今回は、実は非常に大きなムダが生じやすい「コミュニケーションコスト」についてお話をしていきます。
ビジネスをするうえで、「お金」と同じか、もしくはそれ以上に重要なのが「時間」です。
とくに会社内でもっとも時給が高い社長がどのように時間を使うかで、その会社の命運が決まるといっても過言ではありません。
そして、だからこそ意識しておかなければいけないのが、今回解説するコミュニケーションコストです。
コミュニケーションコストを意識し、削減することで、時間のムダを大きく削減することができます。
逆に社長であるあなたを含め、コミュニケーションコストが高い人材ばかりいる会社では、時間のムダが膨れ上がってしまい、効率がどんどんと悪化してしまうのです。
そこで今回はコミュニケーションコストについて、以下のような内容で解説をしていきます。
- コミュニケーションコストの意味とは
- コミュニケーションコストが高い人の特徴
- コミュニケーションコストが高い組織の特徴
- コミュニケーションコストの削減方法
今回の記事を参考にして、あなた個人、そしてあなたの会社(組織)のコミュニケーションコストを削減していきましょう。
コミュニケーションコストの意味とは
コミュニケーションコストとは、「意思疎通をするときに要する時間」のことです。
たとえば上司が部下に仕事を頼もうとしたとき、その説明にかかる時間がコミュニケーションコストになります。
短い時間で部下がやるべきことを理解してくれれば「コミュニケーションコストが低い」、逆に長い時間かかってしまうようなら「コミュニケーションコストが高い」ということです。
つまりコミュニケーションコストが低ければ低いほど、複数人で行う仕事がスムーズに進むというわけですね。
ただし意思疎通にかかる時間は、短ければそれで良いというわけではありません。
たとえば、上司から部下に仕事の説明をするとき、10分で部下が理解して作業を開始してくれたとします。
しかし実は理解したつもりになっていただけで、本当は話の半分くらいしかわかっていなかったとしたらどうでしょうか?
作業中に質問に来られることが増え、結果的にコミュニケーションコストが上がってしまいます。
さらに勝手な認識で仕事を進めてしまえば、それが大きなリスクとなるのです。
このようにコミュニケーションコストについて計算するときは、「きっちりと意思疎通ができている状態」を基準にして考えなければいけません。
つまりコミュニケーションコストを削減するためには、ただ説明する時間を短縮するのではなく、お互いの理解度を深めるような施策を行わなければいけないのです。
また、コミュニケーションコストと関連性の深い言葉に「ブルックスの法則」というものがあります。
「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、プロジェクトをさらに遅らせるだけである」ということを意味する言葉です。
そして、要員を追加したにもかかわらずプロジェクトがさらに遅れてしまう理由の1つが、まさに今回のテーマであるコミュニケーションコストの増大によるものなのです。
ブルックスの法則によれば、人員を2倍にした場合のコミュニケーションコストは4倍になるとされています。
つまり会社が大きくなればなるほど、コミュニケーションコストがより大きな意味合いを持ってくるということですね。
(参考:Wikipedia_ブルックスの法則)
だからこそ社長は、コミュニケーションコストのことをしっかり理解しておかなければいけません。
コミュニケーションコストが高い人の特徴
コミュニケーションコストが高い「個人」には、以下のような特徴があります。
- 理解力が低い
- 自分の話をしたがる
- 自分の立場や役割を理解していない
逆に言えばこの3つの対策を行えば、自分が相手にかけてしまうコミュニケーションコストを抑えることができるということです。
もちろん自分だけでなく、社員に対策をさせることで、組織全体のコミュニケーションコストを削減することもできます。
ちなみに個人のコミュニケーションコストを削減する方法については、この記事内でのちほどご説明いたします。
それでは1つずつ、詳しく解説していきましょう。
コミュニケーションコストが高い人の特徴1.
理解力が低い
当たり前といえば当たり前ですが、理解力が低ければ低いほど、コミュニケーションに費やす時間は多くかかってしまいます。
なぜなら、話を始めて双方が理解するまでの時間がコミュニケーションコストだからです。
たとえば、10分で同じ説明をして、それだけで理解しくれる人のコミュニケーションコストは10分で済みます。
ところが、それで理解できない人には、10分からさらに追加で時間を使わなければいけないわけです。
もしコミュニケーションコストが低い人材が欲しいなら、採用面接のときにどれくらいの理解力があるのかを試してみると良いでしょう。
コミュニケーションコストが高い人の特徴2.
自分の話をしたがる
自分の話をしたがる人も、コミュニケーションコストが高いと言えます。
ついムダな話で時間を潰してしまったり、相手が説明しようとしている話をさえぎってしまったりしがちだからです。
もちろん、そのとき必要な情報を適切なタイミングで話すのであれば問題はありません。
しかし、「今話さなくても良いこと」をついつい話してしまう場合は要注意です。
プライベートであれば話に花が咲くのは良いことですが、ビジネスの場面においては、それが人の時間を奪うことに繋がってしまうという認識を持ちましょう。
コミュニケーションコストが高い人の特徴3.
