ポジショニングマップの正しい作り方とは?軸の決め方や事例を解説

鷲津晴人
ポジショニングマップ

今回はビジネス戦略を立てるときに欠かせない「ポジショニングマップ」について解説をしていきます。

 

ポジショニングマップとは、市場において自社がどのようなポジショニングを取れば競争優位性を得ることができるかを分析する手法です。

 

ビジネスにおいて、どのようなポジショニングをするかは非常に重要です。

自社の強みを最大限に活かし、トップを取れるようなポジションを確立することができれば、大きな競争優位性を得ることができます。

それどころか、競合がいないポジションを見つけることができれば、競合と競争することすらなく結果を出すことが可能です。

しかし逆にポジショニングに失敗してしまうと、激しい競争のすえ十分な利益も出ずに、ただただ消耗することになってしまいます。

 

そこで今回はポジショニングマップについて、以下のような内容でお話をしていきます。

 

  • ポジショニングマップの意味
  • ポジショニングマップの作り方【軸の決め方】
  • ポジショニングマップの事例

 

あなたの会社でもポジショニングマップを活用し、戦う前から勝てるような立ち位置を確立しましょう。

 

 

ポジショニングマップとは

冒頭でもお話ししたとおり、ポジショニングマップとは市場において自社がどのようなポジショニングを取れば競争優位性を得ることができるかを分析するためのものです。

2つの軸でグラフを作り、そこに自社と競合を当てはめていくことで空いているポジション(満たされていないニーズ)を見つけることができます。

 

どのようなものなのかについては、実際にマップを見ていただいた方が早いでしょう。

 

ポジショニングマップ例2

 

 

これは、飲食店を想定したポジショニングマップの例です。

まずこのマップを見ると、「安くて手軽に食事ができる競合A店」と、「高い代わりに高級感があって味も良い競合B店」がいるということが分かります。

さらに、「おいしいものを手軽に食べたい」というニーズに応えている競合がいない、つまりそのポジションが空いていることについても分かりますね。

そこで自社がそのポジションを確立してビジネスを行うことで、今まで応えられていなかったニーズを戦わずして獲得していく、というのがポジショニングマップの使い方です。

もし空いているポジションが見つけられない場合は、「この分野なら自社がトップを取れる」というポジションを探すことになります。

 

このようにポジショニングマップを描くことで、自社が取るべきポジションを明確にすることが可能です。

ビジネス戦略を立てるときや競合分析を行うときには、大いに役立てることができます。

 

 

ポジショニングマップの作り方【軸の決め方】

ここからはポジショニングマップの作り方を解説していきます。

ポジショニングマップを作るときに肝となるのが、2つの軸の決め方です。

それも踏まえ、以下の5つの手順でポジショニングマップを作成していきます。

 

  1. 自社と競合の製品やサービスを抜き出す
  2. KBF(顧客決定要因)を抜き出す
  3. 軸となる2つの要因を抜き出す
  4. マップを作成する
  5. 施策に活かす

 

それでは、順を追って説明していきましょう。

 

 

ポジショニングマップの作り方1.
自社と競合の製品やサービスを抜き出す

まずは自社と比較すべき競合を洗い出し、それぞれの製品やサービスを抜き出しましょう。

 

  • どのようなターゲットを狙っているのか
  • どのようなポジショニングをしているのか
  • どのような強み、弱みがあるのか

 

これらについて抜き出しておくと、このあとの工程がやりやすくなります。

 

 

ポジショニングマップの作り方2.
KBF(顧客決定要因)を抜き出す

次にKBF(顧客決定要因)を抜き出しましょう。

KBFとは、顧客が商品の購入を決めるときに重要視するポイントのことです。

たとえば「値段」、「品質」、「ブランド」などが挙げられます。

自社の商品やサービスについて、お客さんがどのような動機で購入を決定するのかアンケートを取ってみても良いでしょう。

 

 

ポジショニングマップの作り方3.
軸となる2つの要因を抜き出す

KBF(顧客決定要因)を参考にして、軸となる2つの要因を抜き出していきましょう。

軸を決めるときは、以下の3つのことを意識すると効果的なポジショニングマップを作りやすくなります。

 

  1. KBFを重要視する
  2. 2つの軸はそれぞれ独立させる
  3. 自社の強みが活かせる要素で軸を作る

 

まずは先に抜き出しておいたKBFを重要視するべきです。

お客さんが購買を決める要素でなければ、どれだけ優れていてもあまり大きな意味がありません。

お客さんに対して影響力のある要素で軸は作りましょう。

 

次に、2つの軸はそれぞれ独立させる必要があります。

2つの軸に相互関係があると、偏ったポジショニングマップになってしまうからです。

たとえば飲食店で考えた場合、「味」と「価格」は必ずしも独立しているとは言えません。

なぜなら価格を上げて材料の質を上げれば、あるていどは比例して味も良くなるはずだからです。

そのため「味」と「価格」に関しては、「安くてそこそこか、高くておいしいか」という1本の軸にするべきでしょう。

 

そして軸を決めるさいは、自社の強みが活かせる要素かどうかも重要です。

自社の強みが活かせないような要素で軸を作ってしまうと、肝心な勝てる戦略を立てることが難しくなってしまいます。

あくまでも自社のポジションを確立するという目的意識は持っておきましょう。

 

以上の3つを意識して2つの軸を作ると、正確なポジショニングマップが作りやすくなります。

ポジショニングマップを作る場合は、ぜひ意識してみてください。

 

 

