今回は、経営目標を達成するための「経営戦略」についてお話していきます。
インターネットが普及した情報社会である昨今、企業の競争も過激になっています。
自社の経営目標を達成するため、競合企業に負けずに経営を続けていくためには経営戦略が重要ということは明らかでしょう。
しかし、経営戦略という言葉を聞いたことはあっても、その内容を理解して経営戦略を考えている人は意外にも少ないものです。
特に中小企業の経営者は、自身で行う業務が多いために、経営戦略に注力できていないケースも多いでしょう。
この記事を読んでいるということは、経営戦略を基礎から理解して、自社の経営を好転させたいと考えているのではないでしょうか。
そこで、この記事では経営戦略について、以下6つの内容を解説していきます。
効果的な経営戦略で自社の業績を好転させたい経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を読むことで、経営戦略についての理解を深めて、より効果的な経営戦略を生むことができますよ。
そもそも経営戦略とは?
はじめに、そもそも経営戦略とはなんなのか?ということを解説していきます。
経営戦略とは、「企業が経営目標を達成するための計画や作戦」のことです。
経営戦略に明確な定義はなく、世の研究者や有識者たちがさまざまな定義付けをしていますが、その多くは「企業が経営目標を達成するための戦略」が根幹にあります。
経営戦略とは、経営目標を達成するためにヒト・モノ・カネなどの経営資源をどう使うのかを決めることです。
近年では、テクノロジーの発展が加速したため、経営戦略の幅も広がりました。
自社に必要な情報を必要なだけ仕入れて、効果的な戦略考えることが必要とされています。
つまり、経営に関わってくる内部要因と外部要因を把握して、競争に負けない戦略を作ることが経営者に求められる仕事なのです。
経営戦略と経営戦術の違い
経営戦略の話をすると、経営戦術とは何が違うんですか? と聞かれることがよくあります。
経営戦略と経営戦術の違いは、マクロかミクロかということです。
2つの言葉は一般的に次のように定義されています。
- 経営戦略・・・経営目標を達成するための計画・作戦
- 経営戦術・・・経営戦略を成功させるための具体的な施策や手段
掲げている経営目標を達成するための事業計画や作戦が、経営戦略です。
そして、経営戦略を成功させるために、業務内容を決めることが経営戦術です。
違いをはっきりさせて、従業員が理解しやすい経営戦略と経営戦術を考えましょう。
事業レベルで戦略を!経営戦略の3つの種類
ここからは経営戦略の3つの種類について解説します。
3つの経営戦略を知っておくことで、自社に経営戦略を浸透させることができます。
- 企業戦略
- 事業戦略
- 機能別戦略
これらの経営戦略は、上から順に階層化されています。
そのため、企業戦略を事業戦略に、事業戦略を機能別戦略に落とし込むことで、経営戦略を具体的にしましょう。
それぞれの経営戦略の種類について解説します。
経営戦略の種類1.企業戦略
企業戦略は、組織レベルでの経営戦略のことを指します。
一般的に経営戦略として認識されているのは、企業戦略ではないでしょうか。
企業戦略を立てることで、企業が経営目標を達成するために、どのような施策や方法に取り組むのかを明確にできます。
たとえば、企業としての体制や方針を決めることが企業戦略です。
具体的には、次のようなことを決めなければいけません。
- 経営ビジョンの決定と浸透
- 事業のドメインの決定
- 経営資源の分配
企業の体制や方針を変更することは、頻繁にはありませんが、これらを変更するタイミングや変更内容を決めることも企業戦略の仕事と言えるでしょう。
企業戦略を決めなければ、次に紹介する事業戦略や機能別戦略を立てることができないため、まずは企業戦略を立てることから始めましょう。
経営戦略の種類2.事業戦略
事業戦略は、企業戦略の下の階層で企業戦略に沿った、事業ごとの戦略です。
事業戦略を立てることで、その事業が競争の中でどうやって競争に勝ち残るのか、どうやって顧客満足度を得るのかを示すことができます。
事業戦略では、具体的に次のようなことを決めなければいけません。
- 経営資源の分配
- ビジネスモデルの決定・確立
中小企業やの場合は、企業戦略と事業戦略を一緒にしている場合もあります。
しかし、事業が複数ある場合などは、事業ごとにターゲットや市場が異なることもあるため、事業ごとに戦略を設定しましょう。
経営戦略の種類3.機能別戦略
機能別戦略は、事業戦略を成功させるために、事業内にある各機能ごとの戦略です。