自分の立場や役割を理解していない
自分の立場、役割を理解していないと、コミュニケーションコストが高くなってしまいます。
なぜなら、話の前提条件から理解できていないということだからです。
自分の立場や役割をきっちり理解した人に対しては、それを前提としたうえで話を進めることができます。
しかしその理解がないと、話をするたびに1から説明をしなければいけなくなり、その分の時間が余計にかかってしまうわけです。
コミュニケーションコストを下げたいなら、各々が自分自身の立場、役割を理解するように努めましょう。
コミュニケーションコストが高い組織の特徴
ここからは、コミュニケーションコストが高い「組織」の特徴について解説をしていきます。
- 仕組みができていない
- 社員の教育ができていない
確かに組織を構成する個人のコミュニケーションコストが低ければ、組織全体のコストも相対的に下がります。
しかし、組織全体においてもコミュニケーションコストを下げる施策をしなければ、結局多くのムダな時間を生み出してしまうのです。
ちなみに組織のコミュニケーションコストを削減する方法については、この記事内でのちほどご説明いたします。
それでは特徴について、1つずつ解説していきましょう。
コミュニケーションコストが高い組織の特徴1.
仕組みができていない
組織全体のコミュニケーションコストを下げるためには、スムーズにコミュニケーションが取れる仕組みづくりが重要です。
実はコミュニケーションコストは、話し始めてからかかるものではありません。
たとえば質問したいことが出てきても、誰に聞いていいのかわからなければ、まずその知識を持っている人を探さなければいけません。
探す方も余計な時間を食いますし、知っているかどうか確認のために声をかけられる方も時間をムダにしているのが分かりますよね?
そこで「〇〇のことは〇〇さんが詳しい」という情報をまとめ、あらかじめ周知しておけばどうでしょうか。
長い目でみれば、かなり多くのコミュニケーションコストを削減できるはずです。
組織全体のコミュニケーションコストを下げるためには、こういった仕組みづくりも重要だということですね。
コミュニケーションコストが高い組織の特徴2.
社員の教育ができていない
そもそも社員教育が不十分だと、その分質問も増えてしまいます。
土台となる知識が不足しているわけですから当然のことですね。
そのため、余計な質問が出てこないように社員教育をきっちり行っておくことも、コミュニケーションコストを下げるためには重要です。
もし新人からの質問が多く、全体の業務効率が下がっているようなら、新人教育から見直してみると良いでしょう。
コミュニケーションコストの削減方法
ここからは、「個人」と「組織」に分けてコミュニケーションコストの削減方法を解説していきます。
この両方を実践すれば、会社全体のコミュニケーションコストを大幅に削減できるはずです。
「個人」のコミュニケーションコストを削減する方法
個人のコミュニケーションコストを削減するには、以下のようなことをするのが効果的です。
- ヒアリングを意識する
- 5W1Hで物事を考える
- 自分の役割を日ごろから理解しておく
この3つを意識すれば、おのずとコミュニケーションコストを下げることができます。
それでは1つずつ解説していきましょう。
個人のコミュニケーションコストを下げる方法1.
ヒアリングを意識する
とくに話しかけられた場合は、ヒアリングを心掛け、相手が何を言おうとしているのかを理解することに努めましょう。
簡単に言えば、よく話を聞いてから答えるべき、ということですね。
忙しいからといって相手の話を聞かず、早とちりで回答をしてしまえば、相手との解釈不一致が起こってしまいます。
そうなれば結局、コミュニケーションコストも上がってしまうわけですね。
だからこそ相手の話にゆっくり耳を傾けることが、結果的にコミュニケーションコストを下げることに繋がるのです。
個人のコミュニケーションコストを下げる方法2.
5W1Hで物事を考える
「5W1H」で物事を考えれば、相手の話をより理解しやすくなり、コミュニケーションコストの削減に繋がります。
5W1Hとは、物事を以下のように切り分けて考えることです。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(だれが)
- What(なにを)
- Why(なぜ)
- How(どのようにして)
「相手が伝えてきたこと」、「自分が伝えたいこと」をこの5W1Hで切り分けることで、情報が整理され、よりわかりやすくなります。
たとえば仕事のやり方について聞かれた場合、「なにを」知りたいのかだけを考えがちですが、「なぜ」知りたいのか、まで考えれば、誤解や思い違いを大幅に減らせるはずです。
また、こちらから何かを伝えたい、何かを聞きたいという場合も、この5W1Hであらかじめ情報を整理しておけば、ムダなく欲しい答えにたどり着けます。
このように5W1Hを意識すれば、コミュニケ―ションコストを下げることができるのです。
個人のコミュニケーションコストを下げる方法3.
