今回はGoogleも採用している目標管理のフレームワーク「OKR」について解説します。
適切な目標管理を行うには、個人レベルで目標管理を行うことが大切です。
しかし、日本では個人レベルの目標設定が疎かになってしまっているケースも非常に多いです。
株式会社HRBrainが人事評価を受ける立場の会社員男女 600 人を対象に行なった調査によると、「あなたは面談や提出日直前になって、 “その場しのぎ”の目標設定をしたことがありますか。」という質問に対して、「ある」と答えた人は78.3%と報告されています。(n=295)
出典:目標管理の実態と従業員の本音に関する意識調査(株式会社HRBrain)
目標設定を個人がする場合、約8割の従業員が適当な目標設定をしてしまう可能性があります。
そこで、今回紹介したいのが「OKR」という目標管理のフレームワークです。
OKRを導入することで、経営目標と個人目標をリンクさせて目標管理を行うことができます。
しかし、この記事を読んでいる人の中には、OKRがどのようなフレームワークなのか知らない方も多いのではないでしょう。
そこで、この記事ではOKRについて、以下の7つの内容を中心に解説します。
この記事を読むことで、OKRについての基礎はもちろん、OKRを設定できるようになります。
自社の目標管理に課題を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
そもそもOKRとは?OKRの構造について解説
はじめにそもそもOKRとは何かということを解説します。
OKRはIntelの元CEOであるアンディ・グローブ氏が考案した目標設定のフレームワークです。
OKRとは、Objectives and Key Resultsの略語で、日本語では「目標と主要な成果指標」という意味です。
OKRは目標設定のフレームワークで、組織の目標に従って、事業・チームごとの目標と主要な成果指標、個人の目標と主要な成果指標を紐付けて目標管理を行えます。
GoogleやTwitterなどの世界的な企業がOKRを導入していることから、近年では日本でも導入している企業が増えています。
OKRは名前の通り、Objectives(目標)とKey Results(主要な成果指標)の2つで構築されているため、この構造を理解しておく必要があります。
Objectives(目標)
Objectivesはその名の通り、目標を表しています。
まずは、組織の目標を設定して、そこから事業や個人の目標設定をします。
OKRでの目標は達成率が60〜70%くらいになるように、少し高めに設定することが望ましいです。
OKRを設定して、仮に達成率が100%を超えるようであれば、目標設定が低いと判断できます。
Objectivesの例としては、以下のようなものが上げられます。
- 半期で売上を150%上げる
- 3ヶ月以内に問い合わせを2倍にする
- 1年以内に店舗を30店舗増やす
このように目標を高く設定することで、組織や個人が今まで以上の力を発揮できるように促すのが、OKRの1つの特徴なのです。
Key Results(主要な成果指標)
Key Resultsは、Objectivesにつながる主要な成果指標のことです。
1つの目標に対して、主要な成果指標は3〜5つ設定します。
一つひとつの主要な成果指標は、目標に沿ったものを設定するようにしましょう。
Key Resultsの例としては、以下のようなものが上げられます。
- Objectivesが「半期で売上を150%上げる」の場合・・・客単価を150%上げる、客単価を1.5倍にするなど
- Objectivesが「3ヶ月以内に問い合わせを2倍にする」の場合・・・サイト訪問者数を2倍にする、CVRを2倍にするなど
- Objectivesが「1年以内に店舗を30店舗増やす」の場合・・・店長候補を30人採用する、既存店舗のコストを40%削減するなど
このようにObjectivesに沿って、なおかつ数値化できるものをKey Resultsとして設定するようにしましょう。
また、Key Resultsに関しても数値化して測定できるものを設定しなければいけません。
【事例】OKRはGoogleも導入している目標設定指標!
