今回はコトラーの提唱するマーケティングについて解説します。
あなたは「フィリップ・コトラー」をご存知でしょうか?
コトラーはマーケティングの神様と言われており、現代マーケティングの第一人者の一人です。
マーケティングについて勉強されている方の中には、コトラーという名前を目にしたことのある方も多いでしょう。
しかし、実際にコトラーがマーケティングについてどのような考え方を提唱しているのかを知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
- 自社の商品をもっと世に広めるために、コトラーについて知りたい!
- コトラーが提唱するマーケティングを導入して、インバウンドで新規顧客を獲得したい!
- マーケティングのトレンドを取り入れることで、売上をさらに伸ばしたい!
このように自社のマーケティングに課題を感じている経営者の方に向け、コトラーのマーケティング理論について徹底解説します。
特にマーケティング1.0~4.0に関しては事例も紹介しています。
この記事を読むことで、コトラーのマーケティングについての理解を深めることができるでしょう。
また、全てのマーケティング理論を事例付きで紹介しています。
コトラーのマーケティング理論を、すぐにでも自社のマーケティングに取り入れたい方もぜひ参考にしてください。
3分で分かるコトラーのマーケティング理論の概要
まずはコトラーと、コトラーのマーケティング理論の概要について解説をしていきます。
フィリップ・コトラーは、アメリカはシカゴ生まれの経営学者です。
2019年6月現在、88歳のコトラーはマーケティングの神様と呼ばれており、誰もが認めるマーケティングの第一人者です。
そんなコトラーはマーケティングに関して次のような理論を提唱しています。
- マーケティングの7P
- STPマーケティング
- マーケティング1.0
- マーケティング2.0
- マーケティング3.0
- マーケティング4.0
コトラーの代名詞ともいえるマーケティング1.0~4.0はこの後の章で、事例付きで紹介します。
この章では、マーケティングの基礎といえる7P・STPマーケティングについて詳しく解説します。
マーケティングの基礎となるSTPマーケティングを提唱
コトラーはマーケティングの基礎ともいえる、STPマーケティングを提唱しています。
STPマーケティングとは、次の英単語の頭文字をとって名付けられた理論です。
- Segmentation(セグメンテーション)
- Targeting(ターゲティング)
- Positioning(ポジショニング)
STPマーケティングは、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの順に行うことが基本とされています。
セグメンテーションは、ユーザーニーズに合わせて、市場にいる人をグループ分けすることです。
ターゲティングは、グループ分けした中からどのグループをターゲットにするのか決めることを指します。
ポジショニングは、ターゲットにしたグループに対して、自社がどのような立ち位置・アプローチで他社と差別化するのかを決めることです。
このようにSTPマーケティングを行うことで、自社の活動の方向性を明確にし、ブレない経営を行うことができるのです。
そのため、STPマーケティングは現代マーケティングの基礎と言われています。
サービスを対象としたマーケティングミックスである7Pを提唱
コトラーはサービスを対象としたマーケティングミックスである7Pを提唱しています。
7Pは、従来のマーケティングミックスである4Pにコトラーが考案した3Pを加えたものです。
4Pは次の4つの要素のことです。
- Product(商品・サービス)
- Price(価格・プライシング)
- Place(流通・チャネル)
- Promotion(販促・プロモーション)
3Pは次の3つの要素のことです。
- Personnel(人・要員)
- Process(業務プロセス・販売プロセス)
- Physical Evidence(物的証拠)
この7つのマーケティング要素を踏まえて、マーケティングを行うことでサービスに適したマーケティングが行えるというマーケティング理論です。
コトラーは、サービスの性質について次のように考えています。
- 無形性/非有形性(形がない無形財である)
- 同時性/不可分性(生産と消費が同時に発生する)
- 非均一性/変動性(誰がいつ提供するかが品質なので、品質を標準化することが困難である)
- 消滅性/非貯蔵性(サービスは蓄えられない)
