今回はOODAループ(ウーダループ)についてお話をしていきます。
OODAループ(ウーダループ)は迅速で正しい「意思決定」をするために使えるフレームワークです。
「意思決定」は、社長がやらなければいけないもっとも重要な業務の1つだと言えます。
とくに中小企業の社長の場合、自分1人で迅速に意思決定をしなければいけない機会も多いはずです。
だからこそOODAループについては、中小企業の経営者にほど知っておいてほしいと思っています。
社長であるあなたの意思決定がより正しく、より迅速になれば、それは会社の業績にも大きな影響を与えるでしょう。
そこで今回は、OODAループについて以下のようなことを説明していきます。
- ビジネスにおけるOODAループの意味とメリット
- OODAループの回し方【具体例】
- OODAループとPDCAサイクルの関係性
- 中小企業がOODAループを正しく活用する方法
しっかりとOODAループを理解して、あなたのビジネスに役立てていきましょう。
※ちなみに、よくOODAループの比較対象として挙げられるPDCAサイクルに関しては別記事で詳しく説明をしています。
そちらも併せて確認してみてください。
⇒具体例で学ぶ!PDCAサイクルを回す正しい方法と注意点とは?
ビジネスにおけるOODAループの意味とメリット
OODAループとは、アメリカの航空戦術家であるジョン・ボイド氏が考案した意思決定のためのフレームワークです。
ジョン・ボイド氏は意思決定からの行動の早さが有名な元軍人で、40秒という短時間で戦況をひっくり返すことができたことから「40秒ボイド」という異名で呼ばれていました。
そしてジョン・ボイド氏は退役後、自身を支えてきた迅速な意思決定方法をあらゆる分野で適用することができる戦略一般理論として、OODAループというフレームワークに落とし込んだのです。
このOODAループは、軍事だけではなく政治や教育、そしてもちろんビジネスにも応用することができます。
とくに経営者には迅速かつ正しい意思決定が求められることも多いため、OODAループが非常に役立つはずなのです。
このようにビジネスでも大いに役立つOODAループですが、細かい内容については以下のような流れになっています。
Observe(観察) | 市場や自社が置かれている状況を観察し、情報収集をするフェーズ |
Orient(仮説、状況判断) | 収集した情報を基に仮説を構築するフェーズ |
Decide(意思決定) | 構築した仮説を基に意思決定を行うフェーズ |
Action(実行) | 決定したことを実行に移すフェーズ |
この一連の流れを繰り返すことで、正しく迅速な意思決定ができるようになるというわけですね。
ちなみにこの4つのフェーズの中でもとくに重要なのは「Orient(仮説、状況判断)」だと言われています。
なぜかというと、OODAループは迅速で正しい意思決定を繰り返すことで状況をどんどんと改善していくものだからです。
そしてそのためには、「Orient(仮説、状況判断)」のフェーズで「いかに過去や他社の判断の誤りに気付いて反映させることができるか」が大きなポイントとなります。
「Orient(仮説、状況判断)」の段階がどんどん改善されていけば、それだけ正しい意思決定をすることができるというわけですね。
以上がOODAループの意味とメリットです。
OODAループはビジネスに応用できるフレームワークであり、とくに経営者にとっては必須な考え方であるということを理解していただけたのではないでしょうか。
OODAループの回し方を具体例で解説!
ここからはOODAループの回し方について、具定例を用いて説明していきます。
- 飲食店の営業時間
- ターゲティングの変更
以上の2つの具体例を解説していきますので、「OODAループがどのようなものなのか?」、「どうすればうまく回すことができるのか?」といった疑問の参考にしてみてください。
OODAループの具体例1.
飲食店の経営時間
たとえば飲食店の経営時間については、OODAループを以下のような使い方で回すことができます。
〇飲食店の経営時間についてのOODAループ
Observe(観察) | 現状は深夜3時まで営業をしているが、深夜0時以降の時間帯はほとんどお客さんが来ないというデータがある |
Orient(仮説、状況判断) | 深夜の営業時間を短縮することで人件費を抑えられる分利益率が伸びるのではないか |
Decide(意思決定) | お店の営業時間を深夜0時までに変更することを決める |
Action(実行) | 営業時間の変更を実際に行動に移す |
このように自社のデータから仮説を立てることで、営業時間短縮の意思決定と実行を行っていきます。
もちろんOODAはループですから、ここで終わりではありません。
たとえば実際に深夜0時までの営業をすることで新たなデータが取れるはずなので、そのデータと営業時間短縮前のデータを見比べて仮説を立て、さらなる意思決定と行動をすることができます。
このようにOODAループを繰り返すことで、本当に営業時間を短縮することが正しい判断だったのかどうかを確認することもできるというわけですね。
OODAループの具体例2.
