今回は、企業のミッション・ビジョン・バリューとは、事例や決め方について解説していきます。
あなたの会社のミッション・ビジョン・バリューは何ですか?
企業にとって、ミッション・ビジョン・バリューは経営の柱です。
とは言え、曖昧な表現であるため、キャッチフレーズや独りよがりな言葉で表現されていることも多く、その企業が何を目指しているのかが分かりづらいことも多くあります。
このミッション・ビジョン・バリューが曖昧だと、事業の方向性が一貫せず、価値観の共有もできないため、やがては経営に支障が出てくることになります。
この記事では、企業のミッション・ビジョン・バリューの定義を理解し、事例や決め方がわかるように詳しくご紹介していきます。
企業のミッション・ビジョン・バリューとは?
企業のミッション・ビジョン・バリューについて解説していきます。
- ミッションとは?
- ビジョンとは?
- バリューとは?
この「ミッション・ビジョン・バリュー」は、経営学者のピーター F. ドラッカーが2003年に出版された著書「Managing in the Next Society(ネクスト・ソサエティ)」の中で提唱した経営方針です。
企業活動の中で最も上位の概念で、これらが曖昧だと事業の方向性が一貫しません。
では、「ミッション・ビジョン・バリュー」とはどういうものなのかを、それぞれ具体的に解説していきます。
ミッションとは?
ミッションとは「企業が果たすべき使命・役割・存在意義」のことです。
「この会社はなぜ存在するのか?」「どんな未来を実現したいのか?」といった企業の判断基準となる普遍的な価値観です。
「ミッション・ビジョン・バリュー」を説明するときに良く例えられる、昔話の「桃太郎」で考えていきましょう。
桃太郎とは、桃から生まれた桃太郎が鬼を退治しに鬼ヶ島へ向かう物語ですよね。
桃太郎のミッションとは、鬼を退治することで「村の平和を守る」ことです。
「鬼を退治する」ことは、ミッションを実現させるための過程となるんですね。
「村の平和を守る」というように、活動の方向性・役割を決める際の指針となるものがミッションなのです。
ビジョンとは?
ビジョンとは「ミッションが実現した姿・将来のありたい姿」のことです。
桃太郎の例でいうと、「半年後までに鬼を退治し、村に平穏を取り戻すこと」がビジョンとなります。
鬼を退治しても、新たに村の平和を脅かすものが出てきたときは、桃太郎たちはまたそれに立ち向かっていくことでしょう。
新たな敵が、桃太郎たちの次のビジョンとなるのです。
このようにビジョンは、企業がミッションを実現させるための中長期的な目標ということになります。
自社の社員数、店舗数、売上規模、展開方法、市場や社会での位置付けは、いつまでにどういう状態になっているか、というように明確な目標を定義していくことで、自社が実現すべき姿を社員や顧客など関わる人々に理解してもらうことができるのです。
バリューとは?