機能別戦略を立てることで、各機能を担当する従業員に業務の方針を浸透させることができ、従業員が業務を進めやすくなります。
各機能とは、営業・販売・人事・財務など業務のことです。
具体的には次のようなことを決めます。
- 経営資源の分配
- 各機能でのシナジー効果
機能別戦略は、経営戦略の中でも最下層の戦略です。
機能別戦略を決めた後には、機能別戦略と事業戦略と整合性があるか、事業戦略が企業戦略と整合性があるかをチェックしましょう。
効果的な経営戦略を立てる4つの手順
次に経営戦略を立てるときの4つの手順について解説します。
経営戦略の言葉の意味や種類を知っていても、実際に経営戦略を立てることはできません。
効果的な経営戦略を立てるためにも次の4つの手順は最低限知っておいてください。
- 自社分析と他社分析を行う
- 自社のSTPを明確にする
- 明確な経営目標を立てる
- 自社が顧客に提供できる価値を検討する
それぞれの手順について解説します。
手順1.明確な目標を立てる
1つ目の手順は、明確な目標を立てるということです。
経営目標はもちろん、事業や機能別でも明確な目標を立てることで、自社がどこを目指すのかを示すことができます。
経営戦略は、目標を達成するための計画なので、まずは目標を立ててゴールを明確にしなければ、経営戦略を立てることはできません。
まずは、明確な目標を立てて、ゴールを決めましょう。
手順2.自社分析と他社分析を行う
2つ目の手順は、自社分析と他社分析を行うということです。
自社と他社の現時点での違いをわかっていなければ、効果的な戦略を立てることが難しいです。
自己分析を行うことで、現在の業界内での自社のレベルやポジションを知ることができます。
つまり、自己分析を行うことでスタート地点を明確にすることができるのです。
スタート地点がわかっていなければ、自社が今どのレベルなのか、市場の中でどのポジションなのかを把握できません。
また、他社分析を行うことによって、他社が業界内でどの位置にいるのかを明らかにできます。
自社と他社の違いがわかれば、差別化した経営戦略を立てることができるのです。
また、事業を展開しようとしている業界のことも調査しておくことで、経営戦略を立てやすくなります。
手順3.STP分析を行う
3つ目の手順は、STP分析を行うということです。
STPとは、
- Segmentation(セグメンテーション)
- Targeting(ターゲティング)
- Positioning(ポジショニング)
のことで、STP分析とは、マーケティング戦略のフレームワークのことです。
STP分析をすることで、自社が市場のどこで、誰に向けてどのようにポジションを取って事業を展開していくのかを決めることができます。
繰り返しになりますが、経営戦略では自社がどのポジションを狙うのかを明確にすることが重要です。
事業方針を決めて経営戦略をより効果的なものにするためにも、STP分析を行ってみましょう。
手順4.自社が顧客に提供できる価値を検討する
最後に自社が顧客にどのような価値を提供できるかを検討しましょう。
ここまで得た情報の中で、どのような価値を生み出して顧客に提供するのか、どのように提供するのか、ということを決めるのです。
他社とは違う価値を提供できなければ、競争は激化してしまいます。
他社とは違う価値を提供できれば、競争をせずとも経営を続ければれる可能性も高くなるため、他社とは違う価値の提供について考えてみてください。
ここまでを行うことで、自社の経営戦略を立てることができます。
経営戦略が決まったときには、自社の戦略が経営目標を達成することにつながっているか、企業戦略・機能別戦略・事業戦略がつながっているかを確認してください。
経営戦略を成功させる3つのポイント
次に経営戦略を成功させる3つのポイントを解説します。
経営戦略を成功させるには、これから紹介する3つのポイントを抑える必要があります。
特に中小企業の場合は、この3つのポイントを抑えられていないがために、経営目標を達成できていないケースが多いです。
- ビジネスモデルを明確にする
- 事業戦略・機能別戦略まで落とし込む
- ITを活用する
これら3つのポイントを抑えて、経営戦略を成功させ、経営目標を達成しましょう。
それぞれのポイントについて解説します。
ポイント1.ビジネスモデルを明確にする
1つ目のポイントは、ビジネスモデルを明確にするということです。
中小企業の場合、ビジネスモデルが明確になっていないまま、経営を進めているケースも珍しくありません。
ビジネスモデルを見える化して、どのような仕組みで利益が生まれるのかを明確にしなければ、経営戦略を成功させるどころか、経営戦略を作ることも難しいです。
