今回は、良い人材を見極めて雇うための採用基準の作り方についてお話をしていきます。
会社の運営がうまくいき始め、人員を増やしたいと思ったときに、多くの社長の頭を悩ませるのがこの採用基準の作り方です。
長年会社の人事担当として面接をしてきた人ならともかく、起業して間もない中小企業の経営者では、そううまく人を見極めることはできません。
そこで必要なのが、わかりやすい採用基準、つまり採用のためのマニュアルです。
あらかじめどういった人材が欲しいのか基準を定めておけば、より良い人材を確保しやすいというわけです。
そこで今回は、採用基準の作り方を1からていねいにお伝えしていきます。
採用基準を作るためにやらなければいけないことや、新卒採用、中途採用別に重要視すべきことなどをお伝えしていきますので、人員増強を考えているのなら、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
採用基準を作るために絶対必要な前準備
採用基準を作るためには、前準備をする必要があります。
というのも、この前準備を怠ってしまうと、採用面接をしても良い人材が見極められなかったり、あなたと現場の間で欲しい人材像がズレてしまったりするからです。
採用基準とは、あなた1人の好みで作るものではありません。
現場はもちろん、採用募集に応募してきた人のことも考えて作らなければいけないのです。
そのためにも、色々と調査したり、明確化させたりといった前準備が必要となります。
採用基準を作る前準備は、以下の5手順で行うと効率が良いです。
- 現場へのヒアリング
- コンピテンシーの作成
- 自社の未来像を明確にする
- 採用したい人物像を明確化する
- 社員1人あたりの粗利を計算する
それでは1つずつ内容を説明していきますので、しっかりと理解して、採用基準作りに役立ててください。
採用基準作りの前準備1.
現場へのヒアリング
採用しようとしている部署が定まっているなら、現場の人間へのヒアリングはとても重要なことです。
このヒアリングを怠ってしまうと、採用した人材と現場でミスマッチが起こってしまいます。
現場にヒアリングを行うさいは、
- どういう人間が必要なのか
- 本当に人員が足りていないのか
- 足りていないなら何人くらい必要なのか
といったことまで確認しておきましょう。
実は人員不足が問題なのではなく仕事の進め方やシステムに問題があった、という場合もありますので、実態を調査しておくのは大事なことです。
また、もし担当部署に何人か人がいる場合は、管理職(リーダー)の意見だけでなく、実作業を行っている人の意見もきちんと聞いておくようにしましょう。
とくに新しい人材に仕事を教えるであろう人物の意見は、きちんと確認しておいてください。
それにより、本当に必要な人材像が見えてくるはずです。
採用基準作りの前準備2.
コンピテンシーの作成
採用基準を作る前にコンピテンシーを作成しておくと、採用基準を定めやすくなります。
コンピテンシーとは、成績の良い社員が共通して持っている行動特性のことです。
要は、仕事ができる人物のモデルケースを作成するわけですね。
コンピテンシーを基に採用基準を作れば、仕事ができる社員と近い特性を持った人材を確保することができます。
優秀な人材を集めたいなら、コンピテンシーの作成は欠かさずに行いましょう。
採用基準作りの前準備3.
自社の未来像を明確にする
優秀な人材を確保したいなら、自社の未来ビジョンを明確にしておく必要があります。
なぜなら、優秀な人材であればあるほど未来志向が強いからです。
優秀な人材は、あなたの会社の未来像にまで目を向けています。
そのため、自社の未来ビジョンを明確に答えられなければ、優秀な人材はみずから入社を辞退してしまう可能性だってあるのです。
また、未来像を明確にしておくことで、優秀な人材と会社との間に起こるミスマッチを防ぐこともできます。
ミスマッチとはつまり、会社としては国内に目を向けてやっていきたいと考えているが、面接にきた人は海外でバリバリ仕事をしたいと考えている、といったような、考え方の不一致のことです。
仮にミスマッチが起こってしまった場合、ちょうど社員が育ってきた数年後に、その社員が会社を去ってしまうことにもなりかねません。
しかも社員が優秀であればあるほど行動力も高いはずなので、キャリアアップという形で会社を去る可能性は高くなります。
社員を育てることにもコストがかかりますし、相手が優秀であればあるほど、こういった事態はできれば避けたいはずです。
そのためにも、採用段階できっちりと自社の未来像を相手に伝えておき、お互いのミスマッチを防ぐようにしましょう。
採用基準作りの前準備4.
採用したい人物像を明確化する
現場へのヒアリング、コンピテンシーの作成、会社の未来像の明確化が終わったら、これらを基に欲しい人物像を明確にしていきましょう。
ここを曖昧にしてしまうと、良い人材を確保できる可能性がグンと低くなってしまいます。
そのため、採用したい人物像については下記のようなことを設定して、具体的なペルソナを作成してください。
能力 | 学力、コミュニケーション能力、論理的思考力など |
スキル | 資格、技術、専門知識など |
経験 | 前職での経験、アルバイト経験、海外勤務経験、留学経験など |
属性 | 性別、年齢、住んでいる地域など |
社会適合性 | 価値観、仕事観、ストレス耐性など |
勤務条件 | 勤務時間、勤務地、希望報酬額など |
面接のさいの質問内容についても、この人物像を基礎として組み立てていくと良いでしょう。
採用基準作りの前準備5.
