今回は、マルチタスクの正しいやり方についてお話をしましょう。
マルチタスクとは、複数のタスク(仕事)を並行して進めること。
ちなみにデュアルタスクという言葉もありますが、こちらは2つのタスク(仕事)を並行して進めることなので、ほぼ同じ意味と考えてください。
もしあなたが私のことをご存知なら、「確か北岡はマルチタスク反対派のはずじゃなかったか?」と思われたかもしれません。
事実、私はシングルタスクつまり、1つずつ仕事を片付けていく手法を推奨しています。
それは、私が今までオクゴエ!やコンサル大学で、「マルチタスクは良くないですよ!」と主張してきたとおり、何も変わっていません。
あなたの才能や能力を存分に活かしたいのなら、やはり仕事はシングルタスクで行うべきです。
そこで今回は、
・なぜマルチタスクをやってはいけないのか?
・どうしてマルチタスクと向き合わなければいけないのか?
・マルチタスクをしてもいい例外的な局面とは?
について改めてお伝えしていきます。
マルチタスクについて学習することで、マルチタスクとの付き合い方が見えてくるはずです。
マルチタスクとは【ビジネス用語】
まずはマルチタスクを理解しましょう。
なぜなら、シングルタスクをしているつもりでマルチタスクになってしまっている場合があるから。
どのような仕事の進め方がマルチタスクに該当するのか。
そして、マルチタスクとはそもそもどういうものなのか。
まずはここで確認してください。
マルチタスクの概要
冒頭でもお伝えしたとおり、マルチタスク(デュアルタスク)とは複数の仕事を同時に並行して進めることです。
たとえば、資料を作成中にメールBOXが気になってメールチェックを始めてしまうこと。
もしくは、取引先との電話中に営業会議で使う資料に目を通すこと。
この2つは、「自分はシングルタスク派の人間だ!」と思っている人でもやってしまいがちなマルチタスクの例です。
「マルチタスクこそが効率的な仕事術である」と主張するマルチタスク擁護派は少なくありません。
しかし、科学的に見てマルチタスクはまちがいなくメリットよりデメリットの方が多いです。
マルチタスクで仕事ができる人間はたったの2%
ユタ大学応用認知ラボの主任であるデビッド・ストレイヤー氏の研究によると、マルチタスクで効率よく仕事ができる人間は、人類全体のたった2%しか存在していないといいます。
さらにマルチタスク能力は、トレーニングによって身につけられるものでもありません。
マルチタスクとは神経科学的に言うと「タスク・スイッチング」と呼びます。
要は、同時処理で仕事をしているのではなく、高速かつ細かく、タスクを切り替えているというわけ。
たとえば、電話をしながら資料のチェックをする。
相手の話を聞いていると資料チェックがおろそかになってしまいますし、逆もしかりです。
瞬間だけを切り取れば、結局どちらかの作業しかしていません。
そして、この高速なタスクの切り替えに、98%の人間の脳は対応できないのです。
もちろん、身につけるための訓練方法もありません。
あなたが2%の天才ならマルチタスクもいいでしょう。
でも、多くは違います。
科学的に見て、マルチタスクは誰にでもできるものではありません。
鍛えることのできない、特殊なスキルなのです。
マルチタスクで仕事をやってはいけない2つの理由とは?
では、マルチタスクで仕事をするとどうなるのでしょうか?
大きく言うと2つのデメリットがあります。
1. 仕事の集中力や生産性が著しく下がる
2. シングルタスクより成果や効果が出るのに時間がかかる
それでは、1つずつ詳細を解説していきましょう。
マルチタスクがダメな理由1.
