今回は、経営を進めていく上で欠かせない「経営管理」について解説します。
経営管理とは、企業が経営を存続していく上で生まれる事業や業務を管理することです。
企業の経営活動には、利益を発生させるコア業務だけでなく、利益を産まないノンコア業務も存在します。
利益が生まれるかどうかは関係なく、企業全体の業務を適切に管理することが、経営管理の仕事です。
適切な経営管理を行えないと、適切な経営判断を行うことができず、企業の存続に大きな影響を及ぼしてしまいます。
この記事を読んでいる方の中にも、コア業務の管理はできていてもノンコア業務の管理に手が回っていないという方は多いのではないでしょうか?
そこで、今回は経営管理について以下4つの内容を中心に解説します。
- そもそも経営管理とは
- 経営管理論とは?
- 経営企画・経営戦略との違い
- 経営管理の5つの種類
- 経営管理を改善する3つの方法
自社の経営管理に課題を感じている方、経営管理を適切に行い経営を安定させたい方はぜひ参考にしてください。
そもそも経営管理とは?定義と目的を解説
まずは、そもそも経営管理とは何なのかについて解説します。
経営管理とは、企業が経営活動を進めていく上で生まれる事業や業務を、目的達成のために管理することです。
経営管理を行うことで、次の2つを把握することができます。
- 自社の課題を発見
- 自社の事業の動きを把握
これらを把握することで、企業としての目的を達成するための経営判断を下すことができるのです。
つまり経営管理を行う目的は、
「企業としての目標を達成するために、事業や業務を管理して、適切な経営判断を下せるようにする」ことだといえます。
経営管理を怠ってしまうと、然るべきときに適切な経営判断が下せなかったり、経営判断が遅れてしまい機会損失を生んでしまう可能性もあります。
そのため、経営管理は日常的に行って、常にベストな判断を下せるようにしておかなければいけません。
ただし、現代の経営管理は管理するべき業務が増えてしまい、経営者や担当者が個人で管理できる業務量を大きく超えているといわれています。
そのため、経営管理の範囲を事業ごとや領域ごとに分類し行なうことが、現代では一般的とされています。
経営管理の学問「経営管理論」とは?
実は経営管理は、学問として成り立っている分野です。
経営管理論は、経営学の中の1つの分野で、企業や組織が経営を続けるうえで必要なことを管理するための実践的な技法を確立する学問だと言われています。
経営管理論は、アメリカの経営学者フレデリック・テイラーとフランスの経営学者アンリ・ファヨールによって成立された学問です。
ファヨールは、管理活動を次の5つに分類しています。
- 予測:将来的なことを予想して経営計画を立てる
- 組織:組織を物理的だけでなく社会的に構築する
- 命令:従業員を機能させる
- 調整:業務と努力を結びつけ調和する
- 統制:活動が一定の基準や支持によって行われるようにする
この5つは現代でいうPDCAと同じ内容です。
つまり、経営管理においてPDCAは大きな影響を及ぼす重要な考えなのです。
経営企画・経営戦略との違いとは?
次に経営管理と経営企画・経営戦略との違いについて解説します。
これらの活動は、同じような言葉でありながら、実は全く違う活動です。
- 経営管理と経営企画の違い
- 経営管理と経営戦略の違い
それぞれについて詳しく解説します。
経営戦略との違い
経営管理と経営戦略は全く異なるものです。
それぞれ、一般的に次のように定義されています。
- 経営管理・・・企業が経営活動を進めていく上で、発生する事業や業務を目的達成のために管理すること
- 経営戦略・・・企業が掲げる目標を達成するための中長期的な方針や計画のこと
経営管理が事業や業務を管理することであれば、経営戦略は目標を達成するための事業や業務を決めることです。
そのため、経営管理は経営戦略に則り行われるのです。
つまり、経営戦略が決まっていない場合は、適切な経営管理や経営判断ができません。
経営管理を適切に行うためにも、経営戦略を構築しておきましょう。
経営企画との違い
経営管理と経営企画も勘違いされやすい言葉です。
一般的な定義を比べるとこうなります。
- 経営管理・・・企業が経営活動を進めていく上で、発生する事業や業務を目的達成のために管理すること
- 経営企画・・・企業が決めた経営戦略に則り、短期の計画を考案したり、それを進行するために経営資源を配分すること
経営企画は経営戦略に則った企画を考えたり、それを進行するためにヒト・モノ・カネを分配することを指します。
それに対して、経営管理は経営企画を含め、事業や業務を管理することです。
中小企業の場合は、経営者が経営企画と経営管理を行っていることが多いですが、企業規模が大きくなると経営者個人で管理や企画をすることが難しくなります。
そのため、企業規模が大きくなる前から企画や管理ができる人材を育成することが重要といえるでしょう。
経営管理の5つの種類について解説!
