今回はマーケティングの基本とも言える「3C分析」について解説をしていきます。
3C分析はビジネスを分析するときに欠かせないフレームワークです。
3C分析を行うことで、どのようなポジションでどのような商品を売れば良いかを導き出すことができます。
逆に3C分析をやらないままビジネスを進めてしまうと、予期せぬ問題が生じてきてしまうかもしれません。
そこで今回は3C分析について、以下のような内容でお話をしていきます。
- 3C分析の意味
- 3C分析を行う目的、メリット
- 3C分析のやり方【テンプレート】
- 3C分析の事例
- 3C分析と併せて使いたい分析手法
現状、3C分析を行わずに事業を進めているようなら、ぜひ今回の記事を参考にして3C分析を実践してみてください。
3C分析とは?
3C分析とは、以下の3つについて分析するフレームワークのことです。
- Customer(市場・顧客)
- Company(自社)
- Competitor(競合)
これらの頭文字がすべて「C」であることから、「3C分析」と呼ばれているわけですね。
3C分析は、元マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長であった大前研一氏が、1980年代に自著である『The Mind of the Strategist』の中で提唱し、世界に広がりました。
(参考:Wikipedia_3C分析)
3C分析は3つの異なる立場の視点に立ち、市場を分析することができる手法です。
3つの視点から内部環境、外部環境を分析することで、さまざまな要因に考慮した、効率的に勝てるマーケティング戦略を組み上げることができます。
5C分析とは
3C分析と似た分析手法として、5C分析というものもあります。
5C分析は3C分析をさらに発展させたフレームワークです。
3C分析の3つの「C」に加え、以下の2つの「C」を加えることで5C分析とします。
- Customer(中間顧客)
- Community(環境)
ちなみに「Customer(中間顧客)」の代わりに「Collaborator(協力者)」を入れて5C分析とする場合もあります。
なんにせよ、エンドユーザーに届くまでにどのような要素があるかということを分析するわけですね。
たとえば代理店であったり、スーパーやECサイトのショップだったりについて分析をするということです。
あとは、景気や社会情勢といった「Community(環境)」も併せて確認します。
3C分析だけで勝てる戦略が見えてこない場合は、こちらの5C分析を行うというのも一つの手ですね。
3C分析と4C分析の違い
3C分析とよく混同される分析手法に、4C分析というものがあります。
「3C分析」と「4C分析」は言葉が似ていますが、実はまったく別の分析手法です。
それぞれ、以下のような意味を持っています。
3C分析 | 効率的なマーケティング戦略を組み上げるための分析手法
「市場、顧客」、「競合」、「自社」の3つの視点から分析を行う |
4C分析 | 自社製品の強みを「顧客(購入者)」の視点から分析する手法
自社製品の強みを「自社(販売者)」の視点から分析する4P分析と併せて使われることが多い 4C分析では、「顧客価値(Customer Value)」、「顧客にとっての経費(Cost)」、「顧客利便性(Convenience)」、「顧客とのコミュニケーション(Communication)」という観点で分析を行う |
このように、言葉は似ていても別の分析手法なので混同しないようにしましょう。
3C分析を行う目的、メリット
3C分析は、KSF(キーサクセスファクター)を明確にすることを目的に行われます。
KSFとは、重要成功要因のことです。
読んで字のごとく、ビジネス戦略を成功させるための重要な要因ですね。
このKSFが明確になることによって、効率的に勝てる戦略を作り出すことができます。
KSFとは、具体的には以下のようなものです。
- 自社にとって有利なポジション
- 競合と差別化ができるポイント
- 解決すべき課題
つまり、これらを明確にするために3C分析は行うわけですね。
競合が少ないポジションを見つけ、他社が真似できない独自性を打ち出すことができれば、戦わずして勝てる戦略を組み上げることだってできます。
3C分析のやり方【テンプレート】
ここからは3C分析の具体的なやり方について解説していきます。
3C分析は、「顧客(Customer)」 → 「競合(Competitor)」 → 「自社(Company)」の順番で行うのが基本です。
3つの要因についてそれぞれどのようなことを分析すれば良いのかを順番に説明していくので、参考にして分析を進めてください。
3C分析のやり方1.
