今回のテーマは、「電子マネー決済」の導入についてです。
昨今、駅の改札やコンビニ、自動販売機などで、電子マネーを使う人が増えてきました。
あなたもここ数年で、カードやスマホをかざして、ピッと決済している人をよく見かけるようになったのではないでしょうか?
実は今、日本では電子マネー決済を含むキャッシュレス決済を推進する動きがあります。
経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」というものを策定しており、キャッシュレス決済の普及率を、2025年の大阪・関西万博までに40%、将来的には世界標準の80%にまで引き上げようとしているのです。
(参考:経済産業省_キャッシュレス・ビジョン_PDFファイル)
こんな時代だからこそ、電子マネー決済の導入については、少なくとも1度は検討してみるべきだと言えるでしょう。
しかし、電子マネーには色々な種類があるため、どれをどうやって導入すればわからない、という経営者も少なくありません。
もしくはそもそもの話で、電子マネー決済を導入したとして、本当に良い費用対効果が望めるのだろうか、と悩む社長も多いです。
そこで今回は、電子マネー決済について、以下のようなことを解説していきます。
- 電子マネー決済を導入するメリットとデメリット
- 電子マネー決済の仕組み
- 日本でよく使われている電子マネーの種類
- 電子マネー決済サービスの一覧と各種導入方法
ぜひこの記事をチェックして、電子マネー決済の導入を検討してみてください。
電子マネー決済を導入するメリットとデメリット
まずは、電子マネー決済の導入にどのようなメリットとデメリットがあるのかについて説明していきます。
ここで紹介するメリットとデメリットを見比べ、自社のビジネスを照らし合わせたうえで、費用対効果がありそうかどうか判断してみてください。
電子マネー決済導入のメリット
電子マネー決済の導入には、以下のようなメリットがあります。
- 交通系の用途も含めれば多くの人がすでに電子マネーを使っている
- 売上を回収できないリスクが少ない
電子マネー決済導入のメリットとして大きいのは、なんといってもすでに使っている人がたくさんいるというところでしょう。
とくに電車移動がメインの都心部では、かなり多くの人が毎日のように使っているはずです。
つまり、それだけ潜在ユーザーがいるということですね。
現状、電子マネーの用途のほとんどは交通に関するものであり、買い物における使用率はあまり高くはありません。
しかし、それはまだ日本がキャッシュレス化の途中段階だからです。
冒頭でもお話したとおり、日本は今、キャッシュレス決済を推進しています。
そのため、いざキャッシュレス決済が普及したとき、すでに持っている人の多い電子マネーが多くのシェアを獲得する可能性は、大いにあり得ると言えるでしょう。
そしてもう1つのメリットが、売上未回収リスクの低さです。
電子マネー決済の場合、お客さんがすでに電子マネーを購入しているというパターンが多く、その場合、決済はその場ですぐに完了となります。
そのため、あとからの支払いを待つ必要がなく、売上が回収できないというリスクを大幅に回避することができるのです。
これがクレジットカードの場合、お客さんからの入金がないと、加盟店側が損失を被ることになります。
そういった意味で考えると電子マネーは、クレジットカードより安心で、店舗側にやさしい決済手段であると言えるでしょう。
この2つが、電子マネー導入の主なメリットです。
まとめると、電子マネーは将来性と安全性に長けているということですね。
電子マネー決済導入のデメリット
電子マネー決済導入のデメリットには、以下のようなものがあります。
- 高額商品の買い物には使いにくい
- コストがかかる
まず1つ目が、電子マネーでは高額商品が買いづらいという点です。
というのも、電子マネーの多くに、チャージの限度額が設定されています。
チャージ限度額は大体数万円ていどになるため、それ以上の高額商品を電子マネーで買うことは難しいわけですね。
そのため、電子マネー決済の導入は、数千円ていどまでの商品をメインに取り扱っている店舗に向いており、逆に高額商品を取り扱っている店舗には向いていないと言えます。
そしてもう1つのデメリットが、キャッシュレス決済の宿命とも言えるコスト面の負担です。
