今回は「One to Oneマーケティング」について解説していきます。
One to Oneマーケティングというのは顧客一人ひとりのニーズに合わせて行うマーケティングを指します。
近年のIT技術の発展により、企業は顧客の属性データだけでなく、Web閲覧行動や購買行動に関するデータなどから、より深く顧客を知ることができるようになりました。
One to Oneマーケティングは、インターネットやパソコン、スマートフォンが普及している「ユーザー自らが情報を取得する時代」の中で、多様化したニーズに合わせたマーケティング手法として、年々その重要度が増しています。
そこで今回の記事では、One to Oneマーケティングがどんなものなのか、メリットや成功事例から具体的にご紹介していきます。
One to Oneマーケティングとは?
One to Oneマーケティングとは、前述のとおり「消費者一人ひとりのニーズに合わせて行うマーケティング」のことです。
つまり、「個別に最適な情報を提供する」ということです。
ネットサーフィンをしているときに、「あれ、この間自分が検索したサイトの広告が出てきた」ということはないでしょうか。
これはOne to Oneマーケティングの手法を利用しているのです。
市場全体や大規模なターゲットに対して、同一のマーケティングを行うマスマーケティングに対して、顧客一人ひとりの属性や趣向、購買や行動履歴などを基にして、個別にマーケティングを行うOne to Oneマーケティングは、効果的に成果を出す手法です。
どういう仕組み?
One to Oneマーケティングの仕組みには「Cookie情報」というデータが使われています。
Cookie情報というのは、Webページなどでブラウザに情報を保存するための仕組みの1つです。
例えば、サイトにアクセスすると、そのサイトからあなたのブラウザに、「あなたはこのサイトを以前訪問しましたよ」というCookie情報が送られます。
あなたのブラウザはそのCookie情報を記憶しているため、同じブラウザで次にそのサイトを訪問した際に、アクセスしたサイトがそのCookie情報を読み取り、「2回目以降に訪れた人」として初めて訪れた人とは違うページを見せることが可能なのです。
このCookie情報には、
- ユーザーの過去のWebページ閲覧・検索履歴
- 年齢層
- 居住区
- 趣味・趣向
などといったパーソナルな情報が入っているため、それを各属性ごとに振り分けて個別の戦略を立てることができます。
また、このCokkie情報を利用して、他のページを閲覧していても、以前その顧客が閲覧していた商品などの広告を表示させるといったこともできます。
このようにCookieという仕組みの登場によって、個々の消費者に合わせた情報を提供できる時代になりました。
One to Oneマーケティングのメリットと効果
One to Oneマーケティングのメリットは主に2つあります。
- 費用対効果が高い
- 顧客との信頼関係を築くことができる
では、具体的に解説していきます。
メリット1.費用対効果が高い
One to Oneマーケティングのメリット1つ目は「費用対効果が高い」という点です。
ユーザーの行動履歴を分析し、購買意欲の高い見込み客に適切な情報を表示させることができるので、購買へと繋がりやすいのです。
ユーザーの行動履歴から、最適なメール配信や広告・サイト表示などを自動で行なっているツールを導入することで、マスメディアなどに多額の広告費をかけてアプローチするよりも格段に費用対効果が高いといえます。
メリット2.顧客との信頼関係を築くことができる
One to Oneマーケティングのメリット2つ目は「顧客との信頼関係を築くことができる」ことです。
前述の通り、顧客のCookie情報、すなわち顧客の行動履歴を元に最適な情報のみを提供するため、
- 自分が欲しい情報だけが企業から送られてくる
- 不要な広告や情報が送られてこなくなる
といった、顧客にとっても有益なマーケティング方法となり、企業に対して信頼を抱く土台になります。
「自分が興味がない広告ばかり表示されて嫌だ」「ダイレクトメールが毎日送られてきてしつこい」といった不快感や不要感を低減してくれ、必要な情報だけを受け取ることができるので、従来のマスコミュニケーションに比べて顧客との信頼関係を築きやすいのが特徴です。
One to Oneマーケティングの成功事例
One to Oneマーケティングの成功事例を3つご紹介していきます。
- パーソルキャリア
