今回は「資金繰り表」について解説します。
企業にとってお金の動きを把握することは、経営をする上で非常に重要なことでしょう。
取引先からの振込や、家賃や経費の支払いなど、企業ではお金が頻繁に動きます。
そのため、自社のお金の動きを把握していなければ、黒字倒産になる可能性もあるのです。
そこで、活躍するものが資金繰り表です。
資金繰り表をうまく活用することで、自社のお金の動きを把握し、経営資金をうまくコントロールすることができるのです。
そこでこの記事では、次の内容を中心に解説していきます、
- 資金繰り表の種類について
- 資金繰り表のテンプレが手に入るサイト
- 資金繰り表をうまく活用するための4つのポイント
- 資金繰りがうまくいっていない場合の5つの改善策
自社の経営資金が把握できていない場合や、資金の管理に課題を感じている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも資金繰り表とは?2種の資金繰り表をそれぞれ解説!
この記事を読んでいらっしゃる方の中には、「そもそも資金繰り表ってなんなの?」という方もいらっしゃるでしょう。
資金繰り表とは、「企業の一定期間内の収支をまとめた表」です。
資金繰り表を活用することで、これらを把握することができます。
「自社のお金がいつ・いくら出ていくのか」
「自社のお金がいつ・いくら入ってくるのか」
これらを把握することで、自社の資金にどれくらい余裕があり、今月はどれくらいお金を使ってもいいのかを把握することができるのです。
自社の資金状況を把握できていないと、最悪の場合、黒字倒産になってしまう可能性もあります。
そのため、資金繰り表を活用することは、企業にとって必須と言えるでしょう。
そんな資金繰り表には、2種類の形式が存在します。
- 実績資金繰り表
- 予定資金繰り表
いずれの資金繰り表も役割が違うため、それぞれを理解して使い分ける必要があります。
それぞれについて詳しく解説します。
資金繰り表の種類1.実績資金繰り表
実績資金繰り表は、自社の過去の実績を記載して作る資金繰り表のことです。
つまり、過去に自社であったお金の流れを把握するための資金繰り表です。
- 月次試算表
- 現金出納帳
- 預金出納帳
- 預金通帳
- 手形帳
- 借入返済明細書
これらの計算書や帳簿から、売掛金の入金や買掛金の支払いのデータを書き取って作成します。
月単位での作成でも問題ありませんが、日単位での作成をしておくことで、何かトラブルや問題が起きたときに対応がしやすいため、日単位の表を用意しておくことがベターです。
過去の資金の流れを把握することで、時期や季節ごとのお金の動きを把握できるため、来期のお金の動きを予想しやすくなります。
資金繰り表の種類2.予定資金繰り表
予定資金繰り表は、損益計画書や月次経営計画から収支を予測する資金繰り表です。
実績資金繰り表で、過去の収支を確認することも重要ですが、それ以上に重要なことが将来的な収支予定を予測するということです。
将来の支出を予測することで、黒字倒産を防ぐことができます。
黒字倒産とは、売上は黒次なのにキャッシュフローの問題で支払いなどが滞ってしまい、倒産してしまうことです。
予定資金繰り表を作成し将来の収支を予測できていれば、黒字倒産する可能性が発生した場合に、即時に対処することができます。
資金調達や融資を受けるには多少なりとも時間がかかりますから、予定資金繰り表を作成しておくだけで黒字倒産を防げる可能性はグッと高くなるでしょう。
資金繰り表を作る前に知っておきたい!資金繰り表を作る2つのメリット
ここからは、資金繰り表を作成する2つのメリットを解説します。
お金の問題は、経営だけでなくあなたの人生にも大きく関わる場合もあるでしょう。
- トラブルが起きたときにすぐに対応できる
- 黒字倒産を防ぐことができる
資金繰り表を作る2つのメリットについて、詳しく解説します。
資金繰り表を作るメリット1.トラブルが起きたときにすぐに対応できる
1つ目のメリットは、過去の収支に関するトラブルが起きたときにすぐに対応ができるということです。
いくら企業とはいえ、経営や業務を行なっているのは人なので、ミスが起きてしまうときもあります。
当然お金のミスも起こる可能性があるでしょうし、取引先とトラブルになってしまう可能性も0ではありません。
資金繰り表を作っておけば、金銭トラブルが発生したときにもすぐに対応することができるのです。
金銭トラブルは、当人の意思に関わらず、対応が遅くなってしまうと大きく発展してしまう可能性もあります。
トラブルが起きたときにもなるべく早く対応できる体制を作るためにも資金繰り表は作っておきましょう。
資金繰り表を作るメリット2.黒字倒産を防ぐことができる
2つ目のメリットが、黒字倒産を防ぐことができるということです。
東京商工リサーチの調査によると、2018年に倒産した国内企業は463社。
そのうち約半数を占める47.73%(約220社)と報告されています。
出典:株式会社東京商工リサーチ 2018年「倒産企業の財務データ分析」調査
これらの企業が資金繰り表を、使用していたかどうかはわかりませんが、少なくとも資金繰り表を活用できていなかったことは明らかです。
繰り返しになりますが、資金繰り表を作成することで、将来のお金の動きを予測することができます。
企業で動くお金は、個人で扱える金額とは大きく異なりますから、経営にも大きな影響を与えることは明白です。
- どの事業にどれくらいお金をかけることができるのか?