電子マネーのサービスを提供している企業も、ボランティアでやっているわけではなく、あくまでも利益を出すビジネスとしてやっています。
そのため、電子マネー決済を導入すると、どうしても以下のような費用がかかってしまうのです。
- 導入費用
- 決済手数料(数%)
- 月額利用料
ただ、現在は国がキャッシュレス決済に対して、以下のような支援制度を行っています。
- 端末費用と設置費用が無料になる
- 実施期間中の決済手数料のうち1/3を国が負担
支援制度の対象となるのは中小・小規模事業者で、対象期間は2019年10月1日~2020年6月30日までです。
この条件に当てはまれば、初期費用0円で電子マネー決済を導入でき、決済手数料についてもお得に利用することができます。
対象期間中は電子マネー決済導入のチャンスとなりますので、支援制度についてはしっかりと調べておきましょう。
(参考:キャッシュレス・消費者還元事業)
ただし、この支援制度があくまでも一時的なものであるということは、決して忘れてはいけません。
なぜなら、長い目で見れば、決済手数料や月額料金はずっと払い続けなければいけないからです。
そして決済手数料を払うということは、単純にその分だけ利益が落ちるということを意味しています。
そのため、もし今ギリギリ利益が出るかどうかというビジネスをしているのなら、キャッシュレス化の波に伴い、業績はかなり苦しい状況へと追い込まれてしまうでしょう。
このようなことにならないためにも、来たるキャッシュレス決済時代に備えて、既存のビジネスを見直しておくことが必要です。
とくに利益率をしっかり見直し、利益をしっかり確保できる状況を作り出すことは、絶対にしておいてください。
そうしないと、キャッシュレス決済の負担が原因で、最悪倒産ということにもなりかねません。
では、具体的に何をすれば良いのかというと、まずは商品の価格を見直すべきです。
実は日本の中小企業の多くが、無理な価格競争に手を出してしまっているという現状があります。
その結果、商品が本来売れるはずの価格よりも随分と低い価格設定をしてしまっている社長が非常に多いのです。
しかし、薄利多売戦略の取れない中小企業の場合は、価格競争ではなく差別化をこそ行わなければいけません。
差別化をしたうえで商品の価格を上げて、しっかりと利益を確保しなければ生き残ることはできないでしょう。
電子マネー決済の仕組み
ここからは、電子マネー決済への理解を深めるために、仕組みについて説明していきます。
電子マネー決済の仕組みには、大きく分けて2つのものがあります。
- プリペイド型(前払い)
- ポストペイ型(後払い)
お客さんが電子マネーを使うさいに、先に電子マネーを購入しておくか、あとからクレジットカードなどで清算するか、という違いですね。
このうちプリペイド型の場合は、先に説明したとおりすでに電子マネーの購入自体は終わっていますので、売上未回収のリスクがなくなってくれるというわけです。
また、私たち店舗側が電子マネー決済を行うためには、決済代行サービスに加盟店契約を申し込まなければいけません。
なぜなら、お客様の電子マネーに関する情報は、電子マネーの発行会社か決済代行会社に存在するため、そちらと契約して、決済毎に手続きをしなければいけないからです。
このとき、実店舗の場合は専用の読み取り端末が必要となります。
カードやスマホをかざし、それを読み取るための機械ですね。
そのため電子マネー決済を導入するさいには、端末の購入費用か、もしくはレンタル費用が必要となります。
一方オンラインショップでは、専用の読み取り端末は必要とならず、カード情報を入力してもらうことで決済の手続きが行われます。
このように電子マネー決済は、お客さんと店舗が直接やり取りをしているというわけではありません。
お客さんと店舗の間に電子マネーの発行会社か決済代行会社が入ることで、決済処理を行っています。
そのため、間に入っている会社が取り扱っていない電子マネーは、基本的に決済処理をすることができません。
だからこそ電子マネー決済を導入するときは、どこの決済サービスと契約するかが非常に重要になってきます。
決済サービスの選び方についてはこの記事で説明していますので、このまま読み進めてください。
電子マネーの種類
ここからは、日本でよく使われている電子マネーの種類についてまとめていきます。
決済サービスを選ぶさいには、どの電子マネーを取り扱っているかが重要なポイントです。