- すかいらーくグループ
- Rinnai
One to Oneマーケティングを導入する際に、成功事例から具体的な施策について学ぶことはとても役立ちます。
3社の成功事例から、自社のサービスや製品に応用できそうな点を探してみてください。
1.パーソルキャリア
One to Oneマーケティングの成功事例の1つ目は、人材紹介サービスを展開している「パーソルキャリア(旧インテリジェンス)」です。
パーソルキャリアが手がける転職サービスのdodaでは、転職者一人ひとりの行動履歴や属性に合わせたマーケティングをすることにより、求人への応募数を最大で1.8倍にまで増加させることに成功しました。
一元管理されたユーザーの行動履歴などのデータベースを分析し、その転職者に合わせたサイト表示やメール配信を自動で行う仕組みを取り入れたのです。
例えば、ユーザーがある企業を閲覧した際には「この企業を見た人はこの企業も見ています」といったレコメンドを表示させたり、初めてサイトに来訪したユーザーにはサイトの使い方やFAQページのメニューを表示することで、そのユーザーに合った情報を早く的確に伝えることができるようになりました。
転職者の職種や転職のタイミングがそれぞれ異なることから、より一人ひとりに合わせたマーケティングを展開することで、応募数を増加させることができたのです。
2.すかいらーくグループ
One to Oneマーケティングの成功事例2つ目は、全国に展開するファミリーレストランの「すかいらーくグループ」です。
「ガスト」など全国に1000店舗以上のファミリーレストランを抱える「すかいらーくグループ」は、顧客のデータを分析し、それをクーポンに適用することで成功を納めました。
ファミレスをはじめ、コンビニやスーパーなどで消費者がお会計をすると、「POSデータ」という情報が蓄積されていきます。
POSデータは顧客の年齢や性別と購入した商品の個数や購入時期などを紐付けた細かい情報のことをいいます。
すかいらーくグループが自社開発した「ガスト」のスマートフォンアプリでは、このPOSデータを分析し、顧客一人ひとりに違ったクーポンを配布したことで、売上高を上昇させることに成功したのです。
このクーポンのすごいところは、内容だけでなく配布するタイミングまで顧客によって変えているというところです。
同社は2014年上半期の広告宣伝費を前年同期比で10%以上削減しながら、売上高39億円で2.9%の成長をしました。
アプリのクーポン配信による来店率はメルマガの約10倍、コストは新聞広告の100分の1ほどのマーケティングで、大きな成功を収めたのです。
3.Rinnai
One to Oneマーケティングの成功事例3つ目は、ガスコンロメーカーの「Rinnai」です。
Rinnaiは配信するメールマガジンをユーザーによって変えることで、購買率を12.6倍にも増やすことに成功しました。
同社は自社サイトに登録しているユーザーの情報を分析し、行動履歴に基づいたメール配信をしています。
それにより、例えばある商品に興味がありそうなユーザーを抽出し、そのユーザーだけにメールを配信することができます。
同じ内容のメールを一斉送信していた頃に比べて、開封率で約3.7倍、クリック率で約2.4倍、購買率で約12.6倍もの差が生じました。
また、メーカーとしては珍しく「リンナイのある暮らし」というオウンドメディアを開設し、商品だけではなくガスコンロに関連するレシピやコラム、暮らしに対する情報などを提供したり、「リンナイスタイル」というECサイトも運営するなど、積極的にユーザーとのコミュニケーションを図っています。
ユーザーの行動履歴から、オウンドメディアとECサイトへと誘導することで、ユーザーとの関係を構築し購買率をあげることに成功した例です。
オウンドメディアについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、合わせて読んでみてください。
⇒中小企業のオウンドメディア戦略とは?メリットや事例、運営のポイントを徹底解説
One to Oneマーケティングの実践的な4つの手法
One to Oneマーケティングの実践的な手法には、以下の4つがあります。
- リターゲティング広告
- レコメンデーション
- マーケティングオートメーションツール(MA)
- LPO
これらはどれも、自動化してくれるツールがあり、最小限のコストと労力で導入することができるため、特に中小企業にはおすすめの手法です。
One to Oneマーケティング手法1.
