今回お話しするのは、ビジネスで個人、もしくは組織が影響を受けがちな「パーキンソンの法則」についてです。
パーキンソンの法則とは、1958年に英国の歴史学者および政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンが、自身の著作物である「パーキンソンの法則:進歩の追求」の中で提唱したものです。
以下のように、主に2つの意味を持っています。
第1法則
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
第2法則
支出の額は、収入の額に達するまで膨張する
(引用:wikipedia)
要約すると、「人は時間やお金を、あればあるだけ費やしてしまう」というような意味を表しています。
そして実はこの2つの法則は、ビジネスや会社組織において、とくに色濃く表れるという性質を持っているのです。
「なんだか仕事がうまくいかないなぁ」というときには、このパーキンソンの法則が働いてしまっているということも少なくありません。
ただ逆に言えば、パーキンソンの法則を理解し、対策をとることによって仕事に良い影響を与えることができるという意味でもあります。
それも、自分の仕事に対してだけでなく、組織全体に働きかけることができるのです。
そこで今回は、パーキンソンの法則について、詳しく掘り下げて説明をしていきます。
- 2つの法則の詳しい意味
- パーキンソンの法則の事例
- パーキンソンの法則の対策方法(良い影響を与える方法)
とくにこれらについて説明をしていきますので、ぜひこの機会にパーキンソンの法則を勉強し、ビジネスや組織運用に役立ててください。
パーキンソンの第1法則の具体的な解説
まずはパーキンソンの第1法則について、詳しく解説していきます。
第1法則
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
(引用:wikipedia)
これがどういう意味なのか、簡単に説明すると、「30分でできる仕事でも1時間の時間を与えられると、終わるまでに1時間かかってしまう」というようなことです。
たとえば、仕事量に関わらずいつも忙しそうで、何をやらせても納期ギリギリまでかかってしまう、という人を見たことがありませんか?
10の物量の仕事をしているときにすごく忙しそうで、「あぁ、これがキャパのギリギリなんだろうな」と思っていたのに、いざ20の物量の仕事を与えられたときにも、なんだかんだでギリギリこなす、といった感じの人です。
これはまさに、パーキンソンの第1法則が働いている状態だと言えます。
例として挙げた人の場合、結論から言うと、20の仕事をこなすキャパシティは少なくとも持っているということになります。
にもかかわらず、この人は10の仕事をこなすだけで余裕がなくなり、疲弊してしまうわけです。
つまり、本来20の仕事ができる時間を、10の仕事をこなすさいにもいっぱいいっぱいに使い切ってしまっているということなのです。
しかも、時間がある分余裕を持ってクオリティを上げている、というわけでもありません。
ただ単純に、時間を無駄にして、余裕がなくなっているだけなのです。
では、なぜこのようなことが起こるのかというと、その理由は、
- 時間がある分、集中力に欠けている
- 時間に余裕があると、仕事に取り掛かるまでが遅くなってしまう
など、人によってさまざまです。
ただ1つ言えるのは、パーキンソンの第1法則にとらわれてしまうと、仕事量に関係なく、常に余裕を失ってしまうということですね。
そしてこれは、個人だけではなく、組織にも十分に起こり得ます。
どのような形で起こるのかについては、事例を参考にしてみてください。
ビジネスで起こるパーキンソンの第1法則の事例
ここからは、ビジネスの場で起こるパーキンソンの第1法則による事例を2つ紹介していきます。
- とある会社の会議
- 部下への仕事の振り方
この2つの事例は、どこの会社でもあるような事例なので、ぜひ自社に置き換えて参考にしてみてください。
パーキンソンの第1法則の事例1.
とある会社の会議
まずは、会議の時間帯を変更することで、会議中の無駄な時間をなくしたとある会社の事例を紹介します。
その会社は、会議をするときはいつも朝一に行っていました。
いつも朝一に始まり、昼まで続くのが定番だったそうです。
ただ当然、日によって議題が多いときもあれば、少ないときもあります。
にもかかわらず、会議は毎回決まった時間に始まり、決まった時間に終わっていたのです。
つまり、パーキンソンの第1法則が働いてしまい、1時間で終わるような議題であっても、3時間も4時間も話し合っていたわけですね。
その会議に出席していた社員の1人が、「これではいけない」と思い、ある提案をしました。
それが、会議時間の変更です。
今までは会議を朝一で行っていましたが、それを夕方の16時からに変更したいと提案したのです。
その会社の定時は5時半で、定時の5分前にはいつも、全社員でデスクの掃除をする時間が設けられていました。
そのため、会議が始まってから1時間半で、とにかく1度会議を締めて、各々のデスクへ戻らなければいけなかったのです。
すると、今まで3時間も4時間もかかっていた会議が、厄介な問題が発生しているときを除き、きっちり1時間半で終わるようになりました。
会議の時間が減れば、それだけ作業をする時間を確保できます。
結果、その会議に出席していた人たちはみんな、残業時間が以前よりも少なくなったのでした。
このように、会議というのはパーキンソンの第1法則が非常に働きやすい場所でもあります。
しかしこの事例の場合、1人の社員が時間変更を提案したことで会議を終わらせるキッカケが生まれ、結果、無駄な会議時間を大幅に短縮できたというわけですね。
パーキンソンの第1法則の事例2.
