事例に学ぶオープンイノベーションとは?2020年創設のオープンイノベーション促進税制も解説

鷲津晴人
事例に学ぶオープンイノベーションとは?2020年創設のオープンイノベーション促進税制も解説

今回は事業を推進させる「オープンイノベーション」についてお話します。

インターネットが普及した昨今では、ライフサイクルがどんどん短くなっているということはみなさんもご存知でしょう。

それに伴い、企業が商品やサービスを開発するスピードも早くなっています。

しかし、中小企業の資金力やリソースでは、近年のライフサイクルに対応することは難しいことも事実です。

そこで、知っておいていただきたい手段が「オープンイノベーション」です。

オープンイノベーションをおこなうことで、資金やリソースがない中小企業でもライフサイクルに対応できるかもしれません。

事業をより推進させるためにも、中小企業の経営者の方はぜひご一読ください。

 

そもそもオープンイノベーションとは?

オープンイノベーションとは、「自社だけでなく社外の技術や知識を取り入れて価値を生み出すこと」です。

オープンイノベーションに対して、自社だけで商品開発を行う従来の価値創造は、クローズドイノベーションといいます。

クエスチョンマークとサラリーマン

オープンイノベーションでは、自社だけでは創造できない価値を生み出したり、事業推進を実現できます。

そのため、自社だけで価値創造に取り組めない場合や、他社の協力を得たほうが良いものを作れる場合には、オープンイノベーションをおこなうことが良いでしょう。

企業がオープンイノベーションに取り組む場合は、他社・大学・研究機関などと協力することが一般的です。

 

オープンイノベーションの目的

オープンイノベーションの目的は、「自社だけでは生み出せない価値を生み出し、自社の業績や社会に貢献すること」です。

この目的は絶対に忘れないでください。

なぜなら、オープンイノベーションを失敗してしまう企業の共通点として、商品やサービスが完成することを目的だと勘違いしているという点があります。

オープンイノベーションは、商品やサービスが完成することがゴールではありません。

あくまで「完成した商品サービスの価値を多くの人に知ってもらう→顧客に届ける」というところまで達成して、初めて業績や社会に貢献できるのです。

商品・サービスが完成した段階で満足していては、利益や価値提供につながりません。

だから、目的をはき違えないように注意していただきたいのです。

 

せっかく自社と他社の技術や知識をかけあわせるのですから、

  • その商品サービスで利益をしっかり上げる
  • 多くの人に価値を提供する

という段階までしっかり考えましょう。

 

オープンイノベーション推奨の背景

オープンイノベーションが推奨されるようになった背景には、以下2つの理由があります。

  • ライフサイクルの短期化
  • 顧客ニーズの多様化

冒頭でも触れたように、インターネットが普及してから次々と新しい商品やサービスが生まれています。

その影響で、ライフサイクルは短期化し、顧客ニーズは多様化しました。

そのため、企業が自社だけで社会の潮流に対応することが難しくなり、企業が協力するオープンイノベーションが推奨されているのです。

日本ではビジネスにおける課題があったとしても、オープンイノベーションを選択する企業はまだ少ないと言われています。

もしあなたの会社がオープンイノベーションに取り組んでおらず、ビジネスの課題があれば、その解決策の1つとしてオープンイノベーションを検討してみましょう。

 

中小企業が成功したオープンイノベーションの3つの事例

次に中小企業が成功したオープンイノベーションの3つの事例を紹介します。

中小企業の場合は、リソースや資金力が十分でないケースが非常に多いです。

そのため、オープンイノベーションは中小企業には特に取り組んでいただきたい施策といえます。

ケース1ケース2

まずは、中小企業がオープンイノベーションに成功した事例を知って、オープンイノベーションのイメージを掴んでください。

 

事例1.「レンタル移籍」による人材育成とイノベーションのエコシステム構築

「レンタル移籍」による人材育成とイノベーションのエコシステム構築は、株式会社ローンディール・西日本電信電話株式会社・関西電力株式会社・大鵬薬品工業株式会社などが協力した施策です。

第1回日本オープンイノベーション大賞選考委員会特別賞を受賞したオープンイノベーションです。

この施策は大企業に所属するイノベーションの意欲が高い人材を、ベンチャー企業やスタートアップにレンタル移籍(一時的に移籍)してイノベーションを生み出すというものです。

大企業側は実践的に人材育成をおこなうことができ、ベンチャー企業側は大企業のノウハウ獲得ができます。

そのため、双方がメリットのある形でイノベーションを生み出すことができるビジネスモデルといえるでしょう。

人材不足が騒がれている昨今では、リソースやスキルのシェアが重要視されているため、レンタル移籍は今後さらに注目されるのではないでしょうか。

 

参考:内閣府「第1回日本オープンイノベーション大賞」受賞取組・プロジェクトの概要について

 

