現物出資のメリットや手続きについて解説!4つの注意点とは?

鷲津晴人
現物出資のメリットや手続きについて解説

今回は「現物出資」についてお話をしていきます。

 

会社を設立する場合(法人成りする場合)、出資は現金で行うのが一般的です。

しかし実は、現金の代わりに現物を出資することもできます。

たとえば手元に現金が不足している場合や、事業で使えそうな現物を持っている場合なんかは、現物出資を行いたいと思うこともあるはずです。

 

そこで今回は現物出資について、以下のような内容を解説していきます。

 

  • 現物出資の具体的な意味
  • 現物出資のメリット、デメリット
  • 現物出資をするときに必要な手続き(仕訳、会計処理)
  • 現物出資をするときの4つの注意点

 

現物出資を考えている、もしくは興味があるという場合は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。

 

 

現物出資とは具体的にどういうものなのか?

現物出資とは読んで字のごとく、お金ではなく現物で会社への出資を行うことです。

たとえば不動産、車、パソコン、コピー機、債券など、お金以外の物による出資はすべて現物出資と呼ばれます。

 

備品のコピー機

 

会社を設立する方法は大きく分けて2つあるのですが、どちらにせよ発起人は設立時に発行する株式を一株以上引き受けなければいけません。

 

  1. 発起設立……会社設立時に発行される株式をすべて発起人が引き受けて会社を設立する方法
  2. 募集設立……会社設立時に発行される株式の一部を発起人が引き受け、残りは別の株主(引受人)を募集して会社を設立する方法

 

これは会社法第25条で定められています。

 

第二十五条 株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。
一 次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法
二 次節、第三節、第三十九条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法

(引用:e-Gov_会社法第二十五条)

 

このとき、現物出資を利用すれば、お金以外の現物を使って株式の引き受けができるというわけですね。

もちろん現物出資は会社設立時だけでなく、増資を行うさいにも行うことができます。

 

 

現物出資をするメリットとは?

現物出資には、以下のようなメリットがあります。

 

  • 現金がなくても資本金を増やすことができる
  • 減価償却による節税ができる
  • すでに手元にある物を備品として使用することができる

 

現物出資を行う場合、これらの狙いがあって行われることが多いです。

それでは1つずつ解説していきましょう。

 

 

現物出資のメリット1.
現金がなくても資本金を増やすことができる

現物出資を行えば、現金がなくても資本金を増やすことができるというメリットがあります。

会社の設立自体は資本金1円でも可能なのですが、極端に低い資本金で会社を設立してしまうのはおすすめできません。

なぜならあまりに資本金が低いと、融資が受けにくくなったり、対外的な信用が低くなってしまったりするからです。

そのため会社を設立するさいには、基本的にあるていどまとまった資本金がある方が好ましいと言えます。

 

ただ、どうしても手持ちの現金がなくて、資本金を上げることが難しいという場合もあるのではないでしょうか。

そんなときに現物出資を行えば、備品を出資した分、資本金を増やすことができるのです。

つまり現物出資には、資本金が増えることによって融資が受けやすくなったり、対外的な信用が高くなったりする、というメリットがあると言えるわけですね。

 

 

現物出資のメリット2.
減価償却による節税ができる

減価償却できる物を現物出資をすれば、減価償却によって節税を行うことができます。

減価償却した分は経費計上することができるので、具体的には法人税の節税が可能です。

 

そのため十分な資金を持っていたとしても、あえて節税のために現物出資を行うという発起人もいます。

 

 

現物出資のメリット3.
すでに手元にある物を備品として使用することができる

たとえばパソコンなど、今使っているものをそのまま会社の備品として使いたい場合は、現物出資という手段が用いられます。

現物出資をすることで、今使っている備品を資本金として計上しつつ、そのまま会社の備品として使用することができるのです。

 

 

現物出資にはデメリットもある

現物出資にはメリットもある反面、以下のようなデメリットも存在しています。

 

  • 現物出資でキャッシュは増えない
  • 出資者、もしくは会社に税金がかかる場合がある
  • 手続きに手間がかかる

 

現物出資を行う場合は、これらのデメリットとメリットを見比べて、本当にやるべきかどうかを考えなければいけません。

それでは1つずつ解説していきましょう。

 

 

現物出資のデメリット1.
現物出資でキャッシュは増えない

当たり前なことですが、現物出資した分資本金は増えても、実際のキャッシュは一切増えません。

基本的に会社の経営破綻というのは、手元のキャッシュがなくなって各種支払いが滞ってしまったときに起こります。

多少赤字になっても手元にキャッシュがあれば会社を存続することができますが、たとえ黒字でも、キャッシュがなければ会社は倒産してしまうのです。

その辺りについて詳しくは黒字倒産の記事でも解説しているので、併せて確認してみてください。

⇒黒字倒産の原因や事例をわかりやすく解説!回避するための7つの対策とは?

