今回は事業の目標達成度を表す指標である「KPI」についてお話ししていきます。
KPIは、Key Performance Indicatoの略称で、重要業績指標という意味です。
KPIを設定することで、目標達成に至るまでの進捗状況や達成率を確認することができます。
進捗状況や達成率を確認できることで、従業員のモチベーションを上げることもできます。
自社の業務や従業員の目標設定を行って、モチベーションを上げたいと考えている経営者の方は多いでしょう。
とはいえ、KPIという言葉を知っていても、KPIを設定するメリットやKPIを設定するポイントを知っている方は少ないのではないでしょうか?
そこでこの記事では、KPIについて以下の5つの内容を中心に解説します。
- そもそもKPIとは?
- KPIを設定する4つのメリット
- 従業員のモチベーションを上げるKPI設定の5つのポイント
- 【職種別】KPI設定の具体例
- KPI以外の目標設定指標
KPIについて理解を深めたい方や、KPIを設定して事業の進捗を確認したい方は、ぜひ参考にしてください。
そもそもKPIとは?目標達成指標を解説!
まず、そもそもKPIとは何かということを解説していきます。
冒頭でも解説しましたが、KPIとは目標達成に至るまでの進捗状況や達成率を確認するための指標です。
最終目標に対する中間目標の数値と認識していただいて問題ありません。
KPIは、Key Performance Indicatoの略称で、日本語では重要業績指標という意味を持っています。
KPIを設定することで、自社の事業の進捗状況や達成率を確認できるようになり、業務管理がしやすくなるのです。
たとえば、1ヶ月の平均来客数2000人で月間売上1000万円の居酒屋があるとすれば、客単価は5000円です。
この居酒屋が月間売上を1500万円にしたいと考えたとしましょう。
居酒屋の売上は、基本的には来客数と客単価で構成されるため、この場合のKPIは「来客数」「客単価」です。
売上を1500万円に上げるために考えられる方法の1つとして、来客数を3000人に伸ばすということが考えられます。
目標達成を1年後に設定した場合、1年後までに来客数を3000人にすることがお店としてのミッションとなります。
このように、目標を構成する指標(KPI)を明確にして、目標を達成するための具体的な数字を設定することがKPIを設定するということなのです。
なんで設定するの?KPIを設定する4つのメリット
ここからは、KPIを設定する4つのメリットについて解説します。
KPIを設定するメリットを知ることで、なぜKPIを設定するのか? ということを理解することができます。
事業目標を達成するためにも、必ず抑えておいてください。
- 目標達成のためにやることを明確にできる
- やるべきことの優先順位が明確になる
- 目標に対しての進捗状況が把握しやすくなる
- 共通の目標を持つことでモチベーションが保たれる
KPIを設定するメリット1.目標達成のためにやることを明確にできる
KPIを設定する1つ目のメリットは、目標達成のためにやることを明確にできるということです。
KPIは目標達成までのプロセスを明確にしなければ、設定することはできません。
そのため、KPIを設定することにより、目標達成のために何をどうしなければいけないのかを明確にできるのです。
たとえば、あなたが経営する会社の売上を1億円に増やしたいと考えている場合、売上を構成する事業を洗い出し、どの事業をどれくらい伸ばすせばよいのかを決めなければ、目標達成をすることは難しいですよね。
どの事業を伸ばすかを決めれば、その事業の中で新たな施策を考えるのか、いま以上に営業本数を増やすのかなど、さまざまなアイデアが生まれます。
このように、KPIを設定することで、目標達成のためにやるべきことを明確にして、行動することができるのです。
KPIを設定するメリット2.やるべきことの優先順位が明確になる
KPIを設定する2つ目のメリットは、やるべきことの優先順位が明確になるということです。
目標達成に必要な要素やプロセスは、あなたが考えているものと実際に必要な要素が異なる場合があります。
その場合、効率よく目標を達成することができないですよね。
そこで、KPIを適切に設定する必要があるのです。
