今回お伝えするのはマーケティングにおけるパーソナライゼーションについてです。
今、マーケティングの世界は個人の世界へと移行しつつあります。
今まではテレビCMや雑誌広告のように多くの人にメッセージを送るマスマーケティングというやり方が主流となっていましたが、今後はそれが通用しなくなると言われているのです。
現にここ最近は大衆に向けたテレビ番組が衰退の一途を辿っており、逆に個人が好きに選んで動画を視聴することができるネット動画が普及し始めています。
そこで必要となってくるのが、今回お話しするパーソナライゼーションの考え方です。
パーソナライゼーションの考え方をマーケティングに取り入れれば、より個人に向けたメッセージを送ることができます。
そして個人に送られたメッセージは、大衆に向けられたメッセージよりもユーザーの感情をより強く刺激することができるのです。
ということで今回は、マーケティングにおけるパーソナライゼーションについて以下のようなことをお話ししていきます。
- マーケティングにおけるパーソナライゼーションの意味
- マーケティングにパーソナライゼーションを取り入れるメリット
- パーソナライゼーションの事例
ぜひ今回の記事を参考にしていただき、新しい時代に適したマーケティング手法を身に付けてください。
マーケティングにおけるパーソナライゼーションの意味
マーケティングにおけるパーソナライゼーションはパーソナライズドマーケティングとも呼ばれ、「個人に向けて最適化されたマーケティング」のことを意味しています。
わかりやすい事例で言うと、Amazonで買い物をしたときに「おすすめの商品」という文言ととも出てくる広告がまさにパーソナライゼーションです。
あれは購入履歴や視聴履歴から個人の嗜好を解析し、その人個人に向けた専用の広告を発信しています。
そうすることでユーザーがより関心のある商品広告を目にすることになり、売上に繋がりやすいというわけですね。
ではなぜこのパーソナライゼーションが今になって注目されだしているのかというと、2つの理由があります。
- ユーザーニーズの変化
- 技術の進歩
1つは、ユーザーニーズの変化です。
今や日本では情報技術の発展により、かなりの量の情報で溢れかえっています。
そのためユーザーは、自分が欲しい、もしくは自分にふさわしい情報がどれで、どこにあるのか、といった悩みを常に抱えているのです。
そこでパーソナライゼーションなら、個別でその人に合った情報を解析して提案することができます。
するとユーザーも自分の悩みを解決することができるため、購入に至ってくれるというわけです。
そしてもう1つの理由が、技術の進歩です。
たとえばAmazonの広告はAIによって自動で管理されています。
仮に「個人の購入履歴を調べてその人にあった商品をおすすめする」という作業を人の手でやっていたとしたら、Amazonは国内で5000万人以上というユーザーを捌ききれなくなってしまうでしょう。
そしてこのAI技術も、今や大企業だけのものではなくなってきています。
なぜならAIの技術は今まさに実用化に向けて動いている段階で、今後はさらなる進化と普及が進むはずだからです。
そうなればもちろん、私たち中小企業にとってもAIがより身近なテクノロジーとなります。
とはいえ、マーケティングにおけるパーソナライゼーションは、何もAI技術やWeb業界だけに限ったことではありません。
人の手によって生み出されるパーソナライゼーションもあります。
たとえば、個別指導を行っている塾なんかはわかりやすい事例です。
集団授業を行っている塾の場合、1回の授業に10人~20人程度が参加します。
そのため個人に合わせた教育というものが難しく、人によっては本当に教えてほしいところをなかなか教えてもらえないと感じるわけです。
そこで、多少高いお金を払ってでも教えて欲しいところをしっかりと教えてくれる個別指導に需要が生まれます。
この個別指導こそがまさにパーソナライゼーションなのです。
現に今は昔に比べ、集団授業をメインとしている塾よりも個別指導をメインとしている塾の方が増えてきていると言われています。
これもまた、ユーザーの需要がパーソナライゼーションの方向に向いているということの表れなのでしょう。
このように個人に向けて行うマーケティングのことをパーソナライゼーション、もしくはパーソナライズドマーケティングと呼びます。
そして現在、このパーソナライゼーションに力を入れる企業が増えてきているのです。
マーケティングにパーソナライゼーションを導入するメリット
マーケティングにおけるパーソナライゼーションには、以下のように5つのメリットがあります。
- 客単価が上がる
- 潜在ニーズを掘り起こすことができる
- お客さんがリピーターになってくれやすい
- 商品やサービスの価格を上げることができる
- 顧客情報が蓄積される
それではこの5つのメリットについて、1つずつ説明していきましょう。
パーソナライゼーションのメリット1.