- 来月は資金にどれくらい余裕があるのか?
- 従業員にボーナスを多めに支払っても経営に影響しないか?
このようなことを把握するためにも、資金繰り表を作ることは必須と言っても過言ではありません。
もしも、資金繰り表が作られておらず、勢い任せに資金を使ってしまうと、黒字倒産になる可能性も十分に考えられます。
Excel・スプレッドシートでもできる!資金繰り表のテンプレが手に入るサイトを紹介!
それでは、資金繰りの表のテンプレが手に入るサイトを紹介します。
資金繰り表はExcelやスプレッドシートでも利用できるので、各サイトからフォーマットをダウンロードして気にいる物を使ってください。
■日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の資金繰り表は、見やすいフォーマットが特徴で、項目も細かく分かれています。
まずは、資金繰り表がどのようなものなのかを知りたい方におすすめです。
日本政策金融公庫の資金繰り表のダウンロードはこちらから!
■宮崎銀行
宮崎銀行の資金繰り表は、簡易版と通常盤がシートで分けられています。
予定資金繰り表だけでなく、実績資金繰り表も盛り込まれているため、今から本格的に資金繰り表を活用したいという方におすすめです。
宮崎銀行の資金繰り表のダウンロードはこちらから!
■ボクシル テンプレート
ボクシルテンプレートの資金繰り表は、シンプルなレイアウトが特徴です。
年次のフォーマットしかありませんが、自身でカスタマイズしやすくなっているので、記載する項目が多い方におすすめです。
資金繰り表のダウンロードはこちらから!
資金繰り表の準備ができたところで、次に資金繰り表のどんな項目を見るべきなのかを解説します。
資金繰り表を作成するだけでは、資金の総数は把握できても、その中身や内訳を把握することはできません。
資金繰り表から、経営方針を考えられるようになってこそ、資金繰り表を活用できるのです。
資金繰り表から学ぶ経営方針!必ず見ておきたい資金繰り表の4つのポイント
ここからは、資金繰り表を作成した後に確認するべき4つのポイントを紹介します。
- 営業収支がプラスになっているか
- 預金残高が月商よりも多いか
- 借入金返済額が営業収支額よりも少ないか
- 先行投資が資金繰りを悪化させる原因にならないか
この4つのポイントを押さえておくことで、今後の経営方針を固めることができます。
資金繰り表を確認して、自社のどこに課題があるかを把握できるようにしましょう。
ポイント1.営業収支がプラスになっているか
まずはじめに見るべきポイントは、営業収支がプラスになっているかどうかです。
営業活動に関するお金がプラスになっていなければ、先行投資や借入金の返済ができなくなってしまいます。
とはいえ、ボーナスの支払い月や納税月などは、マイナスになってしまうこともあります。
そのため、単月での営業収支だけでなく、2〜12ヶ月程度の期間で営業収支がプラスになっている必要があるでしょう。
複数ある項目の中でも、営業収支は必ずチェックするようにしましょう。
ポイント2.預金残高が月商よりも多いか
2つ目のポイントは、自社の預金残高が月商よりも多いかということです。
営業収支がマイナスになると、それを補填するために預金残高を利用することもあるでしょう。
そんな時に、預金残高がなければ、営業収支のマイナスを補填することができません。
もちろん、金融機関に借入をするなどの方法で、営業収支のマイナスを補填することはできますが、できることなら自社の預金残高で解決したいと考えるのが一般的でしょう。
そのため、あくまでも目安ですが、月商よりも多い預金残高を維持しておくことが重要です。
ポイント3.借入金返済額が営業収支額よりも少ないか
3つ目のポイントは、借入金返済額が営業収支よりも少ないかということです。
資金繰り表の営業収支がプラスになっていても、借入金返済額がそれを超えてしまっていれば、全体の収支はマイナスになってしまいます。
この問題も預金残高があれば、問題ありません。
