今回は、会社の人件費を削減するメリットやデメリット、失敗しない方法について解説してきます。
人件費削減の目的は、経営者によって違います。
- 会社を黒字化したい
- 資金繰りを改善したい
- 他事業の投資に回したい……etc
これらの目的を達成するために、正社員やパート、派遣社員の給料を削減を考えているのだと思います。
確かに人件費削減は、資金繰りや決算内容を改善するための案としては一時的に効果はあります。
しかし、「人件費削減」の意味の捉え方や方法を間違えると、逆に会社の業績を落とすことになります。
1000社以上の中小企業をコンサルしてきた弊社代表の北岡は、「人件費削減」をただ単に社員の給料を下げることと考えてはいません。
それをやってしまうと、逆に会社を潰すことになるとわかっているからです。
この記事では、「人件費削減」の本当の意味や正しい方法について、具体的な例を元に解説していきます。
付け焼き刃の経営改善にしかならない「間違った人件費削減スキル」を捨て、「会社を長期的に繁栄させる人件費削減スキル」を学んでください。
人件費削減の「本当の意味」とは?
1000社以上の中小企業のコンサルしてきた弊社代表の北岡が考える「人件費削減の本当の意味」とは、「利益を増やして人件費『率』を下げていくこと」です。
「社員の給料を減らす」のではなく、「利益をあげる」のが正解です。
なぜなら、社員の給料を下げてしまうと、長期的に見て会社の業績を下げることになるからです。
こう言うと当然、「利益を増やすために人件費を下げるんじゃないか!」と思いますよね。
でもよく考えてみてください。
利益を増やす方法は「人件費削減」だけでしょうか?
利益を増やす方法として、「人件費」を削減するのが最も適切な方法でしょうか?
確かに、正社員やパート、派遣社員の給料を削減すれば、一時的に資金的に余裕ができて決算内容が良くなります。
しかし、給料を減らすと、社員に不満が出て思うように働いてくれなくなります。
こうなると、長期的に利益をあげるのは難しいですよね。
でも、利益をあげる方法として「サービスの単価をあげる」「作業を効率化する」など、「人件費削減以外の方法」で利益をあげられるなら、そっちの方がいいと思いませんか?
給料を下げずに利益を上げることができれば、逆に社員に還元できるので、さらによく働いてくれるようになり、さらに利益があがるという好循環が生まれます。
会社の経営状況を短期的に改善したいなら社員の給料を下げたらいいですが、会社を長期的に繁栄させたいなら「他の方法で利益をあげること」を考えるべきです。
実際に弊社北岡がコンサルした企業の中には、人件費削減ではなく「価格アップ」で利益をあげている事例がたくさんあります。
ある英会話学校の経営者さんは、サービスの平均単価2倍、利益3倍、しかも成約率も1.5倍になりました。
【人件費削減の4つのメリット】どのような利益や効果がある?
一般的に、人件費削減を行うメリットは以下の4つです。
- コスト削減の相乗効果が期待できる
- 他の目的に資金を回せる
- 決算内容が改善して銀行評価があがる
- 株価が上がる
人件費削減のメリット1.コスト削減の相乗効果が期待できる
人件費削減メリットの1つ目は「コスト削減の相乗効果が期待できること」です。
主に人員整理(リストラ、希望退職)による人件費削減の場合のメリットですが、社員が減ればそれに伴う他のコストも下がるので、経費削減にはダイレクトに効果があります。
例えば、社員を減らすと、以下のような経費も減らすことにつながります。
- 教育費用(研修、資格取得支援など)
- 日用品費
- 水道光熱費
- 事務所賃料(スペース縮小が可能なら)
- 交通費支給分
- ボーナス・有給分の給料……etc
社員1人減らすだけで、これだけの経費節約につながるのですから、経営改善にはダイレクトに効果が出ます。
ただ、のちの「人件費削減のデメリット」の章でも話しますが、残された社員のモチベーションは下がる可能性があるので、長期的な経営改善には向きません。
経営立て直しを迫られている危機的状況なら、人員削減による人件費削減は会社にとってメリットになります。
人件費削減のメリット2.他の目的に資金を回せる
