今回は、上手く活用することで第一印象を劇的に良くすることができる「メラビアンの法則」について解説をしていきます。
ビジネスにおいて、お客さんや取引先からの印象は非常に重要です。
とくに人前に出ることの多い営業や接客、そして経営者は、常にこの印象を気にしなければいけません。
そこで知っておいて欲しいのが、今回のテーマであるメラビアンの法則です。
メラビアンの法則を理解すれば、ビジネスのさまざまなシーンで活用することができます。
- メラビアンの法則の意味
- メラビアンの法則で勘違いしがちなこと
- メラビアンの法則を活用する方法
- メラビアンの法則を活用した事例
これらの内容を解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
メラビアンの法則とは?
メラビアンの法則とは、コミュニケーションにおいて相手が何を重視してメッセージを受け取るかということを表した法則です。
アメリカ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学名誉教授であったアルバート・メラビアン氏によって提唱されました。
メラビアンの法則は、「3Vの法則」、もしくは「7-38-55ルール」とも呼ばれています。
なぜこのような呼ばれ方をするのかというと、人はメッセージを受け取るときに「言語情報(Verbal)」、「聴覚情報(Vocal)」、「視覚情報(Visual)」の3つの情報(3つのV)で総合的に判断をするからです。
ちなみに、各情報の具体例は以下のとおりです。
- 視覚情報(Visual)……話し手の外見やしぐさなど
- 聴覚情報(Vocal)……話し手の話し方や声のトーンなど
- 言語情報(Verbal)……話の内容
そして、この3つの影響割合は以下のようになっています。
この図を見ていただければわかるとおり、実は人は、相手の外見やしぐさによってもっとも影響を受け、話の内容からはさほど大きな影響を受けないのです。
これら3つの情報の頭文字を取って「3Vの法則」、もしくは影響度の割合をとって「7-38-55ルール」と呼ばれているわけですね。
たとえばメラビアンの法則を説明するときによく用いられる例として、笑いながら叱るというものがあります。
- 視覚情報(Visual)……笑顔、明るい表情
- 聴覚情報(Vocal)……低いトーン、怒っている声
- 言語情報(Verbal)……聞き手を叱る言葉
このような状況の場合、視覚情報の「笑顔」によって、聞き手は55%もの影響を受けてしまいます。
すると、「口ではああ言っているけど、まぁ、そんなには怒っていないだろう」という判断をしてしまうのです。
逆に以下のような場合、聞き手はネガティブな情報を多く感じ取ることになります。
- 視覚情報(Visual)……怒っている表情、暗い表情
- 聴覚情報(Vocal)……明るいトーン
- 言語情報(Verbal)……聞き手を褒める言葉
どれだけ耳障りの良いことを言っていても、半分以上の影響割合を持つ視覚情報で見れば相手はすごく怒っている状況です。
このような場合、多くの人が「相手は怒っていて皮肉を言っているんだ」、「怒っているけど必死に堪えているんだ」などと感じてしまいます。
つまり、視覚情報から得る「怒り」の感情を強く意識してしまうわけですね。
このように、人間は「視覚情報(55%) > 聴覚情報(38%) > 言語情報(7%)」の割合で相手の感情を判断します。
このルールを表しているのが、メラビアンの法則なのです。
メラビアンの法則における4つの壁とは?
メラビアンの法則では、「人が相手を受け入れるまでに4つの壁がある」とされています。
その4つの壁が以下のとおりです。
- 外見
- 態度
- 話し方
- 内容
この4つの壁をすべて突破して、初めてあなたの話が相手に受け入れられます。
ここで注目して欲しいのが、4つの壁を乗り越える順番です。
4つの壁は上から順番に、「外見 → 態度 → 話し方 → 内容」の順番で乗り越えていきます。
言い換えると、「視覚情報(外見、態度)」 → 「聴覚情報(話し方)」 → 「言語情報(内容)」の順番になっているということです。
つまり、「視覚情報で相手に拒絶されるとそもそも話を聞いてもらえない」ですし、「聴覚情報で拒絶されると話を聞き流されてしまう」ということになります。
だからこそメラビアンの法則では、視覚情報がもっとも大きな影響力を持っており、次いで聴覚情報の影響が大きいと定義されているわけですね。
メラビアンの法則で勘違いしがちなこと
ここまで説明してきたメラビアンの法則ですが、「視覚情報さえ良ければ相手の印象が良くなる」という勘違いをする人が多いです。
視覚情報が55%と半分以上を占めていることから、ここさえ押さえれば良いと考えてしまうわけですね。
しかし実際には、どれだけ外見やしぐさが良くても言っている内容が悪ければ良い印象は与えられません。
たとえば、どれだけ満面の笑顔であったとしても、あきらかに悪意ある言葉を浴びせれば、当然相手はそれを好意的には受け取りませんよね?