自分の役割を日ごろから理解しておく
組織内における自分の役割を日ごろから理解しておくことも、コミュニケーションコストを下げるためには必要です。
周りが自分に何を期待しているのか知っていれば、より求められている答えを返しやすくなります。
もし自分が何を期待されているのかいまいちわかっていないという場合は、いっそ周りの人に聞いてみると良いでしょう。
また、あなたが社長の立場であるならば、日ごろから社員に期待していることを伝えておくことで、組織のコミュニケーションコストを削減することに繋がります。
「組織」のコミュニケーションコストを削減する方法
組織のコミュニケーションコストを削減するためには、以下のような施策を行ってみてください。
- マニュアルを作成する
- コミュニケーションツールを利用する
- 組織の方向性、理念を浸透させる
- 教育を徹底する
この4つをしっかり実践すれば、たとえ個人の能力がそこまで高くなかったとしても、組織のコミュニケーションコストを大幅に削減することができます。
詳細を説明していくので、ぜひあなたの会社でも実践してみてください。
組織のコミュニケーションコストを下げる方法1.
マニュアルを作成する
わかりやすいマニュアルを作成しておけば、コミュニケーションコストは大幅に削減できます。
なぜならマニュアルがあることで、同じ質問の繰り返しを防ぐことができるからです。
社員が新しい仕事を覚えるさいにマニュアルがなければ、先輩に質問するというコミュニケーションが高確率で発生します。
しかし、わかりやすいマニュアルがあれば、質問してくる人数はグッと減らせるはずです。
また質問があったとしても、マニュアルが土台にある分、コミュニケーションに要する時間は大幅に削減できるでしょう。
組織のコミュニケーションコストを下げる方法2.
コミュニケーションツールを利用する
コミュニケーションツールを活用することも、コミュニケーションコストを削減することに繋がります。
さまざまなツールがありますが、とくに有名なのは「Chatwork(チャットワーク)」や「ZOOM(ズーム)」などですね。
もちろん、口頭でパッと聞きたいことを聞いた方が話が早い場合もあります。
しかし相手が出先にいる場合や、作業に集中している場合、もしくは口頭では上手く情報がまとめられない場合などは、コミュニケーションツールを使った方が効率的です。
またコミュニケーションツールには、質問と回答をツール内に残せるといった利点もあります。
つまりツールを共有しておけば、同じ質問が発生する確率を大幅に下げられるということです。
そうなれば当然、コミュニケーションコストも大幅に削減することができます。
組織のコミュニケーションコストを下げる方法3.
組織の方向性、理念を浸透させる
組織の方向性、理念を浸透させることも、考え方の土台を作るという意味で非常に重要なことです。
この土台があるのとないのとで、同じ話をするにしても大きく理解度が異なります。
とくに社長のやりたいことが社員に上手く伝わっていない場合、社員が解釈違いを起こして仕事が上手く進まなくなってしまうかもしれません。
こういったムダを省くためにも、普段から方向性や理念については周知するようにしておきましょう。
組織のコミュニケーションコストを下げる方法4.
教育を徹底する
社内教育を仕組み化し、徹底することも、コミュニケーションコストを下げるうえでは重要な施策です。
教育がしっかりとしていれば、おのずとムダなコミュニケーションは起こりにくくなります。
また、教育のさいにコミュニケーションの取り方についても教えておけば、会社全体がよりスムーズに業務を進めていけるようになるはずです。
【まとめ】コミュニケーションコストは経費にも勝るコスト
今回は時間のコストであるコミュニケーションコストについて解説をしてきました。
コストというと「経費(お金)」を思い浮かべがちですが、「時間」というコストは、場合によっては経費にも勝るものとなります。
それは、あなたやあなたの会社が生み出す付加価値が高くなれば高くなるほど大きなものとなっていく計算です。
だからこそ今回の記事を参考にして、ぜひコミュニケーションコストの削減を図ってみてください。
コミュニケーションコストが高い状態のままだと、どうしても業績は頭打ちとなってしまいます。
また、「時間 = コスト」という考え方は、商品の価格を決めるさいにも適用するべきです。
商品価格を決めるとき、原価や経費だけをメインで考えて計算する人がいます。
言い方を変えれば、手間や時間を軽視してしまっている人がいるということです。
たとえば、手間や時間がかかるサービスなのに低い価格で提供してしまい、常に忙しそうにしている社長は多いです。
こういう会社は利益率が低く、社長や社員にかかる負担も甚大なものとなるため、多くの場合、長続きしません。
言葉を選ばなければ、そのうち倒産してしまいます。
だからこそ商品価格を決めるときには、「時間 = コスト」という考え方を念頭においておかなければいけません。
実際、弊社のクライアントの中には、低い価格のサービスに手間をかけすぎて利益率を落としてしまい、自分たちの給料を確保することすら難しかった英会話学校がありました。
しかし商品をしっかりと定義しなおし、価格を上げることで、一気に業績を好転させることに成功したのです。
時間は非常に重要なコストです。
だからこそムダが生まれないように、自分や組織のコミュニケーションコストを削減していきましょう。