やるべきことの優先度が明確になるので、効率よく目標達成することができるようになります。
たとえば、先ほどの章で例として紹介した居酒屋の場合。
1ヶ月の平均来客数2000人で月間売上1000万円、客単価5000円の居酒屋が月間売上を1500万円に伸ばす方法は、2つあります。
- 来客数を3000人に伸ばす
- 客単価を7500円に伸ばす
経営者は、このいずれかの方法で売上を1500万円にする施策を考えなければいけません。
この2つを比べたときに、客単価を7500円に伸ばすよりも、来客数を3000人に伸ばすことを考えるほうが現実的でしょう。
なぜなら、来客数を伸ばすためには考えられる方法が複数あるのに対して、客単価を上げる方法は基本的には一つ一つのメニューの価格を上げるしか方法がないからです。
KPIを設定することにより、このように目標達成のためにやるべきことの優先順位を明確に決めることができるのです。
KPIを設定するメリット3.目標に対しての進捗状況が把握しやすくなる
KPIを設定する3つ目のメリットは、目標に対しての進捗状況や過程が把握しやすくなるということです。
目標に対しての進捗状況が把握しやすくなることで、適切な経営判断を下すことができます。
たとえば、目標に対してKPIの進捗が悪ければ、違う施策を考えたり、人員を増やすなどの判断をスムーズに行いやすくなるのです。
目標を立てるだけでは、ゴールを知っているだけで道のりがわからないため、さまよってしまいます。
KPIを設定することで、ゴールに至るまでのチェックポイントを把握することができ、いま自分がどこにいるのかを知ることができるのです。
KPIを設定するメリット4.共通の目標を持つことでモチベーションが保たれる
KPIを設定する4つ目のメリットは、共通の目標を持つことでモチベーションが保たれるということです。
KPIを設定するときには、具体的な数字を用いて、目標や期間を設定します。
それを従業員に共有することで、共通の目標を持つことができ、従業員のモチベーションを上げることができるのです。
数字を用いた具体的な目標や進捗状況を、従業員も把握できるようにしておくことで、リソースの確保やスケジューリングも行いやすくなります。
そのため、KPIや進捗状況の数字は従業員にも必ず共有しましょう。
KPIを効果的に設定するSMARTの法則を解説!
ここからは、KPIを効果的に設定するSMARTの法則について解説します。
SMARTの法則とは、ジョージ・T・ドランによって提唱された目標達成の考え方です。
SMARTとは、5つの単語の頭文字を取ったものです。
- Specific(明確性)
- Measurable(計量性)
- Achievable(達成可能性)
- Relevant(関連性)
- Time-bound(期限)
SMARTを意識することで、KPIを効果的に設定することができます。
SMARTの5つの項目について、詳しく解説します。
SMARTの法則1.Specific(明確性)
SMARTの法則1つ目は、Specific(明確性)を意識するということです。
明確性を意識するとは、KPIを具体的に表すということです。
具体性のあるKPIを設定することにより、誰がKPIを見ても理解できるようになります。
曖昧な言葉は使わず、定義を決めてKPIを設定するようにしましょう。
SMARTの法則2.Measurable(計量性)
SMARTの法則2つ目は、Measurable(計量性)を意識するということです。
計量性を意識するとは、KPIを設定するときに数字で示せるようにするということです。
KPIを数字で示すことで、さらに具体性を出し、進捗状況や達成率を把握できるようになります。
KPIを設定するときは、なるべく数値化できるようにしましょう。
SMARTの法則3.Achievable(達成可能性)
SMARTの法則3つ目は、Achievable(達成可能性)を意識するということです。
達成可能性を意識するとは、達成できるKPIを設定するということです。
達成できるKPIが設定されていないと、モチベーションが低下してしまい、目標を達成することが難しくなってしまいます。
目標設定をするとき、意気込むあまりつい目標を高くしすぎてしまいがちです。
しかし、それによりモチベーションが下がってしまっては意味がありません。
