今回は差別化戦略が重要な中小企業だからこそ気にするべき「コモディティ化」についてお話をしていきます。
コモディティ化が起こってしまえば、今まで高価値だったあなたの商品が、その価値の大部分を失くしてしまいます。
たとえば今まで100万円で売れていた商品が、コモディティ化によって1万円でしか売れなくなってしまうということです。
とくに主力商品がその価値を落としてしまえば、会社の存続にも関わってくる事態だと言えますね。
ただそうは言っても、多くの競合がひしめく市場において、コモディティ化はあるていど仕方がない現象でもあります。
しかし対策をすることで、コモディティ化が起こりにくい戦略をとることは十分に可能です。
そこで今回はコモディティ化について、以下のような内容をお話ししていきます。
- コモディティ化の意味
- コモディティ化が起こる原因
- コモディティ化の対策
- コモディティ化対策と同時に考えるべきこと
- コモディティ化の事例
もしあなたが差別化戦略が重要な中小企業の経営者であったなら、今回の記事はぜひチェックしておいてください。
コモディティ化の意味とは?
コモディティ化とは、高価値だった商品の市場価値が落ちてしまい、一般的な商品になってしまうことを意味する言葉です。
「陳腐化」という言い方をすることもあります。
たとえば30年ほど前、パソコンはかなりの高級品でした。
一般的なパソコンの平均価格がおよそ30万円と、なかなか気軽に買えるものではなかったのです。
当時は、「パソコンがある家はお金持ちの家だ」と思っていた人も多いのではないでしょうか。
ところが時代が進むにつれ、パソコンは一気に一般層に普及し、それと同時に価格も下落しました。
スペックを抑えたパソコンであれば、今なら当時の1/10である3万円ていどで買えてしまいます。
そしてさらに言えば、パソコンは現在名前を変えて、一家に1台どころか1人に1台というレベルで日常化しています。
それが、スマートフォンです。
スマートフォンは確かに電話ですが、言ってしまえばあれはタブレット型”パソコン”と同じような機能を持っていますよね?
そんなスマートフォンを、1人が1台、人によっては2台持ちなんてことをしているわけです。
つまり今の時代は昔と違い、1人1台以上パソコンを持つことが当たり前となっているということですね。
このように、特別で高価だったものが一般的で安価なものに変わっていく現象をコモディティ化と言います。
そしてコモディティ化は、物だけでなく、情報やサービスなど、ありとあらゆる商品に起こり得る現象なのです。
コモディティ化が起こる6つの原因
コモディティ化が起こる原因として挙げられるのが、以下の6つです。
- 平均思考
- 市場主義
- 供給過多
- 低価格な輸入品
- モジュール化
- 情報を入手する難易度の低下
コモディティ化が起こった場合、大概はこの6つのどれかが要因となっているはずです。
それで1つずつ解説していきましょう。
コモディティ化の原因1.
平均思考
売り手側の「平均思考」が原因で、コモディティ化が起こることがあります。
平均思考とは、言ってしまえば無難な考え方のことです。
この平均思考で商品を開発してしまうと、大きなハズレにはならない反面、独自性や強みが薄まった没個性な商品になってしまいます。
さらに言えば、平均思考とは多くの人が安易に抱きがちな思考でもあります。
つまり失敗しないことを念頭に置くあまり、ほかの競合と同じような商品を作ってしまうということですね。
同じような商品が市場に溢れかえれば、当然、価格競争が起こります。
そして結果的に、商品がコモディティ化してしまうわけですね。
とくに価格競争で勝てない中小企業の場合、弱みを消すことよりも、強みを伸ばすことに着目した方が良いでしょう。
コモディティ化の原因2.
市場主義
市場主義によって商品の独自性が消えてしまい、コモディティ化に至るというパターンもあります。
市場主義とは、市場における多数派のニーズに応えようとすることです。
ニーズが多いというと、一見良いことのように思えるかもしれません。
しかし、市場におけるニーズが多いということは、それだけ同じターゲットを狙う競合も多くなるということを意味しています。
そのため「平均思考」のときと同様、多数派のニーズを狙ってしまうと、価格競争が起こり、商品がコモディティ化してしまいやすいのです。
資源の限られた中小企業の場合、多数派のニーズに応えるよりも、競合がいない少数派のニーズに応えるという考え方も必要となります。
コモディティ化の原因3.
供給過多
供給過多もコモディティ化が起こる原因の1つです。
供給過多になるということは少ない需要を多くの競合で奪い合うということなので、当然価格競争が起こり、商品の価値は低下してしまいます。
ちなみに供給が多くなりすぎた状態は、プロダクトライフサイクルでいうところの「衰退期」です。
プロダクトライフサイクルとは商品が市場に普及してから消失するまでの流れを表すサイクルのことをいいます。
衰退期とは、その名のとおり供給過多によって商品や市場が衰退していく時期のことです。
コモディティ化を理解するうえで参考になりますので、ぜひ併せてチェックしておいてください。
⇒プロダクトライフサイクルの理論とは?活用方法を事例でわかりやすく解説
コモディティ化の原因4.
