味
「見える化」は「目で見る管理」と言い換えられることもあり、目には見えにくいものを具体的に見えるような形に変えることを意味しています。
たとえば帳簿を付けずに在庫の管理をしていた場合、在庫が十分に足りているのか、それとも足りていなくて発注しなければいけないタイミングなのか、という判断をすることができません。
しかし在庫数を帳簿で小まめに管理して目で見えるようにしておけば、在庫が足りているのかいないのかを一目で判断することができます。
ちなみに見える化というのは、大手自動車メーカーであるトヨタの生産現場から生まれた言葉です。
トヨタは、「問題を見えるようにすることで素早い問題解決をする」という目的で見える化を実践していました。
そして見える化は、「確認したときに見やすい状態」をつくるのではなく、「否応なしに目に入る仕組み」をつくることが重要です。
たとえば先ほど挙げた在庫管理の例だと、ただ帳簿を作るだけでは見やすい状態にしただけに過ぎません。
しかし、「在庫を持ち出すさいには必ず帳簿に持ち出す個数と残数を記し、残数が一定数以下になったなら必ず仕入れ担当に連絡をしなければいけない」というような決まりを作れば、在庫不足という問題が起こることを未然に防ぐことができます。
これが見える化の正しい意味です。
見える化はただ見やすい状態にするだけでは意味がない、というところは押さえておいてください。
見える化と可視化は違う意味?
見える化の意味について説明するさい、よく疑問として挙がってくるのが可視化という類語との違いです。
結論から言うと、広義的には同じ意味として使われることもあるものの、根本的には違う意味であると言えます。
見える化も可視化も、広義的に言うと「ある物事を一目で見れるような形にする」という意味です。
しかしビジネスにおいては、以下のような違いがあると言われています。
- 見える化 → 意識しなくても目に入ってくるような仕組みを作ること
- 可視化 → 見えにくいものを見やすい形に変えること
可視化がデータを見やすい形に変えることで新たな発見を得やすくする行為なのに対し、見える化は見落としをなくして問題を未然に防ぐ、というような意味合いが強いのです。
見える化も可視化もビジネスをするうえでは効果的な手法だと言えます。
しかし違いを理解したうえでしっかりと目的意識を持って実践しなければ、高い効果は得られないのだと認識しておきましょう。
見える化を行うメリット
見える化を実践しようとすると手間がかかるというデメリットが発生しますが、それ以上にさまざまなメリットを得ることができます。
中でも代表的なメリットは以下のとおりです。
- 問題を見える化することで迅速な対応ができるようになる
- 会社の方針を見える化することで社員との認識を合わせる
- 無駄なものを見える化することで本当に必要なものを見極めることができる
まずもっとも基本的なメリットとして、トヨタも掲げていた問題解決というものがあります。
問題というものは気づかなければ気づかないほどどんどんと悪化し、取り返しのつかない事態を呼び寄せるものです。
しかし、問題がすぐに見えるような仕組みを作っておいて迅速な対応をすれば、問題の悪化を防ぐことができます。
そしてもう1つのメリットが、会社の方針の見える化をすることで社員の認識を合わせることができるという点です。
たとえば階段や入り口に企業理念を掲げている企業は多くあります。
あれは意識しなくても目に入る場所に貼り付けておくことで、社員が常にその方針を忘れないようにしているのです。
もしくは朝礼で企業理念を読み上げるのも同じような効果を狙っています。
常に社長の方針を見えるようにしておけば、社員がブレてしまう可能性を大きく下げることができるはずです。
さらに見える化にはもう1つ、無駄なものの見える化をすることで本当に必要なものを見極めることができるというメリットもあります。
たとえば複数の商品を売っていた場合、利益を数値化して常に確認しなければいけないような仕組みを作っておけば、効果性の低い無駄な商品を見抜くことが可能です。
もしくはある商品について常にお客さんの声を確認するような仕組みを作っておけば、その商品の中で求められている部分と求められていない無駄な部分を見極め、さらなる改善に役立てることができます。
そうして商品から無駄なものを省くことができれば、利益率を上げたり商品の質を上げたりすることができるというわけですね。
そしてこの無駄なものを見える化するという概念は、少し言い方が悪くなってしまいますがお客さんにも当てはめることができます。
というのもお客さんの中には、自社の商品の価値をしっかり見てくれる優良なお客さんと、相手をしても利益にならないタイプのお客さんが存在しているのです。
詳しくは「顧客選別は絶対に必要!会社にとって良い顧客に残ってもらう方法とは」という記事内で説明していますが、利益にならないお客さんに労力を割いてしまうと、自社のことを好きでいてくれるお客さんに割けるはずの労力を無駄にしてしまいます。
自社のことを評価してくれてるお客さんに対して全力で対応できないとなれば、企業としてそれこそが不誠実であると言えるでしょう。
私たちがやっているのはボランティアではなくビジネスです。
だから私たちは、自社のことをきちんと評価してくれるお客さんにこそ多くの時間を割ける体制をつくることが重要なのです。
見える化の導入事例
ここからは見える化の導入事例を2つ紹介していきます。
- 物流センターの在庫管理システム
- IT企業で行った仕事の見える化
それでは1つずつ説明していきましょう。
見える化の導入事例1.