Customer(市場・顧客)
Customer(市場・顧客)を分析するときは、主に以下のような情報を抜き出していきます。
- 市場規模はどのていどあるのか
- 市場規模がどのように推移しているのか
- どのようなターゲットが顧客になり得るのか(年齢、性別、年収、家族構成など)
- そのターゲットはどのような理由で商品を購入するのか(どのような悩み、望みがあるのか)
- ターゲットはどこにいるのか?(どのようなメディアを利用しているのか?)
とくにターゲットについてはできるだけ詳細に情報を抜き出しましょう。
3C分析のやり方2.
Competito(競合)
Competito(競合)を分析するときは、主に以下のような情報を抜き出していきます。
- 競合となる業者はどこなのか?
- 競合が持っている強みは?
- 競合が抱えている弱みは?
- 競合がいない(手を出していない)顧客ニーズはあるか?
競合の情報をしっかり抜き出せれば、おのずと空いている市場、勝てる市場が見えてくるはずです。
3C分析のやり方3.
Company(自社)
Company(自社) を分析するときは、主に以下のような情報を抜き出していきます。
- 自社の経営理念は何か?
- 自社が現状行っている戦略はどのようなものか?
- 自社がどのようなリソースを持っているか?
- 自社の強みは何か?
- 自社の独自性は何か?(自社にできて競合にできないことは?)
- 自社の独自性は真似されやすいか?
- 自社が得意な事業分野とは?
自社がどのようなリソースを持っているのかを整理すれば、どのような戦略をとれるのか、何が足りていないのか、が明確になるはずです。
3C分析のやり方まとめ【テンプレート】
3C分析を行うときのテンプレートをまとめておきます。
以下の流れで確認を行っていけば、「勝てる戦略」が見えてくるはずです。
エクセルファイルでまとめてあるので、自社風にアレンジしてご使用ください。
3C分析の事例3選
ここからは実際に存在する企業について3C分析を行い、事例として紹介していきます。
- スターバックスコーヒー
- マクドナルド
1つずつ詳細を説明していきますので、自社で3C分析をするときの参考にしてください。
3C分析の事例1..
スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーは創業時、以下のような3C分析をしていたと考えられます。
(画像引用:スターバックスコーヒー公式HP)
Customer (市場・顧客) |
・創業当時、日本での喫茶店市場規模はおよそ1.4兆円であった
・喫茶店の店舗数は減少傾向にあった ・セルフサービスのカフェが多く、店舗でくつろぎたいというニーズに対する供給が少なかった ・喫茶店のコーヒーは高価であったため、若年層の利用者が少なかった |
Competito (競合) |
・当時、競合としては、ドトール、ベローチェといったカフェが挙げられた
・ドトール、ベローチェといったカフェでは、低価格のコーヒーが主流になっていた ・くつろげるタイプのカフェ(喫茶店やホテル)ではコーヒー1杯に600円以上の価格設定をしていた ・当時はブレンドコーヒーが主流であり、メニューの種類が少なかった ・フランチャイズ経営が多く、コーヒーやサービスの質が安定していないかった ・ターゲットとする年齢層が高めであり、若年層の利用者は少なかった |
Company (自社) |
・北米でスペシャリティコーヒーストアとしてのポジションを確立していた
・メニューが豊富であり、カスタマイズも可能であった ・最高級のコーヒー豆を使用していた ・直営店による展開やマニュアル化により、安定して高いレベルの商品、サービスを提供できた ・サービスの質が高い分、料金設定は高めになっていた ・当時は海外進出の実績はなかった |
スターバックスコーヒーはこのような分析のもと、「コーヒーではなく第三の場所を提供する」というコンセプトを打ち立てて成功しました。
同時に若者向けにSNSを活用したプロモーションも仕掛け、空いていたニーズをがっちりと掴みとったのです。
3C分析の事例2.
