今回は離職率が高い原因と、離職率を下げる取り組み事例を紹介します。
すでに実感されているかもしれませんが、離職率が高いと会社にとってデメリットしかありません。
- 採用コストが増える
- 教育の労力が増える
- いつまでも人材が育たない
さらに離職率が高いことで企業イメージの悪化につながる可能性もあります。
そうなれば今よりも採用は難しくなり状況は悪くなる一方です。
社長の理想としては、社員の定着率が高く、仕事を任せられる人材を育てたいはずですよね。
そのためには、離職率を下げる原因を知った上で対策を考えなければいけません。
今回は、社員が退職してしまう主な3つの原因と離職率を下げる取り組み事例について紹介します。
あなたの会社に合った離職率を下げる施策の参考にしてください。
離職率が高い原因は主に3つ
離職率が高い主な原因は3つあります。
- 職場の人間関係が良好ではない
- 給与や労働時間などの労働環境が合わない
- 業務内容のミスマッチ
それぞれの詳細について解説します。
離職の主な原因1.
職場の人間関係が良好ではない
人間関係のトラブルで退職につながることは良くある話です。
中小企業の人間関係トラブルは2種類あります。
- 社長と考えが合わない
- 同僚(先輩と後輩を含む)と関係が上手くいかない
まず1つ目の「社長と考えが合わない」は、多くの場合、社長がワンマンであることが原因です。
「自分の考えが会社のルール」と考えているタイプの社長ですね。
意見が出ても社長が尊重しようとしないため、話をするだけ無駄だと思われてしまいます。
そもそも社長に意見が言いづらい環境になっている可能性も高いですね。
そのため、社員は会社に愛想を尽かして辞めてしまいます。
そして2つ目の「同僚(先輩と後輩を含む)と関係が上手くいかない」ですが、これは少し難しい問題です。
中小企業の場合は社員数が少なく、同じメンバーで固定されていることがほとんどですよね。
一人ひとりの距離感が近いために、自然と関係性も深くなることが多いでしょう。
その一方で、ちょっとしたキッカケでも人間関係が上手くいかなくなることがあります。
例えば、ちょっとしたトラブルがあって、同僚に不快な思いをさせてしまったとします。
それまでは仲良く仕事ができていたのに、口論してからは無視したり邪険に接するようになった、というケースは現実的にある話です。
小さな会社の中で逃げ場もなく、気まずい人と毎日顔を合わさなければいけません。
その環境が続くことは精神的な負担が大きく、離職につながってしまいます。
ここで紹介した人間関係のトラブルは、主にコミュニケーション不足が原因です。
一方の見方だけで物事を話すのではなく、相手の立場になって考えたり話し合うことで解決の糸口が見つかる可能性があります。
しかし、誰か1人だけが頑張ってもあまり効果はありません。
職場内の全員が職場を良くしていこうとする環境作りが必要ですね。
離職の主な原因2.
給与や労働時間などの労働環境が合わない
労働環境が悪ければ離職率も悪化します。
例えば、下に書いた要素が多く当てはまる企業ほど離職率は高いです。
- 拘束時間が12時間を超えている
- 休日出勤が当たり前
- 残業代をカットしている(もしくは不払い)
- 給与が安い
仕事の拘束時間が長いことは、体力的にも精神的にも負担が大きいことは想像できますよね。
休日出勤も毎週のようにあると体を休ませることができません。
業務が社員にとって大きな負担になっていないかを配慮する必要がありますね。
給与に関する不満も意識しなければいけません。
2018年6月に中小企業の従業員を対象に行った調査の結果では、下のような結果がでました。
- 約7割が給与が安いことに不満を抱えている
- 給与の評価基準が社長や上司の主観的判断だと感じる
給与が安いことだけでなく、明確ではない評価基準に対しての不満も大きいのです。
普段の業務や成果を正しく評価されなければ、不満に思ってしまうのは当たり前のことですね。
対策としては明確な評価基準を定めて、社員に納得してもらうことです。
仕事の成果の他に、業務への積極性や業務完了するまでのプロセスを評価基準に入れることも有効ですね。
成果や普段の努力を正しく評価する制度があれば、社員の満足度は高まり定着率アップにつながります。
離職の主な原因3.