物流センターの在庫管理システム
とある中小企業の物流センターでは、在庫管理システムを導入することで一定の手順を踏まないと出荷することができないような仕組みを作りました。
これによって作業員が在庫数を常に確認するようになり、誤出荷が減ったり、お客さんの要望に対して先手を打って在庫補充ができたりと、さまざまな面で業務改善を図ることができたのです。
見える化を導入する前は、在庫数の問題でお客さんの急な要望に応えられないことが大きな問題となっていました。
しかし、見える化によって在庫数や注文数のチェックを徹底した結果、お客さんの急な要望に応えられる環境を作ることに成功し、大幅な受注増に繋がったのす。
見える化の導入事例2.
IT企業で行った仕事の見える化
とあるIT企業では、各エンジニアが抱えている仕事の見える化を行い、無駄な仕事や負担の偏りをなくすことに成功しました。
具体的に何をしたのかというと、共有のエクセルファイルを作り、各エンジニアが現状抱えている仕事をすべてそこに書き込むような仕組みを作ったのです。
そしてそれをリーダーがチェックすることにより、無駄な仕事をしてないか、負担が1人に集中してしまっていないか、というチェックをするようにしました。
その結果、無駄な仕事を排除したうえで仕事量を均等に振り分けることができるようになったため、業務効率が大幅に改善したのです。
見える化の実践方法
実際に見える化を導入し、実践するためには、以下の手順を行ってください。
- 目的、目標を明確にする
- 目的、目標の実現に向けて必要なことや問題点を明確にする
- 対策の適切性を判断するために何を見なければいけないかを明確にする
- 見なければいけないものが無意識でも目に入るような仕組みをつくる
この手順を踏めば、正しい見える化が実践できるはずです。
それでは1つずつ説明していきましょう。
見える化の実践方法1.
目的、目標を明確にする
見える化を導入する場合、まずは目的や目標を明確にしなければいけません。
そうしないと、目的と手段がごちゃごちゃになってしまうからです。
よくあるパターンに、とりあえず見える化が大事だから始めてみるというものがあります。
しかしこの場合だと目的意識がないわけですから、問題が改善される可能性は極めて低くなってしまうのです。
見える化を導入するなら、「何を目指すのか?」という部分についてはしっかりと決めておくようにしましょう。
見える化の実践方法2.
目的、目標の実現に向けて必要なことや問題点を明確にする
目的や目標を明確にしたら、それを実現するのに何が問題となっているのかを探してみてください。
たとえば「誤出荷をなくす」という目標を立てて「確認作業の抜けが多い」というような問題が挙がってくる、といった感じですね。
要は、見える化で解決したい問題を設定するわけです。
問題点を見つけることができれば、その対策を考えやすくなります。
見える化の実践方法3.