客単価が上がる
パーソナライゼーションは1人の顧客に合わせてマーケティングを行うため、客単価を上げることができます。
たとえばあなたの趣味がカメラで、新しい高性能カメラを買ったとしてください。
そのとき、テレビから流れているステーキのCMとメールで届くカメラレンズのセール情報では、どちらに関心を抱くでしょうか。
十中八九、カメラレンズの方だと思います。
このようにパーソナライゼーションでは、お客さんがより関心を持っているであろう商品を勧めることができます。
そうなれば当然、お客さんがさらに商品を買ってくれる可能性も上がりますので、客単価の向上に繋がるというわけですね。
パーソナライゼーションのメリット2.
潜在ニーズを掘り起こすことができる
パーソナライゼーションには、ユーザーの潜在ニーズを掘り起こすという効果もあります。
潜在ニーズとは、お客さん自身も気づいていない本当の欲求のことです。
たとえば「痩せたい」と言っている人の奥に「モテたい」といった欲求が隠されていた場合、その「モテたい」が潜在ニーズとなります。
ちなみに、お客さん自身も気づいていて表に出てきている「痩せたい」という欲求は顕在ニーズです。
そしてこの場合、実はそのお客さんにとってモテることさえできれば痩せることは重要ではありません。
パーソナライゼーションでは、この潜在ニーズ、つまりお客さん自身も気づけていない重要な方のニーズを掘り起こすことができるのです。
これはパーソナライゼーションによってお客さんの情報を分析し、個別で関連性のある商品、つまり解決策を提案するからこそ可能となります。
たとえば痩せる方法ばかり探していた人に対して、太っていてもモテる方法を勧めてみる、といった感じですね。
お客さんの潜在ニーズを満たすことができれば、成約率が上がるのはもちろん、お客さんの満足度も大幅に上げることができるでしょう。
パーソナライゼーションのメリット3.
お客さんがリピーターになってくれやすい
マーケティングにパーソナライゼーションを導入すれば、お客さんがリピーターになってくれやすいというメリットもあります。
なぜかというと、パーソナライゼーションを導入することでよりユーザーの需要に寄り添った商品を売ることができるからです。
たとえばテレビのバラエティ番組を想像してみてほしいのですが、ああいう番組には多種多様なタレントが出演していますよね?
女優、俳優、お笑い芸人、アイドル、スポーツ選手と、本当にさまざまです。
実はあれは、多種多様な人を出演させることでより多くの視聴者に興味を抱いてもらうためにそうなっています。
女優が好きな人も、芸人が好きな人も、アイドルが好きな人も、一気にまとめて取り込もうとしているわけですね。
ただしテレビ番組には尺がありますので、多種多様な人を出演させれば、それだけ1人1人にスポットライトが当たる時間は短くなってしまいます。
そうなるとアイドルが好きな人は、もっとアイドルを映して欲しい、と思うはずです。
一方、アイドルが好きな人にアイドルだけが出演しているDVDを見せてみたらどうでしょうか?
おそらく普通のバラエティ番組を見たときよりも深い満足感を与えることができ、また見たいと強く思ってもらえるはずです。
このように欲しい人のところに本当に欲しいものを届け、大きな価値を感じてもらえるのがパーソナライゼーションです。
だからこそパーソナライゼーションを導入すればリピーターを増やすことにも繋がるわけですね。
パーソナライゼーションのメリット4.