人件費削減メリットの2つ目は「他の目的に資金を回せる」です。
人件費を削減して資金に余裕ができれば、その資金を他の事業や投資に回すことができます。
例えば、あなたが資金を使いたいと思っている以下のようなものにお金を使えます。
- 設備投資費
- 外注費
- 他事業展開
- 社員教育費……etc
設備投資や他の事業展開をすることで、会社の利益が上がることが見込まれるなら、社員への還元が期待できるので、人件費削減をしても納得してくれるでしょう。
社員の業務負担を減らすために外注費に回したり、社員教育で仕事効率をあげて利益を出すというのも真っ当な目的です。
しかし、社長や役員の報酬をアップさせたいがために人件費を削減するのは賛成できません。(そんな非人道的な社長はいないとは思いますが……)
人件費削減するなら、発生した余剰資金は社員も納得できる目的で使いたいです。
人件費削減のメリット3.決算内容が良くなって銀行評価が上がる
人件費削減メリットの3つ目は「決算内容向上による銀行評価アップ」です。
今会社が赤字で銀行評価が低い場合、人件費を削減して黒字化できれば銀行評価アップが期待できます。
銀行評価が上がれば、銀行からお金が借りやすくなるので、資金繰りの問題も解決します。
ただ、決算内容の問題や資金繰りが解決したところで、根本的な問題解決にはなりません。
決算内容や資金繰りの悪化は、人件費の問題ではなく事業の売上(もしくは利益)が出ていないことが問題だからです、
一時的に経営状況を改善するには人件費削減でも良いですが、根本的な解決をしたいなら売上(利益)をあげる他の方法を考えたいです。
人件費削減のメリット4.株価が上がる
人件費削減メリットの4つ目は「株価が上がる」です。
人件費削減によってコスト削減が図られ、業務効率が上がれば、投資家からは好意的に受けとめられるようになります。
つまり、投資家から株式を購入されやすくなるので、必然的に株価も上がるのです。
ですが、何度も言うように人件費削減による経営改善は一時的なものに過ぎません。
会社の経営状況が悪化していた「根本的な原因=事業が上手くいっていない(利益が上がっていない)」を改善しないことにはまた経営状況は悪化し、株価は落ちます。
株価を上げる目的で人件費削減をするくらいなら、売上を上げる真っ当な施策を考えた方がいいでしょう。
【人件費削減の3つのデメリット】やり方を間違えると失敗する
人件費削減のデメリットは大きく分けて3つ存在します。
- 社員のモチベーションが下がる
- 人手不足になる(社員が辞める)
- 経営悪化の悪循環に陥る
メリットに比べて数は少ないものの、経営に与える影響はデメリットの方が大きいです。
人件費削減のデメリット1.社員のモチベーションが下がる
人件費削減デメリットの1つ目は「社員のモチベーションが下がる」です。
「人件費削減=給与、ボーナスカット」を行えば、「社員が働く意味」を削ぐことになりますから、モチベーションが下がるのは当然の話です。
人が働く目的は様々ですが、ほとんどは「生きるためのお金を得るため」です。
そのお金を減らされてしまったら、そこで働く意味はないですよね。
もちろん、仕事そのものが楽しくて働いている社員もいると思います。
でも、厳しい話ですが「会社規模の拡大、会社を有名にすることが私の働く目的です!」という社員はほぼいないでしょう。
会社の方向性を決めているのは社長かもしれないですが、実際に動かしているのは社員です。
社員のモチベーションがさがれば、事業は回らなくなり、売上も利益も出なくなるでしょう。シンプルな話です。
人件費削減をすると、「利益を産んでくれる真の資産」である社員のモチベーションを下げ、長期的な業績アップは見込めなくなります。
人件費削減のデメリット2.会社の評判が下がる
人件費削減デメリットの2つ目は「会社の評判が下がる」です。
人件費削減(給与やボーナスカット、リストラなど)のような悪いニュースは、必ずといって良いほど外部に漏れるので会社の評判を落とすことになります。
大手企業ならテレビのニュースになりますし、中小企業でも給料を減らされた社員やリストラされた社員から口コミで広がります。
「社員を大切に扱わない会社」としての評判を受けることになるのは必然です。