繰り返しになりますが、OKRはGoogleも導入している目標設定指標です。
そこで、今回は事例としてGoogleがどのようにOKRを活用しているのかを紹介します。
そもそもGoogleがOKRを導入したのは、Intelに勤務経験のあったジョン・ドーア氏が、IntelがOKRで成功を収めたことを目撃し、それをGoogleに持ち込んだことがきっかけでした。
Googleでは、OKRは透明性が重要であるとされています。
それは人は納得した目標を目指すことで高い実績が上げられると研究報告があるからです。
透明性を高くするためには次の3つのことが重要とされています。
認識の統一・・・組織が何に焦点を合わせ、どのように成功を測定するかを知ると、個人が自分のプロジェクトを組織の目標に結び付けることが容易になります。
規律と優先順位・・・組織の一員として、優れたアイデア、価値のあるプロジェクト、必要とされる改善に異を唱えるのは難しいものです。しかし、最も重要な目標について全員で合意すると、それより重要度の低い案に対して異を唱えることが容易になります。政治的または感情的な理由で異を唱えるわけではなく、組織全体ですでに合意した目標に基づいて理性的に反応できるようになります。
コミュニケーション・・・すべての従業員が組織の目標と成功の指標を把握できるように、OKRは組織内で公開する必要があります。
透明性のあるOKRを設定することで、社内にOKRを浸透させることができ、さらに高い実績を上げることができます。
あなたの企業でもGoogleと同じようにOKRを導入し、業績アップを試みてはいかがでしょうか。
次の章から、OKRについてさらに深く掘り下げていきます。
OKRと他の目標管理指標との違いとは?
次にOKRと他の目標管理指標との違いについて解説します。
OKRの他に一般的によく使われている目標管理指標は主に以下の2つです。
- KGI・KPI
- MBO
目標管理指標が決められていない方は、ぜひ参考にしてください。
OKRとKGI・KPIとの違い
OKRとKGI・KPIの違いは次のとおりです。
- OKR・・・目標管理のフレームワーク(目標と主要な成果指標:経営目標から個人目標まで一貫した管理ができる)
- KGI・・・目標管理の指標(重要目標達成指標:経営や事業の最終的な目標のこと)
- KPI・・・目標管理の指標(重要業績評価指標:目標達成に至るまでの進捗状況や達成率を確認できる)
上記の通り、OKRは目標管理の「フレームワーク」、KGI・KPIは目標管理の「指標」のため、根本的な概念から違うのです。
OKRとMBOとの違い
MBOは、目標を達成するために用いられるセルフマネジメントの手法です。
そのため、組織が生産性の向上を目的に行うというよりは、チームのリーダーが従業員を評価するために設けるもので、従業員本人の自主性が問われます。
OKRとMBOの違いは以下のとおりです。
OKR | MBO | |
目的 | 生産性の向上 | 人事評価 |
対象 | 組織全体 | 人事と従業員 |
目標の設定方法 | 達成率が60〜70% | 達成率が100% |
レビューの頻度 | 月1度〜3ヶ月に1度 | 半年〜1年に1度 |
OKRとMBOの違いは大きく分けて4つです。
そもそもの目的や対象が違うため、どちらが良いとは一概には言えませんが、目標達成をするためにはOKRのほうが望ましいと言えるでしょう。
次の章からはOKRのメリットとデメリットについて解説します。
OKRの2つのデメリットを解説!
まずはOKRの2つのデメリットについて解説します。
いくらGoogleが導入しているとはいえ、良いところしかないなんてことはないのです。
- レビューの頻度が高い
- OKRを設定するまでに工数がかかる
それぞれのデメリットについて解説します。
OKRのデメリット1.レビューの頻度が高い
1つ目のデメリットは、レビューの頻度が高いということです。
前述しましたが、OKRのレビュー頻度は1ヶ月に1度から半年に1度と、高頻度のレビューが推奨されています。
そのため、繁忙期や企業規模が大きい場合には、高頻度でレビューを行うことは難しいでしょう。
とはいえ、ベンチャー企業やスタートアップ企業などの中小企業であれば、高頻度でのレビューも可能でしょう。
OKRのデメリット2.OKRを設定するまでに工数がかかる
2つ目のデメリットは、OKRを設定するまでに工数がかかるということです。
OKRは、組織全体の目標を1つのフレームワークで管理します。
そのため、企業規模が大きい場合や従業員が多い場合には、組織全体のOKRを設定するまでに工数や時間がかかってしまうのです。
中小企業の場合でも、人件不足などでOKRの設定などに時間が取りづらい場合などもあるでしょうから、余裕を持って進められるような計画を立ててください。
個人レベルで目標設定が可能!OKRの3つのメリットを解説
次にOKRの3つのメリットについて解説します。
Googleなどのが世界的な企業が、なぜOKRを導入しているのかを掘り下げてみるとそこには3つのメリットがありました。
- 経営陣と従業員のギャップが生まれにくい
- 社内のコミュニケーションが増える
- 従業員のモチベーションが上がりやすい
それぞれのメリットについて解説します。
OKRのメリット1.経営陣と従業員との間にギャップが生まれにくい
OKRの最大のメリットは、経営陣と従業員の間にギャップが生まれにくいということです。
一般的には目標管理を行ったとしても、経営者と従業員の間で、目標に向かうベクトルや気持ちにギャップが生まれてしまうこともよくありますよね。
OKRの場合、経営目標から個人目標まで、一貫した目標管理を行えるため、経営目標に沿った個人目標を設定できます。
そのため、経営陣と従業員の間にギャップが生まれにくいのです。
OKRを導入しているメルカリのPeople Experience Manager 奥野浩平氏は、OKRのメリットについて次のように語っています。
−OKRの導入から4年以上が経ちますが、メリットとして感じていることはありますか?