事例2.電気自動車「HOKUSAI」の開発

株式会社浜野製作所は墨田区・早稲田大学などとともに、観光型都市の環境に配慮した電気自動車「HOKUSAI」を開発しました。

HOKUSAIは1人乗りの電気自動車で最高時速59km、航続距離39kmというスペックの電気自動車です。

東京スカイツリーの開業に合わせて開発され、次世代モビリティとして自社の技術力をPRすることに成功しました。

 

参考:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「オープンイノベーション白書(第二版)

 

事例3.タクシー並みの料金で空を移動する

株式会社AirXは西武ホールディングスとともに、ヘリコプターでの移動を安価に提供するサービスを開発しました。

その価格はタクシーでの移動とほぼ変わらず、東京−箱根間が19,800円(税別)、東京−下田間が32,900円(税別)と従来のヘリコプターの相場価格よりも、かなり安くサービスを提供されています。

海外ではヘリコプターでの移動は一般的であり、日本でも今後ヘリコプターでの移動は一般的になると考えられています。

つまりAirXと西武ホールディングスの取組は、日本でのヘリコプター移動のさきがけであるといえるでしょう。

 

参考:INNOVATIVE PORT「タクシー並みの料金で空の移動を実現させる、西武ホールディングスとAirXの挑戦」

 

オープンイノベーションの3つのメリット

オープンイノベーションのメリットは主に3つあります。

メリット

他社と協業することがオープンイノベーションの重要なポイントですが、具体的にどのようなメリットがあるか知っておきましょう。

  • 事業の幅が広くなる
  • 事業推進のスピードを上げられる
  • 新たな知識や技術を得られる

オープンイノベーションをまだ導入していない場合は、ぜひ導入の検討材料にしてください。

 

オープンイノベーションのメリット1.事業の幅が広くなる

1つ目のメリットは、他社のリソースや技術を利用できるため、事業創造の幅が広がるということです。

他社のリソースを利用できるということは、自社にない知識や技術を価値創造に反映できます。

そのため、開発したくても開発できなかった商品やサービスの開発を実現したり、自社が取り扱えなかった事業を立ち上げることも可能です。

中小企業の場合は、事業が1つしかない場合や、特定の事業が会社の売上のほとんどを担っている場合も多いです。

そのため、オープンイノベーションを利用して事業の幅を広げることは、価値創造だけでなく企業としての成長も期待できます。

 

オープンイノベーションのメリット2.事業推進のスピードを上げられる

2つ目のメリットは事業推進のスピードを上げられることです。

クローズドイノベーションの場合、価値創造に知識や技術を吸収する時間やコストが必要です。

オープンイノベーションの場合はリソースを共有するため、自社のコストを抑えられます。

他社と協力して価値創造をおこなうことで、本来かかる時間やコストを削減し、事業推進のスピードを上げられるのです。

 

オープンイノベーションのメリット3.新たな知識や技術を得られる

3つ目のメリットは自社にはない新たな知識や技術を得られることです。

オープンイノベーションは、自社だけでは実現できない価値創造を目的としています。

つまり、自社には持ち合わせていない知識や技術を、協業する企業が持ち合わせていることがほとんどです。

そのため、自社にはない知識や技術を新たに身に着けたり、学んだりできるでしょう。

 

事例でも紹介したとおり、近年では大企業と中小企業がリソースやスキルをシェアする施策を取り入れるケースも多いです。

そのため、ベンチャー企業であっても大企業と協業することで、ノウハウ構築やイノベーションを生み出すことは難しくありません。

まずは、価値創造のために自社に何ができるのかを考えてみましょう。

 

オープンイノベーションの2つのデメリット

オープンイノベーションには以下2つのデメリットがあります。

デメリット

オープンイノベーションは魅力的ですが、デメリットがあることも知っておかなければ、自社に損害が発生する可能性もあります。

  • 自社のノウハウや技術が流出する可能性がある
  • 利益を分配しなければいけない

それぞれ詳しく解説します。

 

オープンイノベーションのデメリット1.自社のノウハウや技術が流出する可能性がある

1つ目のデメリットは自社のノウハウや技術が流出する可能性があることです。

オープンイノベーションでは、他社との協業を前提としているため、自社の技術や知識を他社に知られてしまう可能性は非常に高いのです。

そのため、オープンイノベーションを実行する前に開示できる情報と開示できない情報を分けて、他社には開示できる情報のみ伝えるなど、ルールを作っておくことが良いでしょう。

また、契約時に秘密保持契約書(NDA)などを交わして、情報流出へのリスクヘッジも忘れないでください。

 

オープンイノベーションのデメリット2.利益を分配しなければいけない

2つ目のデメリットは利益を分配しなければいけないことです。

オープンイノベーションではアウトソーシングとは違うため、生まれた価値を協業した他社と分配します。

この分配率は事業への貢献度や、売上への貢献度などによって決められるため、ケースバイケースです。

そのため、各社の代表者が協議して決めていくことが一般的です。

事業によっては各社の貢献度に明らかな差が生まれてしまうこともあるため、5:5にならない可能性も十分にあります。

利益の分配については、トラブルになりやすいのでプロジェクトを始める前に、協議をしてお互いが納得できる内容で契約してください。

 