しかしそうは言っても、どの電子マネーに対応していれば良いのか分からない、と頭を悩ませる経営者も多いのではないでしょうか。
そこで注目してほしいのが、以下にまとめてある、日本でよく使われている電子マネーです。
楽天Edy | 楽天Edyは、その名のとおり楽天が運営する電子マネーです。
楽天市場でしか使えないということはなく、コンビニからスーパー、飲食店まで、幅広い店舗で使用できます。 |
Suica | Suicaは、JR東日本が発行している交通系の電子マネーです。
シェアで言えば関東が高い傾向にありますが、基本的には全国どこででも使えます。 交通系とはいえ、多様な店舗でも使うことのできるため、非常に便利です。 |
PASMO | PASMOは、Suicaと同じく関東でよく使われている交通系電子マネーです。
こちらは、1つの会社が発行しているのではなく、鉄道11事業者とバス19事業者が中心になり、発行と管理を行っています。 同じ交通系ですが、シェア率でいうとSuicaの方が高いです。 |
nanaco | nanacoは、セブンイレブンで有名な株式会社セブン&アイ・ホールディングスが発行、管理する電子マネーです。
セブンイレブンはもちろん、ほかにもさまざまな店舗で使用することができます。 |
iD | iDはdocomoが管理する、後払い式の電子マネーです。
先にお金を入れておくのではなく、iD対応のクレジットカードを登録しておき、そこから支払いを行う形になります。 |
ICOCA | ICOCAは、JR西日本が発行している交通系の電子マネーです。
主に関西圏で多くのシェアを獲得しており、Suicaと同じく、さまざまな店舗で使用することができます。 |
QUICPay | QUICPayは、クレジットカードで有名なJCBが作った後払い式の電子マネーです。
スマホを使ってのモバイル決済でよく使われる電子マネーで、もちろんさまざまな店舗に対応しています。 |
manaca | manacaは、名古屋でよく使われている交通系の電子マネーです。
Suicaに比べれば普及率としては低いですが、名古屋に店舗を構えている場合などは導入しておく方が良いでしょう。 |
nimoca | nimocaは、西日本鉄道の完全子会社である株式会社ニモカなどが発行する交通系電子マネーです。
九州地方を中心に使われています。 |
決済代行サービスと契約をする場合は、基本的にこれらが含まれているものを選択すれば間違いありません。
決済代行サービスを検討するなら、手数料などの料金面だけでなく、取り扱っている電子マネーについてもチェックしておくようにしましょう。
電子マネー決済サービス一覧と各種導入方法
電子マネー決済を導入するさいに定番としてよく使われているのは、以下の決済代行サービスです。
- 楽天ペイ
- AirPAY(エアペイ)
- KAZAPi(かざっぴ)
電子マネー決済の導入については、運営会社と契約するより、複数を一括導入できる決済代行サービスを利用するほうがおすすめです。
これから紹介する決済代行サービスなら、1社と契約するだけで多くの電子マネーを取り扱えるようになります。
ぜひチェックして、参考にしてください。
電子マネー決済サービス1.
楽天ペイ
(画像引用:楽天ペイ公式ホームページ)
楽天ペイでは、非常に多くの電子マネー決済を取り扱っており、「電子マネーの種類」で紹介した電子マネーについてもすべて網羅しています。
ちなみに、この記事を書いている2019年5月時点では、カードリーダーが18,800円、決済手数料が決済額の3.24%または3.74%です。
楽天ペイは電子マネー以外にもクレジットカード決済、QRコード決済、オンライン決済などを取り扱っています。
そのため、電子マネーだけに限らず、さまざまなキャッシュレス決済を同時に導入することができるのです。
また、初期費用については随時お得なキャンペーンをやっていますので、導入するさいにはそちらの方もチェックしておきましょう。
楽天ペイの導入方法
楽天ペイを導入するには、5つの手順を行ってください。
- 公式サイトから申し込みを行う
- 審査結果を待つ
- カードリーダーの購入を行う
- スマホかタブレットに楽天ペイアプリをダウンロードし、初期設定を行う
- 利用を開始する
申し込みは以下のリンク先から行うことができます。
電子マネー決済サービス2.
