今回の記事では「機会費用」についてわかりやすく解説をしていきます。
社長や個人事業主にとって、機会費用という考え方は必須であると言えます。
なぜなら機会費用という言葉を理解していない場合、気づかないうちに多額の損をしてしまっているかもしれないからです。
機会費用は目には見えない費用です。
会計の帳簿を見ても書いていませんし、利益計算をするときにも確認することはありません。
しかしだからこそ機会費用の重要性に気づかず、自分がしている損にも気づかない社長が非常に多いのです。
そこで今回は機会費用について、以下のような内容を説明していきます。
- 機会費用の意味
- 機会費用の具体例
- 経営者が機会費用を理解しておかなければいけない理由
この記事で機会費用についてよく理解し、できるだけ損のない経営を心掛けていきましょう。
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機会費用の意味とは?
機会費用とは、「ある行動をとったとき、その行動によって得た利益と違う行動をしていれば手に入れられていたであろう最大の利益との差額」のことです。
Wikipediaでは以下のように説明されています。
機会費用(きかいひよう、英: opportunity cost)とは、時間の使用・消費の有益性・効率性にまつわる経済学上の概念であり、複数ある選択肢の内、同一期間中に最大利益を生む選択肢とそれ以外の選択肢との利益の差のこと。最大利益を生む選択肢以外を選択する場合、その本来あり得た利益差の分を取り損ねていることになるので、その潜在的な損失分を他の選択肢を選ぶ上での費用(cost)と表現している。
(引用:Wikipedia)
簡単に言うと、最大利益にならない選択肢を選んでしまった場合に発生する損失(コスト)のことですね。
機会費用は以下のような計算式で算出することができます。
「機会費用 = 経済学上の費用 – 会計上の費用」
ちなみに経済学上の費用とは、経済学上合理的な費用、つまり最大利益のことです。
会計上の費用はそのまま、会計にあがってくる費用、つまり実際に選んだ方の費用(利益)のことを指します。
たとえばAという仕事とBという仕事があると考えてください。
この仕事はどちらか片方しか請けることができません。
あなたは考えた末に、Aという仕事をして100万円の利益を得ることができました。
ところがBという選択肢を選んでいた場合、実は利益が150万円もあがる見込みだったのです。
あなたはAという仕事を選んでBという仕事を諦めた結果、差額の50万円を損してしまったというわけですね。
この場合、各費用の内訳は以下のとおりです。
- 経済学上の費用 = 150万円
- 会計上の費用 = 100万円
- 機会費用 = 50万円(150万円 – 100万円)
つまり、Aという選択をしたことで損をしてしまった50万円という差額が機会費用にあたるというわけなのです。
ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。
それは、必ずしもBという仕事(最大利益の仕事)をやることが正解ではないということです。
たとえば、もし仮にAという仕事が利益こそ低いものの今後に繋がる人脈を作れるような仕事なのだとしたらどうでしょうか?
もしかすると将来的に考えれば、Bという仕事を選んだ方が損になるのかもしれません。
もしくは単純にBという仕事が大嫌いで、ストレス負荷がものすごくかかってしまい、ほかの業務にまで支障をきたしてしまうというパターンもあります。
この場合も、目先の利益に目がくらんでBの仕事を請けてしまうと、長期的には損をしてしまうケースです。
このように何か事情があったとき、社長はその事情が機会費用の50万円と比べて許容できるものなのかどうかということを考えることが必要となります。
機会費用は、こういった比較をするさいに役立つ指標なのです。
ただし、1つ注意してください。
実は機会費用は、正しい価格設定ができているかどうかによって数字が大きく変わってしまいます。
というのも機会費用を算出するために必要な「得られたであろう最大の利益」という数値は、商品の価格によって大きく変動してしまうものなのです。
たとえば、2万円の商品を10個売れる選択肢を捨てて別の行動を選択したため、20万円の機会費用が発生したと仮定します。
しかし実は、その商品は5万円でも十分に売れるほどの価値を持った商品だったのです。
この場合、もし仮に正しい価格設定をしていた場合には、機会費用が50万円となってしまいます。
つまり、機会費用が20万円から50万円に増えるということです。
商品を売る代わりに選んだ選択肢が、「20万円なら許容できるが50万円なら許容できない」というものであった場合、この変化は非常に大きなものとなります。
それこそ、選択肢に対する社長の判断も大きく変わってくるはずなのです。
そのため機会費用という概念を使うさいには、正しい価格設定を行うということも非常に重要な要素となってきます。
しかしながら日本の企業には、自社の商品やサービスを安売りし過ぎているという問題を抱えているところが非常に多いのです。
こうなってくると機会費用という考え方を正しく活用することはできません。
機会費用は、2つの行動を比較してどちらが本当の意味で優位なのかを考えるときに役立つものです。
しかし、そのためには正しい最大利益を把握する必要があるということを覚えておきましょう。
機会費用の具体例
ここからはより機会費用を理解していただくため、いくつか具体例を紹介していきます。
各機会費用との比較対象についても表にしてまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
〇機会費用の具体例と比較対象
機会費用の具体例 | 機会費用 | 機会費用との比較対象 |
自分で仕事をすれば50万円の利益を出せる仕事があったが、部下の成長のために仕事を任せた。
その結果、利益が30万円しかあがらなかった。 |
20万円 | 部下の成長 |
ある管理職が、自分で仕事をしなければ納期に間に合わないという理由で部下に仕事を任せず、すべて自分で片づけてしまった。
その結果、管理職は時給2,000円分の成果を生み出し、無事納期にも間に合った。 しかし当初その管理職に求められていたのは、時給換算3,000円相当の管理業務だった。 |
時給1,000円 | 納期 (客先の信頼) |
予算をすべて投入して商品を仕入れれば500万円の利益が見込めた。
しかし万が一のことを考えて仕入れ額を調整した結果、利益は300万円になった。 |
200万円 | リスク回避 |
取引先との会食をするさいに安いレストランを避け、高いレストランを選んだ。
食事代が安いレストランより2万円ほど高くなってしまったが、お客さんの印象は良かった。 |
2万円 | 取引先からの印象 |
これらはすべて機械費用が発生した例です。
「機会費用」と「比較対象」を見比べてみてどうでしょうか?