商品やサービスの価格を上げることができる
パーソナライゼーションにおけるメリットの中には、商品やサービスの価格を上げることができるというものもあります。
先ほども説明したとおり、個人向けにパーソナライズされた商品やサービスは、お客さんに深い満足感を与え、高い価値を感じてもらうことが可能です。
そして商品やサービスの価格とは、お客さんが感じる価値によって決まります。
原価がいくら高くてもお客さんが価値を感じなければ売れませんし、逆に原価が0円でもお客さんが価値を感じてくれれば高額で売ることができるのです。
だからこそお客さんに深い満足感を与えることのできるパーソナライゼーションの考え方をビジネスに導入すれば、商品やサービスの価格アップに繋げることができるというわけですね。
パーソナライゼーションのメリット5.
顧客情報が蓄積される
パーソナライゼーションを取り入れることで顧客の情報を収集するようになるため、データが蓄積されていくというメリットもあります。
マーケティングにおいて、情報はとても重要なものです。
それこそ情報を集めるため、アンケート回答者にクーポンや粗品といったお礼の品を渡すという企業も多いですね。
なぜそうまでして情報を集めるのかというと、情報が集まれば集まるほどマーケティングで分析を行うさいの精度も高くなっていくからです。
それこそマーケティングにおいては、情報が命であると言っても差し支えはないでしょう。
またパーソナライゼーションにおいても顧客情報が集まれば集まるほど精度を増すことができます。
そのためパーソナライゼーションを続ければ続けるほど、ユーザーに対してより効果的にアプローチをかけられるようになるのです。
パーソナライゼーションの事例
ここからはわかりやすいパーソナライゼーションの事例を2つ紹介していきます。
- Googleの検索エンジン
- YouTube
これらの事例を見ていただければ、パーソナライゼーションのイメージがより鮮明に湧いてくるはずです。
それでは1つずつ説明していきましょう。
パーソナライゼーションの事例1.
Googleの検索エンジン
私たちにとってもっとも身近なパーソナライゼーションの事例は、Googleの検索エンジンです。
(画像引用:Google)
Googleの検索エンジンはユーザーの検索結果の情報を集めることで、ユーザーの検索位置に合った検索結果を出してきてくれます。
そのため同じキーワードで検索をかけても、人によって検索結果が違ってくるのです。
だからこそGoogleの検索エンジンはユーザー満足度が高く、数多くある検索エンジンの中でもっとも普及しているわけですね。
パーソナライゼーションの事例2.
YouTube
最大手動画サイトであるYouTubeにおいてもパーソナライゼーションは取り入れられています。
YouTubeをよく視聴していればわかるかもしれませんが、YouTubeはトップページを開くと普段見ている動画と関連性の高い動画をたくさん表示してくれるのです。
そのため、YouTubeのサイトを開けばすぐに視聴したい動画を見つけることができます。
YouTubeにおいて、このパーソナライゼーションの仕組みは非常に重要です。
YouTubeには再生時間を合計すると2億時間にも及ぶ大量の動画が投稿されています。
そのため、おすすめの動画を自動で表示してくれる機能がなければ、自分の趣味に合った新しい動画を発掘するだけでも一苦労なのです。
またYouTubeでは、その動画の多様性もパーソナライゼーションを支える要因であると言えます。
というのもテレビに比べて非常に多くの動画が存在しているため、ユーザー一人ひとりの趣味にぴったりと合った動画を提案しやすいのです。
だからこそここ最近は、大衆向けのテレビから個人向けのYouTubeに人が流れつつあるわけですね。
【まとめ】時代はパーソナライゼーションに向かっている
今回はパーソナライゼーションについてお話をしてきました。
1つ言えることは、時代は今確実にマスマーケティングからパーソナライゼーションに移行しているということです。
とくにB to Cのマーケティングにおいては、より個人に視点を向けることが必要となってくるでしょう。
ただし、パーソナライゼーションを取り入れるうえで1つ注意しなければいけないことがあります。
それが、商品やサービスの価格を見直さなければいけないということです。
パーソナライゼーションを導入すればお客さんにより大きな価値を感じてもらうことができますが、その分お客さん1人あたりにかかる費用や労力が増える傾向にあります。
だからこそパーソナライゼーションを導入した場合は、お客さんに感じてもらえている価値に合わせて価格を見直さなければいけないのです。
時代は今、確実にパーソナライゼーションの方向に向いています。
あなたもこの流れに乗り遅れないよう、ぜひビジネスにパーソナライゼーションを取り入れてみてください。