今回の記事ではイノベーションを起こすのに重要な「両利きの経営」について説明していきます。
ちなみにイノベーションとは、革新をもたらすことです。
日々めまぐるしく変化する現在のビジネス社会において、企業の経営者にはこのイノベーションが求められています。
逆に変化することができない企業は時代の波に置いていかれ、生き残ることが困難になってしまうのです。
そしてイノベーションを起こすために必要となるのが、今回のテーマである「両利きの経営」という考え方です。
そこで今回はこの両利きの経営について、以下のような内容をお話ししていきます。
- 両利きの経営とは?
- 両利きの経営の事例
- 両利きの経営とともに考えるべきこと
ぜひ今回の記事を参考にして、時代の波を勝ち進んでいける経営を行ってください。
両利きの経営とは?
両利きの経営とは、経営において以下の2つの方向性を同時に進めることをいいます。
- 知の深化
- 知の探索
要約すると、「既存の知識、スキルを深めること(知の深化)」と「新たな知識、スキルを探索すること(知の探索)」の両方をしなければいけないという意味です。
この2つがバランス良く行われることでイノベーションは起こります。
昨今は「ホリエモン(堀江貴文氏)」を始めとした情報発信者の影響で、「企業経営にはイノベーションが必要である」と考える経営者も多くなってきました。
そしてそれに伴い、両利きの経営についても注目が集まってきています。
とくに2019年2月に『両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』という本が発売され、さらに両利きの経営の認知度は上がりました。
ところが実際のところ、よく見かけるのは両極端な考え方を持つ経営者です。
「下手に移り気をせずに昔からの強みを活かすべきだ」と信じ込んでいる経営者や、「新しいことをどんどんやっていかなければ生き残れない」という思想に振り回されている経営者は非常に多くいます。
とくに歴史のある企業は前者の思考のみに陥りやすく、若い企業は後者の思考のみに囚われがちです。
この2つの考え方はどちらも重要であるものの、どちらか1つだけを妄信してはいけません。
両方の考え方を重要視する「両利きの経営」こそが、イノベーションを起こし、企業として生き残っていくために必要なことなのです。
たとえば知識の探索で新たな知識、スキルを身に付け、それを知の深化で伸ばしていく、というのが王道ですね。
もしくは既存の知識と別の知識を組み合わせて、まったく新しい知識が生み出されるという場合もあります。
この両利きの経営は、組織のトップが覚悟し、変わろうとしなければ実現しません。
つまり、社長であるあなたが両利きの経営のカギを握っていると言えるのです。
それでは具体的に「知の深化」、「知の探索」とはなんなのか? というところについて説明していきましょう。
知の深化とは?
知の深化とは、自社がすでに持っている知識やスキルをさらに掘り下げていくことです。
たとえば以下のようなものが知の深化にあたります。
- ヒット商品の類似商品を開発する
- 既存商品のマイナーチェンジを行う
- 既存の技術や知識をさらに伸ばす
- 業務の効率化を行う
- そのほか、自社の強みをさらに伸ばす
これらを行っていけば、既存のビジネスモデルをさらに改良していくことができます。
しかし、この知の深化だけでイノベーションを起こすのは難しいです。
新しい知識が入ってこないため、知の深化だけでは変化が起こりにくくなってしまいます。
あくまでも知の深化は、「すでにあるもの」をさらに伸ばすことであるというわけですね。
知の探索とは
知の探索とは、今まで自社で取り扱っていなかった新たなスキルや知識を取り入れることです。
たとえば以下のようなものですね。
- 他業種の知識やスキルを取り入れる
- 新しく市場に出てきた知識やスキルをいち早く取り入れる
- 今までにない新しい商品を開発する
- そのほか、自社が今までにやっていなかったことを手掛ける
知の深化が知識やスキルを深めるのに対し、知の探索では上記のように知識やスキルを広げていきます。
これにより時代の変化に対応できる柔軟さが身に付くのです。
しかし、この知の探索だけでもやはりイノベーションは起こせません。
広げた知識やスキルを知の深化によって深めていくことで、初めて革新を起こすことができます。
だからこそ知の深化と知の探索は、その両方をバランス良く行っていく必要があるということですね。
両利きの経営の事例
ここからは両利きの経営によってイノベーションを起こした事例を2件紹介していきます。
- Amazon
- 富士フィルム
この事例を見れば、両利きの経営がどのようなものなのかイメージが湧くはずです。
それでは説明していきましょう。
両利きの経営の事例1.