部下への仕事の振り方
次は、部下への仕事の振り方を変えたことで、部下の仕事効率が大幅に上がった事例を紹介します。
とある会社に、お世辞にも要領が良いとは言えない部下と、その上司がいました。
上司は部下に仕事を振るのですが、部下の要領が悪く、なかなか指定した時間に成果物が上がってきません。
そこでその上司は、部下への仕事の振り方を工夫しました。
今までは100の仕事を5時間でやってほしいという形で指示を出していたのですが、仕事を細かく分解し、20の仕事を1時間でやってほしいという指示を5回出すことにしたのです。
すると、部下の仕事のスピードに変化が現れました。
なんと、従来の振り方をしていたときよりも、目に見えて成果物が出てくるスピードが上がったのです。
これは、部下にパーキンソンの第1法則が働いていたために起こった事例でした。
どういうことかというと、その部下は5時間という時間に余裕を感じてしまい、つい集中力を切らしてしまっていたのです。
ところが、1時間おきに締め切りがくるという状況を作ってあげたことで、部下はいい意味でのプレッシャーを感じ、結果、むしろ時間が余るくらいの仕事をしてみせたのでした。
このようにパーキンソンの法則は、自分ではなく部下に影響をおよぼしている場合もあります。
そういったときは、こちらの方から仕事の納期を細かく区切ってあげてみてください。
そうすることで部下に緊張感が生まれ、仕事の効率が上がるわけです。
パーキンソンの第1法則の対策方法
パーキンソンの第1法則に対しては、以下のような対策が効果的です。
- 時間に余裕があるときは自分で締め切りを設定する
- 仕事をタスクで分けて時間管理する
- あえて人員を減らす
まず、時間に余裕がある場合は、自分で短めの締め切りを設定してしまうのが効果的です。
かつ、いつやるか、というところまで決められれば完璧ですね。
たとえば、1日かかる仕事に対して3日の猶予があったとします。
この場合は、2日目の1日だけを使って仕事を終わらせる、とみずから決めてしまうわけです。
そうすれば、時間の余裕がなくなり、良い意味での緊張感を持てることで、無駄な時間を使わなくなります。
また、もう1つの対策として、仕事を細かいタスクに分けるというのも効果的です。
事例でも説明したように、大きな仕事で長い時間を使おうとすると、どうしても前半の部分で無駄な時間を作り出してしまいます。
そこで、仕事を細かいタスクに分け、それぞれに余裕のない締め切りを設けるわけです。
そうすればパーキンソンの法則は働かなくなり、無駄な時間をなくすことができるというわけですね。
そして、組織でパーキンソンの法則の対策をする場合は、あえて人員を減らすという手段もあります。
そうすることによって、無駄な余裕がなくなり、社員に良い意味での緊張が生まれるのです。
緊張感を持って仕事をすれば、パーキンソンの法則はその影響力を弱めるでしょう。
以上が、パーキンソンの第1法則で使える対応策です。
無駄な時間が多いと感じているなら、ぜひ試してみてください。
パーキンソンの第2法則の具体的な解説
ここからは、パーキンソンの第2法則について、詳しく解説していきます。
第2法則
支出の額は、収入の額に達するまで膨張する
(引用:wikipedia)
パーキンソンの第2法則を簡単に説明すると、「以前に比べてお金に余裕ができたはずなのに、なぜか貯金ができない」というような意味合いになります。
たとえば、もともと給料の手取りが15万円で生活をしていた人がいたとします。
その人は、「もう少し給料があれば貯金できるのになぁ」と思っていました。
ところが、出世して手取りが30万円になっても、なぜか貯金が一切できなかったのです。
つまり、15万円でも生活ができていたはずなのに、給料を多めに貰ったら貰った分だけ、ついつい使ってしまっていたわけですね。
この話を聞くと、「ただその人の金遣いが荒かっただけではないのか」と思うかもしれません。
しかしパーキンソンの法則は心理学のようなもので、人であれば誰でもやってしまう可能性のあるものなのです。
あなたは、日本でもっとも老後破産しやすい年収を知っていますか?