しかし、預金残高に余裕があるからといって、先行投資のために金融機関から借入を行いすぎて、借入金返済額が営業収支を超えてしまっているケースは非常に多いです。
借入金額が営業収支を超えてしまうと、預金残高がマイナスになり、結果的に営業収支がマイナスになった時に対応できなくなります。
つまり、黒字倒産をしてしまう可能性が高くなるのです。
そのため、営業収支がプラスで自社の預金残高に余裕がある場合でも、借入金返済額が営業収支よりも少ないかということを確認することが重要なのです。
ポイント4.先行投資によって資金繰りが悪化しないかを判断する
4つ目のポイントは、先行投資によって資金繰りが悪化しないかを判断するということです。
事業拡大のため、先行投資をすることはビジネスの世界では、日常的に行われることです。
しかし、その先行投資が資金繰りを悪化させてしまうケースも少なくありません。
たとえば、
- 自社の預金残高に余裕がない
- 既存の借入金返済額に新たに借入金返済額ができると営業収支がマイナスになる
このような場合には資金繰りを悪化させてしまうでしょう。
もちろん、投資内容によって、その判断は変わっくるので一概には言えません。
しかし、自社の預金残高や借入金の返済に影響が出るような場合には、先行投資を見送ることも考えなくてはいけません。
ここまでで、資金繰り表の見るポイントについて解説しました。
あなたの経営する会社の資金繰りはいかがでしょうか?
もしあなたの会社の資金繰りがうまくいっていない場合には、資金繰りを改善する必要があります。
次の章で、自社の資金繰りがうまくいっていない場合の、改善策を紹介します。
資金繰りが上手くいっていない!会社を守るための5つの改善策!
それでは最後に、自社の資金繰りがうまくいっていないとわかった場合の、5つの改善策を紹介します。
資金繰り表を作って、自社の資金繰りの状況を理解したけど、実際にどのように改善するべきなのかわからないという方は、ぜひ参考にしてください、
- 支払い条件やキャッシュフローを改善する
- 取引先企業の信頼管理を徹底する
- 在庫管理を改善する
- 経費管理の徹底と改善
- 借換保証制度を利用する
5つの改善策について、それぞれ詳しく解説します。
改善策1.支払い条件やキャッシュフローを改善する
1つ目の改善策は、取引先の支払い条件やキャッシュフローを改善するということです。
取引先の支払い条件やキャッシュフローを改善できると、支払日や振込日を調整できるため、お金の動きを管理しやすくなります。
たとえば、
取引先Aからの振込日が「翌月末振込」
取引先Bからの振込日が「翌月10日振込」
取引先Cへの支払日が「毎月末」
取引先Dへの支払日が「毎月25日払い」
このように取引先によって、支払日や振込日は異なります。
この程度なら、まだ管理できますが、実際に企業が取引している数はこんなものではないことがほとんどでしょう。
取引の数だけ支払い条件はありますから、取引先の数が多くなるとキャッシュフローを把握しづらくなり、資金繰りもうまくいかないケースが多いです。
そのため、改善できるのであれば、なるべく同じような支払い条件やキャッシュフローにまとめることで改善が可能なのです。
改善策2.取引先企業が信頼できるかどうか確認する
改善点というよりどちらかというと根本的な部分になりますが、取引先が本当に信用できるのか? ということを確認することは大切です。
ビジネスを行う上で、信頼ができるのかということは大前提と思われるかもしれませんが、企業間同士の取引とは言え、仕事をしているのは人です。
取引先の従業員により、意図的に悪事が行われ信頼が崩壊することもあれば、不本意な形で信頼が崩れることもあります。
企業間の取引であっても、金銭トラブルは起こることがあります。
トラブルが起きた際に、資金繰りがうまくいっていないと、最悪の場合、倒産することも考えられます。
予想することは難しいですが、最低でもこれらの書類のチェックは必ず行いましょう。
- 契約書
- 秘密保持
- 見積書
また、新たに取引する企業の場合、次のような情報を確認することも大切でしょう。
- 登記を確認して本当に会社が存在するのか?