オープンイノベーションを成功させるための公的機関の施策

オープンイノベーションは日本では、あまり浸透していないのが現状です。

そのため、オープンイノベーションを取り組みやすくするために、政府を中心に公的機関がさまざまな取組を行っています。

解説するサラリーマン

今回はさまざまな取組の中から、3つの施策を紹介します。

  1. マッチングサイトの運営
  2. オープンイノベーションに関するセミナー開催
  3. オープンイノベーション促進課税の創設

それぞれの施策について詳しく解説します。

 

施策1.マッチングサイトの運営

経済産業省 関東経済産業局と中小企業基盤整備機構 関東本部は、オープンイノベーションを推進するためにマッチングサイト「オープンイノベーションマッチングスクエア」を運営しています。

オープンイノベーションマッチングスクエアでは、関東の企業や組織を中心にオープンイノベーションを希望する案件が募集されています。

2020年2月24日現在では、交通インフラや防災・災害対応のための開発が主に募集されています。

オープンイノベーションを募集したい企業や、他社のオープンイノベーションに協力したい企業は参考にすると良いでしょう。

 

オープンイノベーションマッチングスクエアには以下のリンクから飛ぶことができます。

オープンイノベーション・マッチングスクエア

 

施策2.オープンイノベーションに関するセミナー開催

オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会は、オープンイノベーションについてのセミナーを不定期で開催しています。

日本ではオープンイノベーションがまだ浸透していないこともあり、セミナーの内容は基本的な内容から具体的な内容までさまざまです。

セミナー意外にも隔月でワークショップの開催など、オープンイノベーション推進のための活動を全国で活発におこなっています。

オープンイノベーションについての話を直接聞きたい方は、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会のイベントに参加してみてはいかがでしょうか。

 

オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会の公式HPには以下のリンクから飛ぶことができます。

JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会:NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

 

施策3.オープンイノベーション促進税制の創設

経済産業省は日本のオープンイノベーションを推進するために、令和2年度の税制改正でオープンイノベーション促進税制の創設をおこないます。

オープンイノベーション促進税制とは、資金力が不足している中小企業への投資を促し、日本国内の価値創造の機会を増やすための施策です。

原文は、以下のとおりです。

アベノミクスの成果により増加してきた現預⾦等を活⽤して、イノベーションの担い⼿となるスタートアップへの新たな資⾦の供給を促進し成⻑に繋げていくため、国内の事業会社やCVC(コーポレートベン チャーキャピタル)から、創業10年未満・未上場のベンチャー企業に対する1億円以上の出資について、25%の所得控除を講ずる。その際、オープンイノベーションの取組が確保されるよう、出資者は出資 先のベンチャー企業の株式を⼀定期間(5年間)保有することとする。
引用:中小企業庁「令和2年度(2020年度) 中⼩企業・⼩規模事業者関係 税制改正について」

要するに、「国内の事業会社やベンチャーキャピタルが、創業10年未満で未上場のベンチャー企業に1億円以上の出資をした場合、25%の所得控除が可能。そして、オープンイノベーションが確保されるように、出資者はベンチャー企業の株式を5年間は保有しなければいけない」という内容です。

オープンイノベーション促進税制は、令和2年4月1日から令和4年3月 31 日までを対象期間におこなわれます。

オープンイノベーションを検討している中小企業は、この期間中にオープンイノベーションを募ることで、これまで以上に協業しやすくなるでしょう。

 

参考:経済産業省 「経済産業関係 令和2年度(2020年度)税制改正のポイント」中小企業庁「令和2年度(2020年度) 中⼩企業・⼩規模事業者関係 税制改正について」 財務省「令和2年度税制改正の大綱」

 

【まとめ】オープンイノベーションで事業を加速させよう!

今回は事業を推進する「オープンイノベーション」について解説しました。

ライフサイクルが短期化して、顧客ニーズが多様化した昨今では従来の価値創造で対応することは難しいです。

ライフサイクルの短期化と顧客ニーズの多様化は、今後も拡充していくことが予想されます。

そのため、オープンイノベーションで対応していかなければ、あなたの会社が競争を勝ち抜いていくことは難しいでしょう。

 

オープンイノベーションであれば、リソースやコストを削減して効率よく価値創造をおこなえます。

ただ、もしあなたの会社がオープンイノベーションをおこなう資金がない場合は、まず資金を調達する必要があります。

協業する企業から融資や投資を受けることもできるかもしれませんが、利益の分配などに関してトラブルが起こることも珍しくありません。

 

そこで、どうにか自社で資金を捻出したいとお考えの方は、まず自社商品の価格を見直してください。

思っているような売上や利益率でない場合は、自社商品の価格が適切でないケースが多いです。

売上や利益率を改善するためにも、まずは自社商品の価格を適切にしましょう。

 

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この事例をご覧いただければ、価格アップがそう難しいものではないということをご理解いただけるでしょう。

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