実は、年収700万円の世帯がもっとも老後破産する危険性が高いというデータがあります。
2018年の日本の平均年収は400万円台なので、年収700万円というのはかなり多い方だと言えますね。
それなのになぜ年収700万円の世帯が老後破産を起こしてしまうのかというと、年収700万円世帯の人の多くが貰った給料の大部分を使い切ってしまうからです。
さらにそういう人は、定年を迎えて収入が減ってしまっても、今までの生活レベルを落とすことができない傾向にあります。
年収400万円でも十分平均的な暮らしができるのに、年収700万円貰っている人が生活レベルを上げて、それを落とせないまま老後破産してしまう。
これもまた、パーキンソンの第2法則の影響によるものだと言えるでしょう。
このようにパーキンソンの法則は、一部の人にだけ当てはまるものではなく、多くの人に当てはまるものなのです。
では、このパーキンソンの第2法則がどのような形でビジネスに悪影響をおよぼしてしまうのか、というところについては、事例という形で説明していきます。
ビジネスで起こるパーキンソンの第2法則の事例
ここからは、ビジネスの場で起こるパーキンソンの第2法則による事例を2つ紹介していきます。
- 出張の経費
- 通帳を分けてお金を貯めた個人事業主
ぜひ参考にして、いらない支出を抑えるヒントにしてください。
パーキンソンの第2法則の事例1.
出張の経費
ここからは、営業への出張経費の渡し方を変えて支出を抑えることに成功したとある会社の事例を紹介していきます。
その会社では、営業への出張経費をいつも先に渡していました。
少し多めに渡して、出張から帰ってきたときに領収書と余った経費を受け取り、計算をしていたのです。
ところが、営業に渡していた出張経費は、思った以上に余りませんでした。
そこでその会社は、出張経費の前渡しを辞め、あとから返す形式に変更したのです。
すると、営業が使う出張経費が、明らかに今までよりも安くなりました。
今までは渡されたお金を基準にして経費を使っていた営業が、お金を節約するようになったのです。
これは、パーキンソンの第2法則が働いていたから起こった事例だと言えます。
要は、多めの出張経費を受け取っていたため、営業はその金額を基準にして経費を使ってしまっていたのです。
このように、お金を余分に用意してしまうと、結局それを使い切ってしまう、というパターンは少なくありません。
経費についてはきっちりと計算し、できるだけ無駄な費用を使わせないように工夫しましょう。
パーキンソンの第2法則の事例2.
通帳を分けてお金を貯めた個人事業主
ここからは、仕事用とプライべート用で通帳を分け、ビジネス資金を貯めることに成功した個人事業主のお話をしていきます。
とあるビジネスをやっていた個人事業主が、ビジネス資金のことで悩んでいました。
その人は、ビジネスの規模を拡大させたいのだけれど、そのためのお金を作ることができないと言うのです。
しかし、その人のビジネスは現状でも大変うまくいっていて、お金が余らないとは考えづらい状況でした。
そこで詳細を聞いたところ、どうやら、利益が出た分をすべて生活費やプライベートでの交遊費に使ってしまっていたのです。
要は、お金があればある分だけ使ってしまう、というのを地で行っていたわけですね。
そこで私は彼に、ビジネス用とプライベート用と貯蓄用に通帳を分ける提案をしました。
すると彼は、今まで貯められなかったお金をしっかりと貯められるようになり、ビジネスの規模拡大に成功したのです。
このように、パーキンソンの第2法則が働いてしまっているときは、お金を細かく区切ってみてください。
そうすることで、余分なお金を使わなくなり、無駄な支出を抑えられるようになるはずです。
パーキンソンの第2法則の対策方法
パーキンソンの第2法則に効果的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。
- 多めのお金を持ったり渡したりしないようにする
- 用途によって口座を分ける
- 帳簿を付けて支出を明らかにする
まず最初の対策として、多めのお金を持たない、持たせない、という対策を行いましょう。
人は余分にお金を持っているからこそパーキンソンの第2法則が働き、そのお金を使ってしまいます。
それなら最初から余分なお金は持たずにいることで、無駄な出費を抑えられるはずなのです。
これに関しては、あなた自身にも言えますし、あなたの部下に対しても言えます。