リターゲティング広告
One to Oneマーケティングの実践的な手法1つ目が「リターゲティング広告」です。
Webサイトを訪問したことがあるユーザーの行動を追跡し、他サイトの広告枠に訪問したサイトの広告を表示させることで、再度の訪問を促す手法のことです。
冒頭で「一度サイトを見た人に同じサイトの広告を表示する」という例が、まさにこのリターゲティング広告なのです。
リターゲティング広告のメリットは、「見込み客への再アプローチ」ができるため、コンバージョン率が高いという点です。
ユーザーは興味を持ってサイトへ訪問しているため、再度商材を配信することで選択するきっかけを作ることができるのです。
常に比較検討をしているユーザーにとって、有効的な施策といえるでしょう。
また、ターゲットリストを活用して、ユーザーの行動別に配信をすることができます。
ターゲットリストとは、サイトを訪問したユーザーのリストで、ユーザーの行動によってグルーピングすることができます。
例えば、
- サイトを訪れたユーザー全体
- 特定のページを訪問したユーザー
- 購入までに達した / 達しなかったユーザー
- 特定の端末を利用しているユーザー
- 特定の性別・年齢のユーザー
- 特定期間にサイトを訪問したユーザー
といったように、ユーザーのあらゆるセグメントによってターゲットリストを作成することができるのです。
このリストを活用することにより、「商品購入ボタンを押したけれども、購入しなかった人」や「お気に入りに商品を入れたけれども購入しなかった人」「色違いが欲しかったけど、売り切れていて購入を諦めた人」など、ユーザーの行動やニーズに合わせた広告を打つことができます。
こうした点から、リターゲティング広告が重要視されているのです。
このリターゲティング広告は金融機関や不動産など、多くの企業で積極的に取り入れられ、一定の効果をあげています。
One to Oneマーケティング手法2.
レコメンデーション
One to Oneマーケティングの実践的な手法、2つ目が「レコメンデーション」です。
レコメンデーションとは、一言でいえば「おすすめ機能」のことで、amazonの「おすすめ商品」がイメージしやすいかもしれません。
消費者が購入したこととのある商品に関連した商品がおすすめとして表示される仕組みです。
その商品を購入した他の消費者がチェックや購入をした商品を、あなたに似ている嗜好を持つ人だと捉えて、興味を持ちそうな商品としておすすめしてくれるのです。
レコメンドは大きく4つのタイプがあります。
レコメンドタイプ | 詳細 |
ルールベース | あらかじめ決められたルールに従って商品をおすすめする。 例:A商品を購入した人には、B商品をおすすめする |
コンテンツベース | 類似性をもとに関連した商品をおすすめする。 例:英語書籍Aを購入した人に、類似したBの書籍をおすすめする |
協調フィルタリング | 行動や購入履歴をもとに類似した属性を持つユーザーにおすすめする。 例:「この商品を買った人はこんな商品も買っています」 |
ベイジアンネットワーク | アイテムやユーザーの属性、行動や購入履歴をもとに購入確率が高い商品をおすすめする。 |
レコメンデーションの優れている点は、顧客が当初は買う予定の無かったものまで「買おうかな」と購入意欲を掻き立てることができるという点です。
よくコンビニやスーパーなどでレジに並んでいると、レジのすぐ目の前に小さなお菓子や発売したてのマンガが置いているのを見かけますよね。
レコメンデーションは、レジ横商品と似たような発想で、あらかじめユーザーが興味を持ちそうな商品をおすすめすることで、この「ついで買い」を促しているのです。
ECサイトやニュースサイトなどの情報量の多いサイトにおすすめです。
One to Oneマーケティング手法3.