バリューとは「ミッションとビジョンを達成するための具体的な指針」のことです。
社員ひとりひとりが行動するための指針になることです。
また、桃太郎の例でみていきましょう。
桃太郎とその一行(猿・雉・犬)は、「村の平和を守る」というミッション、「半年後に鬼が退治されて、笑顔いっぱいの村になっている」というビジョンのために鬼を退治しにいきますよね。
このときに、桃太郎一行の目指す目標は一緒でも、判断基準(鬼を退治する手段)がバラバラだとまとまりません。
それぞれの手段がバラバラでは、鬼を退治するための力を発揮することができないかもしれません。
そうならないために、「チームで一致団結する」というのが、桃太郎でいうところのバリューとなります。
最近では、クレド(信条)として掲げている企業も増えています。
バリューは行動の基準や判断指針となるため、社内のルール作りをしていく上での柱となります。
企業のミッション・ビジョン・バリュー事例
企業のミッション・ビジョン・バリューの事例をそれぞれご紹介していきます。
- 企業のミッション事例
- 企業のビジョン事例
- 企業のバリュー事例
各企業の事例をみていくと、その企業が何を目指しているのかが明確に分かります。
ぜひ、決めるときの参考にしてみてください。
では、1つずつみていきましょう。
企業のミッション事例
有名企業のミッション事例をご紹介します。
株式会社ファーストリテーリング
「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」
株式会社DeNA
「世界に喜びと驚きを」
キリン株式会社
「あたらしい飲料文化をお客様と共に創り、人と社会に、もっと元気と潤いをひろげていく。」
LINE株式会社
「私たちのミッションは、世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めることです。」
ソフトバンクグループ
「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」
ヤフー株式会社
「課題解決エンジン」
企業のビジョン事例
続いて、有名企業のビジョン事例をご紹介します。
ヤフー株式会社
「UPDATE JAPAN」
日立グループ
「日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします。」
株式会社ファーストリテーリング
「ファーストリテイリンググループは─
・本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します
・独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します」
キリン株式会社
「日本をいちばん元気にする、飲料のリーディングカンパニーになる」
楽天株式会社
「日本を、元気に。世界を、元気に。」
株式会社サイバーエージェント
21世紀を代表する会社を創る
企業のバリュー事例
最後に、有名企業のバリュー事例をご紹介します。
ソフトバンクグループ
「努力って楽しい」
「No.1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」
ヤフー株式会社
「All Yahoo! JAPAN」
「個のチカラ」
「発見・提案・改善」
「圧倒的当事者意識」
「やりぬく」
キリン株式会社
「お客様にとっての新しい価値」
「お客様の安心・安全、おいしさへのこだわり」
「お客様・パートナー・地域とのWin-Win」
「熱意と誠意」
株式会社ファーストリテーリング
「お客様の立場に立脚」
「革新と挑戦」
「個の尊重、会社と個人の成長」
「正しさへのこだわり」
ミッション・ビジョン・バリューの決め方とは?
ミッション・ビジョン・バリューの決め方と、決めるのに最適な時期をお伝えしていきます。
- 決めるのに最適な時期は?
- 企業のミッションの決め方
- 企業のビジョンの決め方
- 企業のバリューの決め方
ミッション・ビジョン・バリューは、個人事業主なら自分自身で決めれば良いですが、他に経営に関わる人がいる場合は、全員で決めるべきです。
なぜなら、事業が進んでいったときに、意見が合わなくなり、経営に支障が出る場合があるからです。
また、それらの価値観を、社内に浸透させていくことが大切となります。
では、ミッション・ビジョン・バリューの決定時期とそれぞれの決め方をみていきましょう。
決めるのに最適な時期は?
決めるのに最適な時期は、ミッション・ビジョンは「起業時」、バリューは「企業がある程度大きくなったとき」です。
ミッションとビジョンは、起業後に決めることも可能ですが、最初に目指すべき方向性がしっかりとしていると、事業の運営が上手く回ります。
ただしビジョンは、企業が成長するにつれ目標や目的地が変わる場合があるので、そうした企業文化を反映していくために、見直していくことも必要です。
バリューは、社員一人一人の行動指針となります。
なので、社員がある程度揃ってから決定すると良いでしょう。
企業のミッションの決め方
企業のミッションの決めるには、以下の点を考えてみましょう。
- 顧客(どのような顧客に、どういった価値をもたらすか)
