今回は「利益率」についてお話をしていきます。
会社経営をするうえで利益率はとても重要なものです。
そもそも企業が掲げるもっとも大きな目的は、利益を出すことにほかなりません。
だからこそ利益率は、売上より重要視されることも多い指標です。
しかし実は、一口で利益率と言っても、計算式や意味の異なるさまざまな種類が存在しています。
そしてもちろん、利益率の種類によって目安となる数字も大きく変わってくるのです。
そこで今回は、利益率の種類、それぞれの意味や目安、それぞれの計算方法、利益率の上げ方、について説明をしていきます。
利益率は経営者がもっとも気にしなければいけない数字の1つです。
そのため、とくに今回お話しさせていただく「利益率の上げ方」については、経営者必見の情報であると言えます。
利益率に対する理解をより深めて、ぜひ会社経営に役立ててください。
また、利益率だけでなく、利益にもいくつかの種類があり、それぞれに意味や計算式が違っています。
そちらについては別記事に詳しくまとめていますので、ぜひ併せて確認してみてください。
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各利益率の意味、目安、計算方法
利益率には、以下の表のように5つの種類があります。
各利益率の名称 | 全産業の平均値 | 各利益率の計算式 |
1.売上高総利益率(粗利率) | 25.58% | 売上高総利益率(%) = 売上総利益(粗利) ÷ 売上高 × 100 |
2.売上高営業利益率 | 2.99% | 売上高営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100 |
3.経常利益率 | 3.50% | 経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100 |
4.自己資本利益率(ROE) | 9.34% | 自己資本利益率(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 |
5.総資本利益率(ROA) | 3.1% | 総資本利益率(%) = 当期純利益 ÷ 総資本 × 100 |
※参考
(経済産業省_平成29年企業活動基本調査速報-平成28年度実績-)
これらの利益率の意味、業種別の目安については、これから1つずつ説明していきます。
それぞれを理解しておくことで経営状態の把握に役立てることができますので、ぜひ参考にしてください。
また、各種利益率の計算方法の中に含まれる各種利益の求め方は、下記を参考にしてください。
〇各種利益の計算方法
利益の名称 | 利益の計算式 |
粗利(売上総利益) | 売上総利益 = 売上高 - 売上原価 |
営業利益 | 営業利益 = 粗利(売上総利益) - 販売費および一般管理費 |
事業利益 | 事業利益 = 営業利益 + 営業外収益 |
経常利益 | 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 |
税引前利益 | 税引前利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失 |
当期純利益 | 当期純利益 = 税引前当期純利益 – 利益にかかる税金 |
売上高総利益率(粗利率)
売上高総利益率(粗利率)は、取り扱っている商品にどれだけの付加価値があるかを示す指標です。
とくに薄利多売戦略に向かない中小企業の場合、この数値が高ければ高いほど仕事による付加価値が高いことを意味します。
売上高総利益率の計算式は以下のとおりです。
売上高総利益率(%) = 売上総利益(粗利) ÷ 売上高 × 100 |
このように、売上高に対して粗利がどれだけの割合を占めるかといった計算を行います。
ちなみに、各業種別の平均値は以下のとおりです。
〇業種別売上高総利益率(粗利率)
製造業 | 22.3% |
卸売業 | 11.8% |
小売業 | 27.6% |
建設業 | 17.7% |
飲食業 | 56.8% |
※参考
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、企業の収益性や経営管理の効率を示す指標です。
そのため売上高営業利益率は、企業が持つ本来の実力を測ることができる数字だと言っても過言はありません。
売上高営業利益率の計算式は以下のとおりです。
売上高営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100 |
このように、売上高に対して営業利益がどれだけの割合を占めるかといった計算を行います。
売上高営業利益率は、多くの業界で1%~5%あれば上出来であると言われており、業界別の内訳は以下の表のとおりです。
〇業種別売上高営業利益率
製造業 | 4.8% |
卸売業 | 1.7% |
小売業 | 2.8% |
情報通信業(IT系) | 7.3% |
飲食業 | 4.1% |
サービス業 | 6.5% |
※参考
(経済産業省_平成29年企業活動基本調査速報-平成28年度実績-)
経常利益率
経常利益率は、企業の基礎体力を示す指標です。
営業利益が本業における利益なのに対し、経常利益は本業を含めた継続的な活動(いわゆる財テクなど)によって得られる利益を表します。
そのため、営業利益が低くても本業以外の収入源によって経常利益が高くなることもありますし、逆に、貿易格差などの影響によって営業利益が黒字でも経常利益が赤字になってしまうこともあるのです。
そういう意味で考えれば、企業の利益をより正確に把握したい場合は、売上高営業利益率より経常利益率を参考にした方が良い場合もあります。
経常利益率の計算式は、以下のとおりです。
経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100 |
一般的な企業の経常利益はおよそ4%が平均値であると言われており、優秀な企業の場合は10%前後になると言われています。
業種別の内訳は以下のとおりです。
〇業種別経常利益率
製造業 | 7.0% |
卸売業 | 2.6% |
小売業 | 3.0% |
情報通信業(IT系) | 8.0% |
飲食業 | 4.3% |
サービス業 | 6.9% |
※参考