これらのサービス特有の性質を理解し、マーケティング活動に7Pを取り入れることが、サービスをプロダクトとするマーケティングには重要だとコトラーは提唱しているのです。
コトラーが提唱した4つのマーケティング理論
ここからはコトラーの代名詞ともいえるマーケティングのフレームワークについて解説します。
マーケティングという言葉は1900年代はじめに生まれました。
それからというもの、現在に至るまでの100年以上の間、マーケティングにはさまざまな変化がありました。
コトラーはマーケティングの年代別に変化してきたマーケティングを次のようにとらえています。
- 1900~1960年代「マーケティング1.0」製品中心のフレームワーク
- 1970~1980年代「マーケティング2.0」消費者志向のフレームワーク
- 1990~2000年代「マーケティング3.0」価値主導のフレームワーク
- 2010年~「マーケティング4.0」自己実現のフレームワーク
それぞれのフレームワークについて詳しく解説していきます。
また、それぞれのフレームワークの事例も紹介しているため、自社のマーケティングを今すぐブラッシュアップしたい経営者もぜひ参考にしてください。
マーケティング1.0|製品中心のフレームワーク
マーケティング1.0は、1900年代はじめから1960年代に行われていた製品中心のフレームワークです。
その内容は、とにかく物を大量に生産し、多くの消費者に届けることで利益を上げるというものでした。
これは1800年代半ばから1900年代はじめにかけて、イギリスで産業革命が起きたため、物の大量生産と大量消費が可能になったからです。
このことから、1900年はじめにマーケティングという言葉が生まれ、製品中心のマーケティングの時代が始まったのです。
マーケティングの基礎である4Pは1960年に登場し、まさに製品を売る側の目線でマーケティングが行われた時代でした。
【1.0の事例】車で世間を大きく揺るがしたフォードモーター社
マーケティング1.0の代表的な事例と言えば、当時世間を揺るがした「フォード・モデルT」という車を生産していたフォードモーター社でしょう。
それは今では考えられないフォードの戦略が物語っています。
フォードはモデルTの製造販売を1908年に始めましたが、それ以来1927年までの約20年間をモデルTしか生産しないという大胆なマーケティング戦略を行ったのです。
フォードのこのマーケティング戦略は、当時「金持ちのおもちゃ」と言われていた車を大幅に値下げして販売することに成功し、輸送手段の一つとして車が頻繁に使われるようになったのです。
フォードの大胆な戦略は、自社の売上だけでなく、社会に多大なる功績をもたらしたといえるでしょう。
マーケティング2.0|消費者志向のフレームワーク
マーケティング2.0は、1970から1980年代に行われていた消費者志向のフレームワークです。
その内容は、顧客をどのように満足させて製品を購入してもらうか、どのようにして継続してもらうかというものでした
これは1970年代に起きたオイルショックで世界的に経済が打撃を受け、物価が高騰したことがきっかけです。
物価の高騰により、消費者は製品を選ばなければいけない状況になりました。
そのため、消費者は自分のニーズを満たす製品を探し、企業は消費者のニーズを満たせる製品を生産する消費者志向のフレームワークへと変化していったのです。
この頃からSTPマーケティングが始まり、ユーザーをセグメントしターゲットを絞り、自社はどのような立ち位置でどのようなアプローチをするのかを考えるマーケティングが主流になりました。
【2.0の事例】ジャストインタイムで車の生産を行ったトヨタ自動車
マーケティング2.0は消費者志向のフレームワークと説明しましたが、まさにその理想ともいえる形で生産を行っているのがトヨタ自動車です。
トヨタ自動車には「ジャストインタイム」という生産の考えがあり、まさにこれが顧客志向の生産方法なのです。
ジャストインタイムとは「必要なものを必要なときに必要なだけ」という考えのもと、生産効率を向上させる考えのことをいいます。
在庫を最小限に抑える究極の方法といえば「完全受注生産」ですよね。
ただ、それだとオーダーから出荷までに時間がかかってしまいます。
かといって、部品や在庫を見込み生産で作りすぎても在庫が売れない、商品の切り替えの発生などの損失のリスクになる可能性が高いです。
そこで、ジャストインタイムの考えが役に立ちます。
たえとば、製品の完成までに
工程1→工程2→完成
の流れがあるとしたら、
- 工程2は必要な時に必要なだけ、工程1からものを引き取る
- 工程1は引き取られたものについて、工程2から指示があった分だけ生産する