そのため、KPIを設定するときには、達成できる現実的なものであるかどうかを意識するようにしましょう。
SMARTの法則4.Relevant(関連性)
SMARTの法則4つ目は、Relevant(関連性)を意識するということです。
関連性を意識するとは、目標と関連しているKPIを設定するということです。
目標とKPIが関連したものでなければ、目標を達成するどころか、KPIを設定する意味がありません。
KPIは目標を構成するものを設定するようにしましょう。
SMARTの法則5.Time-bound(期限)
SMARTの法則5つ目は、Time-bound(期限)を意識するということです。
KPIを設定するときには、期限を設けることで進捗や達成率を確認しやすくなります。
期限を設けなければ、スケジューリングや計画を立てて業務を進めることが難しくなります。
スケジューリングや計画を立てることが難しいと、モチベーションを維持することも難しくなり、目標を達成することができません。
そのため、KPIを設定するときには、期限を必ず設けるようにしましょう。
従業員のモチベーションを上げる!KPIの効果的な設定3つのポイント
ここからは、KPI設定によって従業員のモチベーションを上げるための3つのポイントについて解説します。
2019年に株式会社PLAIDが発表した調査によると、KPI設定によってモチベーションが上がったビジネスマンは全体の50.1%と約半数を占めました。
出典:企業経営におけるKPIの位置付けと社員の認識に関する調査(株式会社PLAID)
また、常勤のアンケートでモチベーションが上がったと回答したビジネスマンに、「モチベーションが上がったのはなぜか?」という質問をしたところ、以下のような回答結果が報告されています。
出典:企業経営におけるKPIの位置付けと社員の認識に関する調査(株式会社PLAID)
このアンケート結果から、従業員のモチベーションを上げるには、以下の3つのポイントをが重要だといえます。
- KPIを達成することが評価につながる
- 事業が成長するKPIを設定する
- 顧客の価値向上につながるKPIを設定する
KPIを効果的に設定するための3つのポイントについて、詳しく解説します。
KPIの効果的な設定ポイント1.KPIを達成することで評価されるようにする
KPIを効果的に設定する1つ目のポイントは、KPIを達成することで従業員が評価されるようにするということです。
KPIは目標を達成するための指標で、個人レベルで設けられることも多いです。
そのため、KPIの設定が従業員一人ひとりの目標として扱われることもあります。
KPIを達成することで、従業員が評価される仕組みにすることで、従業員のモチベーションが上がり、業務に対して意欲的になるのです。
また、従業員が目標達成した場合の評価やインセンティブを明確にしておくことで、従業員のモチベーションを更に上げることができます。
KPIの効果的な設定ポイント2.達成することで事業が成長するKPIを設定する
KPIの効果的な設定ポイント2つ目は、達成することで事業が成長するKPIを設定することです。
達成すれば事業が成長するKPIを設定することで、従業員が業務にやりがいを感じやすくなります。
従業員が仕事にやりがいを感じるためには、自分の仕事が会社や顧客など、誰かのためになっているということが重要なポイントです。
事業が成長するということは、会社はもちろん顧客の役にも立つ仕事をしています。
自分は世の中の役に立っているんだと、従業員が思えるようなKPIを設定するようにしましょう。
KPIの効果的な設定ポイント3.顧客の価値向上につながるKPIを設定する
KPIを効果的に設定する3つ目のポイントは、顧客の価値向上につながるKPIを設定するということです。
顧客の価値向上につながるKPIを設定することで、従業員が行っている業務が人のためになっているということを客観的に判断することができます。
主観的に人の役に立っているという考えるだけでなく、客観的に人の役に立っていると判断できることが、従業員のモチベーションを上げるポイントなのです。
KPIを設定するときには、顧客の価値を向上させられる指標になっているかを意識してみましょう。
【職種別】KPI設定の具体例を紹介!