ポジショニングマップの作り方4.
マップを作成する

作成した2本の軸を使ってマップを作り、そこに競合を当てはめていってください。

そうすることで、競合がどのようなポジションで勝負をしていて、どのようなポジションが空いているかを視認できるようになります。

あとは自社が強みを発揮できて、かつ空いているポジション、もしくは競合が弱くて自社がトップを取れるようなポジションを探しましょう。

良いポジションを見つけることができれば、競合と戦うことすらなく利益を上げることも十分に可能です。

 

 

ポジショニングマップの作り方4.
施策に活かす

あとは作成したポジショニングマップを参考にして、実際に施策を行っていきましょう。

ポジショニングマップが正しく作成できていれば、狙うべきターゲットや自社の強みについても把握できているはずです。

せっかく自社と競合のポジションを把握したので、過当競争にならないような戦略を立てましょう。

 

また、あなたが中小企業や個人事業主である場合は価格の下げすぎにも注意が必要です。

中小企業や個人事業主には大企業のような資源がないので、薄利多売で勝負をすることは基本できません。

実際、無理に安さで勝負しようとしてしまい、疲弊した結果潰れてしまう経営者は多いです。

そうならないためにも、戦略を立てるさいにはきっちり利益が取れるようなビジネスモデルを心掛けましょう。

 

ポジショニングマップの事例3選

ここからはポジショニングマップの事例を3つ紹介していきます。

 

  • ハンバーガー業界
  • アパレル・ファッション業界
  • カフェ(コーヒー)業界

 

自社で作成するときの参考にしてください。

 

 

ポジショニングマップの事例1.
ハンバーガー業界

ハンバーガー業界でポジショニングマップを作成すると、以下のようになります。

 

ポジショニングマップ例ハンバーガー業界

 

2つの軸は以下のとおりです。

 

  1. 「価格重視」か「味重視」か
  2. 「手軽さ重視」か「品質重視」か

 

マップを見ると、業界トップのマクドナルドが「低価格、かつ手軽さを重要視している」ということがわかります。

 

それに対してモスバーガーやフレッシュネスバーガーは、価格が高くなっても味や質にこだわって商品を提供することでマクドナルドと差別化を図っているということがわかりますね。

そのためモスバーガーやフレッシュネスバーガーは、提供までに時間がかかってもできたてにこだわったり、多少食べにくくても見た目の高級感にこだわったりしているわけですね。

 

ちなみにポジショニングマップ上では見えてきませんが、ロッテリアは期間限定バーガーで変わり種メニューを販売することで、競合との差別化を図っています。

 

 

ポジショニングマップの事例2.
アパレル・ファッション業界

アパレル・ファッション業界はブランドが多いので簡易的にはなりますが、一例としてポジショニングマップを作ると以下のようになります。

 

ポジショニングマップ例アパレル業界

 

このマップを一見すると、価格重視でかつトレンドを追いかけるようなところが空いているように見えます。

簡単に言ってしまえば、しまむらのように安い価格で、流行性の高いデザインの服を売るお店がいないのではないか、ということですね。

 

ただし、これをすぐにチャンスと思ってはいけません。

というのも、そもそも着やすさよりもトレンドを追いかけるようなターゲットは服にお金をかける層だからです。

なのに安く売ってしまうということは、それだけ利益、利益率を落としてしまうことになるわけですね。

それにトレンドを追いかけるということは、それだけデザインなどの製造工程にもコストがかかります。

 

空いているポジションを見つけたら、そのポジションがなぜ空いているのかも考えてみると良いです。

もしかしたら、そのポジションに旨味がないからかもしれません。

 

 

ポジショニングマップの事例3.
カフェ(コーヒー)業界

カフェ(コーヒー)業界についてもポジショニングマップを作成してみましょう。

 

ポジショニングマップ例カフェ業界

 

このポジショニングマップを見ると、こだわったコーヒーを手軽に飲めるポジションが空いているように見えます。

ただコーヒーの場合、こだわろうと思うとどうしてもコストがかかってしまいますし、そもそもカフェには「落ち着ける空間」込みでお客さんが来ていることが考えられるはずです。

さらにカフェ業界は利益率が低いため、参入するならやり方を熟慮する必要があるでしょう。

 

あと、このマップ上にはありませんが、手軽さで言えばコンビニのコーヒーやコーヒーメーカーが抜きんでているはずです。

店舗で言えば、マクドナルドなどのファストフード店も競合になるでしょう。

このようにポジションマップ上のニーズを別のモノが満たしているという場合もあるので注意が必要です。

 

 

【まとめ】ポジショニングマップは軸の決め方が重要

今回はどのようなポジショニングを取れば競争優位性を得ることができるかを分析できる「ポジショニングマップ」について解説をしてきました。

ポジショニングマップを作成するときに肝となるのが2本の軸の作り方です。

今回の記事では軸の作り方についても3つのコツを交えて解説しているので、ぜひ参考にしてください。

⇒ポジショニングマップにおける軸の作り方

 

あと注意してほしいのが、ポジショニングマップを作って自社のポジションを確立するときに、利益率をしっかり確保してほしいということです。

勝てるポジションを求めるあまり無理な値下げに踏み切る経営者がいますが、こと小規模事業者においては間違った選択であると言えます。

資源が限られた小規模事業者がいくら値下げを行っても、資源が豊富な大企業に価格競争で勝つことはできません。

それなのに無理に値下げをしてしまうと、十分な利益が取れなくなってしまい、ジリ貧になってしまうのです。

ポジショニングマップを上手く活用すれば、戦わずに勝てるようなポジションを確立することもできます。

もし競合との競争で厳しい思いをしているようなら、ぜひ1度ポジショニングマップを作成してみてください。

 

 

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