対策の適切性を判断するために何を見なければいけないかを明確にする
問題点が明確になったら、その対策を行うさいに何が分かれば適切性の判断ができるのかを考えてください。
たとえば「誤出荷をなくす」という目標に対し、「確認作業の抜けが多い」という問題点を見つけたとします。
この場合は、「作業と作業手順の適切性」を見なければいけません。
どういうことかというと、社員がやっている確認作業に抜けは発生していないか、そもそもの作業手順に不備がないか、というところを見えるようにしなければいけないわけですね。
このように何を見れば問題を解決できるのかという部分を抜き出すことで、どのようにすれば見える化ができるようになるのかということがわかります。
見える化の実践方法4.
見なければいけないものが無意識でも目に入るような仕組みをつくる
何を見なければいけないかが特定できたら、実際に見える化の仕組みをつくっていきましょう。
たとえば誤出荷の対策として作業手順が適切かどうかを見る場合は、チェックシートを作るといった方法が効果的です。
チェックシートを作ることで、本来やらなければいけない確認作業に抜けがないかを確認することができます。
さらにそのチェックシートを2重チェックするような仕組みを作れば、「確認作業の抜け」という問題の見える化ができるわけです。
もしくは確認作業で抜けが発生していないのに誤出荷が減らなければ、そもそも手順を見直す必要があると判断することもできます。
このように目標から問題点を抜き出し、その問題の解決のために見なければいけないものを特定してから見える化の仕組みをつくることで、効果的な見える化が実践できるようになります。
このことから見える化は、最初に目的を決めてから実践するのが非常に重要なのだということを覚えておきましょう。
見える化に使えるツール
ここからは見える化を導入するさいに作成しておくと便利なツールを紹介していきます。
見たいものに合わせ、以下のようなツールを作成すると、見える化がより実践しやすくなるはずです。
- 業務フロー
- チェックリスト
- 日報
まず業務フローを作れば、社員がやっている仕事の手順を見える化することができます。
間違えたやり方をしていないか、無駄な作業が発生していないか、といった問題を見つけられるようになるのです。
次にチェックリストを作成すれば、社員が実際にやった作業を見える化することができます。
作業抜けがあった場合はそれを発見することができるようになるため、問題発見の決め手になることも多いです。
チェックリストはアナログ的なやり方に見えるかもしれませんが、まだまだ効果的なツールなのです。
そして社員に日報を作成させれば、各々の状況や抱えている業務量を見える化することができます。
仕事が1人に集中し過ぎていないか、社員のポテンシャルが落ちていないか、厄介なトラブルの対応に時間を取られていないか、といったことが見えるようになるのです。
このように見える化をする場合、ツールを作って仕組みの中に組み込むと非常にやりやすくなります。
自社の目標に対してどのようなツールがあれば見える化がしやすくなるか、ということをぜひ1度考えてみてください。
【まとめ】見える化はなんのために行うかを明確にすることが重要
今回は見える化についてお話をしてきました。
見える化とは、「確認が必要なことが否応なしに目に入る仕組み」をつくることでしたね。
そして見える化を実践するうえでもっとも重要なのが、「なんのために見える化を行うのかを明確にすること」です。
ただなんとなく見える化すれば良い、というのではなく、目的や目標を定めて実践するからこそ、見える化は大きな効果を発揮します。
とくに目的意識もなく見える化を導入しようとする会社は多いので、このことについてはしっかりと理解しておいてください。
また、見える化は社内のものだけに目を向けられがちですが、実はお客さんにも当てはめることができます。
お客さんの見える化をしておけば、優良顧客とそうでない顧客を区別できるようになるのです。
私たち中小企業が使える労力は限られています。
だからこそ私たちや商品が持つ価値をきちんと理解している優良顧客を見つけ出し、優遇しなければいけないのです。
そんなときお客さんの見える化ができていれば、さまざまな施策を打ちやすくなるというわけですね。
見える化は目的意識を持って丁寧にやることで効果が出てくる手法です。
見える化を導入する場合は、「周りの会社もやっているから」といった考え方ではなく、しっかりと目的意識を持って取り組んでみてください。
そうすることで、見える化の効果を実感できるようになるはずです。