ここからは、経営管理の5つの種類について解説します。
経営管理は主に5つの部門に分けることができ、それぞれの部門の管理方法を知っておかないと、適切に経営管理をすることができなくなってしまいます。
そこで今回は、以下5つの部門について解説します。
- 生産管理
- 販売管理
- 労務管理
- 人事管理
- 財務管理
これらの部門を適切に管理して、それぞれの部門において適切な経営判断を下せるようにしましょう。
それぞれの部門の管理方法について詳しく解説します。
経営管理の種類1.生産管理
生産管理は、企業が経営を続けていく上で、必要な生産活動を効率化するために行うものです。
生産管理は経営管理の中でも、生産管理はヒト・モノ・カネが特に活発に動くことから、管理をすることが難しいと言われています。
生産管理を行うことで、自社に必要なものを必要なだけ調達、配置することができるようになります。
また、生産管理では経営計画や販売施策を基に、効率的かつ無駄がないように商品を生産できるように管理しなければいけません。
具体的には、以下のような動きがあり、これらを適切に管理しなければいけません。
- 材料や部品の調達
- 生産場所や設備の確保
- 人員配置
基本的には、経営計画や事業計画に基づいて、需要と供給のバランスを調整することが生産管理の仕事になります。
生産場所や人員配置に関しては、一度決めてしまえば大きな変更が頻繁に起こることは基本的にはありません。
しかし、材料や部品の調達に関しては、日常的な業務として行われるため、管理を徹底して行う必要があるのです。
在庫を抱えすぎてしまったり、発注が多すぎるとコストが無駄に掛かってしまい、経営を圧迫してしまう可能性もあります。
無駄なコストを減らすためにも、生産管理は非常に重要な役割を担っているのです。
経営管理の種類2.販売管理
販売管理は、商品やサービスの仕入れから販売までの情報や流れを管理し、適切な販売活動を行うことで収益を確保するために行われるものです。
そのため、販売管理では仕入れや在庫管理はもちろん、商品に関するあらゆる情報を管理しなければいけません。
販売管理を行うことで、目標を達成するために売上や商品の数を把握したり、市場が何を求めていてどんな物を売ればいいのかなどを把握しやすくなります。
たとえば、
- 仕入れ
- 在庫管理
- 商品の種類
- 商品の価格
- 商品の売り方
- 誰に売るのか
- 何を売るのか
このように商品に関する情報を管理することで、自社の収益を確保する必要があるのです。
事業を進めていく上で、売上や利益を生むのは商品です。
どれだけ素晴らしい商品があったとしても、商品を適切に管理できていなければ、売上や利益を上げることは難しいでしょう。
自社で生産しているものでなくても、商品一つひとつの管理を徹底することを意識しましょう。
経営管理の種類3.労務管理
労務管理は、主に企業全体の環境を整備するために行われるものです。
労務管理では、主に労働法や企業の就業規則に基づいて、自社の勤怠や給与を管理します。
また、労務管理を行うことで、労働環境の整備やコンプライアンスへの対応がスムーズに行えることから、従業員満足度を上げることができます。
たとえば、
- 勤怠
- 給与
- 社会保険
- 従業員数
- ガバナンス
- コンプライアンス
- 就業規則
このように従業員が働く環境を管理することが労務管理の仕事です。
企業の経営活動のベースを管理する仕事のため、非常に重要な仕事といえるでしょう。
経営管理の種類4.人事管理
人事管理は、企業が経営を続けていく中で必要となる人材を確保するために行われるものです。
労務管理と同じく従業員に関わる業務ですが、人事管理の場合は労働環境というよりも、人員配置や人材育成を行うことが一般的に多いです。
人事管理を行うことで、それぞれの業務をどの従業員が担当しているのか、どの業務にどんな人材が必要なのかを把握することができます。
また、従業員を適切に評価したり、新しい人材を教育することも人事管理の仕事といえるでしょう。
たとえば、
- 採用活動
- 昇進
- 人員配置
- 組織図
- 人材育成
- 人材評価
このように従業員のポジショニングや成長に関わるものを管理することが、人事管理です。
経営目標や経営計画に基づいて、どれくらいの人材を新たに採用するべきなのか、どこの部署にどんな人を配置するのかなどを決めることで自社を活性化させることが求められます。
売上には直接繋がりはしませんが、間接的に売上や利益に影響を与えるため、企業の業務の中でも非常に重要な仕事といえるでしょう。
経営管理の種類5.財務管理
財務管理は、企業が経営を続けるために必要な資金や資産を管理することです。
財務管理を行うことで、自社で発生している無駄なコストや、投資に回せるお金を把握することができます。
経営管理の中でも財務管理は最も重要と言っても過言ではありません。
新たな事業を展開するときや海外展開を行うときなど、企業が行う活動には必ずコストがかかります。
財務管理は、企業の活動に無駄がないように資産や資金を管理することが仕事なのです。
たとえば、
- 決算書の作成・確認
- 財務分析
- 資金・資産管理