ターゲティングの変更
もう1つ、OODAループの具体例として、ターゲティングの変更を意思決定するさいの流れを紹介していきます。
〇ターゲティングの変更についてのOODAループ
Observe(観察) | 20代の女性をターゲットとしていたが、思ったより20代の女性の売上が伸びなかった
そしてその代わりに40代女性の売上が予想を大きく超えていた |
Orient(仮説、状況判断) | 20代の女性をターゲットとしてきたが、若年層では手が出せない価格帯になっているのではないか
一方、40代の女性なら経済的に手が出しやすいのではないか |
Decide(意思決定) | ターゲットを20代の女性から40代の女性に変更することを決める |
Action(実行) | 広告の出向先やキャッチコピーなどを20代向けから40代向けに修正する |
この一連の流れが終わったら、再度「Observe(観察)」のフェーズに戻り、40代女性をターゲットした場合の観察と情報収取を行います。
そして新たに得た情報から次の仮説を立て、そのままビジネスを進めるのか、もしくはさらなる変更を検討するのか、意思決定と行動を行うわけですね。
たとえば仮に、40代女性をターゲットにしても思ったような売上が出なかったとしましょう。
その場合は商品の質を落としてその分販売価格を下げ、再度20代女性をターゲットにしてみるということもできます。
さらに20代女性に安価な商品を売ることで利益が上がったというデータが得られたなら、生産量を上げることでさらに利益が上がるのではないかという仮説を立て、さらなる意思決定と行動を起こすということも可能なのです。
このようにOODAループは、ビジネスをどんどんと改善していくためにも使うことできるわけですね。
OODAループとPDCAサイクルの違い、関係性とは?
ここからは、OODAループとPDCAサイクルの違いや関係性について説明していきます。
OODAループの話をするさい、よく疑問として挙げられるのがPDCAサイクルとの違いです。
とくによく言われるのが、「PDCAサイクルはもう古い」というような意見ですね。
しかし実際のところこの2つは、「どちらかが新しくてどちらかが古い」と言い切れるような関係性ではありません。
そもそもPDCAサイクルは「改善」のためのフレームワークです。
「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」という4つのフェーズを繰り返し回すことで、生産性や品質を継続的に改善していくことができます。
各フェーズは詳しく説明すると以下の表のような流れです。
Plan(計画) | 業務計画を立てるフェーズ |
Do(実行) | 立てた業務計画を実行に移すフェーズ |
Check(評価) | 実行に移した業務が計画どおりに進んでいるかを確認し、問題点を抜き出すフェーズ |
Action(改善) | 抜き出した問題点を改善するフェーズ |
見比べやすいように、OODAループの詳細も以下に載せておきます。
Observe(観察) | 市場や自社が置かれている状況を観察し、情報収集をするフェーズ |
Orient(仮説、状況判断) | 収集した情報を基に仮説を構築するフェーズ |
Decide(意思決定) | 構築した仮説を基に意思決定を行うフェーズ |
Action(実行) | 決定したことを実行に移すフェーズ |
このように、パッと見比べた感じでは、OODAループとPDCAサイクルはまったくの別のものであるように見えるのではないでしょうか。
実際、OODAループはあくまでも「意思決定」のフレームワークであり、PDCAサイクルは「改善」のためのフレームワークであるということで、違う意味合いを持っています。
では、なぜOODAループとPDCAサイクルが比べられるのかというと、どちらも業務改善に役立つものだからです。
要はOODAループを回すことでも業務改善ができ、それがPDCAサイクルを回すことよりも優れているのではないか、と議論されているわけですね。
ただ結論から言うと、そもそもOODAループとPDCAサイクルは優劣で比較するべきものではありません。
なぜかというと、そもそもOODAループとPDCAサイクルは場面によって使い分けることができるからです。
たとえばOODAループは「意思決定」のフレームワークであるということで、不明確な状況でとくに力を発揮します。
とくに新規事業を立ち上げるさいにOODAループを回せば、どんどんと状況を改善し、事業を波に乗せることができるはずです。
一方、PDCAサイクルは元々あるものをさらに改善するためのフレームワークです。
たとえば工場の生産性や安全性を上げるときなど、今あるものをさらに良くしたい場合や問題点を改善したい場合などにその力を発揮します。
このようにOODAループとPDCAサイクルは、似た用途でありながらまったく別のフレームワークなのです。
だからこそ状況に合わせて使い分けることで、その効果をより実感できるというわけですね。
※PDCAサイクルに関しては別記事で詳しく説明をしていますので、そちらも併せて確認してみてください。
⇒具体例で学ぶ!PDCAサイクルを回す正しい方法と注意点とは?