ここからは、KPI設定の具体例を職種別に解説します。
KPIは職種や業種によってさまざまです。
今回は、多くの業種に共通する3つの職種のKPI設定の具体例を紹介します。
- 営業職
- マーケティング
- 経営管理
それぞれについて解説します。
営業のKPI設定の具体例
まず、営業職のKPI設定の具体例を紹介します。
営業職は成果を数字で表しやすい職種なので、KPIを設定しやすい職種ともいえます。
- 売上
- 契約数
- 契約率
- アポイント件数
- 訪問件数
- 電話件数
営業職はこのような項目をKPIを意図して設定することができます。
これらを個人レベルで設定し、部署全体の売り上げに誰がどれだけ結果を出しているのかを管理することができます。
また、部署全体の売上を設定し従業員に共有することで、従業員自身が売上にどれだけ貢献しているのかを把握して、モチベーションを上げることができます。
マーケティングのKPI設定の具体例
次にマーケティング職のKPI設定の具体例を紹介します。
マーケティング職も、数字をよく扱う職種なので、KPIを設定しやすい職種です。
- CPA
- CTR
- CV数
- CVR
- リード獲得数
- 訪問者数
- PV
- 企画考案数
マーケティング職は、このような数値をKPIとして設定することができます。
マーケティング職の場合、個人レベルでKPI設定することは難しいケースも多いでしょう。
その場合には、企画考案数などをKPIを意図して設定することで、業務の管理をしやすくなります。
経営管理のKPI設定の具体例
最後に経営管理のKPI設定の具体例を解説します。
経営管理は、会社を経営する上で非常に重要な職種です。
適切な経営管理をするために、適切なKPIを設定できるようにしましょう。
- 会社全体の売上
- 事業別売上
- 利益率
- 粗利益
- 人件費
このように、会社全体の数字をKPIとして設定し、適切な経営判断を下すことが管理職には求められます。
これらの他にも、企業や業態によってさまざまなKPIを設定することができるので、自社で数値化できそうな物を探してみましょう。
KPIだけじゃない!KPI以外の目標設定の4つの指標
最後にKPI以外の目標設定の指標を4つ紹介します。
それぞれの指標の特徴を知っておくだけで、効果的な目標設定を行うことができます。
- KGI(重要目標達成指標)
- KSF(重要成功要因)
- KBF(重要購買要因)
- OKR(目標と成果指標)
それぞれの指標について解説します。
KGI(重要目標達成指標)
KGIは、Key Goal Indicatorの略語で、日本語では重要目標達成指標という意味があります。
KGIとはつまり、ビジネスの最終的な目標のことです。
たとえば、売上高や利益率などが当てはまります。
KGIは、KPIと一緒に設定されることが一般的です。
KGIを設定することで、最終的な目標は何なのかを明確にし、KGI達成のためにやらなければいけないことを明らかにできます。
KPIが目標を達成するための中間目標であれば、KGIは最終目標です。
KSF(重要成功要因)
KSFは、Key Success Factorの略語で、日本語では重要成功要因という意味です。
つまり、事業を成功させるための要因となるものを指します。
たとえば、規模や技術力、顧客対応の速さなど、市場の中で優位に立ち回れる要因になるもののことです。
KSFもKGIと同じように、KPIと一緒に設定されることが一般的です。
KPIが中間目標の数値を表す指標であれば、KSFはいわば強み・目標達成の手段といえるでしょう。
KSF(目標達成の手段)を設定することで、KGI(最終目標)が何で構成されているのか明確にすることができ、KPI(目標を達成する指標)を適切に設定できるのです。
KBF(重要購買要因)
KBFは、Key Buying Factorsの略語で、日本語では重要購買要因という意味です。
KBFは顧客が商品を購入する際に、重要視する要素のことです。
KBFを把握しておくことで、自社の商品のSTPを決める判断材料にすることができます。
また、自社の商品が売れた際には、購入者のKBFを把握することで、新商品の開発や営業方法を開拓することができます。
OKR(目標と成功指標)
OKRとは、Objectives and Key Resultsの略語で、日本語では目標と成功指標という意味です。
OKRは企業が設定した目標とその結果を明確にして、企業・個人レベルまで業務を明らかにする目標管理のフレームワークのことです。
ここまで紹介したKPI・KGI・KSF・KBFは目標を達成するための指標なので、OKRとは根本的な概念が違います。
OKRは企業全体はもちろん、個人レベルまで業務を落とし込む事ができることが特徴です。
【まとめ】KPI設定で従業員のモチベーションを上げて目標を達成しよう!
今回は、目標達成のために重要な指標であるKPIについて解説しました。
KPIを設定することで、事業や業務の進捗状況や達成率を確認できるようになり、業務管理がしやすくなります。
また、KPIを適切に設定することで、個人レベルでの目標設定もできるため、従業員のモチベーションを上げることもできるのです。
事業を継続していく中で、業務の成果が目に見えて現れるため、自身の業務が目標に対してどのように影響しているかを確認できます。
ただし、KPIを設定する前に一点だけ確認していただきたいことがあります。
それが、自社の商品やサービスの価格が適切であるかどうかです。
KPIを設定して、目標を数値化できても、売上や利益が上がらなければ従業員のモチベーションは上がりません。
それどころか、売上や利益が上がらないことにより、モチベーションが下がってしまう可能性も考えられます。
そのため、まずは自社の商品やサービスの価格を見直していただきたいのです。
価格設定を見直してから、KPIを設定することで、事業をさらに加速することができます。