今回はここ数年で増えてきている「フリーミアム戦略」について解説をしていきます。
フリーミアムは、多くの人に自社の商品を届けることができるビジネスモデルです。
そのため、もしあなたが「1度使ってもらえればうちの商品の良さがわかるのに……」と思っているなら、まさに最適な方法であると言えます。
それこそあなたが取り扱っている商品によっては、フリーミアム戦略の採用によって大きく売上を伸ばせるかもしれません。
そこで今回は「フリーミアム戦略」について、以下のような内容を解説していきます。
- フリーミアム戦略の意味
- フリーミアムのメリット、デメリット
- フリーミアム戦略におけるマネタイズ方法の詳細
- フリーミアムの成功事例、失敗事例
マネタイズの手法として、今後ますます注目されていく可能性が高いので、ぜひこの機会に理解しておきましょう。
フリーミアム戦略とは?
フリーミアム戦略とは、基本は無料でサービスを提供し、お金を支払うことで付加価値を提供する、というビジネスモデルのことです。
たとえば、基本は無料で使えて、課金すれば広告や機能制限が消えるスマホアプリやPCソフトなんかは、フリーミアム戦略を実践しているわかりやすい例ですね。
ちなみにフリーミアムは、フリー(free)とプレミアム(premium)を掛け合わせて作られた造語です。
基本的にフリーミアムはその言葉のとおり、フリー(無料)からプレミアム(有料)に切り替わるビジネスモデル、という意味で捉えれば良いでしょう。
フリーミアムと無料トライアルの違い
フリーミアムと無料トライアルはしばしば混同されますが、以下のように違う意味を持った言葉です。
フリーミアム | サービスの利用に期間の制限はない
その代わり、機能制限がある |
無料トライアル (フリートライアル) |
サービスの利用に期間制限がある
機能制限については、ある場合もない場合もある |
簡単に言うと、機能制限がメインとなっているのがフリーミアム、期間制限がメインとなっているのが無料トライアルということですね。
フリーミアムとサブスクリプションの違い
フリーミアムとサブスクリプションには、以下のような違いがあります。
フリーミアム | サービスの利用に期間の制限はない
その代わり、機能制限がある |
サブスクリプション | 使用した期間や使用量に応じて料金が発生するという方式で行うビジネス
月額〇〇円、というサービスの提供形式が多い |
このようにフリーミアムとサブスクリプションは、基本的に違う意味を持つ言葉です。
ちなみに、フリー(無料)からサブスクリプション(有料)に移行するというビジネスモデルは、フリーミアムにおける王道パターンの1つであると言えます。
サブスクリプションについては別記事で詳しく解説しているので、フリーミアムを検討しているなら併せてチェックしておいてください。
⇒サブスクリプションビジネスのメリットと導入条件とは?成功事例を解説
フリーミアムの5つのメリット
フリーミアムには、以下のような5つのメリットがあります。
- 実際に商品を体験してもらえる
- 事業の初動を早めることができる
- 口コミやフィードバックを集めることができる
- 口コミで商品の認知が広まりやすい
- お金を払ってもらいやすい
「無料で商品を提供してしまうと損をするのではないか」と考えがちですが、実はこのように、フリーミアムには多くの優位性が存在しているのです。
それでは1つずつ解説していきましょう。
フリーミアムのメリット1.
実際に商品を体験してもらえる
フリーミアムなら基本は無料で利用することができるため、お客さんが手に取ってくれやすいというメリットがあります。
実際、どれだけ良い商品を売っていても、お客さんが使ってくれなければその良さはなかなか伝わりません。
そこでフリーミアム戦略を採用すれば、実際に使ってもらえるようにり、商品の良さをお客さんに伝えることができるのです。
そのため、使うことで良さが伝わるようなタイプの商品は、フリーミアムに向いていると言えます。
フリーミアムのメリット2.
事業の初動を早めることができる
フリーミアムなら、商品展開の初動を早めることができます。
なぜなら、無料で商品を利用できることから敷居が下がり、より多くのお客さんの手に届きやすいからです。
たとえばスマホアプリの場合、100円でも取ってしまえばユーザーのダウンロードにブレーキがかかってしまいますが、無料であれば「とりあえずダウンロードしてみる」というユーザーが一気に増えます。
そのためフリーミアム戦略を採用すれば、新しい商品でも比較的早い段階でお客さんの母数を増やすことができるのです。
フリーミアムのメリット3.
口コミやフィードバックを集めることができる
フリーミアムはお客さんの母数を増やしやすいため、口コミやフィードバックを集めやすいというメリットがあります。
口コミを集めることができればプロモーションに利用することができますし、フィードバックが集まれば商品の改善に役立てることも可能です。
ちなみに、「無料で商品を利用している人はフィードバックを返してくれないのではないか」と思われるかもしれませんが、実際は無料で利用しているユーザーからも十分なフィードバックが得られます。
フリーミアムのメリット4.