業務内容のミスマッチ
業務内容のミスマッチは大きく分けて2種類あります。
- 業務内容そのもののミスマッチ
- スキルのミスマッチ
業務内容のミスマッチは、入社前に聞いていた業務内容と実際の業務内容に差異があることです。
実際にあった話だと、事務の業務で入社したのに営業を兼任された方がいます。
中小企業のように少ない人材で仕事を回る必要があり、1人が複数の業務を兼任するのは仕方ないかもしれません。
しかし、仕事を一方的に押し付けられても不満になり退職につながってしまいます。
もう1つはスキルのミスマッチですね。
業務で求められるスキルと本人のスキルにある差を埋めることができないために退職になることです。
履歴書の経歴をみて即戦力として採用したのに、スキルが低く仕事をこなせない人材だったという話は良く聞きます。
このようなミスマッチが起きる原因は、採用の段階で認識がズレてしまっていることが考えられます。
例えば、採用のときに下に書いたようなことを行っていませんか?
- 自社での良い部分しか伝えていない
- 業務の内容を伝えきれていない
- 経歴だけで採用をしている
- 採用後のフォローが疎かになっている
もし思い当たるのであれば、ミスマッチにつながる採用面談をしている可能性が高いです。
明らかに業務についての説明が不足していますし、求職者側も業務内容の詳細まで聞き出す方もいないでしょう。
ミスマッチによる離職を減らすためには採用の時点で業務内容をシッカリと伝えることと、求職者側の希望やスキルを話の中で聞き出す必要があります。
離職率が低い中小企業の取り組み事例
離職率を改善するために中小企業が取り組んでいる事例を5つ紹介します。
どんな業種でも応用できる方法なので、真似できる方法があれば取り入れていきましょう。
中小企業の取り組み事例1.
社員が意見を出しやすいルールを作る
社内のコミュニケーションが活性化することは、離職率を下げる効果があります。
そのため、社員からの意見を出しやすい環境を作りましょう。
ある会社では会議を開く際に下に書いたようなルールを決めています。
- 人の意見を否定しない
- 問題点だけの意見でもOK
若手社員は否定されることを恐れて意見を口にしない傾向があります。
そのため、自由に発言ができるように「意見を否定しない」というルールが重要です。
どんな意見も1つの考え方として受け入れて議論をします。
「問題点だけの意見でもOK」のルールも似た理由ですね。
会社が抱える問題点は全員が気づけるモノばかりではありません。
そのため、問題提起だけの発言も良しとしています。
このように社員が発言するハードルを下げることは有効な手段です。
自由に発言できることによって社内間のコミュニケーションが活発になります。
そして、今まで他人事に思っていたことが自分事に思えるようになります。
結果として、仕事への責任感も生まれ会社への定着率を上げる効果を期待できます。
中小企業の取り組み事例2.
残業時間ゼロを目指す
残業時間を減らすことは離職率を改善する効果もあります。
ある工場で実際に行われた取り組みを紹介します。
園工場では月100時間ほどの残業が当たり前の状況でしたが、残業0にするために徹底的に業務効率化を行いました。
業務改善のために行ったことは下の項目です。
- 仕事が速い社員と遅い社員の違いを知る
- 仕事が速い社員の考え方や行動をマニュアル化する
- 今やる仕事、あとでも良い仕事を分ける
結果として工場全体が大幅に効率化され、残業時間0に成功できたのです。
さらに、業務効率化は離職率を下げる効果もありました。
業務効率化で離職率が改善された理由は2つ考えられます。
- 残業が0になったことで体の負担が軽くなった
- 定時に終わらせるように業務効率化に意欲的になった
注目すべきは業務効率化に意欲的になった点ですね。
目的意識を持つことで仕事へのやりがいが生まれ、それが退職抑制につながったと考えられます。
残業0の取り組みで離職率を下げた事例は、他の業種でもありますので効果的な手段です。
中小企業の取り組み事例3.
サンクスカード制度
サンクスカードはコミュニケーションを活性化する施策ですが、離職率を下げる効果もあります。
サンクスカードはコーヒーショップのスターバックスが行っていることで有名ですね。
社員間で良い仕事をした人に送るもので、中小企業でも取り入れている会社があります。
送る際は下の2点を添えて送ります。
- サンクスカードを送る理由
- 感謝の気持ち
社員間はもちろん、社員から上司に対しても送ってもOKです。
簡単に社員間のコミュニケーションをとることができますし、受け取った側は「自分が必要とされているという気持ち」を持つことができます。
この制度を取り入れてから、新入社員の離職率が減ったというデータもあるほどです。
社員間のコミュニケーション活発化、そして社員の定着率を上げることができる有効な手段ですね。
中小企業の取り組み事例4.