もしくはどれだけきちっとした身なりをしていても、話し方が粗暴であれば相手は良い印象を受けないでしょう。
このように、視覚情報は確かに大きな影響力を持っていますが、それだけで印象を良くできるものではないのです。
視覚情報が良ければ相手の印象が良くなるのは確かですが、あくまでも次の判断材料である聴覚情報や言語情報を好意的に聞いてもらいやすくなるだけだということは認識しておきましょう。
メラビアンの法則の活かし方
メラビアンの法則を活かすには、「言語情報(Verbal)」、「聴覚情報(Vocal)」、「視覚情報(Visual)」の3つの情報を「相手に伝えたい感情」や「相手に与えたい印象」に統一しなければいけません。
たとえば「怒り」を伝えたいなら、言葉はもちろん、態度や話し方でもその怒りを伝えるべきだということです。(もちろん、暴力や怒鳴る行為はNGです)
もしくは相手に「清潔感があるという印象」を与えたいなら、身なりはもちろん、しぐさや言葉遣い、言葉の内容にまで気を配らなければいけないということですね。
これがなぜかというと、3つの情報が1つの意図で揃っていないと、聞き手の誤解を招いてしまうからです。
たとえば、本気で怒っているのに愛想笑いを浮かべていると、「笑っているのだからそこまで怒ってはいないのだろう」という感じで、その怒りが相手に上手く伝わりません。
もしくは「仲良くしてください」という言葉をムスッとした表情で伝えても、「この人は本当に仲良くしたいと思っているのだろうか?」と相手に疑いを持たれてしまいます。
だからこそ、自分が伝えたい感情を誤解なく相手に伝えるためには、3つの情報を自分が伝えたいと思っている感情や印象で統一しなければいけないのです。
相手に怒っていることを理解してほしいなら、口にする言葉はもちろん、表情や声のトーンでもそのことが伝わるように工夫しなければいけない、ということですね。
また、相手に抱かせたい印象に合わせて3つの情報を上手く統一することができれば、相手の印象を劇的に良くすることもできます。
たとえば誠実な人であると思われたいなら、誠実な言葉を、清潔感のある外見とていねいな言葉遣いで伝えれば良いわけです。
とくに相手が初対面である場合、つまり第一印象を抱かせるフェーズでは非常に効果的だと言えるでしょう。
相手に何かを伝えたいときは、伝える言葉だけでなく、外見やしぐさ、話し方にも気を使うべきなのです。
ビジネスにおけるメラビアンの法則の活用例
ここからは、ビジネスシーンにおけるメラビアンの法則の活用例をいくつかご紹介していきます。
- プレゼンでの伝え方
- 部下への対応
- 動画での情報発信
ぜひ参考にしてみてください。
メラビアンの法則の活用例1.
プレゼンでの伝え方
プレゼンをするさいに、身振り手振りを加えたり、声のトーンや話す早さを変えたりすることで、内容や熱意がより相手に伝わりやすくなります。
視覚情報や聴覚情報が加わることで、より重要で聞いてほしいところがどこなのかを伝えることができるからです。
さらに、視覚情報、聴覚情報を通じてあなたの熱意が伝われば、相手はより真剣に聞いてくれるでしょう。
逆に、いくらプレゼンの内容が良くても自信なさげな表情や声をしていると、プレゼンに失敗してしまう可能性が非常に高くなってしまいます。
聞き手側からすると、プレゼンの内容(言語情報)よりも表情(視覚情報)や声(聴覚情報)から感じる不安な印象が勝ってしまうからです。
プレゼンをするさいは3つの情報すべてで自信がある自分を演出し、相手に不安を与えないように意識しましょう。
メラビアンの法則の活用例2.
