今回はマーケティングミックスの基本、「4P」と「4C」について説明をしていきます。
マーケティングミックスとは、マーケティング戦略を立てるさいに使えるフレームワークのことです。
そして「4P」と「4C」とは、そのマーケティングミックスの中でもとくに基本的な型のことをいいます。
この「4P」と「4C」は、成功している多くのマーケティングで実際に使われている考え方です。
そのため、マーケティングをやるなら、ぜひ知っておいて欲しい知識であると言えます。
そこで今回の記事では、
- マーケティングミックスの意味
- 4Pと4Cの解説
- 4Pと4Cを使った成功事例
- マーケティングミックスの正しい考え方
について詳しく解説していきます。
あなたも「4P」と「4C」というマーケティングの基本的な考え方を学び、ぜひ自社のマーケティングで役立ててください。
そもそもマーケティングミックスとは?
そもそもマーケティングミックスとは、「マーケティングで望んだ結果を得るために複数の手段を組み合わせて計画、実行すること」をいいます。
たとえば40代男性向けに少し贅沢なおつまみを売り出そうとした場合、
お酒に合う「商品開発」を行い、
40代男性が少し贅沢だと感じるけれど手が出せないほどではない「価格設定」を行い、
それを40代男性が買い物に行くであろうお店に「流通」させ、
商品の存在を認知してもらうために「販促」を行いますよね?
このように、「商品開発」、「価格設定」、「流通」、「販促」といった複数の手段を組み合わせることが、マーケティングミックスなのです。
ちなみに、例で挙げた「商品開発」、「価格設定」、「流通」、「販促」の4つを組み合わせることを「4P」といいます。
マーケティングミックスの中では、この4Pがもっとも基本的な形です。
そしてもう1つ基本的な形に、「4C」というものがあります。
4Cは、「顧客価値」、「経費」、「顧客利便性」、「コミュニケーション」の4つを組み合わせたものです。
この4Pと4Cには、「企業側の視点を軸にしているか」、「消費者側の視点を軸にしているか」という違いがあります。
4Pは企業側の視点を軸に作られた型であり、4Cは消費者側の視点を軸に作られた型なのです。
この4Pと4Cの詳しい説明についてはのちほど個別に行いますので、今はとりあえず、
- マーケティングミックスは望んだ結果を得るために複数の手段を組み合わせて計画、実行することである
- マーケティングミックスには「4P」と「4C」という基本的な型がある
と理解しておいてください。
マーケティング戦略における「4P」
それではまず、「4P」について詳しく説明していきましょう。
4Pはマーケティングミックスの基本的なフレームワークの1つであり、「企業側の視点」を軸に構成されています。
- 製品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- 販促(Promotion)
4Pはこの4つで構成されており、頭文字がすべて「P」であることから「4P」と呼ばれているわけですね。
ちなみに4Pは、1960年にエドモンド・ジェローム・マッカーシー氏というアメリカの学者が提唱したものです。
当時は企業側の視点ではなく、売り手と買い手の両方の視点から組み立てられたフレームワークであると定義されていました。
しかし時代が進み、消費者側視点のフレームワークである4Cが提唱されたことで、企業側視点のフレームワークであると定義されるようになったのです。
それでは、4Pを構成する4つのPについて、1つずつ解説をしていきましょう。
製品(Product)
4Pの1つである「製品(Product)」は、商品開発のことを指しています。
要は、「何を売るか」という部分ですね。
たとえば、20代の女性をターゲットにバーを開こうとした場合、辛口の焼酎ばかり置いていては、おそらく売上は伸び悩んでしまいますよね?