「どちらを選ぶべきなのか」を考えるのは、社長にとって重要な仕事の1つです。
こういった選択をするときには、金額だけで判断するのを避け、機会費用とその代わりに得られるもののどちらに優位性があるのかを見極めてから判断するようにしましょう。
機会費用と機会損失の違い
ここからは補足的な説明として、よく疑問に挙がる「機会費用と機会損失の違い」について説明をします。
結論から言うと、機会費用と機会損失は意味の違う言葉です。
それぞれの意味をわかりやすく並べると以下のとおりになります。
- 機会費用 ⇒ 「ある行動をとったために得ることができなくなった最大利益との差額」
- 機会損失 ⇒ 「行動できなかったために得ることができなかった利益」
このように「選択して行動したことで発生する」のが機会費用、「行動しなかったことで発生する」のが機会損失であるというわけですね。
機会費用と機会損失については混同してしまう人も多いので注意しましょう。
経営者が機会費用を理解しておかなければいけない理由とは?
経営者がとくに機会費用を理解しておかなければいけない理由は、大きくわけて2つあります。
- 優位性のある行動を選び取るため
- 現在業務と未来業務のバランスを取るため
どちらもビジネスをするうえでは非常に大きな理由です。
それでは1つずつ解説していきましょう。
経営者が機会費用を理解しておくべき理由1.
優位性のある行動を選び取るため
この記事内でも何回か説明していますが、機会費用を理解することで本当の意味で得のできる行動を選び取ることができるようになります。
というのも機会費用は、2つの選択肢で悩んださいの判断基準になるからです。
機会費用は帳簿には書かない、いわゆる目には見えない費用であるため、意識しなければ金額を知ることはできません。
そのため機会費用の概念を知らない社長は、ついつい感覚で選択をしてしまいがちです。
そしてその結果、冒頭でもお話したように多額の損をしてしまう可能性もあるわけですね。
意思決定は社長の仕事の中でもとくに重要なものの1つです。
その意思決定を裏付ける要素として、機会費用については理解しておくべきでしょう。
経営者が機会費用を理解しておくべき理由2.
現在業務と未来業務のバランスを取るため
機会費用を理解しておけば、現在業務と未来業務のバランスを取るさいの目安にすることが可能です。
「業務には2種類あるって知ってますか?」の記事内で弊社代表の北岡がくわしく説明していますが、業務には大きく分けて2種類が存在しています。
それが、「現在業務」と「未来業務」です。
- 現在業務 ⇒ 今の売上を獲得するための仕事
- 未来業務 ⇒ 仕組み化や戦略の構築など将来の繁栄のための仕事
つまり、目先の利益になる業務と将来的な利益になる業務があるわけですね。
これらの業務は、どちらか片方が正解であるというわけではありません。
重要なのはどれくらいのバランスでやるかというところなのです。
弊社代表の北岡はその目安として、現在業務が70%、未来業務が30%と設定しています。
そして、この割合を見るさいに役立つのが機会費用という考え方です。
この場合、「未来業務に時間を使うためにやらないという選択をした現在業務の売上」が機会費用となります。
その機会費用と未来業務を比較すれば、よりわかりやすく、詳細にバランス調整をすることができるはずです。
機会費用の考え方を使い、未来業務にかかるコストを正確に把握しておきましょう。
【まとめ】機会費用を理解したうえで未来業務に手を出そう
今回は機会費用についてお話をしてきました。
機会費用とは、「ある行動をとったとき、その行動によって得た利益と違う行動をしていれば手に入れられていたであろう最大の利益との差額」のことです
つまり、最大利益になる選択以外の行動をしたさいの損失(コスト)が機会費用であるということですね。
機会費用という考え方を知っていれば、2つのメリットを得ることができます。
- 優位性のある行動を選び取ることができる
- 現在業務と未来業務のバランスを取ることができる
この2つに共通するのは、「最大利益となる行動を選択しなかった場合の金銭的損失を可視化することができる」ということです。
最大利益となる行動以外を選択するとき、その選択した行動が機会費用に見合うものなのかどうかを判断することができるというわけですね。
ただし、機会費用を正しく算出するためには正しい価格設定も必要となってきます。
なぜなら機会費用を算出するさいに想定する最大利益が、価格設定によって大きく変わってしまうからです。
機会費用の数値が変われば選択の判断も大きく変わってくるはずなので、機会費用を算出するさいには、まず価格設定が正しいかどうかについても考えるようにしましょう。
機会費用は、社長にとって非常に重要な業務である意思決定をするさいに役立つ考え方です。
正しい機会費用を算出し、あなたの会社にとって本当に必要なものを選び取れるようにしましょう。