口コミで商品の認知が広まりやすい
フリーミアムはただ口コミが集まりやすいだけでなく、口コミの拡散によって商品の認知が広まりやすいという特徴もあります。
なぜなら無料で利用できるため、既存顧客がより気軽に知り合いに紹介しやすいからです。
「無料だから試しに使ってみて」といった感じで勧められるわけですね。
そのためSNSによるプロモーションとは、非常に相性が良いです。
フリーミアムのメリット5.
お金を払ってもらいやすい
意外かもしれませんが、フリーミアムの方がよりお金を払ってもらいやすいというメリットがあります。
実際に商品を使ってもらうことで、お客さんが商品の良さを理解したうえで有料サービスを購入してくれるようになるからです。
つまり無料提供しているサービスの質さえ良ければ、お客さんは商品の質を疑うことなく、むしろ喜んでお金を支払ってくれるというわけですね。
ちなみに商品の価格は、お客さんが感じた価値によって決定します。
どれだけ原価がかかっていても、お客さんにとって価値がなければお金は出しません。
しかし逆に原価がかかっていなくても、お客さんが価値を感じさえすれば、その分のお金をきちんと支払ってくれるのです。
フリーミアムの3つのデメリット
フリーミアムはメリットだけが注目されがちですが、以下のようなデメリットも存在しているので注意が必要です。
- 黒字化するまでに時間がかかる
- 運用や仕組みづくりが難しい
- 事業に向き不向きがある
フリーミアム戦略を実践する場合、これらのデメリットについてもしっかり理解しておく必要があります。
それでは詳細を説明していきましょう。
フリーミアムのデメリット1.
黒字化するまでに時間がかかる
フリーミアムでは最初無料で商品を提供するため、黒字化するまでに時間がかかってしまいます。
最初は無料プランに誘導するため、売上が上がるまで時間がかかってしまうからです。
また、無料プランから有料プランへの誘導が案外難しく、検証と改善を重ねないと上手く回ってくれないことも、黒字化に時間がかかる要因になっています。
そのためフリーミアム戦略を採用するなら、あるていど経営資源の余裕が必要です。
フリーミアムのデメリット2.
運用や仕組みづくりが難しい
フリーミアムには、運用や仕組みづくりが難しいというデメリットがあります。
とくに難しいのが、前述した無料プランから有料プランへの誘導です。
有料プランに移行させたいあまり機能を制限しすぎてしまうと無料プランの利用率が下がってしまいます。
しかしかといって、逆に無料プランの機能を充実させすぎると、今度は有料プランへの移行率が下がってしまうのです。
フリーミアム戦略は、この無料プランと有料プランのバランスが非常に難しいわけですね。
フリーミアムのデメリット3.
事業に向き不向きがある
フリーミアムは、事業や商品による向き不向きが激しいです。
たとえばインターネット上でのサービスやスマホアプリなどでは導入しやすい反面、物販や製造業では導入しにくいと言えます。
フリーミアムの導入は、あくまでも向いている事業を営んでいるときに検討するようにしましょう。
フリーミアム戦略のマネタイズ方法
フリーミアム戦略には、いくつかのマネタイズ方法があります。
- 追加機能、サービスの開放
- 容量の増加
- 広告の排除
フリーミアムは、これらの機能と引き換えに無料プランから有料プランに切り替えるのです。
それでは1つずつ解説をしていきます。
フリーミアムのマネタイズ方法1.
追加機能、サービスの開放
有料プランに切り替えることで、追加機能、追加サービスを開放するというマネタイズ方法があります。
無料プランで利用ユーザーを増やしつつ、機能やサービスが物足りなくなってきたユーザーを有料プランに誘導するというやり方です。
たとえば通話アプリなんかだと、1対1の会話は無料プランでも使い放題で、多人数での通話をするためには月額費用を支払う必要がある、というようなマネタイズを行っています。
フリーミアムのマネタイズ方法2.
容量の増加
フリーミアムには、有料プランに切り替えることで容量を増やすというマネタイズ方法もあります。
たとえばクラウド機能があるサービスの場合、サービスの使用量は基本すべて無料で、ストレージ容量を増やすさいに有料になるというパターンが多いですね。
またストレージ容量だけでなく、通信容量を増やすというケースもあります。
フリーミアムのマネタイズ方法3.
広告の排除
無料プランから有料プランに切り替えることで広告の表示を消すというマネタイズ方法もあります。
この方法なら、無料プランの利用者が多い場合でも広告収入を得ることが可能です。
スマホアプリや動画配信サイトなどで多いマネタイズ方法ですね。
フリーミアムの成功事例3選
ここからは、フリーミアムの成功事例を紹介していきます。
- YouTube
- クックパッド
- Dropbox(ドロップボックス)
どれも有名なサービスですが、フリーミアム形式であったからこそ、ここまで認知を広げることができたと言えます。
それでは1つずつ事例を確認していきましょう。
フリーミアムの成功事例1.