会社の評判が悪くなると「取引先との関係=売上に影響」しますし、新しい社員を採用する際もなかなか集まらず苦労することになるでしょう。
なので、やはり長期的に見れば人件費削減のデメリットは大きいと言えます。
人件費削減のデメリット3.人手不足になる(社員が辞める)
人件費削減デメリットの3つ目は「人手不足になる(社員が辞める)」で、デメリットの中でもこれが一番怖いです。
人件費削減(給与やボーナスカット)をされた社員としては、給料の良い会社を探すのが自然なので、良いところが見つかれば必然的に会社を辞めていきます。
会社全体で給料カットをした場合は、社員全員が会社を辞める候補となるので、場合によっては急激に人手不足に陥る可能性が高くなります。
さらに、人手不足になれば、一人当たりの仕事量が増えるので、耐えかねた社員も辞めていくという悪循環が起こります。
人手がいなくなれば会社が回らなくなるので、会社の存続も危ぶまれますし、もちろん経営陣の人生にも影響は大きいでしょう。
会社を潰すことになれば元も子もありません。人件費削減をする際は慎重に行いたいです。
【人件費削減の5つの方法】その手法や手順は本当に正しい?
人件費削減の方法は主に以下の5つあります。
- リストラ(解雇)や希望退職
- 社員やバイトやパートの給料を減らす
- 長時間労働をなくして残業代をカットする
- 機械やロボット(AI)の設備投資して自動化を図る
- 仕事を外注(アウトソーシング)する
これらの人件費削減の手法や手順が正しいのかを順に解説していきます。
人件費削減の方法1.リストラ(解雇)や希望退職
人件費削減方法の1つ目は「リストラ(解雇)や希望退職」です。
単純に「社員」を減らせば、人件費だけでなくそのほかのコスト(販管費、教育費など)も同時に削減できます。
wikipediaによると、本来「リストラ」とは以下のような意味です。
リストラとは、英語の「Restructuringリストラクチャリング」の略語で、本来の意味は「再構築」である。
実際の「リストラ」は、現状の事業規模や従業員数を維持、もしくは増強した上での組織(企業)再構築ではなく、組織再構築のために不採算事業や部署の縮小(ダウンサイジング)を行い、またそれに伴う従業員解雇(特に整理解雇)が行われる事が多かった。
引用元:wikipedia「リストラ」
上記の通り、日本では現状を維持したまま会社を立て直すのではなく、規模を縮小することで立て直すという間違った意味に変わっているのです。
希望退職においても、社員を減らして会社を立て直す目的ですから同じですね。
確かにこれでも経営改善は可能ですが、何度も言うように「一時的なもの」に過ぎません。
本当に経営を立て直したいなら、人を減らすのではなく他の方法で「利益を上げる」ことを考える必要があります。
もし、現状で利益を上げる方法がわからない場合は、弊社北岡がコンサルをして、利益を拡大させた事例を参考にしてみてください。
人を減らすことなく、むしろ社員から感謝されながら利益を上げるヒントになります。
人件費削減の方法2.社員やバイト、パートの給料を減らす
人件費削減方法の2つ目は「社員やバイト、パートの給料を減らす」です。
社員こそ減らしませんが、正社員や契約社員、バイト、パートなどの「従業員の給料やボーナス」を減らすことでダイレクトに人件費を削減できます。
しかし、「人件費削減のデメリット1」でも解説したように、給料やボーナスを減らすと社員のモチベーションが下がります。
社員のモチベーションが下がると、売上(利益)が下がり業績が下がるので、早急な経営立て直しを迫られてさらにコスト(人件費)を削減するという悪循環に陥ります。
経営を改善したり事業を拡大していきたいなら、長期的に見ると「社員の給料を減らす」のはおすすめできません。
人件費削減の方法3.長時間労働をなくして残業代をカットする
人件費削減方法の3つ目は「長時間労働をなくして残業代をカットする」です。
働き方改革でも言われていますが、社員を定時に上がらせて残業代を出さないような仕組みを作れば、余分な資金を浮かせることができます。
念のため言っておきますが、残業代を出さない「サービス残業」は、労働基準法に違反しますので論外です。