逆に、ついつい写真に撮りたくなるようなおしゃれなカクテルを開発し、メニューに加えれば、20代女性のお客さんを増やせると仮定できます。
このように、どのような商品を売れば良いのかを考えることが、4Pの1つである「製品(Product)」です。
価格(Price)
4Pの1つである「価格(Price)」は、読んで字の如く価格設定のことを指しています。
要は、「いくらで売るか」というところです。
たとえば20代女性をターゲットにしているバーの場合、カクテルをあまりに高い価格設定にしてしまうと、お客さんが来てくれなくなります。
かといって立ち飲み屋のような価格設定だと、利益率の問題から、おしゃれな雰囲気を演出することができなくなってしまうはずです。
このように、ターゲットに合わせた適切な価格設定を行うことが、4Pの1つである「価格(Price)」です。
高過ぎるのはもちろん問題ですが、かといって安くすれば良いというものではありません。
ちなみに、中小企業の社長がとくに失敗しがちなのが、この「価格設定」です。
というのも、売上が欲しい、集客がしたい、という一心で、商品の価格を下げ過ぎてしまう社長が非常に多くいます。
しかし前述したとおり、商品価格は下げれば良いというものではありません。
商品価格を下げればその分お客さんの質も下がってしまいますし、さらに行き過ぎれば、十分な利益を確保することさえできなくなってしまうのです。
流通(Place)
4Pの1つである「流通(Place)」は、「どこでどのように売るか」ということを指しています。
たとえば20代女性をターゲットにしているバーの場合、格安の居酒屋が並ぶ高架下よりも、少し静かな地下などにある方が喜ばれるはずです。
また、いかにも安そうな大衆居酒屋のような店構えにするよりも、少し高そうだけどおしゃれな雰囲気の店構えにした方が、女性受けは良いでしょう。
このように、どこで売ればターゲットとしているお客さんに喜んでもらえるのか、どのようにして売れば実際に購入してもらえるのか、を考えることが4Pにおける「流通(Place)」にあたる部分です。
どんなに良いものを売っていても、そこにお客さんが来てくれなければ売り上げは伸びません。
たとえば、おいしいレストランなのにいつもお客さんが少ない、というお店の場合は、この流通の部分で失敗している可能性が高いと仮定できます。
販促(Promotion)
販促(Promotion)はそのまま、販売促進、プロモーションのことを指します。
「どうやって商品を認知してもらうか」、「どうやって商品の良さをアピールするか」といったところです。
たとえば、ここまで例としてきた女性向けのバーの場合、ただお店をオープンしただけでは、そもそもそこにお店があると知ってもらうことができません。
そこで、入り口に分かりやすい看板を立てかけたり、食べログなどの口コミサイトに登録したり、SNSに投稿してお店の雰囲気を知ってもらったりするわけですね。
販促は、とくに新規顧客を獲得するために重要な要素です。
どうすればターゲットとしている人に情報が届くのかを考えられていなければ、ビジネスは最初の段階でつまづいてしまうでしょう。
4Pを使った成功事例
4Pの成功事例として有名なのは、「ヘルシア緑茶」の事例です。
ヘルシア緑茶は2003年5月に花王株式会社から、中高年をターゲットとして、健康に良いお茶として売り出されました。
ヘルシア緑茶の4Pは、以下のようになっています。
〇製品(Product)
「特定保健用食品(特保)」の認可を厚生労働省から受けた健康に効果のあるお茶です。
体脂肪を落とす効果があるとして売り出されました。
〇価格(Price)
ほかの飲料に比べてやや高価ですが、薬局やドラッグストアで売っている薬や健康食品に比べれば比較的安価です。
飲料水としては高価ですが健康食品としては安価という、絶妙な価格設定がされています。
〇流通(Place)
24時間営業のコンビニエンスストアで簡単に購入することができます。
薬局やドラッグストアに行かなくても買えるという手軽さから、通勤途中の中高年ビジネスマンに喜ばれました。
〇販促(Promotion)
テレビCMで「健康に良い」というイメージを広げつつ、ヘルシア緑茶はコンビニエンスストア専用商品として発売されました。
この販促を行った結果、「ヘルシア緑茶は健康に良くて手軽に飲める」という印象を与えることに成功し、売上を伸ばすことができたのです。
以上が、4Pに当てはめたヘルシア緑茶の成功事例です。
4Pを使う場合は、ぜひ参考にしてみてください。
マーケティング戦略における「4C」
ここからは、「4C」について詳しい説明をしていきます。
4Cはマーケティングミックスの基本的なフレームワークの1つであり、考え方の軸は「消費者側の視点」です。
- 顧客価値(Customer Value)
- 経費(Cost)
- 顧客利便性(Convenience)
- コミュニケーション(Communication)
4Cはこの4つで構成されており、頭文字がすべて「C」であることから「4C」と呼ばれています。
4Pとは違い、ぱっと見ではややイメージしにくいのではないでしょうか?