低価格な輸入品
低価格な輸入品によって価格破壊が起こってしまい、結果的にコモディティ化するというケースもあります。
高級品だったはずが、海外からの輸入で多くの人の手に安価で渡ってしまい、国内企業もそれに合わせるしかなくなってしまった状態ですね。
実際、メイドインチャイナの安い商品が多く入ってきたことで、自社の商品を値下げしなければならなくなった企業は多いはずです。
このように、輸入品による価格破壊からコモディティ化が始まってしまうというケースもあります。
コモディティ化の原因5.
モジュール化
モジュール化によって、コモディティ化は起こりやすくなります。
モジュール化とは、新しい製品を設計するときに、既存の部品やユニットから必要なものを選び、組み合せる方法のことです。
この方法はコストを省ける反面、多くの企業が同じ部品やユニットを使うことで商品の個性がなくなってしまうというデメリットがあります。
メーカーは違えど中身はどこも同じということになれば、当然お客さんはメーカーを気にせず、安いものを買おうとするはずです。
このような状況になれば熾烈な価格競争が巻き起こり、コモディティ化が進んでしまいます。
「モジュール化 = コモディティ化」というわけではありませんが、コモディティ化が起こる1要因には十分なり得るということですね。
コモディティ化の原因6.
情報を入手する難易度の低下
ここ最近の話をすれば、情報を入手する難易度が低下したことにより、情報のコモディティ化が起こっています。
たとえば少し前は、個人向けの物販やアフィリエイトの情報に大きな価値があり、多くの人が数十万円というお金を支払って購入をしていました。
ところが最近は、YouTubeの普及やビジネスモデルの変化によって、多くの情報が無償で発信されるようになったのです。
その結果、貴重で秘匿性の高かった情報が一気に一般的なものとなってしまい、大きく価値を下げてしまったわけですね。
ネットが広く普及している現代において情報の価値というのものは、基本的にコモディティ化しやすいと思っておいて良いでしょう。
コモディティ化の対策
自社の商品がコモディティ化してしまうのを防ぐためには、以下のような対策が効果的です。
- 差別化戦略を行う
- ユーザーの主観評価を重視する
- ブランドを確立する
これらを意識し、実行に移せば、コモディティ化してしまう確率をグッと落とせるはずです。
1つずつ詳細を説明していきます。
コモディティ化の対策1.
差別化戦略を行う
コモディティ化対策として、差別化戦略が効果的です。
コモディティ化は需要に対して供給過多になることで起こります。
そこで差別化戦略を行い、特定のターゲットに特化することで、競合との価格競争に参加しないことで、コモディティ化に巻き込まれないようにするわけですね。
また特定のターゲットに特化すれば、そのターゲットに対する付加価値を高めることができます。
競合が少なく、希少価値が生まれるからです。
コモディティ化は高価値だったものが一般的な価値に落ちてしまう現象なので、希少価値があれば、当然コモディティ化対策として機能します。
そのため、とくに大手企業との価格競争に巻き込まれたくない中小企業としては、差別化戦略は一考しておきたいところです。
コモディティ化の対策2.
ユーザーの主観評価を重視する
コモディティ化を防ぐためには、ユーザーの主観評価を重視することも効果的です。
お客さんは、必ずしも商品の機能や価格だけを見て購入を決めるわけではありません。
たとえばあなたがとてもていねいな営業をしていて、お客さんがそんなあなたに好感を抱いていた場合、多少品質が悪かったり価格が高かったりしても、「あなたから購入したい」という感情が起こります。
そしてこの「あなたから購入したい」という感情は、お客さんからすればとても高い付加価値となるわけです。
このように、商品や価格に対する相対的な評価だけではなく、ユーザーの主観的な評価も重視することが、コモディティ化を防ぐことにつながります。
自社で取り扱っている商品がコモディティ化しそうなときには、お客さんとの関わり方やサービスの提供方法についても考えてみると良いでしょう。
コモディティ化の対策3.
