今回はブルーオーシャン戦略について解説します。
競合との競争が激しいレッドオーシャン市場から抜け出し、いかに競争の少ないブルーオーシャン市場を見つけるかという戦略のことです。
中小企業が長期的に売上を上げるための重要な戦略といえますね。
よく間違えやすいのですが、ブルーオーシャン戦略とは「競争の少ない異業種に参入する」ということではありません。
ブルーオーシャン戦略とは、「既存市場の中に新しい価値観を作り上げること」なのです。
今あなたの会社で行っている業種のまま、取り組むことができる戦略ということです。
今回は、ブルーオーシャン戦略の定義やメリットとデメリット、フレームワークと事例を紹介します。
競合の少ない市場を見つける方法を探していた方は参考にしてください。
ブルーオーシャン戦略の定義
ブルーオーシャン戦略とは、競合がいない(もしくは極端に少ない)市場を作り出すことです。
欧州経営大学院の教授W・チャン・キムとレネ・モボルニュの著書「ブルー・オーシャン戦略」で提唱された戦略ですね。
ブルーオーシャン戦略で重要な考え方に「バリューイノベーション」があります。
バリューイノベーションとは、コスト削減とサービス価値の向上の両方を実現させるという意味です。
わかりやすく例を挙げて説明しましょう。
床屋で髪を切ってもらったとき、シャンプーをしてもらったり、最後に整髪料でセットしてもらうことが普通ですよね。
料金も3,000円~4,000円程度かかるところがほとんどです。
しかし、QBハウスはカットのみのサービスで、10分1,000円という格安料金で提供しています。
カット以外のサービス(シャンプーなど)は行っていません。
注目するべき点は、サービス内容を減らすことでお客さんの満足度が下がったわけでは無いことです。
むしろ、余計なサービスを減らすことで散髪を安く済ませることができ満足度が高い状態といえます。
サービス内容を減らし料金を下げることで、既存の床屋市場に新しい価値観を作った事例ですね。
散髪代を安く済ませたいというお客さんのニーズが多く、QBハウスは都道府県の半分ほどに出店しているくらい成長しています。
小資本で戦う中小企業に向いている
ブルーオーシャン戦略は中小企業にこそ向いています。
少ない資本と労力で競合の少ない市場を作り出すという考え方は重要です。
先ほどのQBハウスの例のように、同じ業種でもこれまでにないニーズを見つけることは資金力がなくてもできますよね。
潜在的なニーズを汲み取り、ブルーオーシャン市場を見つけることは、中小企業が長期的に結果を出していくために大事な考え方です。
ブルーオーシャン市場を見つけることができれば、その市場であなたの会社のサービスを根付かせて認知度を高めることができます。
新しい顧客の獲得を容易に行うことができるでしょう。
さらに将来的に競合が参入したときも、認知度の高さからすでに差別化ができている状態を作り出すことが可能です。
ブルーオーシャン市場を見つけることは、中小企業が少ない資本と労力で最大限にメリットを受け取ることができる方法の1つといえます。
ブルーオーシャン戦略のメリットとデメリット
ブルーオーシャン戦略のメリットとデメリットについて説明します。
ブルーオーシャン戦略のメリット
ブルーオーシャン戦略のメリットは以下の3つです。
- 価格設定を自由に行える
- 独占市場を築くことができる
- 非顧客層を取り込める
それぞれについて解説します。
ブルーオーシャン戦略のメリット.1
価格設定を自由に行える
ブルーオーシャン戦略を行うことで、価格設定を自社で行うことができます。
競合がいない状況のため高単価で提供することも可能で、価格競争に陥ることもありません。
そのため、利益率の高いビジネスを行うことが可能です。
お客さんも比較対象がありませんし、価値に見合ったサービス内容であれば問題ありません。
ブルーオーシャン市場を見つけることで、その市場の価格決定ができることが大きなメリットです。
ブルーオーシャン戦略のメリット.2