AirPAY(エアペイ)
(画像引用:AirPAY公式ホームページ)
AirPAYは、上の画像を見てもわかるとおり、主要な電子マネー決済を数多く取り扱っている決済代行サービスです。
クレジットカード決済、QRコード決済を同時に導入することもできます。
ちなみに費用については、この記事を書いている2019年5月時点で、カードリーダーが18,334円、iPadを同時に購入する場合は別途37,800円、決済手数料は3.24%または3.74%です。
また、この記事を書いている時点では、導入費用が0円になるキャンペーンを行っています。
キャンペーンの対象になった場合は、カードリーダーだけでなく、iPadも無料で使える可能性がありますので、ぜひチェックしておきましょう。
AirPAYの導入方法
AirPAYは、以下の手順で導入することができます。
- 公式サイトから申し込みを行う(AirPAY_QRについても同時に申し込んでおく)
- 審査結果を待つ(通常3日ていど)
- カードリーダー、操作マニュアル、加盟店ステッカーが送付されてくる
- スマホかタブレットにAirペイアプリをダウンロードし、初期設定を行う
- 利用開始のお知らせメールが届いたら導入完了
申し込みは以下のリンクからできますので、参考にしてください。
電子マネー決済サービス3.
KAZAPi(かざっぴ)
(画像引用:KAZAPi公式ホームページ)
KAZAPiは、決済端末がレンタルになるため、キャンペーンなどに関わらず初期費用がかかりません。
また、決済端末にSoftbankの3G回線が組み込まれているため、ネット回線がなくても、コンセントさえあればすぐに使えるのが特徴です。
もちろん、取り扱っている電子マネーの種類も非常に豊富で、そうそう困ることはないでしょう。
ちなみに、この記事を書いている2019年5月時点で、決済手数料は3.8%、別途システム利用料が月額2,000円かかります。
さきに紹介した2つのサービスと比較して違うのは、月額利用料がかかることです。
そういう意味では、やや割高のサービスであるとも言えます。
ただその分、365日24時間のサポートを行っており、また導入も非常に簡単に行えるため、電子機器の取り扱いに不安がある場合は、KAZAPiの導入を検討してみても良いのではないでしょうか。
KAZAPiの導入方法
KAZAPiは、以下の手順で簡単に導入することができます。
- 公式サイトから申し込みを行う
- メールで資料を受け取り、担当者と電話で打ち合わせをする
- 契約する場合は、必要書類が送られてくるのでそちらを提出する
- 決済端末が届いたら、利用を開始する
以上が、KAZAPiの導入手順です。
申し込みは以下のリンク先より行うことができます。
【まとめ】電子マネーを導入して機会損失をなくそう
今回は、電子マネー決済の導入について説明をしてきました。
冒頭でもお話ししましたが、今日本は、キャッシュレス決済を推進し、普及させようと動いています。
電子マネーについても、今後はさらに多くの人に利用される見込みが高いということです。
このキャッシュレス化の流れに置いていかれないように、情報収集はしっかり行っておきましょう。
あとはもちろん、時代の流れに対応するための基盤づくりも重要です。
キャッシュレス決済が普及すれば、決済手数料がかかるようになります。
このとき、利益率の悪いビジネスをしていると、決済手数料が大きな負担となってしまいます。
たとえば単純計算で利益率10%という商売をしていた場合、今のままだと6%前後にまで利益率が下がってしまうわけですね。
これでは、十分な利益が確保できなくなってしまいます。
電子マネー決済は、すでに通勤などで使っている人も多いことから、今後普及が見込まれる決済方法です。
今のうちに対応しておき、機会損失を招かないようにしておきましょう。