マクドナルド
次は、ファーストフード業界の強者であるマクドナルドについて3C分析を行っていきます。
(画像引用:マクドナルド公式HP)
Customer (市場・顧客) |
・ファーストフード業界にはおよそ3兆円の市場規模がある
・早さ、安さ、手軽さを求める層と味、品質を求める層がいる ・幅広い年齢層に利用されている |
Competito (競合) |
・モスバーガー、ロッテリアなどは扱っている商品も似ており、競合として考えられる
・モスバーガーは食材にこだわっている ・モスバーガーは価格が高い ・モスバーガーは注文が入ってから調理しているため、品質が高い反面、提供までに時間がかかる ・ロッテリアは比較的安い価格設定だが、現状マクドナルドの方が安い ・ロッテリアは個性的な期間限定バーガーを売りにしている |
Company (自社) |
・ハンバーガー業界でNo.1のシェアを誇っている
・知名度、店舗数は2位以下に対して圧倒的に勝っている ・無駄を省くことでどこよりも安い価格で商品を提供している ・調理済みの商品をパッケージして提供しているため、提供スピードが早く、お客さんを待たせない ・安くて早い分、味や品質では競合に劣ってしまう ・ゆっくり食事をしたいというニーズには応えられない |
ハンバーガー業界で絶対的な王者となっているマクドナルドはこのような分析結果をもとに、他の追随を許さない安さ、早さ、手軽さを追求しています。
モスバーガーやフレッシュネスバーガーが高品質な商品を提供している中で、マクドナルドは自社が持つ強みを貫き通すことで業界No.1をキープしているわけですね。
3C分析と併せて使いたい分析手法
ここからは3C分析と併せて使いたい分析手法を紹介します。
3C分析と併せて以下の分析を行えば、より勝てる見込みの高い戦略を立てられるはずです。
- 5フォース分析
- PEST分析
- SWOT分析
それでは1つずつ詳細を解説していきます。
3C分析と併せて使いたい分析手法1.
5フォース分析
5フォース分析とは、以下の5つの要因によって業界全体の収益性を推し量る分析手法です。
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
- 競合の脅威
- 新規参入業者の脅威
- 代替品の脅威
5フォース分析は、3C分析における「Competito(競合)」や「Company(自社) 」について分析するときに使うことができます。
5フォース分析におけるそれぞれの要因の詳細は以下のとおりです。
〇売り手の交渉力
原材料やサービスを仕入れるときに売り手がどれだけの力を持っているかを分析します。
売り手の交渉力が高ければ高いほど原価が上がってしまうため、その事業の収益性は低いです。
逆に売り手の交渉力が低い場合は価格交渉によって原価を下げることができため、収益性が高くなります。
〇買い手の交渉力
買い手(顧客)がどれだけ力を持っているかを分析します。
買い手の力が強い(=需要に対して供給が多い)ほど商品価格を下げなくてはならなくなるため、その事業の収益性は低いです。
逆に買い手の交渉力が低い(=需要に対して供給が少ない)場合は、価格を上げることができるようになるので収益性は高くなります。
〇競合の脅威
同じ業界内でどのていど競争が起こっているかを分析します。
競合が多くいる状態では供給過多となり、収益性は低くなってしまいがちです。
逆に寡占化が進んでいる場合は競争が起こりにくいため、安定した収益を望むことができます。
〇新規参入業者の脅威
参入障壁がどのていど高いかを分析します。
参入障壁が低い場合は新規参入業者の脅威が高く、収益性が下がってしまう危険性が高いです。
逆に参入障壁が高ければ新規参入業者が入ってきにくいため、安定した収益を望めます。
〇代替品の脅威
違う商品ではあるものの、代替品となる商品がどのていどあるかを分析します。
例を挙げると、航空会社は重要なターゲットである出張するサラリーマンを減らしてしまうテレビ会議のシステムを競合としていました。
代替品が多い商品を取り扱っていればそれだけ収益性が下がり、代替品が少ない商品を取り扱っていれば収益が安定します。
5フォース分析を上手く使い、3C分析の精度をより高めましょう。
3C分析と併せて使いたい分析手法2.