- 契約書の住所と相違はないか?
信頼の上でビジネスは成り立っているため、まずは取引先が信頼できるかどうかを確認しましょう。
改善策3.在庫管理を改善する
3つ目の改善策は、在庫管理を改善するということです。
資金繰りを圧迫している原因が、在庫管理だということもよくあるケースです。
在庫を抱えなければいけない事業を行なっている場合、在庫というのはビジネスをする上で非常に重要な役割を担っています。
在庫を確保する際に、顧客のためにと在庫を多めに確保する方がいらっしゃいますが、それが資金繰りがうまくいっていない原因かもしれません。
たしかに、顧客の信頼を裏切らないためにも、在庫を多めに確保する意識は良いことでしょう。
しかし、それで資金繰りを圧迫していては、本末転倒です。
自社の在庫状況や過去の売上から、適切な在庫状況を把握しましょう。
改善策4.経費管理の徹底と改善
4つ目の改善策は、経費管理の徹底と改善です。
企業によって、経費として認められるものは異なりますが、経費があまりにも大きくなり、資金繰りを圧迫しているケースも珍しくありません。
そのため、経費の管理と改善を行うだけで、資金繰りがうまく回るようになることも多いのです。
- 自社で経費として認められている項目の見直し
- 従業員から計上された経費が適切かどうか
- 経費として計上できる上限金額が適切かどうか
これらを見直し、改善することで経費を適切に管理することができます。
売上はプラスなのに、営業収支がマイナスになっている場合などは、経費を改善してみましょう。
改善策5.借換保証制度を使う
5つ目の改善策は、借換保証制度を使うということです。
借換保証制度とは、信用保証協会という中小企業を応援する団体が設ける制度のことです。
複数ある借入金を信用保証協会が借換することにより、借入金を一本化することができます。
そのため、キャッシュフローが管理しやすくなり、長期での返済計画を立てることで、月々の返済額を減らすこともできます。
借換のときに新たに上乗せして融資を受けることもできるため、利便性の高い制度です。
支払いを一本化したい、月々の返済額を減らしたいという経営者の方は、借換制度の利用を検討することをおすすめします。
【まとめ】資金繰り表で自社のお金の動きを理解しよう!
今回は資金繰り表について解説しました。
大手や中小関係なく、企業の重要な役割を人っている資金繰りですが、うまくいっていない企業も多く存在します。
資金繰りが上手くいっていないと、最悪の場合、倒産も考えられます。
前述した通り、倒産する会社の多くは黒字倒産です。
黒字倒産をするということは、自社の資金繰りを把握できていないことが原因です。
そこで、資金繰り表を活用することで、自社の資金繰りを把握し、経営を安定させることができるのです。
資金繰り表を作成し、今回紹介した4つのポイントを抑えておきましょう。
- 営業収支がプラスになっているか
- 預金残高が月商よりも多いか
- 借入金返済額が営業収支額よりも少ないか
- 先行投資が資金繰りを悪化させる原因にならないか
もし、自社の資金繰りが上手くいっていないことが判明した場合には、今回紹介した5つの改善策を試してください。
- 支払い条件やキャッシュフローを改善する
- 取引先企業の信頼管理を徹底する
- 在庫管理を改善する
- 経費管理の徹底と改善
- 借換保証制度を利用する
もしこの改善点を試しても、資金繰りが上手く言っていない場合は、そもそも売上が上がっていないと考えられます。
売上は、単価×売上数で決められます。
売上数が上がっているのに売上は上がっていない場合には、自社商品の価格が適切でない可能性が高いです。
自社商品の価格が適切でなく、売上が上がらない企業は意外にも多いです。
そこで、資金繰り表を活用しても、資金繰りの改善がみられない場合には、価格を見直す必要があります