無駄な出費が多いなと感じたら、そもそも無駄なお金を持たない、持たせない、というところから改善してみましょう。
そしてもう1つの対応策が、用途によって口座を分けるということです。
とくにフリーランスや個人事業主の場合、ビジネスで使う口座とプライベートで使う口座が同じという人もいます。
しかし、それではビジネス資金とあなたの給料の線引きがなくなってしまうため、無駄にお金を使うことになってしまうのです。
無駄遣いを減らしたいなら、口座は用途に合わせて複数持つようにしてください。
そうすることで、無駄な出費を抑えられるはずです。
そして、もう1つ基本的な対応策として、帳簿を付けてください。
帳簿を付けることで、無駄な支出を可視化することができます。
もしくは、あなたが会社の社長で、帳簿は経理が付けているというのなら、その帳簿のチェックをできるだけ小まめに行いましょう。
それこそ、毎日チェックを行っても良いくらいです。
社長であるあなたがみずから帳簿を小まめにチェックすることで、あなたが無駄な支出を見つけられるほか、社員が「無駄遣いはできない」と意識してくれるようになるという効果もあります。
そうすれば、組織全体の意識改善にもつながり、経費の無駄遣いは劇的に減るはずです。
以上が、パーキンソンの第2法則の対応策です。
どれも小さなことですが、続ければ十分な効果を発揮するでしょう。
パーキンソンの法則の対策をすれば利益率が上がる
実は、パーキンソンの法則を克服すれば、ビジネスの利益率を大幅に上げることができます。
どういうことかというと、ここまでの説明で、パーキンソンの法則にとらわれなくなれば、時間とお金に余裕を持てるようになるというお話をしてきましたよね?
実はこれは言い換えると、工数と経費を抑えられるようになる、ということなのです。
今ある仕事の工数と経費を抑えることができれば、今より安いコストで商品を生み出すことができるようになります。
つまり当然、利益率が上がるというわけですね。
このようにパーキンソンの法則を克服することは、あなたの会社やビジネスの業績に直結します。
そのためにもパーキンソンの法則への対策はきっちり行い、無駄を省いたビジネスを心掛けましょう。
あとは、無駄な時間とお金を省ききったあとには、商品価格の見直しも行ってみてください。
なぜなら、さらなる利益率の向上が期待できるからです。
実は日本の中小企業や個人事業主は、商品が持つ本来の価値よりも安い販売価格を付けがちである、という事実があります。
大企業と無理に価格競争をして、なんとか売上を確保しようとするからです。
しかし、商品価格を下げて売上を伸ばそうとす戦略は、中小企業の場合最適ではありません。
薄利多売戦略を取れないスモールビジネスでは、価格競争ではなく、差別化によって売上を伸ばすべきなのです。
そうすれば利益率が上がり、会社の業績を好転させることができます。
【まとめ】パーキンソンの法則の対策をして働き方を変えよう
今回は、社長の頭を悩ませるパーキンソンの法則について、その詳しい意味と対策をお話ししてきました。
パーキンソンの法則は、特定の人にだけ働くものではなく、多くの人が持つ習慣のようなものです。
そのため、無意識に時間やお金を無駄にしてしまっている人は、非常に多くいます。
だからこそこの機会に、ぜひ1度自分や組織を見直してみてください。
ちなみに、パーキンソンの法則の対策をきっちり行い、組織単位で克服することができれば、会社の利益率が大幅に上がる可能性があります。
これは単純な話で、時間とお金の無駄がなくなるということは、無駄な工数と経費がなくなるということだからです。
つまり、今までかかっていた無駄なコストがなくなることで、結果的に利益率が向上するというわけですね。
中小企業にとって、利益率はとても重要な指標です。
少しでも利益率を上げられるように、できるだけ無駄なものは省いていくようにしましょう。
あとは、利益率を上げる手段として、商品価格を上げるというのも効果的です。
それこそパーキンソンの法則の対策と併せて行えば、無駄なコストを抑えつつ価格を上げるということで、大幅な利益増が見込めます。
パーキンソンの法則の対策を行うさいには、同時に商品価格の見直しも行っておきましょう。
パーキンソンの法則は、時間とお金を無駄に浪費してしまう法則です。
これは特定の人だけに作用するものではなくて、万人に影響を与える法則でもあります。
だからこそこの機会に対策を考え、実行に移してみてください。