Amazon
今ではGAFAの1社として知らない人はいないほどの大企業になったAmazonは、両利きの経営によって今の地位を築き上げました。
もともと1994年の創業当時、Amazonは今のようなECサイトではなく小売業としてネット書店を営んでいました。
そこから以下のような流れで進化し続け、今のビジネスモデルを確立したのです。
- ネット書店(1994年創業時)
- 書籍以外も扱うネットスーパー(2000年ころ)
- ほかの小売業も参入できるeマーケットプレイス(2000年代~)
- 独自の商品検索エンジン、広告サービス、AIなどの開発(2006年ころ)
- 電子書籍への参入(2007年ころ)
そしてこのような流れの裏に、両利きの経営が存在していたのです。
Amazonはもともと持っていたオンラインショップ、ECショップとしてのノウハウを知の深化によって成長させつつ、どんどん新しい分野を取り入れていきました。
知の探索として取り入れたのが、「書籍以外の商品」、「マーケットプレイスの導入」、「ウェブサービスの導入」などですね。
Amazonはこの知の深化と知の探索を交互に行い、自社の強みを強化しては新しいものを取り入れ、そしてまたそれを強化していくということを繰り返しました。
その結果イノベーションを起こし続け、世界有数の大企業へと成長を遂げたのです。
両利きの経営の事例2.
富士フィルム
富士フィルムは両利きの経営によってイノベーションを起こし、写真フィルム事業の低迷による危機を脱しました。
富士フィルムがやったのは、以下の2点です。
- 既存の独自技術を追求し、分析、分解をした(知の深化)
- 分析、分解をした独自技術をもとに新規事業に進出した(知の探索)
富士フィルムはこの両利きの経営により、エレクトロニクス、医薬品、化粧品など、さまざまな分野に進出し、結果を残すことに成功しました。
このように両利きの経営を行えば、一見関係のない技術でもさまざまな分野で活かせるようになり、そこからイノベーションが起こるのです。
両利きの経営とともに考えるべきこと
両利きの経営によりイノベーションを起こし、新しい事業を始める場合、価格の設定についても注意してください。
というのも日本の中小企業の中には、商品やサービスが本来持つ価値よりも安い価格設定にしてしまうところが非常に多く存在しているのです。
とくにイノベーションを起こして新しい事業を起こす場合、専門分野から外れてしまうことから弱気な価格設定をしてしまう経営者が多くいます。
しかし、とくに中小企業は、価格設定を強気で行うべきです。
なぜなら中小企業の場合は資金や労力が限られており、薄利多売で利益を出すことに向いていないからです。
実際、価格を安く設定し過ぎたことにより激務なのに利益が上がらない状態になってしまい、そのまま倒産してしまったという会社も多くあります。
そのため価格設定については弱気にならず、しっかりと価値の分はもらえるような設定にしておくべきなのです。
【まとめ】イノベーションを起こすためには両利きの経営が必要!
今回はイノベーションを起こすために必要な「両利きの経営」について説明をしてきました。
両利きの経営では、「知の深化」と「知の探索」をバランス良く行うことでイノベーションが起こせるという話でしたね。
歴史のある会社は知の深化だけに偏りがちで、若い会社は「知の探索」に偏りがちである、という傾向があるので、1度自分の会社はどうなのか考えてみてください。
そしてもしイノベーションを起こし、新しい事業で結果が出せるようになった場合は、価格設定に注意するようにしましょう。
とくに日本の中小企業は新しい分野で事業を始めるとき、弱気になりがちです。
しかし安すぎる価格設定をしてしまうと十分な利益が取れず、最悪、売上は好調なのに経営破綻するといったことにもなりかねません。
そうならないよう、しっかりと価値の分の利益は出せるような価格設定を行ってください。
両利きの経営は今後中小企業が生き残っていくうえで重要な考え方です。
ぜひ1度自分の会社を見直してみて、知の深化と知の探索のバランスを考えてみると良いでしょう。