簡単にいうとジャストインタイムとはこのようなイメージです。
これによって、商品を作りすぎず、かつ必要とする顧客にすぐに届けられるような生産を実現しているのです。
生産現場の「ムダ・ムリ・ムラ」をなくし、消費者からの注文からなるべく早く車を納品するために考えられたマーケティング2.0の代表といえる戦略と言えるでしょう。
マーケティング3.0|価値主導のフレームワーク
マーケティング3.0は、1990から2000年代に行われていた価値主導のフレームワークです。
1990年代にインターネットが普及した影響で、消費者が簡単に情報を扱えるようになりました。
これにより生産者は消費者に向けて価値のある情報を届けることが求められるようになりました。
たとえば、次のようなものに消費者は価値を感じています。
- 商品がどのようにして作られたのかという背景やストーリー
- どのような企業がその商品を生産・販売しているのかというブランド
このように商品だけでなく、商品の背景や企業のブランド力を価値として消費者に提供し、消費者のニーズを満たすことが求められる時代になりました。
また、ソーシャルメディアの登場により、ユーザーのニーズが身近になったことから、生産者はユーザーニーズを取り入れた商品の生産を行わなければいけない環境になりました。
その影響により、生産者は消費者とともに商品を作り上げていくことがベターになったのです。
そのため、これまで消費者と呼ばれていたユーザーは、「生産消費者」と呼ばれるようになりました。
さらに、コトラーはソーシャルメディアを「ニューウェーブの技術」と言い、2種類のSNSがあると言っています。
それが、以下の2つです。
- 表現型ソーシャル・メディア
- 協働型ソーシャル・メディア
それぞれのソーシャルメディアについてのコトラーの考えを紹介します。
【表現型ソーシャル・メディア】消費者の口コミを扱うメディア
表現型ソーシャル・メディアは、口コミをユーザーニーズとして扱い、それを商品やサービスの生産・販売に反映させるために利用されるメディアを指します。
たとえば、次のようなメディアが表現型ソーシャル・メディアです。
- YouTube
- ブログ
このようなメディアに存在する消費者の口コミを参考に、製品の生産・販売を行うことで、ユーザーニーズを満たすのです。
【協働型ソーシャル・メディア】消費者と作り上げるメディア
協働型ソーシャル・メディアは、生産者と消費者が共に作り上げるメディアのことです。
たとえば、Wikipediaや食べログなどのことを指します。
これらのメディアは、オープンなプラットフォームで参加者が情報を提供し、メディアを成り立たせています。
そのため、ユーザーの知識や経験が集約され、その情報を基にユーザーのニーズを満たすのです。
【3.0の事例】すべてはガレージから始まったApple
マーケティング3.0の代表例と言えば、iPhoneやMacを製造販売しているAppleでしょう。
Appleが特に上手なのは、自社のストーリーやスティーブジョブズのこだわりを認知させるブランディングでしょう。
Appleが創業当時、ガレージをオフィスにしていたという話はあまりにも有名です。
ほかにも、
「スティーブジョブズは毎日同じ服しか着ない」
「ジョブズは社長なのにクビにされた過去がある」
これらの話などは、製品とは直接的なつながりがないにもかかわらず、広く知られている情報です。
これらはAppleの歴史的背景として、人々に価値を感じさせ、ブランドイメージを作り上げています。
その結果、ガレージから抜け出すことに成功し、世界トップレベルの起業へ成長したといえるでしょう。
マーケティング4.0|自己実現のフレームワーク
マーケテイング4.0は2010年代から現在に至るまでに行われている自己実現のフレームワークです。
これは、心理学者アブラハム・マズローが唱えた、欲求5段階説を基にコトラーが提唱しました。
マズローの欲求5段階説は、人間の欲求は5段階に分かれているという説です。
- 生理的欲求
- 安全欲求
- 社会的欲求
- 承認欲求
- 自己実現欲求
人間の欲求はこの5段階に分かれており、1つの欲求が満たされると次の欲求を満たそうとするというものです。
たとえば、生理的欲求を満たした人は次に安全欲求を満たそうとするといった感じです。
コトラーは人間の欲求はすでに承認欲求までは満たされていると考えています。
そのため、現在のマーケティングを成功させるには、人間の自己実現欲求を満たす必要があるというのが、自己実現のフレームワークということです。