独占市場を築くことができる
あなたの会社のサービスを根付かせることができれば、独占市場を築くことができます。
ブルーオーシャン市場を見つけただけでは、単に競合がいないだけです。
あなたの会社が上手くいっていることがわかれば、競合が参入してくる可能性が高いでしょう。
そのため、競合が参入してくる前に、競合が真似することが難しい状況を作りだす必要があります。
「このサービスを受けるならあなたの会社」といわれるよな独占市場を作ることができれば、競合が入ってきたとしても有利な状況を作りだすことができます。
ブルーオーシャン戦略のメリット.3
非顧客層を取り込める
ブルーオーシャン戦略は、非顧客層を取り込むこともできます。
「ブルーオーシャン戦略の定義」の項目でも例に出したQBカットで説明しましょう。
QBカットは10分1,000円で散髪するサービスを提供していますよね。
このサービスは床屋の3,000円~4,000円の価格を高いと感じており、余計なサービスを減らすことで安く済ませたいというお客さんのニーズに合っています。
実はそれ以外にも、家で自分でカットしていた層も取り込めています。
家でカットすることで安く済ませることができますが、やはり自分でカットするとムラがでることが多いです。
1,000円で済むのであればお店でカットしてもらったほうが良い、と考えるお客さんを取り込めています。
他にも「Swatch」というスイスの時計メーカーの事例があります。
アジア製の時計に市場を大きく取られてしまったSwatchは、腕時計としてではなくアクセサリーという位置づけで商品開発を行いました。
プラスチックや合成繊維などでコストカットを行い、アクセサリーとしての付加価値を強めたのです。
その結果Swatchは、普段は腕時計をつけない非顧客層を取り込むことができました。
このようにブルーオーシャン市場を見つけることは、非顧客層を取り込める可能性が高い市場でもあります。
ブルーオーシャン戦略のデメリット
ブルーオーシャン戦略のデメリットは以下の2つです。
- 競合他社に真似されやすい
- マーケティングノウハウが必須
それぞれ解説しますね。
ブルーオーシャン戦略のデメリット.1
競合他社に真似されやすい
ブルーオーシャン市場は、競合他社に真似されやすい市場です。
あなたの会社が上手く行っていることがわかれば、スグに市場を調査して参入してくる可能性があります。
大企業が参入してくる場合は、資本力があるためスグに優位性が失われてしまうことがあるでしょう。
ブルーオーシャン市場で優位性を保つためには、競合が真似しにくい価値提供などを行う必要があります。
ブルーオーシャン戦略のデメリット.2
マーケティングノウハウが必須
新しい価値観を市場に広めるためには、マーケティングノウハウが必要です。
ブルーオーシャン市場を見つけたとしても、お客さんにあなたの会社を知ってもらわなければ購入に結びつきませんよね。
必要としているお客さんに効率的に宣伝ができなければ、マーケティングが強い競合が参入してきたとき一気にお客さんを奪われてしまいます。
そうならないためにも、マーケティングに強い企業になる必要があります。
ブルーオーシャンを見つけ出すフレームワーク
ブルーオーシャン市場を見つけ出すためのフレームワークを2つ解説します。
- アクション・マトリクス
- 戦略キャンパス
実際の事例を交えながら解説しますね。
ブルーオーシャンを見つけ出すフレームワーク.1
アクション・マトリクス
「アクション・マトリクス」は、既存の業界に以下の項目を埋めることでブルーオーシャン市場を見つけ出す方法です。
- 既存業界から取り除くべきもの
- 既存業界から減らすべきもの
- 既存業界から増やすべきもの
- 既存業界から付け加えるべきもの
実際にアクション・マトリクスを床屋業界に当てはめて考えてみましょう。
1.取り除くべきもの
シャンプー、カラーリング、パーマなど |
3.増やすべきもの
回転率を上げるための備品 |