(経済産業省_平成29年企業活動基本調査速報-平成28年度実績-)
自己資本利益率(ROE)
自己資本利益率は、自己資本に対してどれだけの当期純利益を上げることができたかを示す指標です。
どちらかというと経営者よりも株主に向けたデータで、株主たちはこのデータを投資効率の指標としています。
自己資本利益率の計算式は、以下のとおりです。
自己資本利益率(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 |
ちなみに自己資本の求め方は、「自己資本 = 純資産 - 新株予約権 - 少数株主持分」となります。
簡単には、負債を除いた資本であると考えてください。
業種別の内訳は以下のとおりです。
〇業種別経常利益率
製造業 | 7.6% |
卸売業 | 8.2% |
小売業 | 6.6% |
情報通信業(IT系) | 8.9% |
飲食業 | 6.7% |
サービス業 | 12.9% |
※参考
(経済産業省_平成29年企業活動基本調査速報-平成28年度実績-)
総資本利益率(ROA)
総資本利益率は、総資産に対してどれだけの利益を生み出すことができたかというデータです。
このデータは、企業の資本をいかに効率的に運用できているかを示しています。
総資本利益率の計算式は、以下のとおりです。
総資本利益率(%) = 当期純利益 ÷ 総資本 × 100 |
ちなみに、総資本とは自己資本に負債による資本を合わせたものです。
要は、融資を受けた分も含め、会社にあるすべての資本を表しています。
壮士品利益率について、業種別の内訳は以下のとおりです。
〇業種別経常利益率
製造業 | 3.8% |
卸売業 | 3.0% |
小売業 | 2.8% |
情報通信業(IT系) | 4.5% |
飲食業 | 2.9% |
サービス業 | 6.2% |
※参考
(経済産業省_平成29年企業活動基本調査速報-平成28年度実績-)
利益率の細かい目安は同業他社を基準にする
ここまで各種利益率のおおよその目安について紹介をしてきましたが、より正確に目安が欲しいなら、自社と同程度の規模を持った同業他社を参考にしてください。
というのも、たとえ同じ業種でも何を売っているのかによって、数字が大きく変わってくるからです。
さらに言えば、大企業と中小企業では、各種数値も変わってきます。
そのため、もし詳細な利益率の目安が欲しい場合は、まずはモデルとなる同業他社を探し、そこの数値を基準にしてください。
そうすることで、より明確な数値を目標にすることができます。
利益率が高すぎると危険な場合もある
基本的に利益率は、高ければ高いほど会社が儲かっているという指標です。
しかし逆に、利益率が高すぎることが会社にとっての危険信号となる場合もあります。
なぜなら、利益率が高い要因になり得るものとして、以下のようなものがあるからです。
- 従業員への十分な還元ができていない
- 商品の質が悪い
- ビジネスの成長にお金を使えていない
まず1つが、従業員への還元ができていないパターンです。
この要因で利益率が高くなっている場合、今はうまくいっていても、やがて優秀な社員が会社を離れてしまうことにもなりかねません。
ビジネスを大きくしていこうと考えるなら、人の力は必要不可欠です。
業績が伸びたなら、それに見合った報酬を従業員に還元しましょう。
そしてもう1つが、商品の質が悪いパターンです。
こちらの場合、最初は商品が売れても、リピーターができなくなってしまいます。
さらに、会社の評判が悪くなってしまう可能性もあり、今の売上が今後続かない危険性が高くなってしまうのです。
そうならないためにも、ユーザー視点は忘れずに価値提供を行いましょう。
そして最後に、ビジネスの成長にお金を使えていないパターンです。
新商品の開発、新規顧客の開拓、設備投資などにお金を使えていないということですね。
ビジネスの世界は日進月歩であり、常に動き続けています。
そのため、今売れているものがそのまま今後も売れるとは限りませんし、どんな優良顧客でもずっと離れずに残ってくれるということはあり得ないのです。
そのことを理解し、未来を見据えた資金運用を心がけてください。
ただ、ここまで高すぎる利益率に注意を促してきましたが、利益率が高い理由がハッキリしている場合はその限りではありません。
たとえば差別化戦略がうまくいっているとか、商品の価値をうまく説明できているとか、とにかくあなたの狙いどおりであるという場合は、とくに問題はないということです。
「利益率が高すぎる = 悪」ではなく、あくまでも注意すべき要因があるかもしれない、と認識しておいてください。
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紹介したすべての利益率を上げる方法
今回の記事では5種類の利益率について説明をしてきましたが、これらすべての利益率を無理なく上げられる方法があります。
それが、「商品やサービスを価値に見合った価格に値上げする」という方法です。
どういうことかというと、実は日本の中小企業の多くは、自社が持つ商品やサービスの価格を、本来の価値よりも低く設定してしまっています。
無理な価格競争であったり、商品の価値説明がうまくできていなかったりという要因によって、自社製品を安売りしてしまっているわけです。
だからこそ、価格アップを実施することによって、利益率を大幅に改善できる可能性があります。
現に弊社のクライアントさんでいうと、価格を20倍にアップさせた例や、価格を上げつつ成約率まで上げた例などもあるのです。
【まとめ】価格設定は利益率を目安に行いましょう
今回は、各種利益率について、目安や計算方法をお話ししてきました。
利益率の種類によって意味合いは変わってきますが、基本的に会社は利益を上げるために存在しているはずです。
そのため、自社の利益率については、常に目を光らせておいてください。
とくに商品やサービスの価格設定を行うさいは、利益率を1つの目安として行うべきです。
利益率を無視し、価格競争に勝って売上を上げることだけを考えていると、会社経営は失敗してしまいます。
現に中小企業の中には、商品の価格を下げすぎたせいで経営がうまくいかなくなり、倒産してしまうところも多いのです。
利益率は、ビジネスがうまくいっているかどうかを測る大事な指標です。
だからこそ経営者みずからが誰よりも理解し、会社経営に役立ててください。