 

もし、どうしても運転資金が足りないという場合には、資本金よりも利益率を上げる方がおすすめです。

利益率が上がれば、その分少ない運転資金でも十分な利益を得ることができます。

 

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もちろん、これ以上価格を上げることはできないという企業もあるでしょうし、その場合は別の手段を考える必要があります。

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⇒【無料】価格アップに成功した3人の事例インタビュー

 

とにかく現物出資をする場合は、資本金は増えてもキャッシュは増えていない、ということをよく理解しておくべきですね。

 

 

現物出資のデメリット2.
出資者、もしくは会社に税金がかかる場合がある

現物出資を行った場合、出資者、出資先(会社)に税金が課せられてしまう可能性があります。

課せられる可能性があるのは、主に以下のような税金です。

 

  • 法人税
  • 所得税(譲渡所得税)
  • 消費税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税

 

これらの税金が、以下の条件に基づいて課せられます。

 

  • 出資者が個人なのか、法人なのか
  • 出資者が法人の場合、適格現物出資なのか、非適格現物出資なのか
  • 何を現物出資するのか

 

※適格現物出資とは、出資法人に対して被出資法人の株式のみが交付され、かつ税制適格要件を満たしている現物出資のことです。

 

状況によってかなり変わってきますが、場合によっては出資者側が多額の税金を課せられることもあります。

そのため自社の出資者や出資物からどのような税金がどのくらいかかってくるのかについては、事前に確認をしておくべきです。

数字がよくわからないという場合には、税理士に相談しながら税務処理をやっていくというのも1つの手段ですね。

 

とくに節税効果を期待して現物出資をしようとしているなら、税金についてはよく確認し、理解しておきましょう。

 

 

現物出資のデメリット3.
手続きに手間がかかる

詳しい手順については後述しますが、現物出資をする場合は現金出資の場合に比べて手続きの手間が増えます。

会社法の改正で以前よりはマシになっていますが、さまざまな書類を作成しなければいけないため、それなりに大変なのです。

 

税理士や弁護士に相談して手続きを進めることもできますが、その場合はもちろん費用がかかってきてしまいます。

現物出資を行うさいは、手続きの手間や費用を覚悟したうえで行いましょう。

 

 

現物出資をするときに必要な手続き

現物出資は、以下の手順で手続きを進めていきます。

 

  1. 出資する現物の時価を調査する
  2. 定款に必要事項を記載する
  3. 調査報告書を作成する
  4. 財産引継書を作成する
  5. 必要な場合は名義変更手続きを行う

 

それでは1つずつ、順を追って解説していきましょう。

 

角印を押す手

 

 

現物出資の手続き手順1.
出資する現物の時価を調査する

現物出資の手続き手順としてはまず、出資物の時価が相当であるかどうかの調査をします。

調査を行うのは代表取締役か、もしくは裁判所選任の検査役(調査人)です。

以下の3つの要件のいずれかに当てはまる場合は代表取締役が自分で調査することができ、当てはまらない場合は裁判所選任の検査役(調査人)に調査を依頼する必要があります。

 

  1. 現物出資財産の価額が500万円以下である
  2. 現物出資した有価証券に市場価格があり、法務省令で定める方法により算定されるものを超えていない
  3. 公認会計士、税理士、弁護士等の評価証明書がある(不動産による現物出資の場合は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)

 

ちなみにこれは、会社法の第33条10項に記載されています。

 

また、ここで1つ注意が必要なのが、検査役(調査人)による調査が入る場合は時間と手間が相当かかってしまう、ということです。

とくに時間については、検査役(調査人)による調査は数か月間待たされることもざらにあるため、会社設立のタイミングが大きくずれ込んでしまう危険性もあるのです。

 

そのため現物出資は、代表取締役が調査できるような条件で行われることが非常に多いです。

 

 

現物出資の手続き手順2.
定款に必要事項を記載する

出資物の時価を調査したら、次は定款に以下の必要事項を記載します。

 

  • 出資者の氏名又は名称
  • 出資財産およびその価額
  • 出資者に対して割り当てる設立時発行株式の数量

 

これは会社法第28条で定められており、定款に上記を記載しなければ現物出資の効力は生じません。

 

 

現物出資の手続き手順3.
調査報告書を作成する

出資物の時価が相当であるかどうかの調査結果をもとに、調査報告書を作成する必要があります。

報告者は取締役が務めることになりますので、不備がないかしっかり確認して、管轄の法務局に提出してください。

 

 

現物出資の手続き手順4.
財産引継書を作成する

現物出資をする場合、財産引継書を作成して提出しなくてはいけません。

財産引継書とは、現物出資された資産が出資者から会社側に確かに渡ったということを示す書類です。

1人の出資者と会社との取引を示すものなので、現物出資を複数の発起人で行っていた場合は、その人数分の財産引継書が必要となります。

 