ちなみに4Cは、4Pよりもあとの時代にできたフレームワークです。
1993年にロバート・ローターボーン氏が、「4Pは売り手側視点に偏っている」と考え、買い手側視点のフレームワークとして4Cを作り上げた、という経緯があります。
それでは4Cについて、1つずつ解説をしていきましょう。
顧客価値(Customer Value)
4Cの1つである顧客価値(Customer Value)は、「ユーザーがどのような価値を手にしたいと考えているのか」ということを指しており、4Pで言うところの「製品(Product)」に対応しています。
要は、ターゲットとしているユーザーがどのような欲求を抱えているのかという観点から、どのような製品を作れば良いかを考えるわけです。
少し専門的な言い方をすると、このユーザーが感じる価値のことを「ベネフィット」と呼びます。
いわゆるマーケティング用語です。
ベネフィットのことを説明する有名なたとえ話に、「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」というものがあります。
「ドリルを買った人の多くはドリルが欲しいのではなく穴をあけたいだけなので、もし仮にドリルよりも安価で簡単に穴をあける装置があれば、ドリルではなくそっちを買うはずだ」という考え方です。
このように、実際にユーザーが抱いている欲求や目的に対する直接的なメリットのことを、マーケティング業界ではベネフィットといいます。
そして4Cにおける顧客価値(Customer Value)は、このベネフィットを基準としてどのような製品を作れば良いのかを考えるものになっているわけですね。
経費(Cost)
経費(Cost)は、「顧客が商品を手にするまでにどれくらいの金額や労力がかかるのか」、「どれくらいのコストなら購入しやすいのか」ということを指しています。
4Pでいうところの価格(Price)に相当する部分です。
ちなみにここでいうコストには、お金だけでなく、商品を買うまでの労力や移動時間なども含まれています。
たとえば、お店に行かないと買えない商品と通販で簡単に買える商品では、商品を購入するまでの労力が変わってきますよね?
要は、わざわざ出かけるのは面倒だから購入しないけど、今すぐネットで購入できるなら買う、ということです。
分かりやすい例で言うと、電子書籍は「お店に行く労力」や「本の保管場所を作るコスト」をうまくカットしていると言えるでしょう。
このように、売り手側の視点から見た利益だけでなく、買い手側の視点から見たコストまで考えて価格設定を行うのが4Cにおける経費(Cost)です。
ただし、買い手側の視点を優先するあまり、十分な利益が出ないような価格設定にしてしまわないように注意してください。
ちなみに4Cにおける経費(Cost)は、顧客にうまく商品価値を説明することで良い方向に変動させることができます。
顧客利便性(Convenience)
顧客利便性(Convenience)は、「どのような経路で流通させれば顧客にとって購入しやすいのか」ということを指しています。
4Pでいうところの流通(Place)に対応する部分ですね。
4Cにおける顧客利便性(Convenience)では、どこで売っていると顧客は喜ぶのか、どのような店構えなら顧客は来やすいのか、ということを考えます。
もしくは、顧客はお店で実際に商品を見て購入したいのか、通販で手軽に購入したいのか、といったことを考えるのも重要です。
要は、顧客の立場でどういう売り方をしてくれると嬉しいのか、ということを考えるのが顧客利便性(Convenience)だということですね。
コミュニケーション(Communication)
コミュニケーション(Communication)は、「顧客とどのようなコミュニケーションを取るのか」ということを指しています。
4pでいうところの販促(Promotion)に対応する部分ですが、4Cの場合はただこちらから商品のアピールをするのではなく、顧客との関わり合いを考えることが重要です。
たとえばSNSで集客を行う場合、どのような関わり方をすればユーザーが自社のファンになってくれるのか、ということを考えます。
もしくは商品を買ってくれた顧客に対して、どのようにアフターフォローをすればリピーターになってもらえるのか、ということも、コミュニケーション(Communication)で考えるべきことです。