社員1人当たりの粗利を計算する
欲しい人物像まで明確化できたら、最後に現社員1人あたりの粗利を計算してみましょう。
なぜこんなことをするのかというと、「本当に新しい人員を採用しても良いのか」、「正社員ではなくアルバイトとして求人するべきではないか」といった判断をするためです。
人員を増やせば、当然人件費も増えます。
つまり会社の粗利が減ってしまい、体質が弱くなってしまうのです。
では、社員1人に対してどの程度の粗利が必要なのかというと、業種にもよりますが、年間およそ2000万円程度です。
計算は、社長であるあなたや正社員なら1人、アルバイトなら0.5人で行ってください。
たとえば会社の年間粗利が8000万円あって、社長1人、正社員2人、アルバイト2人なら、「8000万円÷(1+2+0.5+0.5)」でちょうど1人2000万円の粗利になるといった感じです。
ちなみにこの辺りの考え方は、弊社代表の北岡も別記事で説明をしています。
よろしければそちらの方も参考にしてみてください。
⇒正社員、スタッフを求人、採用して良いかどうかを決めるたったひとつの基準
良い人材を見抜く採用基準の作り方
ここからは、良い人材を見抜くための採用基準の作り方を説明していきます。
ここで紹介する採用基準は多くの大手企業でも使っているものです。
先に紹介した前準備と併せて参考にしていただければ、あなたの会社に合った採用基準を作ることができるでしょう。
ただし、新卒採用と中途採用では勝手が変わってきますので、そちらは別々に紹介していきます。
この辺りについては、面接をする相手によって使い分けてください。
採用基準として重要視すべき項目【新卒採用の場合】
相手が新卒の場合、前準備で用意した情報に加えて、下記のようなことを重要視しましょう。
- 人柄(人間性)
- コミュニケーション能力
- 主体性、行動力
- 誠実性
- 相手のやりたいこと
それでは、1つずつ説明していきます。
新卒採用で重要視するべきこと1.
人柄(人間性)
よく人柄採用なんて言いますが、相手が新卒の場合、まだまだ経験不足がいなめませんので、必然的にこの人柄に注目することになるはずです。
話し方や質問に対する答え方、強みのエピソードなどから、相手がどのような人間性を持っているのか見極めてください。
ただし人柄については、あなたが個人的に好きかどうかだけでなく、社風に合うかどうかという観点で見るようにしましょう。
そのために、前準備で集めた情報を使ってください。
新卒採用で重要視するべきこと2.
コミュニケーション能力
会社というコミュニティにおいて、コミュニケーション能力、つまり対人スキルは非常に重要です。
とくに営業職などであった場合は、このスキルがなければ厳しいと言わざるを得ないでしょう。
ただ、リーダーに向いている人もいれば協調性が高いタイプもいますし、話し上手な人もいれば、聞き上手な人もいます。
コミュニケーション能力はあくまでも信頼関係を築くための能力ですので、そのことは理解したうえで採用不採用の判断を下しましょう。
新卒採用で重要視するべきこと3.
主体性、行動力
どのくらいみずから動き、物事に取り組めるか、というのも、ビジネスでは重要な要素の1つです。
とくに新卒採用の若者については、どんどんチャレンジして欲しいという想いを持つ社長は多いでしょう。
主体性と行動力があれば、ビジネス能力が高いというのもそうですが、成長速度についても早いです。
採用基準を作るさいには、絶対に判断基準に入れておきたい項目の1つだと言えます。
新卒採用で重要視するべきこと4.
誠実性
ともに仕事をする仲間として迎え入れる以上、誠実性についても見ておきたいところです。
ただ、面接や履歴書で「自分は嘘吐きです」なんて言う人はいないはずなので、判断が難しい部分でもあります。
そんなときは、学歴を1つの判断材料にすることも可能です。
学歴は、何もどれくらい勉強ができるかだけを測るものではありません。
どれだけ受験勉強に対して真摯に向き合ってきたか、という判断材料にもなるのです。
もちろん、地頭の良さもありますので一概には言えませんが、参考程度にはなります。
さらに併せて受験勉強に使った時間などを質問すれば、より正確に誠実性を測れるはずです。
新卒採用で重要視するべきこと5.
相手のやりたいこと
とくに正社員として雇いたい場合は、相手が会社に入ってやりたいことをきちんと確認しておいてください。
というのも、「相手のやりたいこと」と「会社に入ってできること」にミスマッチがあると、お互いにとってデメリットになってしまうからです。
ミスマッチがあれば相手のモチベーションも下がるはずですし、途中で退社されてしまうリスクも上がります。
そのため、相手がどのような想いを持って会社に入ろうとしているのかは、きちんと確認をしておくべきでしょう。
採用基準として重要視すべき項目【中途採用の場合】
中途採用をする場合は、前準備で用意した情報に加えて、下記のようなことを重要視しましょう。
- 今までの実績
- 仕事に活かせる経験とスキル
- 前職を退職した理由
- 自社を選んだ理由
- 将来のビジョン
それでは、1つずつ説明していきます。
中途採用で重要視するべきこと1.