ビジネスモデルが明確になっていない場合は、ビジネスモデルの例やフレームワークを調べて自社のビジネスモデル作りの参考にしてください。
また、ビジネスモデルを従業員に共有するようにしましょう。
ビジネスモデルを従業員に共有することで、従業員の業務がどのように顧客のため、会社のためになっているのかを把握でき、モチベーションを上げることができます。
ビジネスモデルについては当サイトの別記事で詳しく解説しています。
新たなビジネスモデルを作りたい方や、ビジネスモデルについて理解を深めたい方は、ぜひご一読ください。
ビジネスモデルの作り方、考え方とは?成功事例に学ぶ8つのパターン
ポイント2.事業戦略・機能別戦略まで落とし込む
2つ目のポイントは、事業戦略・機能別戦略まで落とし込むということです。
繰り返しになりますが、経営戦略には3種類あります。
- 企業戦略
- 事業戦略
- 経営戦略
経営戦略というと、一般的に考えられているのは企業戦略ですが、企業戦略を事業戦略や機能別戦略まで落とし込むことで、社内に経営戦略を浸透させることができます。
経営目標だけ立てて、経営戦略を社内に浸透できなければ、従業員のベクトルを合わせることが難しいです。
そのため、経営戦略を立てるときには、上記3つの戦略を立てるようにしましょう。
ポイント3.ITを活用する
3つ目のポイントは、ITを活用するということです。
ITを活用することで、人件不足などの内部環境があったとしても、経営戦略を成功させやすくなります。
日本ではテクノロジーが発展していますが、それを活用できている企業はあまりにも少ないです。
そのため、経営戦略の内容にもIT技術を使った施策や、事業を追加することで生産性を上げることで、他社と差をつけて経営戦略を成功させることができるのです。
たとえば、次のようなIT技術を企業で活用することができます。
- オンラインミーティングのツール導入・・・移動・会議コストの削減、コミュニケーションの円滑化など
- タブレットの導入・・・ペーパーレス化で印刷・管理コスト削減など
- クラウドの導入・・・メール・データ・スケジュールの共有など、業務効率の向上など
この他にも、業界ごとに専門性のある分野や、人的リソースがかかってしまう業務もIT技術の導入により、効率化を図れるものもあります。
自社の経営戦略を立てたら、効率化できるところを洗い出し、IT技術の導入を検討することをおすすめします。
マイケル・ポーターが提唱する3つの基本戦略
経営戦略の中でも、アメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱する3つの基本戦略は多くの企業で採用されています。
この基本戦略は、「 他社よりコストを削減する 」「 商品・サービスのクオリティで差別化する 」という2つの観点から作られており、次の3つの経営戦略が基本とされています。
- 差別化戦略
- コストリーダーシップ戦略
- 集中戦略
それぞれの例について解説します。
基本戦略1.差別化戦略
差別化戦略は、自社の商品と他社の商品を差別化して、市場でポジションを確立する戦略です。
顧客のニーズの多様化が進んでいる社会で、他社との差別化を行うことは自社の市場でのポジションを確立するために必要不可欠と言っても過言ではありません。
- 価格
- デザイン
- 品質
- 汎用性
商品やサービスの基本的な構成要素で差別化することで、顧客に価値を感じてもらいやすくなり、自社の業績を上げることができます。
たとえば、ディスカウントショップとして有名な株式会社ドン・キホーテは、一般的な小売店とは違って、商品を圧縮陳列して各商品にPOPを展示して販促を行っています。
一般的な小売店では、商品の陳列を規則的にして、顧客が商品を見やすいようにディスプレイされています。
つまり、ドンキホーテは従来のディスプレイ方法を覆すことで、現在のポジションを確立したのです。
このように、他社と差別化してポジションを確立してビジネスを行うことが差別化戦略なのです。
経営戦略の例2.コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略は、競合他社よりもコストを下げることで、価格で競争優位性を得るという戦略です。
つまり、コストを下げて生産性を上げることがコストリーダーシップ戦略の最大の目標といえます。
- 原価コスト
- 生産コスト
- 人件コスト
- 設備コスト
このあたりのコストを見直したり、IT技術の導入やアウトソーシングの導入により、コストを削減して生産性を上げることが求められます。
たとえば、外食チェーンのサイゼリヤはコストリーダーシップ戦略の代表的な例といえるでしょう。