仕事の集中力や生産性が著しく下がる
高い集中力で仕事に取り組んだ方がパフォーマンスはあがりますね。
しかし、マルチタスクでは集中力が高まりません。
なぜなら人の集中力は、タスクに取りかかってから徐々に上がっていくもので、ピークに達するまでに20分くらいの時間を必要とするからです。
そのあとは一定時間ピークが続き、ある程度の時間が経過してくると、徐々に集中力が低下していきます。
これをマルチタスクに当てはめて考えてみると…
たとえば、作業開始から20分で他のタスクに切り替えたとします。
すると、集中するためには20分かかるので、実質、集中してその仕事ができていた時間はゼロです。
25分で切り替えたとしたら、集中できた時間は5分ということになります。
前述した通りマルチタスクは、タスクの切り替えを何度も繰り返すということ。
そのたびに集中がリセットされてしまうので、集中している時間がガクンと減ってしいます。
結果、1日に集中している時間がたった15分程度という社長も少なくありません。
そうなってくると、自分の能力を十分に発揮することができないのは当然のこと。
さらに、記憶力や注意力の低下から、事故や重大なミスが起こることもあり得ます。
実際に「集中できたな」「今日はパフォーマンスが高かったな」という日を思い出してください。
ひとつの仕事にじっくり取り組んだ日ではないでしょうか?
マルチタスクは、あなたの能力を大きく制限してしまいます。
これだけでもシングルタスクの方を推奨する理由になります。
マルチタスクがダメな理由2.
シングルタスクより成果や効果が出るのに時間がかかる
そしてもうひとつ、マルチタスクがダメな理由があります。
マルチタスクで仕事を進めていくと、成果や効果が出るのが遅くなってしまうのです。
例をあげましょう。
3日かかる仕事が3種類あったとします。
それぞれ、A、B、Cとします。
「( )」で囲われている数字は進捗具合で、ABC全ての仕事は(3)の時点で仕事が完了します。
シングルタスクで実行する場合、こうなります。
Aの仕事は3日目、Bの仕事は6日目、Cの仕事は9日目にタスクが完了します。
一方で、マルチタスクを図にすると、以下のようになります。
マルチタスクで実行した場合、Aの仕事は7日目、Bの仕事は8日目、Cの仕事は9日目にタスクが完了する、ということになります。
仕事というのは完了して初めて成果や効果が出るものです。
作業途中でどれだけ素晴らしい手順を踏んでいたとしても、終わらなければなんの意味もありません。
たとえばAの仕事は、シングルタスクなら3日で終わります。
しかし、マルチタスクの場合、Aの仕事を終わらせるのに7日もかかってしまうのです。
当然、シングルタスクのほうが成果がでるのが早い、ということになります。
マルチタスクには、成果や効果が出るのが遅くなってしまうという致命的なデメリットがあります。
当然、成果や効果が遅れれば、それだけ次のタスクに影響します。
また、売上がたつのも遅くなります。
これもシングルタスクを推奨する大きな理由です。
ちなみに、1つ1つのタスクをきっちり終わらせるために必要な管理のコツについては、こちらの記事で紹介していますのでぜひご覧になってください。
⇒ 仕事の効率化を実現するタスク管理の5つの秘訣
脳を破壊!?マルチタスクが人体に与える影響とは?
さらに!マルチタスクには、仕事の効率面以外でも重大なデメリットが存在しています。
それが、マルチタスクには脳を破壊するリスクがあるということ。
マルチタスクがどのようにして脳を破壊するのでしょうか。
マルチタスクは脳に大きなストレスを与えます。
そのストレスが原因で、脳内にコルチゾールというストレスホルモンが分泌されてしまいます。
コルチゾールには、脳に刺激を与えて思考を妨げる作用があります。
この作用により、マルチタスクを行うと人の脳はダメージを負ってしまうのです。
さらに恐ろしいことにコルチゾールは、脳がマルチタスクによる刺激をさらに求めるようになる作用もあります。
つまり、マルチタスク依存になってしまうのです。
この依存性によってマルチタスクによって脳が破壊され続けてしまうわけです。
もしあなたが、マルチタスクをやることに達成感や快感を覚えているのなら、それはすでに依存が始まっていると考えるべきです。
あなたは社長です。
小さな会社にとって社長であるあなたの脳が破壊されてしまうことの損失は計り知れません。
もちろん脳に限ったことではなく、健康のことについてはよく学び、常に改善していくべきでしょう。
そのためにおすすめのサプリメントをまとめた記事もありますので、併せて確認しておいてください。
⇒ 経営者の健康に欠かせない、必携サプリメント10選
マルチタスク脳の落とし穴!どうしてもやりたくなってしまう理由とは?