- キャッシュフローの管理
- 資金繰り表の作成
このように企業で発生する資金・資産に関することを管理し、無駄があった場合にはコストカット、チャンスがある場合には投資を行えるような状態を作ることが財務管理の目的です。
近年では、財務管理が適切に行えず、黒字倒産をしてしまう中小企業も少なくありません。
財務管理は企業の存続に大きく影響するため、見える化するなどして管理が簡単にできるように心がけましょう。
経営管理を改善する3つの方法
最後に経営管理を改善する3つの方法について解説します。
経営管理を改善するためには、3つのいずれかの方法で基本的には改善することができます。
- 経営管理システムを導入する
- 部署や業務ごとに明確な課題を設定する
- 経営基盤をシンプルにする
それぞれの方法について解説します。
経営管理の改善方法1.経営管理システムを導入する
経営管理を改善する1つ目の方法は、経営管理システムを導入するということです。
経営管理システムを導入することで、企業の中のあらゆる情報を一元管理することができます。
ERP(企業資源計画)の発展により、業務が違う場合や扱う情報が異なる場合でも、1つのシステムで管理できるようになったのです。
従来、経営管理では、業務や事業ごとに異なる基幹システムを用いたり、エクセルを使用することもあったため、システム上の問題で管理しにくいケースも少なくありませんでした。
それが、経営管理システムを導入することで、すべての情報を同じデータベースで管理できるようになったのです。
自社の経営管理システムに満足していない場合は、ERPの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
経営管理の改善方法2.部署や業務ごとに明確な課題を設定する
経営課題の2つ目の改善方法は、部署や業務ごとに明確な課題を設定するということです。
部署や業務ごとに明確な目標や計画を設けることで、管理する上での基準ができ、管理をしやすくなったり従業員のモチベーションを上げることができます。
経営管理が上手くいっていない企業の多くは、経営計画や目標が部署や業務レベルで考えられていないケースが多いです。
責任者や役員が経営計画や目標を設定することで、部署や従業員に目標ができるため、モチベーションを上げることもできます。
目標や課題についてはKGIを設定することで、明確にすることができます。
経営管理の改善方法3.経営管理基盤をシンプルにする
経営管理の改善方法3つ目は、経営管理基盤をシンプルにするということです。
経営管理基盤をシンプルにすることで、経営管理をする事業や業務が増えたときに対応しやすくなります。
反対に、経営管理基盤がシンプルでなければ管理するべき事業や業務が増えたときに情報が混在してしまったり、誰が何を管理しているのかわからなくなり、対応が遅れてしまうこともあります。
そのため、経営管理基盤をシンプルなものにしておくことは非常に重要なのです。
今後、企業規模を大きくしようと考えている経営者の方は、特に意識する必要があるでしょう。
経営基盤の改善を先延ばしにしてしまい、管理する情報が増えてしまうと、修正に必要な時間やコストがその分増えてしまいます。
経営基盤を前もってシンプルにしておくことで、無駄なコストを掛けずに済むでしょう。
まずは、自社の経営基盤がシンプルな構造になっているかを確認してみましょう。
【まとめ】適切な経営管理で適切な経営判断を!
今回は経営を進めていく上で欠かせない経営管理について解説しました。
経営管理を徹底して行うことで、トラブルやアクシデントがあった場合にも柔軟に対応して、的確な経営判断を行うことができます。
経営管理を怠ってしまうと、然るべきときに重要な判断が遅れたり、判断するべきタイミングを逃してしまい、機会損失につながることもあります。
最悪の場合、自社の課題や問題点を発見することができないまま、倒産をしてしまう可能性もあるでしょう。
意外かもしれませんが、売上が黒字なのに倒産する黒字倒産してしまう企業も少なくないのです。
そのような企業は、経営管理が疎かになっていることがほとんどです。
特に財務管理が甘くなっているケースも多いため、売上や利益だけでなくキャッシュフローを理解するようにしましょう。
また、財務管理の他にも、自社の商品やサービスが適切な価格かどうかという点も、この機会に見直してみてください。
驚かれるかもしれませんが、「価格が安ければ売れやすい」というのは大きな間違いです。
それを理解しておらず、価格競争に巻き込まれた末に安すぎる価格設定をしてしまい、事業が行き詰まる中小企業が非常に多いのです。
自社の商品の価格が適切でなければ、売上や利益を上げることは難しいです。
経営管理を徹底していても、自社の売上や利益率を改善する問題点が見つからず、売上や利益率がいつまで経っても改善されない、ということは珍しくありません。
そういった場合は、そもそも価格設定でミスをしているケースが多いですので、経営管理を徹底する前にまずは自社の商品の価格が適正であるかどうかを見直してほしいのです。
経営管理を行う前に、売上や利益率が上がらない根本的な原因がないかどうかを一度見直してみてください。