2.減らすべきもの
接客中の会話 |
4.付け加えるべきもの
エアウォッシャー(掃除機) |
これは10分1,000円で散髪サービスを行っているQBカットの事例です。
既存業界に4つのアクションを当てはめることで、新しい価値観を見出すことができていますね。
ブルーオーシャンを見つけ出すフレームワーク.2
戦略キャンパス
戦略キャンパスは、先程紹介した「4つのアクション」を折れ線グラフで表したモノです。
上のグラフはQBカットを戦略キャンパスに当てはめたグラフです。
一般的な床屋とは、全く別の価値提供をしていることが分かりますね。
※実際は業界全ての競争要素を当てはめてグラフを作成することが重要です。
多くの場合、商品の付加価値を高めようとするときに何かを付け足すことを考えがちです。
しかし、余計だと思われるサービスを減らすことも価値提供になります。
4つのアクションや戦略キャンパスのフレームワークを行うことで、視覚的に業界を分析することができ今まで見えなかったことに気付く機会を作ることができます。
ブルーオーシャン戦略の成功事例
ブルーオーシャン戦略で成功している事例を紹介します。
ブルーオーシャン戦略の成功事例.1
IKEA(イケア)
IKEAはモダンなデザイン家具を、素早く納品してくれる企業です。
実際に部屋の中にいるように家具が配置されており、商品を購入した後の生活をイメージできるようになっていますね。
これはお客さんにとって大きなメリットであり、競合がマネしづらい差別化施策でもあります。
コストカットの施策も業界の常識とは違った方法をとっています。
一般的に家具は耐久性が良いものを高価格で販売していますよね。
しかし、IKEAは耐久性を落としリーズナブルに家具を販売しています。
商品の種類も絞っていますし販売店も多くありません。
これらは全てコストカットを実現するための施策です。
競合との差別化とコストカット施策で、競合他社と比べて有利な状況を作り上げています。
ブルーオーシャン戦略の成功事例.2
ユニクロ(Uniqlo)
ユニクロはヒートテックやシルキードライなどの、衣類に新しい付加価値をつけて販売しています。
商品名を聞いただけでユニクロで販売している商品であることや、どんな機能がある商品なのかをイメージできるほどに定着していますよね。
さらに製造から販売までを全て自社で行っているため、コストカットにつながっています。
お客さんからの要望も、商品改良に反映しています。
ユニクロは付加価値のある商品開発と徹底したコストカットで、自社にとってのブルーオーシャン市場を作り上げた企業といえますね。
【まとめ】小資本の中小企業は競合の少ない市場を狙おう
ブルーオーシャン戦略は、中小企業こそ活用すべき戦略といえます。
競合がいない市場であれば、小資本でも最大限に利益を上げることができるからです。
これが最大のメリットといえますね。
ブルーオーシャン市場を見つけるには、以下の2つのフレームワークを活用してください。
- アクション・マトリクス
- 戦略キャンパス
同業他社との競争要素を全て洗い出し、既存業界の中にどのような新しい価値観を作ることができるかを分析してみましょう。
ブルーオーシャン市場を見つけることができれば、大きな売上や利益をもたらしてくれます。
しかし、ブルーオーシャン市場はいつまでも続きません。
必ず競合が参入してくるタイミングが出てきます。
そのため、競合が参入してくる前にあなたの会社のサービスを根付かせて認知度を高め、同時に低コストでサービス提供できるノウハウを確立してください。
市場での認知度の高さとコストの優位性があれば、競合の参入障壁になります。
いずれやってくる競合の参入に備えて、対策しておくことが重要ですね。
このようにブルーオーシャン戦略は、高度なマーケティングノウハウが求められる方法でもあります。
そのため、新しいマーケティングを取り入れるときは信頼できる経営コンサルタントなどの第3者に判断してもらい、有効性の高い方法を選択することが重要です。