今までの実績
前職などで今までにどのような成果を挙げたのか、その実績を重要視しましょう。
たとえば1億円が動くプロジェクトのリーダーをしていたとか、営業として10億円以上を売り上げたとか、そういった数字ベースで考えてください。
実績を確認すれば、相手の能力や前職でどのくらい信頼されていたのかを読み解くことができます。
事実、今までの実績を重要視する大手企業は多いです。
中途採用で重要視するべきこと2.
仕事に活かせる経験とスキル
自社で活かせそうなスキルや経験についても重要な確認事項です。
たとえば英語力やプログラミング能力などですね。
中途採用となれば即戦力を期待しているはずなので、自社で必要な能力を持っているのか、しっかりと確認しておきましょう。
中途採用で重要視するべきこと3.
前職を退職した理由
前職を辞めた理由についても確認しておく必要があります。
たとえば「キャリアアップのため」や、「やりたい仕事をやるため」といった前向きな理由なら問題ありません。
しかし、「上司が嫌いだったから」や「残業が嫌だったから」という理由の場合は注意が必要です。
場合によっては、自社も同じ理由で辞めてしまう可能性がありますし、不満を漏らす可能性もあります。
中途採用で重要視するべきこと4.
自社を選んだ理由
どういった理由で自社を選んだのかを確認しておけば、自社に対する想いや自社に期待していることを知ることができます。
ここでうまく答えられない人の多くは、「とりあえず条件が合っていた」という理由や「家が近いので応募した」という理由である可能性が高いです。
そのため、よほど人員に困っていなければ排除してしまって問題ありません。
中途採用ということでスキルや実績だけを重要視する社長も多いのですが、自社に対する熱意も重要なチェックポイントなのだと考えておきましょう。
中途採用で重要視するべきこと5.
将来のビジョン
どのような将来のビジョンを持っているのかも聞いておきましょう。
このビジョンと会社の未来ビジョンが合っていない場合は、採用を見送るという選択肢も考えなければいけません。
入社してから「やりたい仕事ができない」と言われてしまうと、相手にとっても会社にとっても百害あって一利なしです。
ミスマッチが起こらないように、ここはしっかりと確認しておきましょう。
社員1人あたりの粗利を上げる方法
明らかに人手が足りていないのに粗利も足りていない、という場合には、ビジネスの仕組みそのものに問題があるということです。
その場合は、まずはビジネスの仕組みを見直し、粗利を上げるところから始めましょう。
粗利を上げる手段としておすすめなのは、商品やサービスの価格を上げるという方法です。
単純な話ですが、商品やサービスの価格が上がれば、手間を増やさずに利益を上げることができます。
ただ、価格アップの話をすると、多くの社長が「価格を上げてしまうと客離れが起こる」という心配をするのではないでしょうか。
しかし実は、多くの会社が、商品やサービスが持つ本来の価値より安い価格を設定してしまっているという事実があります。
そのため、うまく価値を伝えることができれば、価格を上げることはそう難しくないのです。
【まとめ】採用基準の作り方において重要なのは前準備
今回は、採用基準の作り方についてお話をしてきました。
優秀、かつ自社にとって本当に必要な人材を確保するために重要なのは、採用基準を作り出す前の準備です。
- 現場へのヒアリング
- コンピテンシーの作成
- 自社の未来像を明確にする
- 採用したい人物像を明確化する
- 社員1人あたりの粗利を計算する
この5つをしっかりと確認したうえで採用基準を作らないと、なかなか良い人材には巡り合えません。
採用基準の作り方という意味では最重要事項になりますので、覚えておいてください。
ただし、社員は増やせば良いというものではありません。
社員を増やせば当然人件費もかかってきますので、その分会社の体力が落ちることになってしまうのです。
そのため弊社代表の北岡は、社員を雇うさいには、1人頭の粗利が2000万円以下にならないように調整することをおすすめしています。
⇒正社員、スタッフを求人、採用して良いかどうかを決めるたったひとつの基準
とはいえ、人手が足りなさ過ぎて、粗利を割ってでも人員を増やさなければどうしようもない、という状況の会社もあるのではないでしょうか。
そんな場合は、思い切って商品やサービスの価格を上げてしまうのも1つの手です。
価格アップによって利益が上がれば、人員を増やす余裕も生まれてくるのではないでしょうか。
採用基準の作り方については、多くの社長や人事担当が頭を悩ませています。
しかしその多くが、実は自社のことをよく確認できていないから抱える悩みなのです。
自社のことを調査し、本当に必要な人材を明確にできれば、採用基準を作るさいに悩む必要はなくなります。
採用基準の作り方でもっとも重要なのは、自社のことをしっかりと知ることなのだと覚えておきましょう。