マルチタスクをどうしてもうやめられない理由は、2つあります。
1つは、「【脳を破壊!?】マルチタスクが人体に与える影響とは?」でもお話しした、コルチゾールによる依存性によるもの。
無意識に別の作業に手を出してしまったり、シングルタスクが苦痛に感じてしまったりという場合は、すでに依存が始まっているとみるべきです。
そしてもう1つが、ビジネスをする人間の心情的なもの。
マルチタスクを行うと人は、
・万能感
・仕事をしている感
・自分への有能感
を感じることができます。
心理学でいうところの自己肯定感です。
そして、この自己肯定感を感じたいがために、「マルチタスクをしたい!」という感情が湧きあがってしまうのです。
とくに、起業家の場合は、
・たくさんのことをやりたいという思いが強い
・ビジネスチャンスに新たに取り組める(ただし、完了はしていない。)
ということもあり、マルチタスクに対する欲求や憧れが一段と強くなってしまいます。
これらが、マルチタスクをついついやりたくなってしまう、通称マルチタスク脳の原因です。
このマルチタスク脳とどうやって向き合って克服していけばいいのでしょうか?
マルチタスクを完全にやめることを最終目標として、何を改善すればよいか、どういう行動を起こせばよいかについて説明していきましょう。
マルチタスクの正しいやり方
マルチタスクの正しいやり方、それは、完全シングルタスクに移行するまでのつなぎとして行うというものです。
つまり、マルチタスク脳が発する欲求を抑えるために、一時的にマルチタスクを行うわけです。
マルチタスクをやらない方が良い理由については、ここまでの説明で分かっていただけたはず。
しかし、それでもマルチタスクをやりたくなってしまうのが、マルチタスク脳の恐ろしいところです。
そこで、「マルチタスクがしたい!」という欲求を抑えるために、その欲求の逃げ場を作ってあげるのです。
具体的にいうと、マルチタスクをする時間をあえて作ってしまうのです。
「1日のうち〇時~〇時の間だけは、どれだけマルチタスクを行っても良い」と決めます。」
そしてその代わり、それ以外の時間はシングルタスクに徹します。
すると、「この時間はマルチタスクができるから……」と気持ちにゆとりが生まれ、マルチタスク欲求を抑えやすくなるというわけ。
また、もともとシングルタスクでの仕事に慣れていないなら、「タスクリスト」を活用しましょう。
スケジュール管理が容易になり、生産性も上げられるようになります。
タスクの管理方法など、詳しい説明はこちらでしていますので、ぜひ確認してください。
⇒ タスクリストは正しく使ってはじめて生産性がアップする
マルチタスクは、すぐにやめようと思ってもなかなかうまくはいきません。
しかし、いずれはやめなければいけないのも事実。
ならばマルチタスクは、完全シングルタスク移行のためのつなぎとして行う。
これが、マルチタスクとの正しい向き合い方です。
【まとめ】マルチタスクは能力の無駄づかい!そんな仕事はしない、させないが基本だが……
今回の記事では、マルチタスクの正しいやり方、向き合い方についてお話をしてきました。
マルチタスクには
1. 仕事の集中力や生産性が著しく下がる
2. シングルタスクより成果や効果が出るのに時間がかかる
というデメリットがあります。
ですから、自分だけでなく部下にもマルチタスクをさせないようにすることです。
しかし、マルチタスクには依存性があり、すぐにやめるのは難しい。
だから、完全シングルタスクに移行するまでのつなぎとしてマルチタスクを行うというわけです。
「1日のうち〇時~〇時の間だけは、どれだけマルチタスクを行っても良い」というかたちで、マルチタスクをする時間をあえて作ります。
結果、「マルチタスクをやりたい!」という欲求が抑えやすくなります。
これが、マルチタスクの正しいやり方です。
繰り返しになりますがマルチタスクはやってはいけないものです。
マルチタスクとうまく向き合いながら、最終的には完全なシングルタスクを目指してください。
マルチタスクをやめることに成功すると、一気に成果が出やすくなります。