財産引継書の作成ができたら、よく確認してから管轄の法務局に提出してください。

 

 

現物出資の手続き手順5.
必要な場合は名義変更手続きを行う

たとえば不動産や自動車、有価証券などの名義変更が必要なものを現物出資する場合は、それぞれの名義変更手続きを行っておかなければいけません。

名義変更が必要な現物を出資する場合には、忘れずに行っておきましょう。

 

 

現物出資をするときの4つの注意点

ここからは、現物出資をするさいに意識しておくべき4つの注意点を解説していきます。

現物出資をする場合には、主に以下の4点に注意してください。

 

  1. 現物出資できる物とできない物がある
  2. 出資者になれるのは発起人のみ
  3. 資本金が1,000万円を超えると初年度から消費税の課税対象業者になる
  4. 出資者が会社に対しての支払い義務を負う場合がある

 

1つずつ解説していくので、現物出資を考えている場合はしっかりと押さえておきましょう。

 

 

現物出資の注意点1.
現物出資できる物とできない物がある

基本的に現物出資は、貸借対照表に資産として計上できるものならばほとんど出資することができます。

しかし、中には以下のように現物出資できないものもあるので注意してください。

 

  • 名義書換ができないもの(預金や保険証券など)
  • 未完済のため所有権が移転していないローン資産(車両など)
  • 労働やノウハウといった無形物

 

とくにローンの返済が終わっていない車両を現物出資しようとする人は多いので、車両を現物出資したい場合にはきちんと所有権の所在を確認しておきましょう。

 

 

現物出資の注意点2.
出資者になれるのは発起人のみ

現物出資ができるのはその会社の発起人だけです。

それ以外の人が会社に現物出資をすることはできません。

 

とくに勘違いされがちなのが、株式の引受人ですね。

 

前述しましたが、株式会社を設立するには大きく分けて2つの方法があります。

 

  1. 発起設立……会社設立時に発行される株式をすべて発起人が引き受けて会社を設立する方法
  2. 募集設立……会社設立時に発行される株式の一部を発起人が引き受け、残りは別の株主(引受人)を募集して会社を設立する方法

 

そして、この募集設立における引受人は、現物出資をすることができないのです。

あくまでも現物出資ができるのは会社の発起人だけである、ということは認識しておきましょう。

 

 

現物出資の注意点3.
資本金が1,000万円を超えると初年度から消費税の課税対象業者になる

会社設立時の現物出資で資本金が1,000万円を超えてしまった場合、設立2年間の非課税事業者としての認定を受けられず、消費税の支払い義務が生じてしまいます。

たとえば現物出資したものの調査額が思っていたより多くなってしまった場合、ぎりぎり資本金が1,000万円を超えないような調整をしていると、予期せぬ消費税支払いをしなくてはならなくなるかもしれないのです。

 

減価償却による節税効果を期待して現物出資をしようとしている場合には、とくに注意してください。

 

 

現物出資の注意点4.
出資者が会社に対して支払い義務を負う場合がある

現物出資をすると、出資者(発起人)が会社に対しての支払い義務を負ってしまう場合があります。

どういうことかというと、出資物の時価が定款に記載されている価額に対して著しく不足していた場合、出資者がその不足分を会社側に支払わなければいけないという義務が生じるのです。

たとえば、時価が50万円あると思って出資した物の価額が30万円しかなかった場合、差額の20万円を出資者が会社に支払わなければいけなくなってしまうわけですね。

 

このように出資者は予期せぬ支払い義務を負ってしまう場合があるため、時価調査は念入りにしておく必要があるのです。

 

 

【まとめ】現物出資は計画的に行うこと

今回は現物出資についてお話をしてきました。

現物出資には以下のようなメリットがあるため、上手に使えばとても効果的な手段です。

 

  • 現金がなくても資本金を増やすことができる
  • 減価償却による節税ができる
  • すでに手元にある物を備品として使用することができる

 

しかし一方で以下のようなデメリットもあるため、現物出資は計画的に行わなければいけません。

 

  • 現物出資でキャッシュは増えない
  • 出資者、もしくは会社に税金がかかる場合がある
  • 手続きに手間がかかる

 

とくによく理解しておいてほしいのが、現物出資で増えるのは資本金だけであり、キャッシュは増えないというところです。

資本金がいくらあったところで、手元のキャッシュがなくなって支払いが滞ってしまえば会社は倒産します。

そのことを忘れずに、しっかり理解しておきましょう。

 

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現物出資は確かに便利で効果的な手段ですが、必ずしもやるべきであるとは限りません。

自社(もしくはこれから設立する会社)の状況をしっかりと見極め、計画的に行うようにしましょう。

 

 

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