マーケティングオートメーション(MAツール)
One to Oneマーケティングの実践的な手法、3つ目が「マーケティングオートメーション(MAツール)」です。
簡単に言うと、「顧客が広告を見てから購入するまでの流れを自動化する」ということです。
例えば、ある消費者がショッピングサイトで商品をカートに入れたましたが、何らかの理由で購入には至りませんでした。
しかし、カートに入れたということは購入意欲はありますよね。
なので、カートを離脱した翌日にリマインドメールを送付してみます。
その結果、このリマインドメールを見て購買に至りました。
中には、メールを開封したけれども購買に至らなかった人もいます。
そこでそのような消費者だけに、一日後にその人たちのクッキーIDを追いかけて広告を表示させます。
そこでも、広告をクリックしたけれど購買しなかった人に対して、さらに2日後に特別オファーをメールで送付します。
その結果、反応がなければ、プログラムは終了とします。
こうした購入までにいたる流れのなかで、何らかの理由で購入までにいたらなかった人に対して段階別に効果的な施策をとることができます。
マーケティングオートメーションはこうしたマーケティングに関する「集客」や「販売促進」、「顧客管理」などの一連の業務を自動化・連動化させて行う仕組みなのです。
購入までに消費者が検討するなど、じっくりと時間をかける商品やサービスを展開している企業におすすめです。
One to Oneマーケティング手法4.
LPO
One to Oneマーケティングの実践的な手法、4つ目が「LPO」です。
LPOというのは「ランディングページの最適化」という意味です。
ユーザーが最初に閲覧するページに、個々のユーザーの目的に合わせたテキストやクリエイティブを用意することで途中離脱を防ぎます。
これによって効率的にユーザーを誘導し、コンバージョンまで遷移させるのです。
例えば、
- サイトが閲覧されている地域に合わせてページを設定する
- ユーザーのプロフィールや属性に合わせて、個別のランディングページを表示する
- ユーザーがサイトにアクセスする時間や時期によって表示する内容を変える
などといったことができます。
せっかくSEOやリスティング広告へコストをかけてユーザーを自社サイトに誘導してきても、ページの内容が適切でなく、ユーザーが期待した情報が見つけられなければ、すぐに検索し直すなど自社サイトから離れてしまいますよね。
一度、ウェブサイトから直帰や離脱したユーザーは戻ってくることはありません。
こうした途中離脱を防ぎ、費用対効果を最大限に引き出すことができるのがLPOなのです。
不動産検索サイトや、ECサイト資料請求が目的のサイトなどにおすすめです。
【まとめ】One to Oneマーケティングで顧客とのより密な関係を構築しよう
One to Oneマーケティングは、顧客一人ひとりが求めている情報を提示していくことで、売上高を伸ばし顧客との信頼関係を構築していける費用対効果の高いマーケティング手法です。
オウンドメディアやSNSマーケティングと組み合わせていくことで、顧客とのコミュニケーションをより密に図ることも可能です。
オウンドメディアやSNSマーケティングについては、以下の記事を参考にしてみてください。
⇒「中小企業のオウンドメディア戦略とは?メリットや事例、運営のポイントを徹底解説」
⇒「中小企業こそ積極的に使おう!SNSを活用した自社ブランディング方法 」
One to Oneマーケティングの主な4つの手法、
- リターゲティング広告
- レコメンデーション
- マーケティングオートメーションツール(MA)
- LPO
は、自動化してくれるツールがあるため、簡単に導入することができます。
ただし、ターゲットの設定や各セグメントに対してどのような情報を発信していくかなどの戦略を、十分に立てていかなければ、せっかく導入してもその効果は半減してしまうでしょう。
こうしたマーケティング戦略を立てるときは、一度経営コンサルタントなど外部の目を入れて客観的かつ有効的な施策を立案していくことも大切です。