ブランドを確立する
ブランドを確立することができれば、コモディティ化は起こりにくくなります。
同じ商品でも、「ほかのメーカーとこのメーカーは違う」と思ってくれるお客さんが増えれば、そこに特別性が生まれるからです。
たとえば衣服で考えてみてください。
ジーンズやジャージなどは、基本的には一般的な商品であり、とっくの昔にコモディティ化していると言えます。
ところが、「リーバイス」や「アディダス」といったブランド品となると話は別です。
実際、アディダスが大好きで、全身をアディダス一色で染めている人もいます。
こういう人にとっては、普通のジャージやシューズでも、「アディダスというブランド」があるだけでとても特別な商品になるわけです。
そしてそういうファンを多く作ることができれば、当然コモディティ化はしないということですね。
ブランド品の中には品質に比べて価格が高いものが多くありますが、これはそのブランドであれば高くても買うというファンがいるからこそ成り立っているものなのです。
コモディティ化対策と同時に考えるべきこと
コモディティ化対策を考える場合は、同時に「商品の価格を上げることができないか?」ということも考えてみてください。
コモディティ化とは、高価値だった商品の市場価値が落ちてしまい、一般的な商品になってしまうということでした。
実はこれを逆に言えば、コモディティ化を防げれば高価値なまま商品を販売することができるという意味になります。
つまり、コモディティ化を起こさなければ、強気な価格設定でも買ってもらえる状況が続くということなのです。
商品の価格を上げることができれば、その分利益が上がることに直結します。
結局のところ、ビジネスで重要なのは売上ではなく利益です。
そのため、価格アップは業績を上げるうえでとても効果性が高いと言えるわけですね。
日本の中小企業を経営している人の中には、自社の商品が持つ本当の価値に気づけていない人が非常に多くいます。
そのため弱気な価格設定をしてしまい、十分な利益を取り切れていません。
だからこそコモディティ化対策と同時に、価格アップの施策も必要だと言えます。
コモディティ化の事例
ここからはよりイメージしやすくするため、コモディティ化の事例を紹介していきます。
- 回転寿司
- 個人向け物販コンサルティング
もしこれらと同じような状況になっているなら、あなたの商品がコモディティ化しようとしているか、もしくはすでにコモディティ化してしまっているかもしれません。
それでは1つずつ解説をしていきます。
コモディティ化の事例1.
回転寿司
日本のソウルフードとも言えるお寿司も、回転寿司の存在によってコモディティ化しました。
回転寿司チェーン店がまだそれほどなかった頃は、お寿司と言えば特別な食事というイメージでした。
「今日はめでたいから寿司をとろう!」なんて言葉もありましたね。
ところが現在、お寿司は一般家庭にとって、とても身近な存在になっています。
その要因こそが、一皿100円で食べられる回転寿司の存在です。
安価な回転寿司の登場により、お寿司は高級品から気軽に食べられるものへと変化していったわけですね。
このように今までは高級品だと思っていたものがコモディティ化し、価格を大きく下げてしまう場合があります。
中小規模で経営していて、かつ独自性を打ち出せなかったお店は、この波に逆らいきれなかったでしょう。
ただ、コモディティ化したことによってお寿司というものがより広く一般家庭に普及したということを考えると、業界全体で見れば必ずしもマイナスばかりであったとは言えません。
コモディティ化の事例2.
個人向け物販コンサルティング
情報のコモディティ化として、個人向け物販コンサルティングの事例があります。
いわゆる「せどり」という物販が流行っていた頃は、個人向けの物販コンサルティングが大きな価値を持っていました。
特別なノウハウなどなく、ただやり方を資料にまとめただけのものが、数万円~数十万円で飛ぶように売れていたのです。
言ってしまえば、異常なバブル状態となっていたわけですね。
しかし、徐々に情報が無料で出回り、さらに参入者の増加から「せどり」というビジネスの旨味がなくなってきた辺りで、情報の価値は一気に低下してしまいました。
当時数万円~数十万円で取引されていた情報が、今では無料で閲覧できるブログなり動画なりですぐに見つかるようになっています。
つまり、特別な情報でもなんでもなくなってしまったわけですね。
もちろん、付加価値の高い独自のノウハウがあれば話は別です。
しかし、単純なノウハウだけでは、もはや何の価値もないと言って良いでしょう。
このように新しいビジネスの情報は、一瞬でコモディティ化してしまいます。
とくに参入障壁の低いビジネスであればなおさらです。
もしあなたが一過性の流行りに乗ったコンサルティングを行っているなら、その情報の価値がいつまでも続くとは思わない方が良いでしょう。
【まとめ】中小企業にとってコモディティ化対策は重要
今回は、高価値なものが一般的な価値にまで落ちてしまうコモディティ化について解説をしてきました。
独自性があり、付加価値の高い商品であっても、その価値がいつまでも続くとは限りません。
そして主力製品がコモディティ化してしまった場合、一気に優位性を失ってしまうことになるのです。
そのためコモディティ化の対策は、資源不足が原因で幅広いビジネス展開に向かない中小企業にとっては、とくに重要であると言えます。
逆にコモディティ化対策をきっちり行い、独自性や付加価値を維持することができれば大きな利益を上げることも可能です。
そのためにも必要なのが、価値に見合った価格設定です。
薄利多売戦略に向いてない中小企業にとって、主力商品のコモディティ化は大きな危機になりかねません。
だからこそしっかりと対策を行い、自社の優位性を保てるような経営を心掛けましょう。