YouTube
多くの人が利用している動画配信サイト「YouTube」も、フリーミアム戦略を取り入れています。
採用しているマネタイズ方法は「機能の追加」と「広告の削除」です。
まず、基本的にYouTubeでの動画視聴や動画投稿は無料で利用することができます。
無料で気軽に利用できるからこそ、YouTubeは世界中で多くのユーザーに利用されるようになりました。
そして、YouTubeをもっと便利に使いたいというユーザーに対しては、「YouTube premium(プレミアム)」というサブスクリプション形式のサービスを提供しています。
「YouTube premium(プレミアム)」に加入すれば、広告を消したり、さまざまな追加機能を利用できるようになったりするのです。
このようにYouTubeは、無料プランで多くのユーザーを集め、有料プランでより濃いファンを作り出すことに成功しています。
さらにYouTubeは「無料ユーザーの視聴による広告収入」、「有料ユーザーの月額使用料」の両方を収益の柱としているわけですね。
フリーミアムの成功事例2.
クックパッド
多くの主婦に愛されている料理レシピのコミュニティサイト「クックパッド」も、フリーミアム戦略を採用しています。
使われているマネタイズ方法は「機能の追加」です。
クックパッドは無料で、誰でも一般投稿者の料理レシピを閲覧することができます。
実際、スマホを片手にクックパッドを見ながら料理をする人も多いのではないでしょうか。
そしてクックパッドは、月額費を支払ってプレミアム会員になることで、レシピの人気順検索ができるようになったり、プロのレシピを閲覧できるようになったりします。
この機能により、無料でクックパッドを見ながら料理をしていた人がさらに料理に興味を持ち、追加機能にお金を支払う、という流れるような構図ができ上がるわけですね。
フリーミアムの成功事例3.
Dropbox(ドロップボックス)
オンラインストレージサービスである「Dropbox」も、フリーミアム戦略で収益化を図っています。
採用されているマネタイズ方法は、「容量の追加」と「機能の追加」です。
Dropboxは、アカウント登録さえすれば無料で数ギガバイトのオンラインストレージを利用することができます。
あまり多くのファイルを保存することはできませんが、PC間でのデータのやり取りやサイズの小さいデータのバックアップをとる目的であれば非常に便利です。
そして有料である「Plusプラン」、「Professionalプラン」に登録すれば、使用できる容量が大幅にアップするため、大きなサイズのファイルでも保存しておくことができるようになります。
さらにセキュリティの強化や機能の追加など、サービスの質も大幅に向上するのです。
Dropboxのように、容量の追加でマネタイズを行っている場合、「最初に無料で利用しているうちにどうしても容量が足りなくなってそのまま課金する」という流れを見込むことができます。
非常に自然な流れであるため、無料プランから有料プランへ抵抗なく移行してくれるユーザーも多いのです。
フリーミアムの失敗事例2選
非常にメリットの多いフリーミアムですが、中には失敗事例も存在しています。
- Chargify LLC
- New York Times Online
これらの事例を参考にして、フリーミアム戦略の失敗を事前に防ぎましょう。
フリーミアムの失敗事例1.
Chargify LLC
「Chargify LLC」というアメリカの会社が、支払い請求管理ソフトでフリーミアム戦略を実践し、失敗してしまいました。
失敗した原因は、無料プランと有料プランの差別化が上手くできなかったことです。
Chargify LLCが提供するソフトは、決して質が悪かったわけではありません。
しかし、無料プランでも十分すぎるほどの機能を備えていたため、有料プランへ移行するお客さんがかなり少なかったのです。
フリーミアム戦略では、有料プランに移行するお客さんが少なければ利益を確保できません。
そのためChargify LLCは、一時期経営を大きく傾けてしまったのです。
このようにフリーミアム戦略では、無料プランと有料プランのバランスを上手く設定する必要があります。
フリーミアムの失敗事例2.
New York Times Online
「New York Times Online」というオンライン記事を提供しているサイトも、フリーミアム導入初期は上手く運用することができませんした。
最初は無料で20記事まで無料で閲覧できるという形式でサービスを提供していたのですが、有料会員の増加が伸び悩んでしまったのです。
しかしその後、無料閲覧できる記事数を10記事にまで下げたことで、一転して300万人以上の有料会員を獲得することに成功しました。
つまり、「20記事無料分があればそれだけで十分だけど、10記事だけでは物足りない」というお客さんが多くいたということですね。
このように無料プランと有料プランの線引きは、少しの違いでも大きくバランスが変わってしまうものなのです。
【まとめ】フリーミアムはファンを作りやすい
今回はここ数年で増えているフリーミアム戦略について解説をしてきました。
簡単にいうと、最初に無料プランを用意して、そこから有料プランに誘導するといったビジネスモデルでしたね。
フリーミアム戦略であれば、より多くのお客さんに自社の商品を体験してもらうことができます。
つまり、より多くのお客さんに商品の価値を伝えることができるのです。
そのためフリーミアム戦略は、自社のファンを作りやすいビジネスモデルであると言えます。
自社のファンを作ることができれば、リピート率や利益率を上げることも可能です。
ちなみに自社のファンが増えてきた場合には、思い切って商品の価格アップについても検討してみてください。
商品の価格を上げるということは、利益率を上げることに直結します。
そして資源が少ない中小企業にとって、もっとも重要なのがこの利益率なのです。
フリーミアムは、最近どんどん増えてきているビジネスモデルです。
もし、あなたの会社で相性の良いサービスを提供しているなら、ぜひ導入を検討してみてください。