そのため、4Cにおけるコミュニケーション(Communication)は、リピーターを増やしたい、自社のファンを作りたい、という場合には、とても重要な考え方であると言えるでしょう。
4Cを使った成功事例
4Cの成功事例として、「スターバックスコーヒー」の存在が挙げられます。
スターバックスコーヒーの4Cは以下のとおりです。
〇顧客価値(Customer Value)
スターバックスコーヒーは、おしゃれで少し特別な空間を望む顧客に対して価値提供を行いました。
味もさることながら、「SNSで共有したくなる見た目の商品」、「落ち着ける店内」、「おしゃれなブランドイメージ」によって日常の中の特別感を演出し、顧客を満足させたのです。
〇経費(Cost)
数百円の価格帯とドライブスルーができる仕組みよって、商品はとても購入しやすくなっています。
また、お店を出す立地についても、駅中やオフィス街など、ターゲットのことをよく考えられていますね。
「移動中に少し休憩したい」、「会社の休憩時間に飲んで落ち着きたい」という顧客の要望を十分に満たしていると言えるでしょう。
〇顧客利便性(Convenience)
スターバックスコーヒーは、簡単に注文できる反面、おしゃれな店内で長時間くつろぐことも可能です。
店内に電源を用意している店舗も多く、無料Wi-Fiも完備していることから、コーヒーを飲みながらノートPCで仕事がしたいという人の要望にも応える形になっています。
〇コミュニケーション(Communication)
スターバックスは、ていねいでスタイリッシュな接客が特徴的です。
あなたもなんとなく、「スターバックスで働いている人はおしゃれ」というイメージを持っているのではないでしょうか?
また、カップに書かれるメッセージで、日常の中の特別感を演出するといった工夫もしています。
以上が、スターバックスコーヒーの4Cです。
読んでいただければ分かるとおり、ただコーヒーを売り出すだけでなく、顧客が何を望んでいるのかを読み取り、それを提供するような経営をしています。
自社の4Cを考える場合には、ぜひ参考にしてみてください。
4Pと4Cの正しい考え方とは?
マーケティングミックスにおける基本形である4Pと4Cについては、「企画、目標設定の段階から両方を使う」というのが正しい考え方です。
まず、マーケティングミックスを使って戦略を立てる場合には、売り手側と買い手側の両方の視点を持って行いましょう。
どちらかではなく、両方を重要視するからこそ、より良い戦略を立てることができます。
また、意外と多くの人が間違っているのですが、「4Pと4Cはただ分析に使うだけ」というものではなく、企画、目標設定の段階から考えるべきものです。
4Pと4Cについては、ビジネスを立ち上げる段階からしっかり意識するようにしましょう。
以上が、マーケティングミックスにおける4Pと4Cを使うさいの正しい考え方です。
4Pと4Cはマーケティングの中でもかなり基本的な考え方になりますので、この機会にぜひ覚えておいてください。
【まとめ】マーケティングミックスの4Pと4Cはどちらも意識するべき
今回は、マーケティングミックスにおける基本形である「4P」と「4C」について説明をしてきました。
マーケティングミックスのフレームワークには、ほかにも「3C」、「7P」などの派生型がいくつかありますが、基本的には今回説明した「4P」と「4C」が軸だと考えて大丈夫です。
また、マーケティングミックスについては、「企画、目標設定の段階で、4P(企業視点)と4C(顧客視点)の両方から考えるべき」ということを覚えておいてください。
これが、マーケティングミックスを使うさいの基本的な考え方です。
ちなみに4P、4Cの中の「価格(Price)」と「経費(Cost)」については、とくに中小企業の社長が失敗しやすいという特徴があります。
なぜ失敗しやすいのかというと、集客を考えるあまり、商品が持つ価値よりも安い価格設定にしてしまい、十分な利益を取れなくしてしまうからです。
要は、買い手側視点を優先的に考えてしまうあまり、売り手側視点が疎かになってしまっているわけですね。
マーケティングを行う場合は、売り手側の視点と買い手側の視点の両方が、とても重要な指針となります。
この2つの視点を企画段階から持つことで、マーケティング戦略の成功確率をグッと引き上げることができるのです。
ぜひ自分自身のビジネスについても、マーケティングミックスの基本形である4Pと4Cに当てはめ、色々と考えてみてください。