サイゼリヤは、自社農園や自社工場を持つことにより原価コストの削減、調理効率の向上を実現しています。
自社工場に至っては、日本ではなくオーストラリアに工場を構えて、料理に必要な材料を加工しています。
海外で加工を行うことにより、ミラノ風ドリアが300円ほどの低価格で提供されているのです。
このようにコストリーダーシップ戦略は、コスト削減を行って市場でのポジションを確立する戦略なのです。
ただし、この戦略は中小企業には向きません。
価格競争に巻き込まれてしまうと、とにかく価格を下げて競合に勝とうとしてしまうあまり利益が上がらず、行き詰ってしまうというパターンが非常に多いのです。
中小規模の会社の場合は、コストリーダーシップよりも、先に紹介した差別化戦略や次に紹介する集中戦略を意識することのほうが大事です。
経営戦略の例3.集中戦略
集中戦略とは、ターゲットや地域などの市場やチャネルを限定して、集中的にビジネスを行う経営戦略です。
市場やチャネルを限定することで、少ない資本でもコスト削減や差別化を図り、利益をだすことができます。
しかし、近年では集中戦略はそれだけでは意味がないという意見も多いです。
というのも、差別化戦略やコストリーダーシップ戦略でも、最終的には集中戦略の考えが含まれるからです。
たとえば、前述したSTP分析などは、自社のポジションを決めるための分析なので、集中戦略の考えが含まれています。
このように、どのような戦略であっても、集中戦略の考えが含まれるため、あえて集中戦略を行わなくても良いと考えられているのです。
他企業の経営戦略の事例を紹介
最後に他企業が行っている経営戦略の事例を紹介します。
他企業が具体的にどのような戦略を行っているのかを知ることで、自社の経営戦略にも具体性をもたせることができるでしょう。
- 株式会社ユニクロ
- 株式会社ライザップ
以上2つの企業の経営戦略を紹介します。
株式会社ユニクロの経営戦略
株式会社ユニクロは、独自のビジネスモデル確立して、コストリーダーシップ戦略を行うことで成功を収めました。
ユニクロの独自のビジネスモデルというのは、商品の企画から販売までを一貫して行うことです。
出典:ユニクロのビジネスモデル(株式会社 ファーストリテイリングHP)
この独自のビジネスモデルにより、低価格で高品質な商品を提供できているのです。
また、ユニクロは世界中の人々に究極の普段着を提供することを明言しています。
企業規模が拡大して、利益が大きくなっても高級ラインを出さないこともユニクロの経営戦略と言えるでしょう。
株式会社ライザップの経営戦略
株式会社ライザップは、「COMMIT2020」と称して、2021年3月期に連結売上高3,000億円、営業利益350億円を達成することを目標に経営戦略を公表しています。
株式会社ライザップの事業戦略は、グループ会社とのシナジーを活用するためのグループ経営戦略、法人や地方自治体に向けたプログラムの展開をしています。
既存の事業の拡大はもちろん、これまで個人を対象としたサービスを展開しているイメージが強いライザップが法人や地方自治体を対象に、市場開拓を行うというのです。
より多くの人を健康にという意識のもと、日本のフィットネスシーンで話題になっているライザップですが、今後さらに勢いが増すかもしれませんね。
【まとめ】他社に負けない経営戦略で企業を存続させよう!
今回は経営目標を達成するために必要な「経営戦略」について解説しました。
自社の経営目標を達成するためには、それを達成するための道筋を明確にしなければいけません。
その道筋が経営戦略なのです。
中小企業の場合は、経営目標が明確になっていても、経営戦略が明確になっていないケースもあります。
そこの記事を読んでくださった方の中にも、経営戦略が明確になっていない企業の経営者もいるのではないでしょうか。
そんなあなたに、もう一点だけお伝えしたいことがあります。
それが、経営目標を立てる前に、自社商品の価格が適切であるかを確認してほしいということです。
なぜなら、自社商品の価格が適切でないことが原因で、経営戦略を成功させることができない方や、経営戦略を立てたにもかかわらず、そもそも現実的な戦略ではなかったというケースが非常に多いからです。
経営戦略を成功させることができなければ、経営目標を達成することもできません。
利益をあげることができなければ、最悪の場合、倒産に追い込まれることも考えられます。
だからこそ自社商品の価格が適切であるかを見直してほしいのです。
経営戦略を立てることは重要ですが、そもそも商品価格が適切でなければ、経営目標を達成することが難しいということは覚えておきましょう。