会社がどのようなフェーズなのかがメッセージとして伝わりやすいと思っています。経営陣が「今はギアをチェンジするときだ!」と思っていても、個々人にまで伝わらないことは多々あります。クオーター毎にOKRと向き合うことで、そうした温度感の差がなくなっていくのは大きなメリットとして実感しています。
(出典:OKRのリアルなハナシ 〜(株)メルカリの場合〜 | DIO)
メルカリほどの大きな企業でも、経営陣と従業員との間にギャップがない状態で業務に励むことができることは、他の目標管理方法では難しいでしょう。
経営目標を設定したけど、従業員との間にギャップを感じている経営者の方や、従業員の目標管理に課題を感じている経営者の方は、OKRを導入してはいかがでしょうか。
OKRのメリット2.社内のコミュニケーションが増える
2つ目のメリットは、社内のコミュニケーションが増えるということです。
元Googleの社員でTwitterでCEOを努めたディック・コストロ氏は、「企業が大きくなるにつれて、難しくなることがたくさんあるが、その最たるものがコミュニケーションだ。しかし、OKRであれば、すべての社員が目標の達成や戦略の評価基準をしっかり理解できます。」と語っています。
(出典:Twitter’s Dick Costolo at the Great Place to Work conference | Full Interview | Fortune)
ディック・コストロ氏が言うように、OKRではレビュー頻度が高いことや、組織の目標と個人の目標が紐付いていることから、コミュニケーションが自然と増えるのです。
コミュニケーションが増えることで、組織としての結束力も高くなります。
自社の課題がコミュニケーションだと感じている経営者の方は、ぜひOKRの導入を検討してみてください。
OKRのメリット3.従業員のモチベーションが上がりやすい
3つ目のメリットは、従業員のモチベーションが上がりやすいということです。
従業員は自分の仕事が顧客のためになっていたり、会社のためになっているということが把握できると、モチベーションを上げることができます。
OKRでは、組織目標に沿って事業やチームの目標、そして個人の目標を設定するため、従業員が自分の仕事が誰かのためになっているということを把握しやすいです。
そのため、OKRを導入することで従業員のモチベーションが上がりやすい環境を作ることができるのです。
組織から個人までリンクしたOKRの設定手順を解説
次にOKRの設定手順を紹介します。
OKRを設定するときには大きく分けて3つの手順が存在します。
基本的な設定手順がわかれば、どんな方でもOKRを設定できるようになるため、覚えておきましょう。
- Objectives(目標)を設定する
- Key Results(主要な成果指標)を設定する
- 部署や個人レベルでOKRを設定する
それぞれの手順について解説します。
OKRの設定手順1.組織のObjectives(目標)を設定する
OKRではまずObjectives(目標)の設定を行います。
OKRの基本的な流れとしては、目標を設定してから成果指標を設定します。
目標の設定には5つのポイントがあるため覚えておきましょう。
- 目標は一定期間内に5つ以内にする
- 目標が複数ある場合は優先順位をつける
- 向上意欲を感じられる目標を立てる
- 目標は客観的に見ても明確になるように具体的で定量的なものにする
- 目標の達成率が60〜70%になるようにする
適切な目標設定ができなければ、主要な成果指標を適切に設定することもできません。
生産性を上げて、業績を好転させるためにも目標設定にはこだわってみましょう。
OKRの設定手順2.組織のKey Results(主要な成果指標)を設定する
次にKey Results(主要な成果指標)を設定します。
目標を設定したら、目標に沿った主要な成果指標を設定しましょう。
主要な成果指標の設定にも5つのポイントがあります。
- 1つの目標に対して主要な成果指標は5つまでにする
- 数値化して計測できるようにする
- 自分でコントロールできるものにする
- Objectivesと同じように高い目標にする
- ToDoやタスクをKey Resultsとして設定しない
この5つのポイントを抑えることが、主要な成果指標には重要だといえます。