成長できると実感してもらう
社長が社員にたいしてビジョンとキャリアプランを伝えることで、離職率を67%から20%に減らした事例があります。
- ビジョンは会社の将来的な姿
- キャリアプランは社員の将来的な姿
これらについて2週間に1回のペースで社長が社員と話す場を作りました。
結果として「この会社にいることで自分は成長できる」という将来像を社員が明確に持つことで、離職率を下げることができたのです。
退職理由で良く聞く言葉で「将来性がみえない」がありますが、これは会社の将来と自分の将来の2つが含まれています。
会社と個人、両方の将来性を明確に提示することで、社員の定着率を上げることに成功した良い事例ですね。
中小企業の取り組み事例5.
事前に業務内容を正直に話す
多くの企業がミスマッチのない採用が離職率を下げる有効な手段だと考えています。
中途採用した人材が定着するために、最も大切だと思われることを、以下の中からお選びください。
引用:エン・ジャパン
上の図は大手転職サイトエン・ジャパンの調査結果です。
中途採用した人材が定着するために重要なことは「ミスマッチのない採用」が24.9%ですね。
採用のミスマッチが起きている時点で、入社後にどれだけ教育しても退職する可能性が高いからです。
ミスマッチを防ぐために採用面談を4回以上も行う企業もあります。
必要なスキルや、業務上起こり得る良いことも悪いことも伝えておきましょう。
ここで採用側も求職者側も認識のズレを最小限に抑えることで、離職率を下げる効果があります。
そして入社後のフォローもできる限り行うことも重要です。
人間関係や職場のルールが出来上がっているところに飛び込むわけですから、ちょっとしたことでもストレスを感じてしまいます。
職場環境に適応するまでは、不安を取り除くフォローを行うことで定着率をアップさせましょう。
社長からのトップダウンでは何も改善しない
離職率を下げる施策を、社長だけで考えて実行しても効果は期待できません。
その理由は、社員目線で考えられていないことが多いからです。
社長からのトップダウンではなく、社員から意見を出してもらうボトムアップでアイディアを集めましょう。
社長の頭では思いつかない様々なアイディアが集まるはずです。
- 在宅ワーク制度の導入
- フレックスタイムやコアタイムの導入
- 給与の査定基準の明確化
- 残業の廃止
- 業務時間外の会議廃止
などなど、社員から自由に意見やアイディアを集めてください。
ただし、社員から出たアイディアを何でも取り入れるわけにはいけません。
離職率を下げるために必要なことだけを取り入れるようにしましょう。
会社との方向性がずれてしまうと、単に社員にとって都合の良いルールになる可能性が高いです。
そうならないためにも、会社の方向性を合っているか確認は必ず行ってください。
離職率を下げる施策を決めたら、細いルールや運用も社員に任せて責任感を持たせることも有効です。
社長は確認する程度の立ち位置が良いでしょう。
【まとめ】離職率を下げるには社員の本音を知ること
離職率が高い原因と、定着率を上げるための取り組みについて紹介しました。
一般的に退職理由の主な原因は3つあります。
- 職場の人間関係が良好ではない
- 給与や労働時間などの労働環境が合わない
- 業務内容のミスマッチ
現実的にはもっと具体的な理由になるはずです。
あなたの会社で最も退職につながっている原因を把握するようにしましょう。
退職する原因が把握できたら次は対策を考えましょう。
具体的な対策を考える上で重要なことはトップダウンではなくボトムアップで意見を集めることです。
そして、会社の方向性を合った施策を見つけて定着率アップを目指しましょう。
記事中で紹介した取り組み事例も参考にしてみてくださいね。
会社が成長することも離欲率を下げる効果がある
「将来性がみえない」ことで退職を決意する社員も一定数います。
そのため、成長している会社にいることを実感してもらうことで退職抑制につながります。
端的にいうと、成長している会社とは利益が上がり続けている会社のことです。
そういった会社であれば将来性があるため、社員の離職率を下げることができるでしょう。
とはいっても「利益を上げ続けることなんて簡単にできるわけが無い」と思うかもしれませんね。
実は、社長が想像しているよりも楽に利益を上げることはできます。
どうすれば、楽に利益を上げることができるのか?
その方法のひとつは「商品の価格を上げること」です。
多くの社長が気づいていない事実ですが、値上げは顧客からの抵抗なしに行うことができます。
3つの事例を知ることで、あなたが抱いている値上げに対する不安を解決することが可能です。
- 価格を上げることが本当に可能なのか?
- お客様からの反発はなかった?
- どのような手順で値上げをするのか?
- 利益だけじゃなく自由な時間を増やすには?
成長している会社には人を引きつける魅力があります。