インターネットの普及により、情報社会となった近年では情報を選ぶだけでなく、自分の好きなものだけを求めるようにもなりました。
そのため、自分の価値観と合う製品や企業の商品を購入する傾向が強くなったのです。
たとえば、次のような場合です。
- お洒落に魅力を感じるお酒好きな人は居酒屋ではなくダイニングバーやバルへ足を運ぶ
- イノベーションに魅力を感じる人がAndroidではなくiPhoneを選ぶ
このように自分の好きなものだけで、身の回りを埋め尽くしたいなどの自己実現を求めてユーザーは行動しているのです。
【4.0の事例】トップアスリートとしか契約しないNIKE
マーケティング4.0の代表と言えばNIKEでしょう。
NIKEはスポーツ用品の製造・販売を主な事業として行っていますが、それ以外にもスポンサー活動を精力的に行っています。
NIKEのスポンサー活動は、個人・チーム・大会などさまざまな形で行われています。
どのスポンサー契約にも共通しているのは、世界トップクラスの選手・チーム・大会だということです。
それはNIKEが世界トップクラスの選手と契約することで、ユーザーがこのような自己実現を達成できるからです。
「NIKEのアイテムを使えば世界一の選手に近づける」
「憧れのあの選手と同じユニフォームを着ている」
これらはすべて商品としての価値はもちろん、ブランドとしての価値を高めるために行っているのです。
【応用】コトラーのマーケティング理論の活用方法とは?
この章では、コトラーのマーケティング理論3.0、4.0の活用法について詳しく解説します。
マーケティング3.0、4.0はいずれもブランディングを意識した内容でしたね。
- SNSの活用
- ブランドイメージでの差別化
- ユーザーの自己実現
前述した通り、コトラーの提唱するマーケティング理論は、時代の変化に伴い提唱されています。
しかし、実際のところマーケティング2.0や3.0の理論しか反映されていないマーケティング手法をとる企業はかなり多いのです。
特に中小企業の経営者の方は、これらに関して課題を感じている方も多いのではないでしょうか?
中小企業が生き残るには、この課題をクリアするほかありません。
具体的には、
- SNSを運用し、有益な情報をユーザーがキャッチしやすいようにする
- ブログやWebメディアを使ったコンテンツマーケティングで集客をする
- YouTubeに動画を投稿し、競合他社よりも媒体や情報量の多さで差別化する
これらの方法で、ブランディングを行うことができます。
SNSの活用方法については当サイトでも詳しく解説した記事をアップしています。
SNSを使ったブランディングについて詳しく知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてください。
中小企業こそ積極的に使おう!SNSを活用した自社ブランディング方法
【まとめ】マーケティングは基礎が大切!コトラーは応用として学ぼう!
今回はコトラーのマーケティング理論について解説しました。
コトラーはマーケティングの神様と言われ、近代マーケティングの第一人者です。
コトラーが提唱するマーケティング理論は、本質的な内容でマーケティングの基盤ともいえます。
そのため、今後マーケティングに力を入れていきたい特に中小企業の経営者は、コトラーのマーケティング理論を理解しておくことが重要でしょう。
特にマーケティング3.0、4.0の内容である、ブランディングや自己実現は、多くの中小企業の課題と言えます。
これらを意識して、自社のマーケティング施策を考えることをおすすめします。
ただし、中小企業や個人事業主の場合、マーケティング施策以前に価格設定が適切でないため、マーケティングやブランディングに失敗しているケースが非常に多いです。
あなたの提案する商品がどれだけ素晴らしいものであっても、適正価格でなければ利益を確保することはできません。
また、価格を安く設定しすぎると、マーケティング3.0、4.0で重要なブランディングや、自己実現のイメージに悪影響を与えてしまう可能性もあります。
なので、マーケティング施策を行う前に、まずは自社製品の価格設定が適切であるかを見直してみましょう。
現在オクゴエ!では、実際に商品の価格を上げ、劇的に業績を好転させた3つの事例を動画で紹介しています。
この事例の中には、利益を3倍にまで伸ばした事例や、商品単価を20倍にまで上げた事例など、信じられないようなものもあるでしょう。
しかし、実は正しく価格を上げることができれば、多くの会社が業績を一気に好転させる可能性を持っているのです。
自社製品の価格をきちんと見直したうえで、コトラーのマーケティング理論をベースに施策を考えましょう。