また、1つ覚えておいてほしいことが、主要な成果指標を従業員の評価に加えてはいけないということです。
これは、根本的にOKRが人事評価を行うためのものではないということと、高い目標設定を行っているため、目標が100%達成されないことが当たり前だからです。
OKRの設定手順3.事業や個人レベルでOKRを設定する
組織のObjectives(目標)とKey Results(主要な成果指標)が設定ができれば、次に事業や個人レベルでOKRを設定しましょう。
事業や個人レベルでOKRを設定する場合でも、手順やポイントは同じです。
Objectives(目標)を設定して、その後にKey Resultsを設定しましょう。
個人レベルまでOKRが設定できた後には、組織のOKRと個人のOKRがつながっているかを確認してください。
OKRを運用するときの3つの注意点
最後にOKRを運用するときの3つの注意点を解説します。
OKRを設定しても、運用が上手く行かないとOKRを成功させることはできません。
- コミュニケーションの頻度を増やす
- 効果測定を行う
- 従業員の評価を行う
以上3つの注意点について解説します。
OKRの注意点1.コミュニケーションの頻度を増やす
1つ目の注意点は、コミュニケーションの頻度を増やすということです。
OKRは構造的にコミュニケーションが増えると前述しましたが、それに加えて、自主的にコミュニケーションの頻度を増やすことが重要です。
従業員同士が自主的にコミュニケーションを増やすことで、OKRを確認する頻度を増やし、社内のベクトルを同じ方向に向けることで目標を達成することができます。
OKRの注意点2.進捗を共有する
2つ目の注意点は、進捗を共有するということです。
OKRは透明性が大切だと解説しましたが、OKRを共有するだけでなく、進捗を共有することが重要です。
従業員が自身の仕事が、目標を達成することにつながっていることを、常時確認できるようになれば、モチベーションを維持することにも繋がりますし、コミュニケーションを増やすきっかけにもなります。
また、進捗を共有することで各従業員が、業務の方向性やベクトルを正すこともできるため、進捗を共有することが重要なのです。
OKRの注意点3.OKRの効果測定と評価を行う
3つ目の注意点は効果測定を行うということです。
OKRは人事評価は行いませんが、OKR自体の効果測定と評価は行うべきです。
OKRを設定したときに決めた期日が終了したら、目標達成率の評価や主要な成果指標の進捗などを評価しましょう。
また、目標達成率や評価内容も従業員に共有し、社内全体で次の施策に活かせるようなレビューを行うことが大切です。
【まとめ】OKRを設定して組織と個人の目標設定をリンクさせよう!
今回は目標管理のフレームワーク「OKR」について解説しました。
OKRはGoogleやTwitterも導入するフレームワークです。
国内でもメルカリやChatworkなど、私達に身近な企業でも導入されています。
OKRの特徴は2つあります。
- 組織の目標から個人の目標まで一貫した管理が行える
- 透明性が高いため従業員のモチベーションが上がりやすい
この2つの特徴が大企業でOKRが導入されている理由です。
OKRを導入することで、組織の目標から個人の目標まで一貫して行えることで、社内が組織目標に向かえるのです。
自社の目標管理に課題を感じている経営者の方は、この記事を機にOKRの導入を検討されてみてはいかがでしょうか?
ただし、OKRを導入する前に1点だけ確認していただきたいことがあります。
それが、自社の商品やサービスの価格が適切であるかどうかです。
自社の商品の価格が適切でなければ、OKRを導入して業務効率を上げたところで、業績を好転させることはできません。
それどころか、業績が上がらないことにより、従業員のモチベーションが下がってしまい、最悪の場合、人件不足に陥ってしまうことも考えられます。
だから、OKRを導入する前に自社商品の価格を確認していただきたいのです。
商品の価格を上げるとなると、既存顧客が離れていったり、クレームが来るんじゃないかと不安になるでしょう。
しかし、適切な方法で価格アップを行えばそのような問題は一切ありません。
適切な価格設定と、OKRで業績を好転させましょう。