中小企業がOODAループを正しく活用する方法
中小企業でOODAループを正しく活用するためには、社長であるあなたの強いリーダーシップと決断力が必要です。
まずOODAループは組織で使う場合、管理職のリーダーシップが必要になると言われています。
というのもいくら意思決定を行ったところで、社員が付いてきてくれなければ意味がないからです。
そして社長がワントップとなるような規模の中小企業の場合、あなた自身のリーダーシップが非常に重要となるわけですね。
さらに社長であるあなたには、意思決定のための決断力も求められます。
いくらOODAループを回しても、あなたが物事を決められない人間であれば迅速な意思決定が実現しないからです。
とくにあなたが社長としてワントップになっている場合、OODAループの有無にかかわらず強いリーダーシップと決断力がなければ会社はうまく回らないはずです。
逆にあなたがリーダーシップと決断力を発揮し、そのうえでOODAループを回せば、会社にとってとても良い影響を得ることができるでしょう。
また、もしこれからOODAループを回そうとしている場合は、まず最初に「価格設定」について回すことをおすすめします。
要は今の価格設定についての情報を集め、仮説を立て、意思決定をして、最終的に価格を見直してほしいということです。
なぜ価格設定でOODAループを回してほしいのかというと、現状、大企業との価格競争に巻き込まれた結果、日本の中小企業の多くが望まない低価格で商品やサービスを提供してしまっているという現実があるからです。
実際、売れ行きは好調なのに価格が安すぎて利益が取れず、そのまま倒産してしまうという企業も少なくありません。
お客さんは多いので一見繁盛して見えるのですが、実際はただただ忙しいだけで利益がほとんど出ていなかった、というパターンです。
そして、このようなパターンが多い理由こそが、「価格を上げる」という意思決定ができない社長が非常に多いからなのです。
だからこそOODAループを実践するなら、まずは価格設定について回してみることをおすすめします。
実際に弊社のクライアントには、価格を上げることで業績を大きく伸ばした会社も多いです。
このように社長が意思決定をできるかできないかは、その企業の命運を大きく分ける要素となります。
だからこそ社長であるあなたがOODAループをしっかりと理解し、強いリーダーシップと決断力を発揮できるようになっておきましょう。
【まとめ】OODAループ(ウーダループ)で迅速、正確な意思決定をしよう!
今回は正確、迅速な意思決定を可能とするためのフレームワーク、OODAループについてお話をしてきました。
中小企業の経営者にとって、意思決定は非常に重要な仕事の1つです。
とくに社長がワントップとなる規模の会社の場合、社長の意思決定がそのまま会社の明暗を分けることにもなります。
なのでこの機会に、ぜひOODAループを学び、試してみてください。
また、社長がもっともやりにくいと感じる意思決定の1つに「値上げ」というものがあります
事実、値上げという意思決定と行動をすることができず、低い利益率で苦しんでいる中小企業は非常に多く存在しているのです。
そのため、OODAループを実践するなら、まずは価格設定の見直しから始めてみることをおすすめします。
OODAループについては書籍やセミナーで勉強してみることも良いですが、今回の記事を参考にして、とにかく1度回してみると、その勝手がわかるかと思います。
何度でも言いますが意思決定は社長にとって非常に重要な仕事です。
だからこそOODAループを活用し、迅速で正しい意思決定をする力を身に付けましょう。