PEST分析
PEST分析は、自社を取り巻く外部環境を分析するフレームワークです。
以下の4つの要素について分析を行っていきます。
- Politics(政治的要因)
- Economy(経済的要因)
- Society(社会的要因)
- Technology(技術的要因)
PEST分析は、3C分析における「Customer(市場・顧客)」を分析するときに使うことができます。
PEST分析におけるそれぞれの要因の詳細は以下のとおりです。
〇Politics(政治的要因)
「Politics(政治的要因)」では、法律、条例、規制、税制などが業界にどのような変化をもたらすのかを分析します。
政治的要因の変化内容によっては、業界内のルールが変わるだけでなく、市場そのものがなくなってしまったり、分裂してしまったりすることもあるので、動向は絶えずチェックしておきましょう。
〇Economy(経済的要因)
「Economy(経済的要因)」では、景気の状態、成長率、物価、為替の変動などを分析します。
輸出入をしている市場には為替の変動が大きな影響を与えますし、嗜好品を販売している業界では景気の状態が影響を与えるはずです。
そのほかにも経済的要因の変化は、さまざまなコストに影響を与えるでしょう。
〇Society(社会的要因)
「Society(社会的要因)」では、流行やライフスタイルといった市場を取り巻く社会性の変化を分析していきます。
たとえば一時期流行った「タピオカ」も、今では流行の終焉により多くの企業が店じまいしているという状況です。
社会的要因は政治的要因や経済的要因のように変化が数字で表れないためわかりにくいですが、市場に与えるインパクトは大きいと言えます。
〇Technology(技術的要因)
「Technology(技術的要因)」では、技術の進歩や新製品の登場によって市場が受ける影響を分析します。
たとえば昔流行った使い捨てカメラは、デジタルカメラやスマートフォンの普及により、今ではすっかり姿を消してしまいました。
このように新しい技術の登場により、今まであった需要が一気になくなってしまうこともあり得るのです。
最近では、「AIによって仕事が奪われる」と言われていますが、それも1つの技術的要因であると言えるでしょう。
このようにPEST分析を行えば、3C分析における「Customer(市場・顧客)」をより詳細に分析することができます。
3C分析と併せて使いたい分析手法3.
SWOT分析
SWOT分析は、2つの内部環境と2つの外部環境を分析し、自社の事業戦略や市場機会、事業課題などを見つけることができるフレームワークです。
以下の4つの要因を分析していきます。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
SWOT分析を行えば、3C分析における「Company(自社) 」をより明確にすることができます。
SWOT分析のそれぞれの要因の詳細は以下のとおりです。
〇Strength(強み)
「Strength(強み)」では、競合に対する自社の強みは何なのかを分析します。
独自の技術力や開発力といったの内部環境の分析ですね。
〇Weakness(弱み)
「Weakness(弱み)」では、競合に対する自社の弱みは何なのかを分析します。
たとえば資金力の低さ、知名度の低さといった課題点を抜き出していきます。
〇Opportunity(機会)
「Opportunity(機会)」では、商品やサービスを提供する機会となるものは何なのかを分析していきます。
市場の流れ、景気変動、顧客のニーズ、市場にはない商品といった外部環境の分析です。
〇Threat(脅威)
「Threat(脅威)」では、自社の商品やサービスを提供するにあたって脅威となるものは何なのかを分析します。
競合他社、需要の有無、流行の有無、法律や規制、などが該当します。
SWOT分析を行うことで、より3C分析の精度は高まるはずです。
【まとめ】マーケティングでは3C分析が必須
今回はマーケティングに欠かせない3C分析について解説をしてきました。
3C分析は、以下の3つの観点から分析を行い、効率的に勝てる戦略を組み立てるために役立つフレームワークです。
- Customer(市場・顧客)
- Company(自社)
- Competitor(競合)
この3C分析をきっちり行えば、あなたの会社がとるべき戦略が見えてくるはずです。
ただ資源の限られた中小企業の場合は、「戦って勝てる戦略」よりも「戦わずして勝てる戦略」を意識してください。
要は空いているニッチな市場を狙うべきだということですね。
ニッチな市場であれば、厳しい価格競争に巻き込まれることがありません。
そのため、しっかり利益が取れる価格設定でビジネスを行うことができるのです。
ただ日本の中小企業の中には、すでに安すぎる価格設定にしてしまっているというところが多くあります。
そういう企業の経営者は、収益性を上げるために、今からでも価格アップを考えなくてはいけません。
3C分析はマーケティングには欠かせない分析手法です。
もし今までやってこなかったなら、これからはぜひ実践してください。