しっかりと、残業代を出すか、長時間労働をなくして正しく残業代を浮かせる方法を取りましょう。
とはいえ、「長時間労働をなくす」のが難しいですよね。
社員の仕事量を減らして売上を維持、もしくはアップさせる方法があればそれに越したことはないです。
長時間労働を減らすには「利益率を上げる」か「作業効率を上げる」ことの2通りの方法が考えられますが、これらについて語ると長くなります。
実現するヒントを以下の記事でまとめていますので、参考にしてみてください。
人件費削減の方法4.機械やロボット(AI)に設備投資をして自動化を図る
人件費削減方法の4つ目は「機械やロボット(AI)に設備投資をして自動化を図る」です。
今まで社員がやっていた作業をロボットやAIにやらせることでコストを削減する方法です。
ロボットやAIを導入して一部の業務を自動化できれば、社員を利益に直結するコア業務に特化させたり、純粋に労働時間を減らして正当に給与を減らすことも可能です。
しかし、ロボットやAIを導入するのにも余剰資金が必要ですから、現時点で金策に追われているような会社には向かない方法かもしれません。
今は経営に余裕があって、長期的に人件費を削減していきたいと考えている場合は検討してもいいでしょう。
近年ではロボット・AI業界は急速に進歩しています。
工場を所有する「製造業」はダイレクトに恩恵を受けられるので、目を向けて見ることをおすすめします。
人件費削減の方法5.仕事を外注(アウトソーシング)する
人件費削減方法の5つ目は「外注(アウトソーシング)する」です。
今社員がやっている仕事を、もっと安い単価で「外注(アウトソーシング)」することができれば、コストを削減することができます。
一部の業務を外注化ができれば、今まで該当業務していた社員にはもっと利益に繋がる業務をしてもらうことができます。
コストを削減しながら利益も上がるので、一石二鳥です。
例えば「社員教育」であれば、一般常識やビジネスマナーについては自社の教育係より外部講師の方が専門性が高く、かつ費用も安かったりします。
それなら、外部講師を雇い、教育係だった社員には直接利益につながる業務をしてもらえば、コスト削減&利益アップを実現できます。
※社員教育についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
「社員教育の正しい方法とは?カリキュラムの例や進め方を徹底解説」
外注化はお金を出す行為なので躊躇しがちですが、ちゃんと検討すれば効率良く業績アップできます。
【まとめ】人件費削減を行うときは正しい方法で慎重に!
人件費削減を行う際は、正しい意味をしっかり認識して正しい方法で行わなければ、逆に経営を悪化させる要因となります。
人件費削減の本来の意味は「社員の数や給料を減らす」のではなく「利益をあげて人件費率を下げること」です。
もし、あなたが人件費を削減しようと「リストラ」や「給料カット」を考えているなら、それは間違った方法です。
確かにそれらの方法でコストを下げれば、一時的に経営状況は改善します。
でも、あくまで一時的であって、長期的な視点で考えれば社員のモチベーションは下がって経営がさらに悪化するのは目に見えています。
本当に事業を改善したいなら、同じ人件費削減でも「利益を上げて人件費率を下げる方法」を考える必要があります。
とはいえ、「利益を上げる」のが難しいから「人件費削減」をして経営改善をしようか悩んでいたのですよね。
そもそも利益を上げることができるなら、リストラや給与カットなんていう社員から恨まれることはしません。
リストラや給与カットをせずに利益を上げる方法がわかれば全てが解決するでしょう。
もし、利益を上げる方法に悩んでいるなら、弊社代表の北岡のコンサルを検討してみてはいかがでしょうか?
北岡はこれまで1000社以上の中小企業をコンサルし、その成功率は「93.8%」を誇ります。
実際にコンサルを受け英会話学校は、「価格アップ」に成功して「平均単価2倍、利益3倍、成約率1.5倍」になりました。
人件費削減よりも利益アップを。
やむをえず人件費削減をするなら正しく行い、会社を衰退させないようにしましょう。