部下への対応
部下への対応をするさいも、メラビアンの法則を活用すれば誤解を与える可能性がグッと下がります。
上司と部下のコミュニケーションでは、立場の違いから誤解が生じがちです。
たとえば、部下に成長してほしいという想いで叱ったのに、部下がそれによって自信を失ってしまい、最悪会社を辞めてしまう、なんていうことも起こり得ます。
このようなコミュニケーションの齟齬も、視覚情報や聴覚情報の影響によって引き起こされているのです。
たとえば同じ叱るにしても、真剣だけど怒りは感じない表情で、落ち着いた声で諭されればどうでしょうか?
もしくは、怒りのあまり眉間にしわを寄せた表情で怒鳴り散らかされたどうでしょうか?
この2つの叱り方だと、たとえ同じことを言っていたとしても、受け取り側の印象はまるで変わってくるはずです。
このように同じことを伝えようとしても、伝え方によって部下の受け取り方は大きく変わってしまいます。
部下とコミュニケーションを取るときは、どのように受け止めて欲しいのか、視覚情報や聴覚情報でも伝えるように心がけてみましょう。
メラビアンの法則の活用例3.
動画での情報発信
最近多くの企業がやっている動画での情報発信についても、メラビアンの法則を活用できます。
たとえばプレゼンと同じで、動画で話すさいに身振り手振りを加えたり、声のトーンや話す速度を変えたりするだけでも、視聴者への伝わり方は大きく変わってきます。
さらに動画の場合、背景にこだわることも効果的です。
たとえばよく見かけるのが、情報発信をしている人の背景に大量の書籍が置いてある、という光景ですね。
基本的にこれば、背景に大量の書籍を置くことで何も言わずとも視覚情報から「この人はすごく勉強をしている」と思ってもらえるから、ということで狙ってやっています。
逆に掃除もされていない、散らかった部屋が背景に映っていると、きっと誰もその動画の内容を信頼してはくれないでしょう。
このように動画であれば、さまざまな方法で視覚情報を与えることができます。
つまり、メラビアンの法則に則って色々な工夫ができるということです。
もしあなたも動画での情報発信を考えているなら、発信する内容だけでなく、背景などの細かな工夫もしてみると良いでしょう。
【まとめ】メラビアンの法則で相手に伝わる印象は大きく変わる
今回はメラビアンの法則についてお話をさせていただきました。
人はコミュニケーションを取るとき、以下の3つの情報から相手のことを判断します。
- 視覚情報(Visual)……話し手の外見やしぐさなど
- 聴覚情報(Vocal)……話し手の話し方や声のトーンなど
- 言語情報(Verbal)……話の内容
相手に与える影響の割合が「視覚情報 > 聴覚情報 > 言語情報」という関係性になっているため、どれだけ言葉で相手に伝えようとしても、外見や話し方がその内容に伴っていなければ上手く伝わらないということでしたね。
ただ逆に言うと、視覚情報、聴覚情報、言語情報を上手く相手に伝えることができれば、相手の印象を良くすることができるということでもあります。
とくにそれが第一印象であれば、3つの情報を上手く伝えることで、あなたへの印象を劇的に良くすることができるでしょう。
また、相手の印象を良くすることができるということは、それだけ商品の価値を高めることにも繋がります。
たとえば同じコンサルタントでも、自信なさげな人と自信満々で頼りになる人なら、明らかに後者の方が価値があると言えるでしょう。
具体的に言えば、後者の方がより高い価格でコンサル案件を獲得できるはずです。
つまり、メラビアンの法則を上手く活用し、お客さんの印象が良くなれば、商品の価格を上げることさえ可能だということですね。
メラビアンの法則を理解すれば、相手に誤解なく自分の意思を伝えることができるようになります。
もちろん第一印象を良くすることもできるので、ぜひ覚えておいて、活用してください。