- 製品・サービス
- マーケット
- 使用するテクノロジー
- 成長・財政面の健全性
- 理念
- 企業の強み
- パブリックイメージ(社会的責任、環境への配慮)
- 社員への姿勢
これらを深く掘り下げていくことにより、自社の判断基準となる普遍的な価値観を決定していきます。
例として、家計簿管理ツールサービス「マネーフォーワード」を始めとした、個人の資産管理ソフトを提供している株式会社マネーフォワードのミッションをみてみましょう。
お金を前へ。人生をもっと前へ。
「お金」は、人生においてツールでしかありません。
しかし「お金」とは、自身と家族の身を守るため、また夢を実現するために必要不可欠な存在でもあります。
私たちは「お金と前向きに向き合い、可能性を広げることができる」サービスを提供することにより、ユーザーの人生を飛躍的に豊かにすることで、より良い社会創りに貢献していきます。
このように、お金に関わるサービスを提供することで、人生をより豊かにし、より良い社会にすることを価値観として定義しています。
企業活動の原動力となるミッションがズレていると、顧客や社員とのミスマッチがおこり、経営に様々な問題が発生してきます。
そうならないために、徹底したリサーチをしていくことが重要です。
企業のビジョンの決め方
企業のビジョンは、ミッションを決定した後に決めていきます。
先ほどの、マネーフォワードで見てみると、
すべての人の、
「お金のプラットフォーム」になる。オープンかつ公正な「お金のプラットフォーム」を構築すること、本質的なサービスを提供することにより、個人や法人すべての人のお金の課題を解決します。
ミッションである「お金を前へ。人生をもっと前へ。」を実現するための未来が提示されています。
ビジョンを考える際は、以下の3つの要素が大切です。
- 成し遂げたいこと:ミッションの実現に向けての中長期的な目標
- 目標:ミッションを達成するための定量化した指標
- 美学:どのような価値観やスタイルで目指していくのか
この3つ要素が矛盾なく組み合わさることで、ミッション達成へとぶれることなく事業を発展させていくことができます。
企業のバリューの決め方
企業のバリューは、ミッションとバリューを行動レベルに具体化していくことです。
バリューは、組織を構成する全員の行動を規定する「価値観」となるため、社員全員がどのように行動すべきかがイメージできるような、具体的な内容であることが重要です。
また、社員全員がその内容に共鳴できなければ、バリューの価値を発揮することができませんし、あまりたくさんの項目を掲げても、理解に時間がかかる上に浸透させることはできないでしょう。
できるだけ「シンプルに、共感できる内容」というのを前提に、決定していくことも大切です。
マネーフォワードの例でみてみると
User Focus
私たちは、いかなる制約があったとしても、常にユーザーを見つめ続け、本質的な課題を理解し、ユーザーの想像を超えたソリューションを提供します。
Technology Driven
私たちは、テクノロジーこそが世界を大きく変えることができると信じています。
テクノロジーを追求し、それをサービスとして社会へ提供していくことで、イノベーションを起こし続けます。Fairness
私たちは、ユーザー、社員、株主、社会などのすべてのステークホルダーに対してフェアであること、オープンであることを誓います。
分かりやすく、それでいて共感を得られやすいですよね。
ミッション・ビジョンを達成するために何が必要か、一人一人がどう行動していくべきかを深く掘り下げていきましょう。
まとめ
ミッション・ビジョン・バリューは、経営における羅針盤です。
ミッション・ビジョン・バリューがなくても、それなりに良い結果をだすことはできるかもしれません。
しかし、事業が何かしらの壁にぶつかってしまったときに、企業としての目指すべき方向性や指針がないと、組織はあっという間に壊れてしまうことでしょう。
「日本でいちばん大切にしたい会社」というベストセラーを書いた法政大学の坂本光司教授も、次のように言っています。
「これまで多くの会社を見てきましたが、優れた理念を持ち、経営者自身がその体現に努める企業は、厳しい環境の中でも安定した経営を続けています。正しき経営は滅びず、欺瞞に満ちた経営が滅ぶのです。」
しかし、何となく形は決まっていても、それを誰が見ても分かりやすく表現するのは難しいです。
そういったときは、コンサルタントに相談してみるのも一つの手です。
弊社代表の北岡は、今まで中小企業に特化したコンサルティングを1000社以上行い、成功率は「93.8%」を誇っています。
実際にコンサルを受けた企業の中には売上を「20倍」にした事例もあります。
そういった成功事例も踏まえてアドバイスできるので、企業の方向性や判断基準などを明確にすることができます。
コンサルを検討したい方は、まずは無料の「メルマガ」に登録してみてください。
成功している企業の多くは、明確なミッション・ビジョン・バリューがあります。
企業が描く未来に共感することで、社員や顧客、関わる人々が支持してくれるのです。
ミッション・ビジョン・バリューを決定し、共有・浸透させることが、事業の成功の鍵となるでしょう。